【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。
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0184話『利根の退屈しのぎと筑摩の熱騒ぎ』
前書き
更新します。
私と大淀がいつも通りに執務室で事務作業をしている時だった。
「提督に大淀よ。お主等、少し働き過ぎではないか?」
「利根さん、いきなりどうしましたか?」
利根が執務室にゆらりと入ってきてそんな事を言いだすので大淀がつい返事をしていた。
珍しいな。普段は筑摩と大抵は一緒なのにな。
なにか私に用があるのだろうかと思うけど、
「どうしたんだ、利根? なにか用があったから来たんだろう?」
「いや、今日はただの退屈しのぎじゃ。だからたまには提督の事を手伝ってやろうかと思ってな」
そう言ってニンマリと笑みを浮かべる利根。
その顔はどこか幼子のようで背の低さもあいまって精神年齢を低く見せてくれる。
「むっ? なにやら失礼な事を考えられたような気がしたぞ……?」
「それはきっと気のせいだ。でも、そうだな……大淀、今何か余っている仕事はあるか?」
「そうですね。週明けの任務は昨日でほとんど済ませてしまいましたからデイリーの任務ばかりですけどね。秋刀魚漁ももう大体は終了しまして後は町の漁師さんの呼びかけで護衛任務に出るくらいかと……」
「そうか……」
だとすると少し悩むな。
今はこれと言って忙しいという訳でもないしまだ限定作戦までは日程はかなり空いているしな。
「なんじゃなんじゃ! 何もないのか!?」
利根はそれでどこか拗ねてしまっている。駄々っ子か。
私と大淀はそれで利根の扱いに困っているところで大淀が「閃きました」とばかりに手を叩いて、
「でしたら提督。もう後は私が残りの作業をやっておきますので利根さんと遊んできても構いませんよ?」
「しかし……いいのか?」
「はい。これくらいなら私一人で大丈夫です」
「そこまで言い切られてしまうと任せないといけないな。わかった、後は頼んだ」
「了解です」
それなので大淀に後の事は任せて、
「それじゃ利根。これからどこかに行くか?」
「うむ! 提督も息抜きが大事じゃぞ! いざ参ろうか!」
それで利根は機嫌が治ったのか私の前をズンズンと歩いていく。
退屈しのぎ、ね……。
まぁ、それくらい付き合ってやろうか。
たまには筑摩の苦労でも味わってみるとしよう。
「またなにか良からぬことを考えておるな……?」
「だから気のせいだ」
「そうかのう……? 吾輩の直感は当たるのじゃがの。まぁよい。それでどこに行こうかの提督よ」
「そうだな……」
私はそれで少し考えた後にある場所を提案する。
その場所とは装備保管室である。
「提督よ……少しほこり臭い場所に来たのにはなにか理由があるのか……?」
「いや、ただの気まぐれだ。だけど利根なら普段から使っている瑞雲とかの区別はつくんじゃないか?」
「当然じゃ! 吾輩のカタパルトにかかればどの瑞雲も綺麗に飛ぶのじゃ!」
利根は自慢げに自分がいつも装備している瑞雲系統の装備を私に紹介して自慢してくる。
その姿はまるで子供の工作を作った紹介みたいで微笑ましい。
だけどそれで利根の眉毛がまたピクリと動いたので私は考えることを止めた。
「気のせいか……。今日はよく吾輩のセンサーが反応するな」
「誰かが利根の噂でもしているんじゃないか?」
「そうかのう……? まぁ吾輩の感覚では悪口とは無縁のものだと思うから大丈夫じゃ!」
「そうだな。うちの子達はみんな仲良しだもんな。そういえば聞こうと思っていたんだけど今日は筑摩は一緒じゃないのか……?」
「筑摩のう……今はちょっと体調を崩してしまって部屋で休んでおるのじゃ」
「それはまた珍しいな……」
「そうじゃろう……? それで吾輩ではどうしようもできずに提督の所に来たのじゃ」
「なるほど……それじゃ今から筑摩のお見舞いでもいくとするか? 酒保でなにか栄養の付くものを買っていってさ」
「おー! それは名案じゃな! ではさっそくいくとするかの酒保へ!」
そして私と利根はそのまま酒保で少し買い物を済ませた後に筑摩の部屋に向かった。
利根が筑摩の部屋の扉を叩いているのだけど、
「ちくまー? いるなら返事をするのじゃー! お見舞いの品を提督と買ってきてやったぞー?」
利根がそう中にいるであろう筑摩に話しかけるのだけど反応はなかった。
もしかして結構やばい状態だったり……?
それなので、
「利根、私が変わろう。筑摩、入らせてもらうぞ?」
筑摩の了解を得ないで私はドアを開けた。
するとそこには筑摩が少し息を荒くして倒れていた……。
「筑摩ー!? なぜ布団の中に入っておらんのじゃ!?」
「あ……利根姉さんに提督……。いけません、私としたことが……」
筑摩はそれでなにかを取ろうと手を彷徨わせているのだけど私がその手を握ってやり、
「無理をするな……筑摩はもう休んでいなさい。後は私と利根がなんとかしておくから」
「すみません、提督……」
私は筑摩を担いで布団に横にさせて毛布をかけてやった。
まだ筑摩の息は荒いままだから熱でも出しているんだな。
「ててて、提督よ! どうすればよいのじゃ!?」
おそらく普段は筑摩に頼りきりだからこういう時に対処ができないんだろうな。まぁしかたがないな。
「利根はおけに水を入れてきてくれ。あと布タオルを用意してくれ」
「了解じゃ!」
それですぐさま利根は用意を開始している間に私は筑摩の額に手を乗せる。
思った通り熱いな……。
「あ……提督の手、冷たいです……」
「今はこれで我慢してくれな」
「はい……」
それと利根が準備のために部屋を出て行ったので私はちょうどいいので筑摩に聞いてみる事にした。
「筑摩、お前は普段から利根を甘えさせ過ぎじゃないのか……? こういう事態であたふたしていたらダメだと思うぞ」
「あはは……すみません。でも大切な姉さんですから構いたいんです」
「そっか……。それじゃたまには筑摩も私にも甘えてもいいんだぞ? なにかと筑摩も疲労が溜まっていた証拠なんだから発散するのもありだと思うんだ」
「でも……」
「でも、じゃない。何度も言うけど筑摩にも甘えは必要だ。だから無理してそうだったら私から筑摩を構いに行くぞ?」
「提督もたまには強引なんですね……」
「たまにはは余計だよ……まぁそれくらい言い返せれば大丈夫か。少し休んだら栄養のつくものを買って来てあるからそれを食べて早く元気になる事。いいね?」
「わかりました……」
そして筑摩は安心したのか私の手を冷やし代わりにしながらも眠りについた。
そこに利根が準備を終えたのか部屋に戻ってきた。
「提督よ! 準備できたぞ!」
「ちょっと静かに……今やっと筑摩が眠りについたところだ」
「そ、そうか……」
私は利根の持ってきた水とタオルで一回絞って筑摩の額に乗せてやった。
「しばらく安静にしていればなんとかなるだろう。それでも治らなかったら明石に相談に行くんだな」
「わかったのじゃ。しかし、筑摩の奴安心し切った顔をしとるの。よほど提督のおかげでリラックスできたと見る。姉としては少し悔しいのう……」
「利根もたまには逆に筑摩を甘えさせてやれ。筑摩は利根の事を第一に考えて少し自分の事を蔑ろにしている傾向があるから」
「わかったのじゃ。吾輩も少し頑張ってみるかのう!」
「その意気だ」
その後は少しして後は利根に任せて私は暇も潰せたので執務室へと戻ろうとしたんだけど、
《筑摩さん。本当に安心していましたね》
「そうだな榛名」
《やっぱり提督の身は皆さんに必ず必要ですから提督も無茶をしてはいけませんからね?》
「わかっているよ」
それで私と榛名はそれから色々と会話をしながら戻っていくのであった。
筑摩が治っている事を祈って……。
後書き
前半は利根パート、後半は筑摩パートでした。
なにげにイベント以外では初めて出した感じですかね?
まだ出し切れていない子達がいますから出してあげないとですね。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
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