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GS美神他、小ネタ集

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GS美神(ガソリンスタンド美神)

 
前書き
確か当時、管理人様からGSを捩って何か、とお題が出て書いたと記憶しています。 

 

 夜の峠道を何かが走り抜ける。ライトを照らし、漆黒の闇を切り裂いて、人型の物体が峠の下り道を狂ったように駆け下りる。
「はわっ、はわわ~~!」
 来栖川のマルチシリーズの最新鋭機が、エンジン付きのローラースケートを履いて、銃夢のモータボールみたいにコーナーリングをキメて、その横を旧型のセリオがタンデムドリフトで魅せる。
「「おおっ、アレが高橋兄弟のFDとFCだぜっ!」」
 HMXではなく、市販後の車台登録番号の先頭や、形式で呼ぶ峠マニア達。
「ふふっ、こんなのはただの客寄せのデモンストレーションだ、本当の走りとは違う」
 ミニ四駆の横っちに敗北した後、このレッツアンドゴーみたいな兄弟は、大人になっても自分を危険に晒さず何かを走らせ、今は金に物を言わせてメイドロボを改造して峠を走らせるゲームに夢中になっていた。
「アニキ、この峠にもロクな奴はいないな、週末の交流会も楽勝だ」
 その目にはヴァーチャルリアリティのモニターがあり、込み入った峠道でもサテライト通信で電波が届き、例え電波が途絶えたとしても、自立思考で行動を続けるメイドロボ。運転者には全く危険がなかった。
「侮るなよ、こんな無名の峠にこそ、伝説の男が隠れているもんだ」
「ありえねぇよ」
 そんな兄弟のメイドロボを、後ろから追う別のロボットがいた。
「すいませ~~ん、通してくださ~~い、配達なんです~~」
 鈍臭そうなマルチより、さらに鈍臭そうで、幸薄そうなメイドロボ、そう、ミソッカスである。
「何だアレ? リトラクタブル? そんなもん等の昔に禁止だろうが? 何年前のボロだ? でもあいつは後ろから来て、俺のマルチFDにに追いついた!?」
 どこかの文珠使いが、金の亡者の女房に三行半を突きつけられ、使えないバカ息子まで押し付けられて、女房は若い男とトンズラ。お情けで譲ってもらった厄珍堂の支店で細々と稼ぎ、違法な物品を免許も持っていない息子に配達させて自分は呑んだくれる、黄金のパターンが出来上がっていた。
「ミソッカス!? 俺は夢でも見てるのか? 峠で死んだミソッカスが俺の後を着いて来てるのか? 勘弁しろよ、俺が殺したんじゃないぞ」
「す~み~ま~せ~ん~、通~し~て~下~さ~い~」
 ドップラー効果の聞いた声が、弟の耳元を通過して、明らかに自殺スピードでカーブに突っ込んで行く。
「やっぱりここで死んだミソッカスか? あれじゃあ助からねえ、谷底に落ちてそのまま地獄行きだ。持ち主もレッカー呼ばずに捨てたんだな? 俺を連れて行こうとするなよ」
 そこでカーブに入ったミソッカスは、鉄が貼り付けてある手でガードレールの内側を掴み、火花を散らしながらカーブの向こうに消えて行った。
 ガンッ! ガンッ! ドカンッ!
「やっちまった、アレでも曲がれねえ」
 打撃音を聞いた弟は、曲がり切れなかったミソッカスが谷底に落ちたような音を聞いて震え上がって止まった。
「アニキも見ただろう? せめて警察でも呼んでやろうぜ、走りの仲間だ、亡骸だけでも回収してやろうぜ」
 最後のインパクトの場所を探し、ライトを当てて谷底を覗き込むマルチとセリオ。しかしガードレールには大きな凹みは無く、替わりに上と下に凹みを入れてプレスし、強度を上げている溝の塗装が剥がれて、中の亜鉛メッキが出ているのを見た。
「なんだ、コリャ?」
「そう、落ちてない、俺達の先行車はまだ走ってる、少なくとも俺のナビにはそう表示されている」
「そんなまさか? 一体どうやって?」
 兄の視線は、谷底からガードレールに移った。
「ガードレールキックターン、どこかのバイク乗りが始めて、子供のクリーミーマミ、森沢優が完成させた技だ」
「蹴って曲がった? そんなスピードじゃ無かったぞ?」
「ああ、まず最初はアウト側の脚を溝に乗せて曲がる、その切れ目に落ちる前にジャンプして、イン側の脚を次の板に乗せる、その次も跳んで次の板に、ストレートに戻ったら、地面に飛ぶんだ」
 兄は既にイッちゃった目をしながら解説し、ミソッカスが飛んだ軌跡を追って、ガードレールと路面の傷をセリオの指で指差した。
「地元スペシャル……」
 普通なら「天狗じゃ! 天狗の仕業じゃあ~~っ!」と叫び、腰を抜かす所で、ミソッカスを操っている何者かがやった、有り得ない運動性能を魅せられた兄は狂ったように笑い出した。
「ふっ、はははっ、はっはっはっはっ!」
「あ、あり得ねぇ、おい、どうしたんだよ、アニキ?」
「これだから公道は面白いっ! ははははははっ!」
 夜明け間近の峠で、兄の狂った笑い声が響いた。

 次回予告
「俺はおかしくなっったのか? 何で12馬力も有るチューンしたマルチFDが、5馬力も無いノーマルのミソッカスに追いつめられてるんだ? チクショウ、エアクリーナ詰まってんのかよ?」
 暗闇の中を、ネコミミリトラクタブルライトが左右に揺れながら、幽霊か悪鬼のように迫る。
「ストレートで追いつくわけがねえ、だったらコーナーで詰められてるのかよ、走り屋に取っちゃあ最大の恥だぜ」
「インのそのまたインのラインは、空中に有る」
「1万1千までキッチリ回せ」
 ド~ン、ミスイッツ。

続かない…
 
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