俺のペットはアホガール
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「天誅」3-1
あさ。
真夏の太陽が照りつける暑い日。
こんな暑い日に駅のホーム前に立つ電信柱の後ろで張り込みをさせるなんて、随分とふざけたことをさせてくれるわねっ。
作者と言う生き物はそんなに偉いのかしら? まるで自分はこの世界の神だとでも言いたげな態度で本当にムカついたわっ。思わず手に持っていたうまい棒を投げつけてやりたくなったわよ! 投げないけどねっ。
投げずにまずは自分でむしゃりむしゃ、あ~美味しいと、目の前で美味しく平らげてやって残りかすが付いた袋の方を投げてやったわっ。
うふふっ。何度思い出しても笑えるわ。どうせならっコーンポタージュ味が良かったぁぁぁああ!! って泣き崩れたは姿はとても滑稽だったわ♪
「っと。いけない、いけないっ」
アホのアホ面を思い出してたら、本来の任務を忘れかけていたわっ。
どうして私が駅のホーム前にある電信柱の後ろで、焼けるの覚悟で張り込みなんてことをしているのかと言うとなのね…。
「おはようございます。さすが会長、お早いですね」
「ふぁ……眠い」
「来たわね…メスパラガス!!」
ある筋から手に入れた情報によると、今日あっくんとちよ子達がお友達と旅行に行くらしいのよ。
ちょっと、奥さんっ信じられます!? 高校生だけで旅行に行くって言うんですのよっ!?
これは間違いしか起こらないわ!! 私も高校生の時はお父さんと間違いを起こそうと毎日努力し頑張っていたものっ。
きっと、あのメスパラガスだって同じことを考えているはずっ!!
そんなことさせるものですかっ! 既成事実からの恋愛なんてねぇ! 糞喰らえなのよっ!!
「あっくんは私の老後安泰の為に……」
「おはようございます。緑屋さん、朱雀さん。今日はいいお天気なって良かったです」
ニコッ!!!!!!!!!!!!!!?
「なっなにぃぃぃぃ!!?」
なにっあの完璧美人オーラを放つ女はあああぁぁ!!? サラサラストレートが素敵な大和撫子のようで、世の中を見透かした、あの黒真珠のような黒い瞳が逆に怖いわっ!!
しかも今どき祭りに行くわけでもないのに浴衣/着物(薄単衣ですって!?
いいとこのお嬢様のような気品をかもし出しつつ、和服と決め込むことでちょっぴり庶民な感じも出て近寄りがたい高嶺の花オーラを薄めたですってええぇ!!?
なんなの……あの新人ルーキーは……。あんな女があっくんの傍にいるなんて聞いていないわよっ!!
「ん~~……あ、おはよう……ぐぅ」
「半分寝ながらここまで歩いてきたんですか……? 器用ですね、飯野先輩…」
「僕にもこのスキルがあれば…「真似したら駄目ですよっしーさんっ」ぅ」
「やぁ。みんなごきげんいかがかな?」
「優雅くん、おはよう」
「あ…うん。おはよう緑屋君。
(そういえば緑屋君って男子のことは~殿と呼ぶんじゃなかったっけ?)」
※敬意のある人に対してだけです。
「おはようございます、水仙時さん。今日はお付きの人はいないのですね?
此処まで歩いて来たのですか?」
「たまには庶民の生活と言うのも味わってみたかったからね。電車とやらに乗るのも今日が初めてだよ
(そうえば高浜君も男子のことは~くんって呼んでいたのにどうして僕様だけ……ハッ! まさかっ!!)」
「いえ。違いますから」
「…………君はエスパーかい?」
・
・
・
「ハッ!!?」
ぼんやりあの子達の会話を聞いている場合じゃなかったっ!!
今のところいる女子は、メスパラガスと泥棒猫と…
「それにしても遅いですね…他の先輩達……」
ちんちくりん。
あの娘こを一言で言い表すならそれしかないわね。
小さくてメッシーくんと隣に並んでいたら小っちゃいもの倶楽部で超可愛いじゃないっ!! 頭をこねくり回して、抱きしめて家にお持ち帰りしたいわ♪
顔から視線を下ろせば……
ぺたん。
うん。無害で安全なゾーンね。むしろどんどんちよ子とは仲良くなって欲しい娘だわ。
ちんぱいちゃんとはぜひ心友マブダチという間柄になって欲しいわね♪
「クシュンッ!(………なんだろ今ずっごく失礼なこと考えられている気がする)」
うんうん。くしゃみも可愛いなんて”お姉さん”ますます気に入っちゃったわ♪
それに比べてあの泥棒猫ときたら…
「あら? 誰かに見られているような…?」
ばい~~~ん!!
クソガキがぁああ!! 何気に私よりもデカイとか、喧嘩売っているのかしら!?
「上等よ! その喧嘩、勝ってあげようじゃないっ!!」
「待って、ください」
えっ。後ろから腕を掴まれた。綺麗な声だったからきっと掴んで来たのは女の子ね。
でもこの私に気づかれることなく、背後をとれるなんて何者? どこかの組織の刺客かしら…?
「振り返らなくてもいいです。わたしの話を聞いてくれればそれで」
「……。それでなんのようなのかしら?」
相手から敵意は感じない。むしろ敬意? のような視線を感じるのは何故かしら…?
「会長は悪い人ではないです」
「会長? それはあのデカパイ女のことかしら?」
「そうです。あの水風船のことです」
周知の事実ってことね。
「悪い人ではないってのはどうゆことかしら? あのデカパイは罪の証。
きっと澄ました顔して実は裏で男を喰いまくってるタイプよあれは。実際私の友達がそうだったもの」
「確かに会長の水風船は悪の根源です。あの水風船に誘われた男の子たちは皆、落とされました」
地獄に、なのねっ。みなまで言わなくてもわかるわ。なんて酷いデカパイ泥棒猫女なのかしら!?
「わたしたちの敵。健康男子のしゅうくんには目の毒。
でもちよこちゃんにとっては……大切なおともだちなんです」
「えっ?」
なんでここでちよ子の名前が出てくるのよっ聞き返そうと、後ろを振り返ったら
「いないわ…」
後ろには誰もいなかった。握られていた腕にはまだ彼女のぬくもりが残っている。
確かに彼女は私の後ろに居て話をしたはず、あれは夢でも幻でもないはず……。
「みんなオッハー☆」
「やっぽ~~☆」
「よぉ」
不思議な白昼夢に浸っている場合じゃなかったわね、ちよ子達がやってきてしまったようだわっ。
あの娘たちにバレないように尾行して、あっくんとイイ感じになりそうなってる不届き物が居たら人知れず成敗する! それが今回の私に与えられた任務なのよっ!
物語の後半戦に入ったところ。あっいえ。タイトルが出てきてないから、正確に言うなら前振り部分が終わろうとしているってところかしら?
まあどちらでもいいわね、そんなことっ。このままダラダラズルズル進んで行った挙句に、何もないまま終わってしまう方が一大事だったわよ。
さあ、電車に乗るあの娘たちを尾行して……
「高浜。着物着てるのか? 風流でいいなそうゆうのも」
「りっちゃん、お祭りに行くのー!?」
「海に行くんですっ!! えっと……いいでしょう///
おばあちゃんが着付けしてくれたんです」
泥棒猫が頬を赤くしてあっくんの前でくるりと一回転。
えっと? ちょっと待ってくださいな? 一気に情報が入って来て処理が追いつかないわ…。
高浜? りっちゃん?? ちよ子のお友達の…
「高松 律子ちゃん!!?」
えっ? ちよ子が小学生の頃、ご両親の都合でこの町に引っ越して来られて、たまたま同じクラスになったちよ子と仲良くしてくれていたあのりっちゃん!?
あのガリ勉メガネで、地味で影薄子で、皆の輪に入れなくて教室の隅っこで一人シクシク泣いていた、あのりっちゃんなの!?
「どうしてそんな雌豹みたいになってしまったの、りっちゃん!!!」
「だ、誰ええぇぇえ!!?」
あ。興奮しすぎて思わず電信柱の後ろから飛び出して、りっちゃんの肩を掴みかかって叫んでいたわ…。
「あっお母さん♪」
「千代紙君の母上殿ではないか」
「う……(あの人苦手…)」
「どうしたんですか、しーさんっ??」
「ふぁ……(また面倒くさい人が来ましたねぇ~……このまま寝たふりでもしてましょうか)」
「……はぁ(なにしでかす気だ。あの人は…)」
「あ。ヒコーキ雲じゃん! 写メ撮ろ~と♪」
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