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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百十八話 闇の襲来 


仕事前に何とか出来ました。

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第百十八話 闇の襲来 

帝国暦483年8月5日 午前9時

■オーディン ノイエ・サンスーシ 皇太子宮殿

「クロプシュトック、いよいよだな」
「はっ、殿下」
「お前も30年近く待ったのだ、嘸や辛かったであろう」

「臥薪嘗胆を続けて参りましたが、殿下のお陰を持ちまして我ら一門万感の思いでございます」
「父が謀略の限りを尽くし、リヒャルト伯父、クレメンス叔父を殺害した報いを今日受けるのだ」
「少々早うございますが、おめでとうございます」

「して、手はずは整ったか?」
「はっ、リッテンハイムの荘園の競馬場にレイスを、我が領地からはヨハンが艦隊を率いてオーディンを奇襲致します。宮殿は殿下と臣で向かいます」

「それはよいが、レイスだけで大丈夫か?」
「流石にリッテンハイムの荘園でございますれば、貴族以外の者が入るのは難しゅうございます」
「うむ。それでは失敗するやもしれんではないか?」

「仮に失敗しても、皇女殿下がリッテンハイムの荘園で暗殺されかかるのです、殿下が皇帝陛下にお成り遊ばされれば、その事を問い詰め、リッテンハイムなど如何様にも処分できまする」
「なるほど確かにそうだ」

「その上、かような場所へ向かった皇女殿下も例え生き残っても叱責なさり、何処ぞの貴族へでも降嫁させれば良き事」
「確かにそうだな、ならばヨハンに降嫁させるか、クロプシュトック家はルドルフ大帝以来の忠臣の家系だからな」

「過分なご沙汰恐悦至極に存じます」
「ハハハ、あの娘が生きていたらの話だがな」
「まっこと」

「ヨハンだが、艦隊でオーディンに奇襲と言っても、宇宙艦隊が、おるがどうするのだ?」

「それも、ご心配なく、皇帝の愚劣な綱紀粛正で艦隊の練度が落ちております。その為に昨日から殆どの艦隊がレンテンベルク要塞での演習のために出立致しました。帝都に残るのは僅か2個艦隊と整備中の艦隊のみで、しかも、オーディン上空には6000隻程しか遊弋しておりません、殆どの艦はオーディン軍事宇宙港に停泊中でございませれば、衛星軌道上からの攻撃で沈黙させまする」

「うむ、6000隻でも多いのではないか?」
「殿下ご心配なく、臣が30年間に渡り艦隊を整備して参りました、その為に1万隻の艦隊を用意しております。更に大圏航路を取らせましたので、発見されずにオーディン至近まで来ております」

「おお、それならば安心だ」
「御意」
「宮殿だが儂と卿で大丈夫で有ろうな?謁見の間は尚書と武官が必ず居るのだが、
それらを排除できるのか?」

「それもご心配なきように尚書はリヒテンラーデ、武官はクラーゼンですが、リヒテンラーデは老いぼれ、クラーゼンは見かけ倒しにございますれば」
「その様なモノか」
「御意」

「さて、そろそろ皇帝の元へ参ろうではないか」
「御意」
そう言う皇太子を見るクロプシュトック侯の顔が歪むのを目撃した者は居ない。




帝国暦483年8月5日 午前9時

■ヴァルハラ星系内 演習場 ローエングラム星系警備隊旗艦ヴァナヘイム

精力的なケスラーの尽力でヴァルハラ星系の警戒はメルカッツ大将率いるローエングラム星系警備隊が1万隻の艦艇を持ってヴァルハラ星系内の演習宙域で待機していた。ヴァナヘイムは新たにメルカッツ提督に専用旗艦として下賜され、今回がメルカッツ艦隊旗艦としての初任務であった。

「諸君、我々の目的は、ヴァルハラ星系の治安を守る事にある。諸君の努力を期待する」
メルカッツの言葉に艦隊の乗組員達気合いを入れる。 

「閣下、この地点からオーディン上空までは1ワープで到着可能です」
「ほう、星系内でワープを使えるのか?」
「本日は、宇宙艦隊も殆どが出払っております」

「なるほど、それならば安心だ」
「はい」


帝国暦483年8月5日 午前9時

■オーディン上空 シュワルツ・ランツェンレイター分艦隊旗艦シュワルツ・ティーゲル 

オーディンの宇宙空間を真っ黒な艦隊と灰色の艦隊が遊弋している。
宇宙艦隊司令長官から、オーディンの守備を命じられた、ビッテンフェルト准将のシュワルツ・ランツェンレイター分艦隊3000隻とミッターマイヤー准将のウォルフ・デア・シュトルム分艦隊3000隻である。

「うむ。暇だ」
「閣下、暇なのは良い事ではありませんか」
「そうは言うがなオイゲン、こうなんて言うか、ケツがムズムズするって言うか」

「閣下」
「そうだ、暇ついでにミッターマイヤーにでも連絡してみるか」
「通信主任、ミッターマイヤー艦隊に繋げ」

通信が繋がりミッターマイヤーがスクリーンに現れた。
『なんのようだ?ビッテンフェルト』
「用という事じゃ無いんだが」

『なんだ?』
「いやな、凄い暇でな」
『それで、俺を呼んだのか。卿らしいと言うか何というか』
スクリーンに映るミッターマイヤーはあきれ顔である。

「それで、どうも先ほどから胸騒ぎがしてな、ケツがムズムズしやがるんだ」
『お前それは虫でもいるんじゃないか?』
「馬鹿言うな、俺の感は当たるんだ!イゼルローンでもそうやって生き延びてきた」

その言葉に考え出すミッターマイヤー。
『確かに、卿の感は当たったな。判った此方としても注意しておこう』
「頼んだぞ」


帝国暦483年8月5日 午前9時30分

■オーディン上空 ウォルフ・デア・シュトルム分艦隊旗艦イェータランド

「確かに、卿の感は当たったな。判った此方としても注意しておこう」
『頼んだぞ』

通信が切れた後ミッターマイヤーがテキパキと指示を出しはじめる。
「ドロイセン、警戒を怠らないようにしろ」
「はっ」

「アムスドルフ、メルカッツ提督に連絡【我、虫の知らせ有り留意成されたし】と」
「宜しいのですか?未確定な事ですが」
「メルカッツ提督ならば、判ってくれるさ」


帝国暦483年8月5日 午前9時40分

■オーディン リッテンハイム侯爵荘園競馬場

ヘルクスハイマー伯爵家とシャフハウゼン子爵家決闘はリッテンハイム侯爵の用意した特設会場で行われようとしていた。今回の決闘の会場と成ったリッテンハイム侯爵所有荘園の競馬場には老若男女の貴族が多数詰めかけ、今や遅しと決闘が始まるのを待ち構えていた。

リッテンハイム侯夫妻はヘルクスハイマー伯爵と共にガラス張りの貴賓席に座り話していた。
「今日は良い場所をお貸し頂きまして」
「なのこれしき。何時でも用立ようほどに」

「所で今日は御令嬢は」
「下賤者の汚れた血が流れる所など見せる訳にはゆかんよ」
「未来の女帝陛下にはですかな」

ヘルクスハイマーの言葉にリッテンハイムは笑い出した。
「ふふふふ、はははははは」

その様な話をしている中、シャフハウゼン子爵家の一行、シャフハウゼン子爵、子爵夫人、ヴェストパーレ男爵夫人は、一般席の一番前の相撲であれば砂被りの位置で観覧させれれている。

「何よ何で向こうは特等席で、此方は一般の観客と同じ席なのよ!
決闘は対等に行われるのがルールでしょう」
男爵夫人がぶーたれている最中、となりに来て声をかけてきた人物が居た。

「全くよね、フェアーじゃ無いったらありゃしないわ」
その言葉に、男爵夫人はハッとする。
「殿下」

「シー、今日は忍びよ」
間違いなくテレーゼ殿下であるが。その姿は普段と違い銀髪ストレートのウイッグを付け、藤色の帽子で藤色の上着に白いスカートを履きその姿を完全に隠して居た。その横に、誰が見ても判る長身でがっちりしたオフレッサー大将が珍しいドレスアップをして座ってきた。更にオフレッサーの娘ズザンナもドレスアップして座ってくる。

「男爵夫人。こちらの方は?」
シャフハウゼン子爵がどなたかと尋ねてくるので男爵夫人は耳打ちする。
「皇女殿下であらされます」

シャフハウゼン子爵夫妻は、その言葉を聞き驚愕の表情をする。
「でで殿下・・」
その言葉を男爵夫人が止める。

「お忍びですから、騒がないよう」
それを聞き子爵夫妻は頷いた。
「しかし。又何故此方へ?」

「お姐様、敬語は不要ですよ。今はイリヤスファール・フォン・アインツベルンですから」
そう言いながら、テレーゼはウインクをする。
そう言われれば、流石は姐さんである、気持ちを切り替えて話し始める。

「観覧を何故?」
「まあ、シェーンヴァルトに銃を教えたのが家のルッツでね、その成果を見に来たかったんだよね」
「そうだったんですか。けど良くお母様やお父様がお許しになりましたね」

「あー、母様は誤魔化したんだよね。父様はオフレッサーと一緒ならOKだって」
男爵夫人が額に手を添えながら、困った子だと言う顔をした。
「イリヤスファール、余り無茶をしないようにして下さいね」

「判ったわお姉ちゃん。それとイリヤで良いからね」
「判りましたわ、イリヤ」
「ハハハ、男爵夫人もタジタジですな」

バーサーカーもといオフレッサーの言葉に男爵夫人はプイッという顔をした。
そんな父を見ながら、ズザンナが自己紹介をした。
「はじめまして、オフレッサーの娘ズザンナ・フォン・オフレッサーです。よろしくお願いします」

あの戦闘狂が嘘のような、爽やかな笑顔で男爵夫人と子爵夫妻に挨拶を行う、どれだけ猫の毛皮を纏っているのか知れないが。

「マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレよ宜しくね」
「アルヴェルト・フォン・シャフハウゼンです」
「ドロテーア・フォン・シャフハウゼンです、よろしくお願いします」

「まあまあ、そろそろ、始まるようだよ」
テレーゼの言葉に皆が決闘場所を見始める。

ラインハルトと黒マントの登場に観客席から歓声が上がる。
テレーゼは黒マントを見た瞬間、何で黒マントが居るんだと考えて居た。
変だという違和感をヒシヒシと感じていた。

お互いの武器の調べを行い、いよいよ決闘が開始される。
キルヒアイスが確りと相手の銃の確認を行い、ラインハルトを安心させていた、それにより信頼感が増したのである。

『両者位置着いて』のかけ声と共にラインハルトと黒マントが背中合わせになりかけ声と共にお互いが反対方向へ歩き始める。固唾を呑む関係者と観客達。

所が10数える前に、8の時点で黒マントが身を戻し、ラインハルトではなく、観客席のテレーゼに対して銃弾を二発放ったのである!


帝国暦483年8月5日 午前10時01分

■オーディン リッテンハイム侯爵荘園競馬場  テレーゼ・フォン・ゴールデンバウム

黒マントが現れたとき嫌な予感がしましたが、まさかこんな事に成るとは、10を待たずに振り返った黒マントが銃口を私にむけて来たのです。鈍く光る銃口の輝きが目に写り、その直後に炎が迸ったのです。
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ご指摘いただいた誤字修正しました。
 
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