ゼロの使い魔王さま!
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第一話 魔王召喚
「アンタ誰?」
ほのかな風が頬を撫でる感覚を覚える中、少年に向けて少女はそう告げた。
見た限りでは美少女である。黒いマントの下に、白いブラウス、グレーのプリーツスカートを身につけた身体を屈め、こちらを見据えている。
その顔からは呆れたような、それでいて困惑している様が見受けられた。
桃色のウェーブがかった長い髪が印象的な少女は、鳶色のクリクリとした瞳を奇怪そうに細め少年の返事を待っている。しかし、当の本人は自分の置かれた状況が理解出来ていないのか、辺りをキョロキョロと不思議そうに見回していた。
少女に比べれば平凡な容姿をしている少年だ。
短い黒髪に、高くも低くもない平均的な身長。体格は鍛えているのかやや筋肉質で、身に纏っている黒を基調とした軍服が彼を只者ではないと瞬時に理解させた。
しかし、目立つところがあるとするならその程度。その他に印象的なところなど存在せず、身につけた軍服を脱いで群衆に紛れれば一瞬で見失ってしまうほどには平凡な少年だ。
そんな彼は眠たげに目を細め辺りを見回していたが、視界の中に少女を入れると
「――ここ、何処よ?」
まるで、現在の状況が理解できないかのように呟いた。
**********
魔王サタン。その名前を知らない者は、フレイティアには存在しなかった。
人々の天敵とされる魔族を率い人間界とされる世界フレイティアへと侵攻。世界を我がものとしようと企む最悪の存在である。
人間達を遥かに凌駕した魔力と超人的な身体能力。その二つを有した魔族による侵攻で、人間界は壊滅的ダメージを受けた。
フレイティアのあちこちで人類と魔族による戦争が勃発。戦火による被害で農村はもちろん、自然や動物たちの多くが死に絶えた。
強い者が生き残る。弱肉強食の世界が現実となっていたのだ。
膨大な魔力を持つ魔族の長、魔王サタンの人間界侵攻が開始されて早半年。たったそれだけの期間で人類の約半数が死に絶え、人類は魔族への脅威に怯える日々を過ごすことを強要されていた。
このまま行けば人類は絶滅。魔族による世界征服も実現するだろう。
魔王サタンはそう確信めいたものを感じ取っていたのだが、それはあるたった一つのイレギュラーによってひっくり返されることになった。
その者は突如として現れた。自身を人類の希望”勇者”であると名乗り、世界各地で人間を殲滅するために動いていた部下達を次々に討伐していったのである。
更に厄介なことに、彼の者が現れ魔族を討伐している情報が人間達の間で広がったのだろう。勇者の活躍を皮切りに世界各地で戦意を喪失していた人間達が再び反旗を翻し始めたのだ。
サタンとて馬鹿ではない。世界各地に散らばっていた部下達を招集。勇者なる存在の討伐を命令し送り出したのだが、返って来た報告は勇者の”討伐”ではなく魔王軍の”全滅”だった。
しかも最悪なことにそのことが人間達の士気を上げることに繋がってしまった。
勇者が現れて約二年。ついに勇者は三人の仲間と共に大陸の最南端に位置する魔王城へと攻め込んできたのだった。
世界を制しかけた魔族の長たる魔王サタン。そして、彼を討伐せんと攻め込んできた勇者の力はほぼ互角。だが、二人の力が互角でも勇者側には三人もの仲間がいる。
幹部も、そして仲間達も次々と敗れているなか一人で彼の者達を相手した魔王サタンに勝機など当然あるはずも無い。
凄まじい戦いの後を残すかのように魔王城のありとあらゆるところに空いた大穴。そこから差し込む淡い月光が勇者の聖剣を怪しく輝かせた時、勇者の突き出した一撃が魔王の胸を貫いた。
瞬間胸に込み上げてきたのは今までに経験したことのない凄まじい痛みと、身体全体を焼くような暑さだった。
悲鳴を上げるよりも先に血液が口へと逆流。吐血したせいで何一つとして言葉を発することは出来ない。
ただ出来るのは、部下達を討伐しあまつさえ魔王たる自分を打ち倒した勇者たる存在を視界に収めるだけである。
そして、皮肉なことに彼がその生の中で目にした物はソレで終わりだ。
遠のく意識の中、参加を逃れた同族の安否を気遣いながら意識を手放し、気付けばこの場だったのだ。
正直、何かの冗談としか思えない。
「どういうことだ? 俺は、死んだんじゃないのか?」
確実なる死が自分の命を奪った。そこまでの記憶は残っている。しかし、それ以上の記憶がまるでない。
辺りを見回してみても視界に入るのは青空の下、微風のふく絶景とも言える光景。見慣れた石畳に敷き詰められた魔王城の謁見の間とはまるでかけ離れたものだ。
さらに言えば、身体についた傷がある程度回復している気がする。
完全には回復してはいないが、目が当てられないほどでは無いくらいには治っている。
この状況にまるで理解が追い付かない。
サタンは額を抑えて嘆息するが
「ちょっと、アンタッ! さっきから私を無視するなんてどういうことよッ!」
金切り声にも近い声を上げて癇癪を起す目の前の少女に、サタンは意識をそちらに戻すことを強要される。
「さっきから心ここにあらずみたいな状態で何をボーっとしてんのよ? 良いから私の質問に答えなさいよ!」
「質問……? 何が?」
「だから、アンタは一体何なのかって聞いてるじゃないッ!」
「何なのかって、そんなもの俺の姿を見れば一目瞭然だろ……」
少女の質問にさも当たり前のように答えたサタン。だが、その際ふと視界に入った自分の手を見て顔を驚愕に染め上げた。
見慣れた自分の腕ではない。見たところ、人間のソレに近いものだろうか。
目の前で腰に手を添えて前かがみにこちらを睨む少女と同い年くらいの少年の手にしか見えない。
「何だよコレ……? 俺は、人間に……?」
「さっきから何を言ってるのよ? アンタは最初から人間じゃない」
「いや、俺は魔族だ。――魔族のはずなのに、なんでこんなことに……」
死後の世界にしては冗談が過ぎる。
今まで人間を殺すために強くなってきたというのに、その人間に姿を変えられるとは。
まさか、目の前の少女が自分をこのような姿に変えたのだろうか。
昔、部下一人の悪ふざけで人間に姿を変えられたことがあるが、あれと同じ事が起きているのなら辻褄は合う。
この娘、有能なのだろうかと考え始めていたそんな時、
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民をだしてどうするの?」
声からして少女だろうか。
彼女の声が辺りに響き渡ると同時に、サタンの顔を覗き込む少女以外の全員が笑った。
「ちょ、ちょっと間違っただけよっ!」
「間違いって、ルイズはいつもそうじゃん」
「流石はゼロのルイズだ!」
誰かがそういうと、人垣がどっと爆笑する。
どうやら、サタンの顔を覗き込んでいた目の前の少女はルイズと言う名前らしい。
彼女は顔を真っ赤に染め上げ今にも暴れ出してしまいそうな顔で自分を笑う少年少女たちを睨みつけているが、サタンには彼女が浮かべる嫌悪感が彼女自身にも向けられているようにも感じられた。
あのように他者からけなされているということは、それほど有能な人物ではないということなのだろう。
そして、そのことを他ならぬ彼女自身も嫌悪している。なんとも哀れな姿だ。
「アンタたち……」
涙を大きな瞳ににじませながら人垣を睨みつけるルイズ。
すでに我慢の限界にまで怒りが達しつつあるというのに、それを解放して彼らに突っ込んでいかないのは何かしらの理由があるのだろう。
しかし、サタンからすればそんなことはどうでも良いことだ。たかが人間風情の他愛の無い喧嘩のようなもの。
彼女が彼らに怒りをぶつけようがぶつけまいが、関係のないことである。
だが——
「貴様ら、さっきから聞いていれば何が可笑しいんだ? この娘が何をしたって言うんだ」
「「――ッ!?」」
不愉快極まりない。サタンが先程から笑う少年少女たちに浮かべた感情はそれだけだった。
目の前のルイズと呼ばれた少女を笑うその姿勢も癇に障るものではあったが、何より彼らの彼女を見据える視線が気に入らなかったのである。
「おい。お前が俺をここに”呼んだ”わけだな?」
「――は、はい……」
先程までの癇癪を起しかけていた態度は何処へやら。しおらしく答えるルイズにサタンは頷くと、つい先程まで人垣に向けていた視線に更なる殺気を籠めると
「俺をこの場に出したコイツを侮辱したということは、この俺も共に馬鹿にしているということでいいんだな?」
「――ッ!?」
「貴様ら、全員ここで死ぬか?」
それは脅し文句ではなく、実行の前触れであった。
サタンは怒りに満ちた視線を人垣に向け片手を伸ばす。すると、手のひらに赤い魔法陣が展開され、それと同じものが少年少女たちの足元にも出現した。
確実にマズい。それを本能的に感じたのだろう。
彼らは絶句し放心していたが、すぐさま意識を回復させると悲鳴を上げ、その場から瞬く間に散らばっていく。
だが——
「たかが人間ごときが、魔王である俺を侮辱した罪は重い。俺がそんな大罪人を生かすと思うか?」
彼らを囲うように展開された別の魔法陣。それが退路を断ったことで袋のネズミ状態となったのだ。
「――死ねよ」
サタンが放ったのは、無情にもその一言だけだった。
瞬間魔法陣内で派手な爆発音が鳴り響き、辺りを黒煙と煙臭さで包んでいく。爆音からして爆発の威力は凄まじく、誰一人として生還を許さないタイプの破壊力だと瞬時に理解出来るものだ。
その事実に真横に立っていたルイズは放心していたが
「あ、アンタ……なんてことして……」
食って掛かるようにしてサタンへと詰め寄り、彼の胸倉を掴み上げた。
その瞳には先程の破壊力を目にして恐怖すらも浮かんではいるが、それ以上に許せない何かがあるのだろう。まるで、自分を笑っていた少年少女たちを見据える以上に恨みがかった何かを感じる視線だ。
そんな非難の視線を浴びながらサタンは彼女を見据えると
「――何だ? お前、さっきまで自分を馬鹿にしていた奴らを庇うのか? 案外お人好しなんだな」
「それが何よッ! 人が大勢死んだのよッ! 普通にいられるわけがないでしょッ!」
「勘違いするなって。少しばかり、脅してやっただけだ」
そう口にするなり、サタンはルイズの背後、彼らの倒れていた場所を指さす。
彼女が振り返るとそこには多少の爆炎を浴びたのだろう。黒い煤で身体を汚した先程の少年達の姿が目に入った。
身体中を真っ黒に染め上げて倒れてはいるが、命に別状は無いのだろう。
静かに呼吸を繰り返すさまも確認できる。
「みんな、生きてるの……?」
「死なない程度に手加減は加えたからな。あんな子共殺しても何の得にもならないし。それに——あっちには優秀な奴がいたようだしな」
笑みを浮かべながらサタンが向けた視線の先には、身体を他の生徒たち同様に真っ黒に染め上げながらも手にした杖を支えに立っている頭の爽やかな男だった。
眼鏡をかけた物腰の柔らかそうな印象を受ける男のようだが、サタンを見据える視線は随分と冷たく、それでいて生気の感じる強い意志を感じられた。
だが、そんな強気が続いたのはほんの数舜だ。
糸の切れた人形のように彼も他の生徒達同様に地面に倒れ伏してしまった。
「ふっ。手加減したとは言っても、アレを受けて立っていられるとはな。面白い奴だ」
サタンは興味有り気に口にしたが、左手を掲げ再び魔法陣を展開。
途端に彼らの頭上に現れた青い魔法陣から降り注ぐ光の粒子。それらが彼や他の子供達の身体に吸い込まれるようにして消え去ると、彼等の身体にあった汚れや擦り傷が消えていった。
「な、何をしたのよ?」
「手加減したとしても傷は酷かったしな。一応、治してやってるまでだ」
一瞬とは言え彼らに対し殺意を覚えたのは事実だ。
しかし、一時の感情に流されてとんでもないことをしでかすほど、サタンは子供ではない。故に命を取るような真似はせず、脅すことを目的とした魔法を使用したのだ。
サタンは満足したように笑うことを止めると、胸倉に添えられたルイズの手を優しく掴み服を離すとその場に片膝をついた。
「――えっ!?」
「ルイズと言ったか? お前のおかげで俺は命を救われたようだ。礼を言っておく。だが、俺はいつまでもこの場に留まっているわけにはいかないんでな。俺の為に血を流している部下を見捨てるわけにもいかないし、俺だけおめおめと生きながらえるわけにもいかないんだ」
「ちょ、アンタ何を言ってるのよ!?」
まるで状況が理解できないとばかりに、今度はルイズが表情を困惑色に染め上げる。
先程までの荒れた雰囲気から一転して紳士的な態度に面食らっているのもそうだが、何よりサタンの口にしていることがまるで分からないのだろう。
「俺はこれから魔王城に戻らないといけないんだ」
「――アンタ、本当に何を言ってるの?」
「このお礼はこの世界フレイティアを手中に収めてから返そう」
「だから、何を言ってんのよッ!」
すぐにでも背中に魔族特有の翼を生やし飛び立とうとしていたサタン。
そんな彼を制止させたのは、咄嗟に自分の手を硬く握ってきたルイズの手だった。
柔らかくそれでいて小さなその手に握られた感触は心地の良いものだが、誘惑に負けていては魔王として色々とマズい。
サタンは名残惜しさも感じながら彼女の手を離そうとするも、肝心の彼女自身に手を離す意思が見られない。
「おい、ルイズ。放してくれないか?」
「いやよ! アンタ、何処に行くつもりなのかは知らないけど、使い魔の勝手をみすみす見逃すつもりは無いんだから!」
「――使い魔?」
「そうよ。アンタは私が召喚した使い魔なんだから。主人の許可なく消えるなんて許さないわ!」
無い胸を張りそう告げるルイズに対し、サタンの思考は停止する。
その代りに頭の中を支配したのは、現在自分がいるこの場所がフレイティアではない他の場所なのではないかと言う仮定だった。
確かにこの場所にやって来てからおかしいと思う個所はあった。
目の前のルイズといい、遠くで倒れている子供達といい。魔族と言う単語を耳にしてもまるで恐怖を示さなかったことである。
この場所がフレイティア圏内であったなら、彼女らは魔族と言う単語を耳にした時点で逃げるか殺しにかかってくるかの対応を見せるはずだ。
それが無かったとするなら、魔族の侵攻を受けていないよっぽどのド田舎か、魔族を知らない”世界”にやって来たかの二つに絞られるだろう。
「つまり、俺は別の世界に迷い込んだってのか?」
全身から力が抜けるのを感じ、サタンはその場に崩れ落ちるように膝をついた。
今までの自分が消え去ったかのような気分だ。いや、事実自分は消えてしまったのだろう。
部下もいなければ魔族も存在しない世界。
唯一同じものがあるとするなら今のところは魔法ぐらいだろうか。
しかし、それもフレイティアに存在していたものと異なるものであるのは間違いない。
魔族を束ねる最強の存在から一転し、天涯孤独の身の上に置かれたサタンはしばらくの間茫然としていたが
「ふっ。――くくく、あはっはっはっはッ!」
「な、何よ!?」
「なるほど、異世界か。確かに魔族もいなければ部下もいない退屈そうな場所だが、悪くはない」
顔を上げて高笑いを決め込むサタン。
茫然と自分の置かれた状況にただただ絶望しているのでは魔王は務まらない。故にサタンは開き直ることで自らを奮い立たせ、現実を受け入れることにしたのだった。
そんなサタンを憐れむような、それでいて呆れたように見据えていたルイズ。しかし、一つため息を吐くと身を屈めて彼との距離を詰める。
「――っておい。人がせっかく自分を慰めてるのにお前は何をしようとしてんの?」
「うっさいわね。まだ契約が終わってないのよ」
ルイズは苛立ちの籠ったような声で短く答えるだけで詳細を口にしようとはしない。
その代りに彼女のその小さくも整った口から奏でられるのは、澄んだ鈴のような心地の良い音色で奏でられる詠唱のようなものだった。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ!」
フレイティアに存在する魔法の全てを熟知しているサタンにも分からない詠唱。
何を発動しようとしているのかさえも分からないままうろたえていたサタンだが、突如としてルイズの手が両頬に添えられた。
そして、細身の少女とは思えないほどの力で引き寄せられ、その唇をルイズに奪われてしまった。
「んぐっ!?」
先程から理解の追いつかない現象が多発しすぎて頭がパンクしそうだ。
サタンは唇に感じた柔らかな感触を味わうことなくルイズの肩を掴み、強引に彼女を剥がしにかかった。
「お、女の子がそう簡単に唇を許しちゃいけませんってお母さんに教わらなかったのかよッ!?」
「こ、コレはそういう意味のキスでは無くて、契約の為の物なのッ! だから、セーフよ。そう、セーフなんだからっ!」
自分に言い聞かせるようにも感じられる言葉を並べるルイズにサタンはさらに困惑する。
何せ、知らない詠唱を耳にしたばかりか、今まで一度として許したことのなかった口づけを、何処の誰とも知れない目の前の美少女に奪われたのだ。
正直言って、不細工な面の女に奪われるよりは幾分もマシだが、『契約』だのなんだのと口にしている時点で警戒するに値するのは確かだ。
——やっぱり、強引にでもこの場から逃げた方が良いか?
そんなことを脳内で考えながらルイズから距離を取ろうとしたサタンだったが
「――ッ!? こ、コレは……ッ!? うぐぁぁぁぁぁあああ~~ッ!」
突然左腕を中心とした激痛が身体を襲う。
まるで、灼熱の炎に飛び込んだかのような熱さと、皮膚を焼かれるような激痛に悲鳴を上げるサタン。
これほどまでの激痛を味わったのは、初めてドラゴンを一人で討伐した時以来だろうか。あの時も身体に奴の歯型が残るくらいの痛みを覚えたが、あの時以上に辛い気もする。
そんなことを考えながら地面に倒れ痛みから逃れるように悶絶するサタン。
しばらくすると痛みは治まったが、それと同時に身体を襲ったのは強い眠気と疲労感だった。
おそらくは勇者との戦いで癒えたと思っていた傷が今の衝撃で開いたのだろう。
「ルイズ……お前、俺の身体に何をした……!」
「契約をしただけよ。『あなたは私の物』って証拠を身体に刻み付けたようなものかしら」
「刻み付けるにしても、痛みを伴いすぎると思うぞ……!?」
息を整えながらそう返す。
身体に疲労が溜まり、今にも倒れそうだが必死にそれを抑え込んで笑みを見せる。だが、それがやせ我慢であるのは間違いない。
サタンを見据えるルイズの表情がそれを物語っている。
「とにかく、話を聞かせてもら……おう……か」
しかし、いくら魔王として魔族の王に君臨していたサタンでも、疲労困憊した状態で追い打ちをかけるような痛みを受ければ限界も訪れる。
ルイズに事の詳細を聞こうとするも、それを全て発することは出来ずサタンはその場に倒れ伏してしまった。
「――な、なんなの、私の使い魔は……」
意識が途切れる直前。ルイズの困惑に満ちた声を聞き入れたのは、気のせいでは無かっただろう。
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