ドリトル先生と春の花達
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第三幕その八
「本当に何でも飲むね」
「ウイスキーもブランデーもね」
「バーボンも飲むし」
「本当に先生はお酒の守備範囲も広いわ」
「学問と同じでね」
「しかも誰に対しても公平で優しいしね」
先生の美徳の一つです。
「きっといい人もね」
「すぐにでも見付かるわ」
「いやいや、もういるしね」
「そうよね」
「ははは、そちらの縁はないからね」
先生は笑って皆のそうしたお話は否定しました。
「僕はね」
「それは果たしてどうか」
「ちょっと周りを見てみたら?」
「お花だけじゃなくてね」
「食べものやお酒を楽しむのもいいけれど」
「いやいや、いないよ」
桃のお花を観つつ笑顔で言います。
「僕と恋愛は学問のことだけだよ」
「学問で恋愛を勉強しても?」
「文学に出て来るそれを」
「それでもなの」
「実際にはっていうの」
「ないよ、まあ僕には皆もトミーも王子もいるからね」
だからだというのです。
「何もないよ」
「やれやれね」
「そこでそう言うから、いつも」
「先生みたいないい人いないのに」
「こんないい人は」
「僕はこんな外見だからね」
太っていて野暮ったくて冴えない、先生が自分で言う外見はこうです。もっとも確かにハンサムでもスマートでもないです。
「もてたことはないしね」
「あら、告白したこともないのに?」
「それも一度も」
「学生時代から誰にも告白してないでしょ」
「それこそ」
「そんなことしたことはないよ」
本当に一度もというのです。
「それこそね」
「奥手だしね、先生」
「元々そうだし」
「それでなのね」
「そうしたこともしないの」
「女の子から誘われたことなんて」
告白以上にというのです。
「ないよ」
「ああ、それはどうかな」
「果たしてどうかしら」
「だから先生周り見たら?」
「もう少しね」
「ははは、観てもね」
あくまで先生の観た目です、これは。
「そうしたことは一度もなかったよ」
「実は何度もあったんじゃ」
「人間も他の生きものも顔じゃないから」
「顔や外見だけで判断する人は駄目」
「そこまでの人だから」
「先生の良さはすぐにわかるから」
「どういった人かね」
こんないい人はいないとです、わかる人はわかるというのです。
「確かに家事とか世間のことはからっきしだけれど」
「全くの世間知らずだからね」
「スポーツは全く駄目なのも事実だけれど」
「それでもね」
そうしたことがあってもというのです。
「先生みたいな人いないわよ」
「こんないい人は」
「気付く人なんて幾らでもいるじゃない」
「昔からね」
「ううん、そうは思わないよ」
何度皆に言われてもこのことだけは、な先生です。
「僕がもてることは天地がひっくり返ってもないよ」
「じゃあ天地がとっくにひっくり返ってるよ」
「そんなこと言ったら」
「だから先生はもてるの」
「嫌わることは絶対にないし」
皆から見た先生はそうなのです。
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