レーヴァティン
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第二十五話 最後の修行その五
「何でも遙か昔にこの島に姿を表し」
「そしてだな」
「その術の力を思う存分見せたそうです」
「それがその松本という奴か」
「はい」
その通りだという返事だった、譲二のそれは。
「式神も他の術も自由自在に使えたとか」
「大陰陽師か」
「将軍家をその方面で護り続けたとか」
都にあったが今はない彼等をというのだ。
「そう言われています」
「そうか」
「はい、そしてこれから会う方は」
「その大陰陽師と同じだけの使い手か」
「若しくは超えると」
そこまでというのだ。
「言われています」
「そうなのか」
「はい、そしてその方のおられる場所ですが」
譲二が案愛しているそこはというと。
「あと少しです、簡素ですが確かな造りの屋敷でして」
「屋敷にいるのか」
「橋の向こうの」
「橋、か」
そう聞いてだ、英雄はその目を鋭くさせて言った。
「その下に式神がいそうだな」
「そのお話はご存知ですか」
「安倍晴明の話だ」
「はい、彼は橋の下に使役する鬼を隠していました」
「前鬼、後鬼だったな」
英雄はその鬼の名前も言った。
「そうだったな」
「確か一条戻橋でした」
都にあった橋の一つだ、その安倍晴明の逸話で有名だ。
「その橋は」
「安倍晴明と同じくな」
「橋の下にですね」
「式神、いや鬼か」
英雄は自分の言葉をここで訂正した、式神と鬼では陰陽師が使役しても違うだろうと考えてのことだ。
「鬼が潜んでいるか」
「そうやも知れません」
「そうか、しかしな」
「鬼がいてもですね」
「進む」
その館までというのだ。
「そうする」
「そうされますね」
「そうしないとならないならな」
必ずとだ、英雄は決心も見せて話した。
「行くだけだ」
「それでは」
「鬼が襲って来てもな」
例えだ、その陰陽師がそうしてきてもというのだ。
「斬ってそうしてだ」
「前に進まれますか」
「手出しは無用だ」
正面、その屋敷の方を見つつだ。英雄は正に言った。
「一切な」
「いいのですか?」
「構わない」
これが英雄の返事だった。
「鬼でも式神でも。例え龍が出て来ても」
「倒しそうして」
「三人目のところに行く」
「そうですか、では」
「いいな、このまま行くぞ」
「では拙者も」
正もここで英雄に言ってきた。
「ここは英雄殿にお任せします」
「納得したか」
「はい、自信がおありですね」
「龍が出て来てもだ」
「龍を倒せぬ様では」
それも一人でだ。
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