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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百十七話 漆黒の陰謀


第百十七話 漆黒の陰謀

帝国暦483年7月25日

■オーディン ノイエ・サンスーシ 

「そうか、あの者が決闘とは」
「陛下、リッテンハイム侯もヘルクスハイマー伯も懲りない御仁ですな」
「ははは、国務尚書、あれらは、中々治らんじゃろうて」

「誠に恐れ多き事なれど」
「それでアンネローゼが心配しておったわ」
「もしや陛下がお止めになるのですか?」

「それも考えたが、丁度良い事にテレーゼが決闘も見に行きたいと申してな」
「陛下いけませぬぞ、皇女殿下をその様な野蛮な所へお行かせ為さるのは」
「シュザンナにも駄目だと言われたそうじゃ」

「では、お止めに成られるのでございますので」
「いや、オフレッサーを護衛に付けて行きたいと言ったのでな、許したわ」
「陛下、余りに危険でございますぞ」

「何の、護衛はオフレッサー以外にも居るし、所詮は見せ物じゃ」
「しかし、皇女殿下がお忍びとはいえ、下賤な決闘に行かれるのは、危険でございますぞ」
「ははは、大丈夫じゃ、何でもコスプレとか言う感じで、変装していくらしいからの」

「変装と言っても、今は先頃の綱紀粛正で不平不満の貴族もおりましょう。殿下に万が一のことがあったら如何致します」
「大丈夫じゃ、オフレッサーならば、一個師団が来てもテレーゼを守ってくれよう」

結局はリヒテンラーデ侯の心配を余所にテレーゼがお忍びで決闘見学に行く事が決まったのである。



帝国暦483年7月25日

■オーディン 国務省 リヒテンラーデ侯爵オフィス

皇帝との話の後リヒテンラーデ侯は国務省に帰還した。着くなり、余り浮かぬ顔のリヒテンラーデ侯を心配したのか、政務秘書官のワイツが早速やって来た。

「如何成されましたか、侯爵様」
「んいや、大したことではないが」
「そのお顔では大したことではないと思えませんが」

寒門の出だが、リヒテンラーデ侯が信頼しているワイツにそう言われると、少しは気が晴れるかと、ポツリポツリと話し始めた。

「皇女殿下があろう事か、ヘルクスハイマーとシャフハウゼンの決闘をお忍びで見学なさるのじゃ」
「なんと、その様な危険な事を」
「であろう、儂は陛下をお止めしたのじゃが、陛下は『オフレッサーを護衛に付けるから大丈夫じゃ』と仰ってな、儂の忠告を聞いてはくれん」

「それは、侯爵様のお言葉が正しいと存じます」
「此、不敬じゃ」
「此は、失言でございました」

「致し方ないと言う事だ」
「まっこと」
喋った後でリヒテンラーデ侯は口止めも忘れない。

「ワイツ、この事努々喋ってはならんぞ」
「御意にございます」



帝国暦483年7月25日

■オーディン 某所

「なに、テレーゼが決闘に忍んで観覧に来ると!」
「御意、ワイツよりの連絡にございます」
「ほう、あ奴か、リヒテンラーデも馬鹿な奴よ、信頼している秘書官に騙されているとも知らずに」

「僅か3代前に帝国騎士に成った寒門出身の上に、リヒテンラーデに仕えながら、未だに爵位も貰えるぬと愚痴を言っておりましたから」
「事が成就した後での子爵位授与で簡単に靡きました」

「そうよ。世の中金が全てよ、フェザーンの拝金主義者共と蔑む前に奴等の金儲けを真似すれば良いモノを、それが出来ない馬鹿が多すぎるわ」

「大体、父上も父上じゃ、平民共や将兵の人気取りを行い帝国に亀裂を作るつもりか」
「陛下なりのお考えもあるのでしょう」
「大体、サイオキシン麻薬でブラウンシュバイクやリッテンハイムの力を削ぐ機会をみすみす逃すとは」

「証拠が挙がらなかった模様でございます」
「証拠!証拠など幾らでも作れば良いではないか!」
「司法省が問題視するのでは?」

「父上の言葉で幾らでもできるわ!」
「小物ばかり捉えて、カストロプの様な公金横領者がまかり通るのじゃからな!
あの様な男は、余が帝位に就いたなら一族即刻死罪じゃ!」

「そうでございます殿下」
「それで、計画はどうするのじゃ、クロプシュトック」
殿下と呼ばれた男が、クロプシュトックと呼ばれた男に質問を投げかける。

「はっ、計画の修正を致します。当初の計画ですと・・・・・」

クロプシュットックが計画を説明していく。その説明を聞き終えた殿下と呼ばれた男は。

「ハハハハ。素晴らしい作戦だ、一石三鳥かそれ以上じゃ。クロプシュトックよ、来月には卿は帝国宰相で公爵じゃ。卿の息子は宇宙艦隊司令長官だ」
「殿下、ありがたき幸せ」

殿下とクロプシュトックの笑い声が長々と続いたのである。
 


帝国暦483年7月26日

■オーディン ノイエ・サンスーシ ローエングラム伯爵邸 テレーゼ・フォン・ゴールデンバウム

本日、父様から、決闘見学に行って良いとお許しが出ました。私が提案したように変装して私だと判らないように行く事、オフレッサーに護衛させる事、侍従武官を連れて行く事、シークレットサービスを連れて行くなど、条件付けが決定しました。

楽しみですね、黒マントじゃなく、ゴットラン?だっけが出てくるはずですから、良い勝負になるはずです。座る場所は無論コッソリ姐さんの横に座って驚かせますよ、姉上の様にガラスの観覧席じゃ味わえない醍醐味を満喫するつもりですよ。相撲で言う砂被り席だね。

ついでにヴィッツレーベンにお小遣いを預けてラインハルトに賭けさせようかな、ルッツを送ったんだからそれぐらい遊んでも良いよね。取りあえず、オフレッサーはFateのバーサーカーみたいだから、一緒にバーサーカーを従える私は、イリヤスフィール風のコスプレが良いね、そうしよう。

さてさて、行くために、オフレッサーとケスラーとヴィッツレーベン達との話し合いを行わないと何だよね、もう少しで来てくれるから、楽しみだね。

「殿下、オフレッサー大将閣下とケスラー少将閣下がお見えになりました」
「ヴァーリア、御苦労様。此方にお通しして」
「判りました」

「テレーゼ様、お久しぶりにございます」
「皇女殿下におかれましてはご機嫌麗しく」
全く、ケスラーは相変わらず身内以外が居ると受け答えが堅いな。

「オフレッサー、ケスラー、呼びたてしてすまぬ」
「とんでもございません、テレーゼ様の為なら100万の装甲擲弾兵が馳せ参じますぞ」
「殿下のお呼び立てでございますれば」

「して、殿下の御用とは如何様な事でございますか?」
「今度はリッテンハイム侯爵邸にでも突撃すれば宜しいのですかな」
真面目に聞くケスラーと冗談交じりに話すオフレッサーの対比が凄いね。

「今回の用事は、2人ともヘルクスハイマー伯爵とシャフハウゼン子爵の決闘って知ってる?」
「存じておりますが」
「知ってますぞ、ヘルクスハイマーが鉱山を横取りしようとしているとか」

「そうそう。それなんだけど、リッテンハイム侯爵とヘルクスハイマー伯爵がシャフハウゼン子爵の決闘代理人を誰もさせないように圧力をかけているのよ」

「なるほど、テレーゼ様はシャフハウゼン子爵の代理人として小官を指名なさるのですな。お任せ下さいこのオフレッサー決闘請負人なんぞに負けませんぞ」

オフレッサー勘違いだよ、けど非常に強力な事は確かだね。
「オフレッサー閣下、決闘人は既に決まっています」
「おう、ケスラー少将、それは本当か?」

「はい、ラインハルト・フォン・シェーンヴァルト大尉が決闘をするそうだ」
「シェーンヴァルト?」
「オフレッサー、グリューネワルト伯爵夫人の弟よ」

オフレッサーは、そう言われても、判らないと言う顔だよ。
「なるほど、では、我々は何を?やはりヘルクスハイマーにカチコミですか?」
「そうすれば、面白いけどね」

「殿下」
「ケスラー冗談よ」
「小官は至って真面目なんだが」

「オフレッサー閣下」
「ガハハハ、冗談だ」
「それで、コッソリ、ルッツに頼んで、シェーンヴァルトに射撃を教えさせたのよ」

「なるほど、相手はプロの決闘請負人ですから」
「そう言う事、それでその成果を見に行きたくて、オフレッサーとケスラーに頼みたいのよ」

話したら、オフレッサーは豪快に応諾してくれたけど、ケスラーは慌てて止めてきたよ。
「ハハハ、テレーゼ様、肝が据わっていますな、判りました装甲擲弾兵全力を持ってお守りしますぞ」
「殿下、お止め下さい。余りに危険すぎます。それに陛下がお許し為さる訳がございません」

「ああ。ケスラーその事なんだけど、父様は既に許可を受けているのよ。あとはオフレッサーと警備隊の責任者に連絡するだけだったんだよ」
「流石テレーゼ様ですな。やる事に卒がない」

にこにこ顔で私を賞めてくれるオフレッサーに対してケスラーは頭が痛いという顔だね。
「陛下のお許しが出たと、判りました。確認だけさせて頂きます」
ケスラーは、そう言って携帯を出しグリンメルスハウゼン憲兵隊総監の下へ電話してるよ。
「はい、殿下の決闘観覧ですが」
「はい、はい、では陛下の許可は真で」
「はい、全力を尽くしてお守りします」

電話が終わった、ケスラーは深い溜息を吐きながら、悟った様に話し出した。
「殿下、確かにグリンメルスハウゼン閣下の元に陛下よりご命令が下った模様です」
「でしょ」

「ケスラー少将。卿も少しは肩の力を抜け、そうせんと、髪の毛が白くなるぞ」
「仕方がありませんが、陛下のご命令とあれば、殿下の決闘観覧をお止めする事は出来ませんが、徹底的な護衛を致しますから、宜しいですね」

ケスラーが普段と違う迫力で念を押して来るので思わず頷いた。だってもの凄く鬼気迫るオーラが出てるんだもん。まるでア○ロと戦うシ○アの様なプレッシャーを感じたよ。

「ケスラー判ったから」
「お分かりいただけましたか、ではオフレッサー閣下が殿下の横で護衛をお願いします」
「ああ判った」

ケスラーの雰囲気にオフレッサーも毒気を抜かれた感だけど、私の言葉に又盛り返しだ。
「お願いね、オフレッサー」
「お任せ下さい、殿下には指1本触れさせませんぞ」

「では、決闘場が決まり次第、人員配置をするための準備を開始致します」
「頼むわケスラー」
「御意」

「オフレッサーは、ズザンナも連れてきて頂戴ね」
「お任せ下さい」



帝国暦483年7月27日

■フェザーン自治領 自治領主オフィス

「何、クロプシュットック侯が企みを」
「はい、自治領主閣下、クロプシュトック侯が皇太子を巻き込んで謀反を企んでいる模様です」
「それは面白い、帝国は今回勝ちすぎた、ここいらで消耗して貰わねば成らない」

「此処で帝国が2つに割れて内戦となれば」
「そうよ、惑星開発庁成る我らフェザーンの利益を損なう組織など消し飛んでしまう」
「そうなれば、フェザーンの利益が益々増えます」

「ボルテック、此は楽しみだ、詳し調べよ」
「はい」



帝国暦483年7月30日

■オーディン 某所

「クロプシュトックどうであった?」
「はっ、グレーザーも準備は整いましてございます」
「決闘場はリッテンハイムの荘園だそうだな、益々都合がよいわ」

「まっことに、殿下の門出を祝福するが如き幸運でございます」
「決闘者のすり替えは完璧か?」
「はっ、ヘルクスハイマーの代理人を始末し、代わりにレイスと呼ばれる者をねじ込みました」

「その者、腕は確かで有ろうな?」
「ご心配無用にございます。請け負った仕事は確実にこなしまする」
「ハハハハ」

 
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