アタエルモノ
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第五話
前書き
どうも。まさかここのサイトの更新を忘れてるとはおもってませんでした。てへ。
―学校 沙紀の教室―
「はい、お疲れ様。といっても、ほとんど疲れてないだろうけどね。ありがとね。」
俺と沙紀は学校部室棟の三階のちょうど真ん中。沙紀の能力で隔離された教室に帰ってきた。
あれから俺は冷蔵庫、二段ベッド、電子レンジ等の家具家電をリヤカーに乗せて運び込んだ。ホームセンターの店員さんたちは驚いてた。驚くっつーか驚愕の域に達してたけども。
町中では俺が沙紀に頼んで、『透明人間』を『ボクの空間』で作った空間に使って俺達が周りから見えないようにして………………まぁ、要するにバレないように運び込んだ。
沙紀の言う通り、全く疲れていない。まだ右目は見えないけども。
「…………説明。求めていいか?なんなんだよこれ。」
俺はソファに座って、手をグーパーしながら沙紀に聞いた。
「えっと、能力『極』。使用者の身体能力を『人類の限界まで』引き上げる事ができるんだよ。」
「……………………。」
今までは殆ど信じたくは無かったのだが、自分で体感すると反論の余地があるはずがない。
「んで、ボクが他人に『能力』を渡す時には、『ウバウモノ』っていうので、『対象のなにかを奪って』からじゃないとムリなんだよ。だから、右目の視力を貰ったわけ。」
「もう好きなようにしてくれ。」
俺は諦めたようにソファに倒れこんだ。
認めるしかない。コイツは、本物の『異常者』だ。
常識の完全に外にいやがる。
「………………取り合えず、右目の視力返せ。『極』はもう用済みだろ?」
「あー、うん。そうだね。」
と言うと、沙紀は寝転んでる俺の前に座ると、俺の手を取った。
「『極』。」
「『右目』。」
すると、俺の右目の視界が一気に開けた。眩しいくらいだ。
沙紀は俺の手を離すと、対面のソファに座った。俺もきちんと座り直す。
「……………………意味わからん。」
俺は率直な感想を言った。ここまで起きたこと全てが意味わからない。
変な教室。
痛々しい美少女。
瞬間移動。
自宅突入。
視力奪われる。
驚異的な身体能力を手に入れる。
透明化。
俺が覚えているだけで、今日一日でこれだけの事が起きた。
…………こんなの、一体俺にどうやって回避しろと言うんだよ。
正直、聞きたいことは山ほどある。どれから聞いたらいいのか悩む位だ。
「…………なんでこんなことができるようになったんだ?」
悩んだあげく、俺はそう言った。
なぜ、沙紀がこんな異常な『能力』を手にいれたのか。そこが一番気になった。
「えっと、二年前位に、突然。」
参考の『さ』の字にすらならないような答えだった。まぁ、それを知ったところでどうだという話でもあったわけだが。
「…………お前はなにがしたいんだ?」
次に俺はそう聞いた。
ここまでの意味不明な行動の内の一つでも分かればコイツとのつきあい方も自ずと決まってくるのだが…………。
「さぁ?あえて言うなら楽しくなりたいかな?」
ある意味当たり前の答えだった。
「……………………俺をどうしたいんだ。」
なぜ俺をこんなところに連れてきたのか。なぜ俺なのか。ある意味、俺にとっては一番重要かもしれないな。
「うーん、一目惚れ?」
ニヤニヤしてる時点で信用度ゼロだ。
「強いて言うなら、君なら楽しさを共有してもいいかなと思ったんだよ。わぁ、恋する乙女みたいなこと言っちゃった。」
取り合えず腹立つ奴だ。
まぁ、要するに俺は完全に成り行きで巻き込まれたのか…………。運がねぇなぁ。
「さてと、まだIHを設置して無かったっけ。」
自分の運のなさを嘆いていた俺を放っておいて、沙紀はソファから立ち上がると、備え付けであった流し台の側に立つ。
「『言霊』。」
「『ここには、流し台が有るけど、そこに今日ボクが見た二番目のIH付きキッチンが完全に取り付けられた状態で存在している。』」
沙紀がそう言うと、流し台があったところにIHキッチンが現れた。ポケ〇ンのような飛び出す感じてはなく、手品のようにポンッとそこに現れた。
元からそこにあったかのように。
「うん、完璧。やっぱりボクって天才だね♪」
天才ではなく天災ではないのか。
しかし、これが『言霊』か。
「強すぎるだろ…………!」
恐らく、自分が言ったことが本当になるんだろう。恐らく、何でも。
下手したらこいつのしたい通りに世界を変えることすら出来るってことだ。
世界平和でも世界制服でも。
気になって俺は沙紀に聞いてみた。
「それってさ、どんなことまで出来るんだ?」
「んー、何でもかな。『言霊』は基本的に全世界に影響を与えれて、使うところを見てない人には、『当たり前のこと』として受け入れなれるからね。っておまけ付き。例えば…………。」
そう言うと、沙紀は窓の外を見た。
「『この世界のアニメみたいに色んな髪の色や眼の色の人がいる』とか言ったら、アニメの世界だよ。」
沙紀がそう言い終わると、沙紀の髪の色が白色になった。
「うわっ!?」
急な出来事に驚いて声を出してしまう俺。よく見たら、眼の色も赤色に変わっていた。
白髪赤眼って持ってるなこいつ。
「…………あ、ボク今、髪の色変わってる?」
どうやら自分の髪の色が変わってるのに気づいてないらしい。つーか、もしかして『言霊』を使っちゃったことに気づいてないらしいな。
「おう。真っ白な髪に赤い眼だぜ。神様みたいな容姿だ。正直、似合いすぎててクラクラ来ちゃうぜ。」
俺はからかうように言った。沙紀の性格を探るように。
「え、と、え?あ、うん。そう………………………………そう?」
「……………………おう。」
沙紀は顔をちょっと赤くして言葉に詰まりながら確認してきた。
なんだよこの可愛い生物は。
ホントにクラクラ来ちゃうだろ。
照れちまうじゃねぇかよ。
「しかし、そうなると……………………他の奴もか…………?」
俺は沙紀の隣に立って、窓の外を見た。
「おおぅ……………………。」
グラウンドに、色とりどりの頭があった。赤白黄色、青紫金に銀。
バーゲンセールだ。
「これはまた…………目が痛くなりそうだね。」
沙紀はそう呟いた。
……………………まてよ?
「じゃあさ…………歴史上の人物の絵ってどうなるんだ?」
「え?えっと、『言霊』は、『過去にそれに当てはまる状態になる場合は、書き変わる』筈だから…………。」
沙紀は本棚に移動し、歴史の教科書を取り出す。まだ一回も使われていないらしい。
「えっと……………………『この歴史の教科書は織田信長の絵が描いてあるページが開かれている』。」
沙紀がそう言うと、教科書は開かれた状態で机の上に置かれていた。
俺と沙紀はそれを取って、開かれたページを除きこんだ。
ピンクの髪の織田信長がいた。
「くっ………………くっ、くふぅ………………。」
「ぷっ………………ふふっ………………。」
お互いに堪えていたが、限界だった。
「かっはっはっはっは!なんだよ、何で作品によっては、『魔王』とまで言われるような奴の髪の色がピンクなんだよ!」
「はははははははははははっ!しかもショッキングピンクだからね!全く似合ってねー!」
皆さん、まず頭に織田信長の写真を思い浮かべてください。恐らく、ダノブが胡座をかいてるはずです。
その絵の、ダノブにある髪。ほとんど無い髪。それを、ショッキングピンクに塗り替えてください。
そして、眼の色を暗めの緑色に。
それが、俺らが見たダノブだ。酷いもんだろ?
俺達はそのまま、二十分位は笑い転げていた。
後書き
読んでくれてありがとうございます。これからは毎週月曜投稿にしようと思っています。どうぞよろしく。
それでは、また次回。
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