黄金の扇子
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第三章
「どうじゃ?わしとこれからデートでも」
「彼氏がいますので」
このことはきっぱりと断ったれいこだった。
「申し訳ありませんが」
「何じゃ、それは駄目なのか」
「はい」
「やれやれじゃ、しかし嫌ならな」
「無理強いはされませぬか」
「嫌だと言うおなごにそうする趣味はないわ」
この辺りは弁えていた。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「嫌ならいい、受験は頑張るのじゃぞ」
「わかりました、そのことは頑張ってきます」
「そういうことでな、また困ったらここに来るのじゃ」
男はれいこに愛嬌のある笑顔で告げて彼女を送った、こうしてれいこは黄金の海運の扇子を持ってだった。試験に出た範囲は全て受験直前に勉強した範囲だったという幸運もあり。
志望大学の推薦入試を受験して見事合格した、そうして合格してから友人達に笑顔で話した。
「いや、豊國神社にお参りしてね」
「それでなのね」
「私が言ったけれど」
「実際に合格祈願して」
「それでなの」
「合格出来たわ、それもこれもね」
合格出来たのでにこやかに言っていた。
「太閤さんのお陰よ」
「よかったわね」
「あそこにおられる太閤さんに適えてもらったのね」
「見事に」
「そうなの、行ってよかったわ」
友人達に笑顔のまま話す。
「お陰で合格出来たわ」
「あそこ本当に学業成就だったの」
「いえ、開運よ」
お参りを勧めた友人にはこう答えた。
「そちらよ」
「開運なの」
「そう、太閤さんは運がいい人だったから」
神社で男に言われたことをそのまま言った。
「それでね」
「運がよくなってなのね」
「合格出来たわ」
「ううん、本当に合格出来たのならね」
「よかったわ」
「そうよね、じゃあ私もね」
言った友人もだった、れいこの言葉に考える顔になって述べた。
「今度受験だけれど」
「お参りしてくるのね」
「そうしてくるわね」
「頑張ってね、ただね」
「ただ?」
「女好きのおじさんには気をつけてね」
男のこのことも言うのだった。
「そこはね」
「女好きって?」
「行けばわかるから、多分運がよかったら会えてね」
男が起きていればというのだ。
「それで開運グッズ授けてもらえるけれど」
「その人がなのね」
「女好きだからね」
「そのことには気をつけろっていうのね」
「そう、そしてね」
「開運ね」
「そうして合格してきてね」
こう友人に言うのだった、そして自分の席にかけてある鞄を見た。その中にある自分に合格出来るだけの運を授けてくれた黄金の扇子を。
黄金の扇子 完
2017・10・24
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