ナニイロセカイ
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嫉妬の世界
「アリスちゃんってばー!!」
「お~い、聞こえてますか~?」
「あははは」
今日もいつもと変わらずダイヤのキングと日替わり時間替わりでやっているの? ところどころメンバーがチェンジした子分を連れてわたしを付け回します。
―うざい。そして五月蠅いです。
わたしは逃げるように自分の教室に入り、彼らが入って来られないように引き戸を閉めました。
ふぅ。これで一安心と胸をなでおろしたにもつかの間でした。だってこの教室はわたしにとって安堵の出来る場所ではないのだから_。
「アリスちゃん好きだぁぁぁあああ!!」
―はい?
教室に入ってすぐ今度は外ではなく中からの攻撃。犯人は野球部エースの
<坊主>
その名前の通り坊主頭の男の子です。背はわたしと同じくらい。野球部なのにそんなに高くない。
わたしは自分よりも背が高い人が好きです。小学校の頃サッカー部に虐められた経験から、サッカー部の人とPUMA(プーマ)が嫌いです。サッカー部のユニフォームで使われていたから。そして坊主頭はヤクザを連想させるので嫌いです。
―だからごめんなさい。
即答でお断りしました。なのにクラスの人たちからは「ヒューヒュー」と祝福したいのか、からかいたいのか分からない声があがります。
一番最初に駆け寄って来たじゅっちゃんなんて「おめでとう」なんて言ってきました。
いえ。わたしはお断りしたんですよ? 聞いていました。それにどう考えてもこんな堂々とするという事はふざけているだけしょ?
本気じゃない告白に付き合うことは無いです。あなたたちのお遊びに付き合うのはもうごめんです。
―その日 わたしはちゃんと丁寧にお断りした、はずなのに
「アリスちゃん好きだぁぁぁあああ!!」
―次の日も
「アリスちゃん好きだぁぁぁあああ!!」
―その次の日もずっと 毎日 毎時間 彼は愛の告白をします。
もういいでしょ! 鬱陶しい以外の何にでもないですよっ。
クラスの外ではダイヤのキングたちに追いかけまわされて、教室の中では坊主に告白されてクラス全体がからかう。
外も中も地獄。もうこの中学校には何処にもわたしの居場所がなくなってしまいました。
―あ。いや。まだあそこがあった。
「こんにちは~アリスさん」
……あなたもそう呼ぶの。
わたしが逃げて来たのはやっぱりあの旧校舎 空き教室。先にいたチェシャ猫がわたしを小バカにするように笑っている。少しムカついたけど、それはわたしの話を聞いてもらう事で水に流してあげることにしました。
―こんなにも誰かに会えて嬉しくって、愚痴を言いたくなったのは初めての体験でした。
「ふ~ん。それは大変でしたね~」
空返事。ちゃんと話を聞いてくれていたのか分からない返事。でもそれでも良かった。わたしはとにかく誰でもいいから、愚痴を零したかっただけだから。
最後まで言い終わると、チェシャ猫はわたしの目を見つめる。真っ直ぐ見つめられると少し恥ずかしい…かも。
「知ってます~?」
何を? という代わりに首を傾げる。
「あなたのクラスにいる
<ぶりっこ>
~さんって、坊主さんに告白してふられたそうですよ~ご愁傷様ですよね~」
あははっと人の不幸を面白そうに笑うチェシャ猫。人の不幸は蜜の味ってやつなのかな?
わたしには分からないや。人の不幸を見たり聞いたりしたら、自分まで辛く苦しくなって息が出来なくなるから、出来るだけ聞かないようにしいるの。わたしまで深淵に引きづり込まれてしまうから。
キーンコーンカーンコーン。
また休み時間が終わったことを告げるチャイムが鳴った。
―帰らなきゃあの地獄へ
「お気を付けて~」
別れ際、チェシャ猫が言ったこの一言「お気を付けて」とはどうゆう意味だろう? 何をどう気を付けろって言うの?
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