ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士
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第34話 =74層攻略=
「…やぁっ!!」
一気に骨人間のHPを削りポリゴンとさせる。
「おぉ、リクヤが珍しくクリティカル出した」
「いや、確かに珍しいけども」
大剣はほかの武器に比べ攻撃はトップクラス、範囲も広くさらに防御も出来るという優れた武器だがもちろん弱点は存在する。
1つはスピードの無さ、重い剣を持つためにそれにあわせ筋力値を上げなければならなくなり敏捷にまわす分が通常と比べ不足している。そのせいで敵に先制されゲームオーバーになってしまう例も少なく無いらしい。俺はユニークスキルのおかげでそれを少しは補えているとは思うが。
もう1つはほかの武器に比べクリティカル率が相当低いことだ。確率で言えば1%切るって言ってもいいすぎでは無いと思う。なので最後の一撃で削りきれずそのままやられるということも多いらしい。全部アルゴやキリトからの話だけど。
「…ていうかあいつ等息合いすぎだろ」
「うん…いいなぁ、あんなに互いのとこ思えるなんて」
「それに比べ、リクヤはね…」
「気づいてるんでしょうかね…?」
最近、アクセサリで聞き耳スキルを上げられるやつをつけたからだけど、正直今後悔したな…ため息まで聞こえてくるよ…そして哀れな目で見られてる気がするけど気のせいだろう。
それにしても…気づいてるのか、ね。
「俺にもわかんねぇよ…自分のことが」
俺のその発言は誰にも聞こえないほど小さく、俺自身にも何故つぶやいたのか分からなかった。ピナと俺の中にいるソラは偶然なのか同じシステム同士だからなのか暖かい目で俺を見てきた(ソラの場合は感じただけど)気がする。
その後は、モンスター、といっても骨人間ばっかだけどそいつが出てきても一番効果のある打撃武器を持っているサチを中心にボコスカとやっつけてほぼダメージを負わず安全地帯まで来る事ができた。
「やっとつきましたぁ」
続けてピナも俺たちの回復―あんまりダメージ負ってないので回復もしてないはずだけど―のせいか同じく疲れたように小さく「キュルぅ…」と鳴く。安全地帯にある石柱背もたれに体を預けながら俺も同意する。ただいまの時間はすでにお昼ごはん食べごろな時間をとっくにすぎている時間だった。
「…で、今日昼飯って…」
朝、めちゃくちゃな量…多分10前くらいは作ったのだがそれは全部5人全員で平らげるというとんでもないことをしたためそれは残ってないし多分あっても戦ってる最中に耐久値なくなってなくなっているだろう。だから俺は作ってきてないけど、どうするんだろうなって思っていたら…
「私、作ってきたよ」
意外にしっかりしているサチが作ってきてくれていた。そのサチの作ってくれた弁当をもらいにいこうと俺が立った瞬間、
「うわああああ!!」
「きゃああああ!!」
という絶叫とともに白い服と黒い服のペアが安全地帯まで全速力で駆けてきた。あまりの突然なことに俺たちは一瞬ポカーンとなったがいち早く回復したらしいユカとシリカが口を開く。
「な、な、な、何よ!?」
「ど、どうしたんですか!?」
俺は危うく受け取った弁当をそのまま地面に落としそうだったがなんとかセーフ、サチは本当に驚いているのかまだピクリせず、固まっていた。まぁトップギルドの副団長とソロトップレベルプレイヤーが走ってきたら誰でも驚くよな…
サチを軽く叩き意識を取り戻させてから俺たちはキリトとアスナに事情を聞いた。すると、ボスを見てあまりの迫力だったために驚いて逃げてきた、らしい。
「体は人型だけど顔はヤギ…うん、確かに怖い…」
「…で、武装とかどうだったんだ?」
一瞬体をビクリと震わせ恐怖を明らかに感じているサチにシリカが近づき何かするのかと思ったら一緒におびえていた。ホラー系の得意なユカはそれほどでもなかったが。それを横目で見てボス戦前の重要事項である武装について質問する。
「大剣が1本…だけどそれだけじゃないと思うわ…」
「特殊攻撃ってわけなの?たとえば…」
「「俺(リクヤ)みたいに大剣2本使う、とかか?」」
どうやらそういう手のことを考えるのはキリトと共通点があるらしく見事にハモる。全員がゴクリと唾を飲み込むがそんなものがプレイヤーの大きさの何倍もあるヤツに使われたら怖くてたまらない。
「そうなると、前衛に強固な人…ヒースクリフさんとかリクヤとかが必要になってくるわね」
「…俺、前衛決定すか…」
「それともうすこし盾装備のヤツが欲しいな…まあ当面は少しずつちょっかい出して……な、なんすか?」
キリトが「盾」という単語を出した瞬間、アスナの目が意味ありげな視線でキリトの方を向いた。
「君、何か隠してるでしょ」
「…いきなり何を?」
キリトの隠していることは俺にはわからない、というかこの場で誰1人知っているものはいないだろう。なので俺も興味がある。よって今はアスナの味方だ。凛々の勇気サイドはドキドキといった効果音が似合うだろう。
「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾持てることじゃない。でも、キリト君が盾持ってるとこみたことない。わたしの場合は細剣のスピードが落ちるからだし、スタイル優先で持たないって人もいるけど、君の場合はどっちでもないよね。……あやしいなぁ」
「私、キリトのステータス画面と一緒に装備も見たことあったけど盾なんて一個もなかったよね、あのときから」
「ボス戦でも攻撃受けてるのは全部片手剣1本でしたしね」
「まだまだあるわよ。確か…」
どんどん4人に問い詰められるキリトを見て不覚にも同じようなことを聞かれた俺を重ねてしまい、なんだか可哀想になってきた。
キリトも完璧に図星らしくしゃべろうかしゃべらまいか悩んでいるのが顔にものすごく出ている。さすがに本格的に追いつめられて可哀想になってきたので助け舟を出そうと口を開く。
「で、どうなのキ「スキル詮索はマナー違反です」…アンタが言うのね…」
「その言い方はなんか傷つくな…でも俺みたいな変なスキル持ってるやつもいるんだし…」
「…リクヤ君が言うなら…」
お、諦めてくれたようだ。サチたちは正直その場のノリらしくアスナが諦めたら動揺に諦めていった。キリトの悩んだ時間を返せって一瞬叫びたくなったが心の中にとどめておこう。
「さて、遅くなっちゃったけどお昼にしましょうか」
「て、手作りですか?」
無言で、アスナはメニューウィンドウを操作して手に付けていた白い手袋をはずし、代わりとばかりに手の中に小さめのバスケットを取り出した。それを見たユカが…
「愛妻弁当?アスナもやるわね」
「お姉ちゃん!?」
まるでニヤリとした笑みを浮かべそんなことを口にする。中から昼ごはんを出そうとしたアスナは急なことに驚き一瞬で顔を紅くしあたふたしていた。ユカとしてはからかいよりもほめ言葉に近いんだろうな。…そのとなりじゃキリトも顔真っ赤だったけど。
「…俺たちも食べるか」
「ですね」
そういい、サチの作ってきたサンドイッチを1口かじる。前にリズの店で食べたあの味がまた口の中に広がり自然に笑みがこぼれてしまう。ちなみに、俺はレシピを教えられたもののまだこの味を完成させてはいない。近いものも出来たけど何かこう…うん、何かが足りないがためにいまは試行錯誤中だ。
昼飯の最中、マヨネーズやら醤油やらの解説をキリトにしているアスナに「気合はいってる」とサチがからかったり、キリトが指を舐めるという変態行為を行うなど楽しい時間がすぎていたが下層方面から聞こえる鎧のガシャガシャという音に全員が身構える。だが入ってきたのはあくどいプレイヤー集団ではなく普通に見知った顔、そしてSAO開始時からのキリトとの共通の親友だった。
「キリトじゃねぇか!それにリクヤたちも」
「まだ生きてたか、クライン」
「おっす、73層以来だな」
「相変わらず暑苦しいわね」
「やっほ、クライン」
「クラインさんお久しぶりです」
キリトとユカのダブルの毒にはさまれたので俺も毒ついときゃよかったかな…と思っているとアスナの姿を確認したのか奇妙なバンダナの下の目をまるくしていた。キリトの紹介も耳に入っていなさそうでまったく反応はない。
しかしキリトが「ラグってんのか」と言う声とともにひじで脇をつつくとスイッチが入ったようにものすごい勢いでお辞儀をする。
「こっ、こんにちは!!くくクラインというものです24歳独身「アンタは何変なこと言ってるのよ!!」ブハァ!」
少々シスコン気味…いや完璧なシスコンのユカの絶妙な力加減のパンチを受け後ろへ倒れるクライン。だが倒れる自分等のリーダーを無視し我先にと自己紹介を始まる風林火山一同。それをキリト、ユカがアスナには近寄らせないと押さえ込む。俺はそれをみて大爆笑するしかなかった。サチもシリカも口を押さえて笑いを我慢している。
「ま、まぁ悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともか…痛ってぇ!!」
ユカにやられたのをキリトにぶつけたのかナイスタイミングでキリトの足を踏むクライン。その光景を見ていたアスナは体をクの字に曲げ面白そうにクスクス笑い始める。ちなみに俺はすでに大爆笑だその光景を見たクラインは俺とキリトの腕をつかみ冗談交じりの殺気をこめた声で「どういうことだ」と聞いてくる。
「…中心はキリトだぜ」
「なっ、お前!」
本当のことだろう、と思いながら俺はクラインの手から抜け再び第3者へ戻る。キリトとクラインの口げんかがどんどん大きくなっていくことに再び笑いそうになるがアスナが助け舟を出すのか前進した。
「こんにちは。しばらくこの人とパーティ組むので、よろしく」
この時点でクラインたち風林火山に落胆、憤怒の感情が入れ替わりに表れて大事になりそうな気がする。さすがにやばいので両者の間に入り止めようとするがこういうときに限って引かないんだよな、クラインは。
「…あれ、今日だけじゃないの?」
「お姉ちゃんが言ったんじゃない…」
と姉妹はこそこそと話しているが。
「リクヤ、キリト。もう少しでほかの集団がくるみたい」
「…『軍』か?」
サチが索敵スキルで『軍』らしき集団を確認したらしくその集団はこちらへ向かってくるらしい。キリトとアスナもここに来る途中で例の集団を見たらしくより『軍』の可能性は高くなった。
「みなさん、『軍』です!!」
風林火山よりも大きく鎧の音を響かせ、さらにそろった足音で安全地帯に入ってくる集団にシリカの報告で全員でその方向を向く。
そこにはシリカの言ったとおり軍特有の武具を装備した十数名が真ん中らへんで座っており、リーダーらしき人が俺たちの目の前まで来た。
「私は、アインクラッド解放軍所属、コ―バッツ中佐だ」
あれ?確か軍ってのは皆がつけたあだ名じゃなかったか?いつの間に正式に軍になったんだろう…と思っているとまず「キリト、ソロだ」とキリトがいい、「シリカです。凛々の自由のリーダーです」とシリカが物怖じせず目の前の屈強な男に言い「クライン、風林火山だ」とクラインが締めくくった。中佐さんは軽く頷くとこちらに質問をしてきた。
「君たちはこの先も攻略しているのか?」
「あぁ。ボス部屋前まではマッピングしてある」
「うむ。ならばそのマッピングデータを提供してもらいたい」
突然、おかしなことを言ってきた。
「あなた、馬鹿なんじゃないの?」
「提供しろだと!?てめェ、マッピングする苦労が解って言ってんのか!!」
この2人の言い分は恐らくここにいる10人近くの心境を代弁した物だった。だがしかし、向こうはまだ続けてくる。
「我々は、君ら一般プレイヤーのために戦っている!諸君が協力するのは当然の義務である!!」
本当に勝手な言い分だ。軍には『はじまりの街』に残っているプレイヤーを守ってくれている、という事実があるためそれは俺は感謝している。おかげで後ろのことを気にせず、より早い攻略が俺たちにも出来るから…だけどそれを踏まえても言いすぎだろ。
そもそも25層以来ボス戦どころかマッピングにすら協力してない連中にどうこう言われたくない。
「もし…嫌だっていったら?」
「諸君にはお帰り願おう。足手まといはごめんなのでな」
サチの一言にもずいぶんと上から目線だな…足手まといはどっちだっての。だが、キリトは手を出し俺たちを制止、ウィンドウを開きマッピングデータを送信していた。
「キリト、渡さなくてもいいと思うよ」
「いいんだ、サチ。どうせ街に戻ったら公開しようと思っていたデータだ、構わないさ」
「おいおい、そりゃあ人が好すぎるぜキリト」
確かにキリトは情報等、他のプレイヤーに役に立つことは出来るだけ公開しているのを知っている。モンスターの狩場とか効率のいいクエストとかいろいろだ。おかげで俺たちだけではなKoB、聖竜連合も助かっている面は少なからずある。なのでその延長線上で、なのかためらう様子もなく送信をし、受け取らせる。受け取った向こう側はそれを確認すると仲間、いや部下らしい後ろにいる全員に叫び無理やり立たせキリトの警告も耳を貸さず奥へ進んでいってしまった。
「……大丈夫なのかよあの連中……」
「…多分、ですけど…さすがにいきなりボス戦には行かないと思いますけど…」
「でも、自分の名誉しか考えてなさそうなあの中佐さんだったらいきなりやりかねないな」
「……一応様子だけでも見に行くか…?」
あの性格みたいなキャラはゲーム内では大体死んだって記憶がまだ残っている。やられ方は主人公たちに倒されるという残念な結果ばっかだったけど…そのせいで嫌な予感のした俺、そして風林火山やアスナ、凛々の自由のみんなはキリトの提案に頷くしかなく、安全地帯を抜け『軍』を追いかけていった。
「あー、そのぉ、アスナさん。ええっとですな…」
この中では恐らく一番スピードの遅い俺が前にいると邪魔にならないので後ろへ行こうとするとまた性懲りもなくクラインがアスナに話しかけていた。だが、次の言葉はクラインを止めようと進んだ足を止めた。
「口下手で、無愛想で、戦闘マニアのバカタレですが…アイツの、キリトのこと、宜しく頼んます。」
そういい、クラインはアスナに頭を下げる。アスナもそれに返事としてにっこりと笑顔を見せ「任されました」と承諾する。そして2人はキリトたちを追い、前を歩き始めた。ここだけ見てるとクラインはキリトのことをよくわかっているいい兄貴ぶんだ。そう思ってしまいヤツの背中がかっこよく見えたのは気のせいだと信じたかった。
後書き
涙「本当にクラインはかっこいいと思うんだ」
リ「実際に一緒にいるとうるさいぜ?」
涙「へぇ…」
リ「今回はあの軍の時か」
涙「コーバッツは普通にむかついた、以上!」
リ「はぁ!?…以上って言うなら終わりなんだろうけど…感想とか待ってます」
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