アタエルモノ
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第六話
前書き
どうも、『木曾』のほうと投稿日をかえて大成功だったなと手応えを感じている今日この頃。かなり効率いい気がする。
さてさて、俺たちがなんとか笑いのツボから脱出出来たとき、既に若干日が傾き始めていた。時計を見ると、短い針は四の文字を指していた。
「いやー、笑った笑った!今日からこいつのあだ名はダノブで決定だよ!」
俺たちのなかで、『ショッキングピンクの色の髪をした織田信長』は、『ダノブ』と言う奴になっていた。
「さてと、それじゃ俺は明日からは放課後にここに来れば良いんだな?」
俺は流石にそろそろ帰ろうと思っていた。まだまだ部屋の荷物が片付いていない。
「うん。出来たら朝に来ておはようのちゅーでもしてくれたら。」
「そこのぬいぐるみにでもしてもらえ。」
何やらふざけたことをぬかしていた。まぁ、気が向いたら朝にも来ますかね。
「あ、あとこれ。NINE(ナイン)の友達登録しとこ。」
NINEと言うのは、今スマホで使われているSNSだ。無料通話にトーク無料の大変便利なものだ。使ってない人など見たことないレベルで広まっている。
「おう。わりぃな。スマホ持ったばっかりで、使い方がイマイチ…………。」
そもそも家族の全員が携帯電話なんてものを持ったことが無かったのだ。そんなやつがいきなりスマホなんて、ゲーム〇ーイを最新機種だと思い込んでる奴にス〇ッチ持たせるようなものだ。
五世代位差がある。
「……はい、これで出来たよ。」
沙紀に教わりながら操作すること数十秒。友達登録が完了したらしい。
「それじゃ、なにかメッセージ送るね。」
沙紀は物は試しと言うような感じでスマホの画面をなぞっていた。俺はいまだに何回もタッチして文字を打つ。早くできるようになりたい。
ピコリン
俺のスマホが鳴った。
俺はNINEを開いて、送られてきたメッセージを確認する。
『クソが。』
「なんでだよ!なんで俺の初めてのNINEのメッセージが『クソが』なんだよ!」
おまけに初めての女子からのメッセージと言う記念でもあった。
見事に粉砕してくれたよ。
「へへへっ。ごめんごめん。」
と、笑いながら謝る沙紀。ちくしょう可愛いなぁおい。沙紀じゃなかったらドキッと来そうだ。
ただし、こいつは神谷 沙紀。神に限りなく近い人間だ。
感じるのは命の危険ぐらいのものだ。
「ったく…………じゃ、俺は部屋の片付けとか晩飯の買いだしとかあるから、そろそろ帰るわ。まだ足りないものもあるしな。」
俺はソファから立ち上がって、沙紀に言った。
「んじゃま、また明日な。」
すると沙紀は、目を輝かせて言った。
「…………うんっ!また明日!」
何となく、嬉しそうに見えた。
―自宅―
「ごちそうさま。」
俺はしき屋の牛丼(大盛)を食べ終えた。だいたい二年ぶり位の牛丼だった。目茶苦茶旨かった。
安野屋も捨てがたいが、俺はやはりしき屋だな、と思った。
「さてと、これから俺がするのは…………と。」
俺はまだまだ段ボールが沢山置かれている部屋の中を見渡した。取り合えず、ベッドと卓袱台は組み立てたから、いつでも使える。キッチンは備え付けであったから、心配ない。
「あー…………カーテン買い忘れたな。」
俺はカーテンのない窓を見ながらそう言った。外は暗くなっていた。
まぁ、明日にでも買いに行こう。
あとは…………特には思い付かないかな。
「さてと…………段ボールやらのゴミの片付けでもしますかね…………。あー、めんどくせぇ。」
俺は上着を脱いでハンガーにかける。本腰入れて片付けに掛かろうとした。
すると、その上着からなにか紙切れがポトッと落ちた。
「…………?なんだこれ。」
その紙には、メモ書きのようなものが書かれていた。
『この紙に書いた最初の一つがホントになる。』
「…………沙紀だな。」
恐らく、今日のお礼みたいなものだろう。なんだかんだで振り回してしまったという自覚はあったらしい。
「しかし、書いたことがホントになるねぇ…………。」
お金は正直困らない。むしろ余るくらい。
彼女もいい。自分で見極める。
才能…………も、それを試すためにここに来たから、願うのは野暮だろう。
となると、大それた事を頼むのは無しだな。
「……………………あー、そーゆーことね。」
恐らく、最後の方の会話を聞いてこれを入れたんだろう。
かなり気のきく奴じゃないか。
「こりゃ、明日昼めしでも奢るかな…………。」
俺は、『この部屋が一般的な一人暮らしをするのに必要なものが揃い、綺麗に片付けられている状態になる』と書いた。
―夜十二時―
草木も眠る時とはよく言われるが、草木は寝ないだろと昔は思ったっけ、とか言うどーでもいいことを考えながら、俺はベッドの上に寝転んでいた。
今日…………もうすぐ昨日だが、今日は本当に色々あった。
家族全員で入学式に遅刻したり。
いいクラスに入れたり。
いい奴っぽいやつと話したり。
女の子と昼めし食ったり。
部活動見学したり。
わけわからない事になったり。
家に帰ったらドタバタして親父とお袋が帰ったり。
沙紀が乗り込んできたり。
『能力』を与えられて、右目の視力を奪われたり。
………………後半が明らかに非日常だなおい。
俺は天井の木目を見ながらため息をついた。幸せが逃げようが知ったことではない。
神谷 沙紀。
今の俺の頭の中はアイツの顔で一杯になっていた。
本来なら、初めての一人暮らし。親が居ない中で、これからちゃんと生活できるのか心配になったりするものだが、アイツとのこれからの生活の方がよっぽど心配だった。
なにが起こるか分からない。比喩ではなく、マジで。
性格…………は、色々ぶっ飛んでる所があるけれども、友人として付き合うには面白いだろう。
容姿容貌…………は、正直好みのドストライク。性格とオプションがなければ完璧だったろう。
そう、オプション。
『能力』という名のオプション。
アイツに関する心配はそこに尽きる。
いや、考えてもみろよ。
例えば、『言霊』。
あれで、『八重樫 真広は死んだ』とかいったら、俺の人生終了だ。
なんなら、『この世界は滅びる』なんて言った、本当にゲームオーバーだ。
例えば『極』。
人類最高の身体能力と言うことは、それを利用すればオリンピックにも出放題、なんならワールドレコードすら更新可能だ。
もしかしたら、他にもかなりえぐいのがあるのかもしれない。
そう考えると、これから俺はどうすれば良いのかに悩む。
取り合えず、沙紀の機嫌を損ねないように……………………。
『……………………(ボロボロ)。』
そのとき、なぜか沙紀の泣き顔が頭に浮かんだ。
あれ、なんであのときアイツは泣いたんだ?
確か、俺がなにかをアイツに言って、それでだ。
えっと、確か……………………。
『…………いや、意外と神谷って可愛い顔してんだなって思っただけ。』
あ。
俺は思わずベッドから飛び起きた。
…………成る程な。
俺は恐らくは正解であろう解答にたどり着いた。
つまり、アイツは……………………。
普通に生きたいんだ。
『能力』なんてもののせいで、マトモに相手にされなかった。
だから、相手が欲しかった。
だから、話が合いそうな奴を探した。
それが俺だった。
たった、それだけの事だ。
アイツは、友達が欲しいんだ。
気の使う必要のない、『友達』が。
「………………………………いい迷惑だ。」
俺はそう呟いて、ベッドに寝た。明日も早い、早く寝よう。
俺は掛け布団を掛けて。目を瞑った。
そのときの俺は、笑顔で眠りについた。
後書き
読んでくれてありがとうございます。正直、NINEを閃いたときは天才かと思ってしまった。基本的に回りには天災と思われてるんですけどね。
それでは、また次回。
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