ソードアート・オンライン 神速の人狼
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ー 屠ルモノ ー
始めの犠牲者は、逃げ遅れた壁役のプレイヤーだった。
一団がボス部屋内へと、突入しボスの出現を待っていると湾曲して遥か頭上で閉じた天井で待ち伏せしていたモンスターに奇襲を受けたのだ。
ーー《ザ・スカルリーパー》
それは巨体の鎌を持った、伽藍堂の眼に敵意の炎を燃やす巨大な骨のムカデだった。
目を見張るほどの巨体が、脚を広げての落下。 途中撤退不可、という状況が判断を遅らせたのかもしれない。
落下時の衝撃に巻き込まれ、転倒したプレイヤーが背後から致命の一撃を受け、あっけなく死んだ。
強大な敵の攻撃を防ぎ、受け止める壁役は他のプレイヤーに比べ、防御力もヒットポイントも比べものにならない。 例えボスの攻撃をノーガードで受けたとしても、一撃、二撃は耐えるだろうと思われていた。
しかし、目の前で起こってしまった最悪の現実は攻略組に少なくない混乱と恐怖を与えた。
ーー二人目の犠牲者は、致命の一撃をうけそこない呆気なく死んだ。
ーー三人目、鎌で掬い上げられ甘くなったガードの隙から槍状の尾骨に貫かれて死んだ。
仲間だったポリゴンの欠けらが薄暗い室内を照らす。
瞬く間に散っていったプレイヤー達を嘲笑うかのようにスカルリーパーは雄叫びをあげる。 彼らが今まで戦ってきたモンスターとは文字通り格が違う。 むしろ、逃げ出し恐慌状態にならなかったのは、奇跡だ。
圧倒的に不利な状況。 だが、諦めない者もいる。
「ーーGAuuuuuA」
「好き勝手させて、たまるか!」
円陣を組み、スカルリーパーと対峙する一団からプレイヤーが一人、疾駆する。
僅かな光源に照らされ、鈍い銀色の光を放つプレイヤーは振り下ろされる大鎌を尻尾を揺らし、避ける。 スカルリーパーの攻撃を掻い潜り、ついに射程範囲に本体を捉えた。
「プレイヤー、舐めんじゃねぇ!!」
銀光一閃。 神速と謳われた一撃が絶望的な空気諸共スカルリーパーを切り裂いた。初めてボスのHPバーが減少する。
だがしかし、巨体なボスエネミー。 加えて斬撃系統のダメージが通り難い骨系のモンスターが相手だ。
「浅いか……!」
大技の反動で動けないユーリめがけ大鎌が振り下ろされる。 壁役さえも一撃で屠る攻撃だ。 軽装備の彼に当たれば、絶命は免れない。
『GYAAAAAAAAA!」
「ちっ、あんま効いてないな。 シィ!」
「あいよ、まっかせてー!」
後方から響く明るい声とともに飛来した槍が振り下ろされる鎌の側面を叩き、狙いが僅かに逸らされる。 数十センチあけて着弾した鎌の切っ先を顔色ひとつ変えずに見送ると、スカルリーパーへと果敢に斬りかかる。
一撃目の攻撃は相棒の援護でいなした。 だが鎌は二本あった。 狙いを凍りついた一団へと向けないために果敢に切り込むユーリへと振り下ろされると、その真下に飛び込む影があった。 ヒースクリフだ。 巨大な盾は、衝撃音と火花を撒き散らしながら、鎌を迎撃する。
「ユーリ君、君は攻撃に専念したまえ。 鎌は私が防ごう」
片方の鎌を抑え込んだヒースクリフが視線だけを向けてそう言い放つ。 その後ろでは一足遅れたキリトとシィが攻撃に加わり、ようやく呪縛が解けた一団が雄叫びを上げ、武器を構えてスカルリーパーに向かって突撃する。
「ーーアスナ!」
「キリトくん! 一緒に! 」
キリトとアスナ。完璧にシンクロした二人の剣がスカルリーパーが二筋の光芒を描き、鎌へと命中。 敵の攻撃を弾き返した。 怯んだスカルリーパーに強烈な一撃を与えたユーリが背後に向かって叫ぶ。
「スイッチ!!」
「ハァァァァァァ!!」
後ろに下がるユーリと入れ替わるようにして、大鎌に持ち替えたシィが突撃する。 唸りをあげて振るわれる大鎌の軌跡が薔薇の紋様を空へと刻む。
「オニキスローズ!!」
漆黒の薔薇を意味するソードスキルがスカルリーパーの頭部に炸裂し、骨で構成された上体がふらついた。
刀身に刻まれた紅いラインが血を求めるかのように脈動する大鎌ハルペー。 ハルペーの特殊能力である異形特攻はスカルリーパーに対し、絶大な効果を発揮していた。
体勢を崩したところにさらに追撃を受け、スカルリーパーの巨体が横倒しに転倒した。
状態異常の一つ、転倒。 この巨体だ、数十秒は動けないだろう。
この好機を逃さないはずがなくアスナが細剣を指揮棒のように振るい、叫んだ。 それに一団は雄叫びを上げて答えた。
「畳み掛けて!」
「ォォォォォォォォォォ!!」
スカルリーパー何するものぞ。 起き上がれずもがく骨百足に色とりどりの光を纏った武器が叩きつけられ、ヒットポイントを削る。
「喰らいやがれっ!」
「ウォォォォォ! 仲間の仇い!」
ランスが骨を抉り、戦槌が砕く。
一歩間違えば全滅もあり得る綱渡りのような戦況で仲間の死すら力に変えたプレイヤーたちが徐々にボスを押し始める。
しかし、僅かな希望すら砕こう転倒状態から復帰したスカルリーパーが憤怒の咆哮を上げる。
「正面は私たちとA隊が抑えます! 残りはは左右に分かれて、脚を止めてください!」
敵の攻撃の隙間に血盟騎士団の副団長としての面影を見せるアスナが鋭い指示を飛ばす。
プレイヤー側の最高戦力と今までの中で最悪の敵。
命をとした 両者の死闘はひとりのプレイヤーによって予想だにしない結末を迎えることなる。
後書き
思いもよらない結末……いったいなにがおこるんだー(棒読み
このスカルリーパー戦とその後の展開は先輩方に粗方掘り尽くされてますがそれでも原作の大筋の流れに乗りつつ、新たな切り口を見つけられればなー、と思いつつ書いております。
しかしこんなシリアスな場面よりハロウィン書きたい(本音
脳味噌空っぽにして、『トリックオアトリート!』な短編でも書きたいのです!
……ちょうど犬耳尻尾が付いてるコスプレ紛いな主人公もいることですし
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