魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica4冥府の炎王~Xweria~
†††Sideスバル†††
ヴィヴィオとフォルセティが遺跡内部に落っこちた。しかも内部にはマリアージュまで入って来てるって話だし。無事かどうかを確認したいのに、どういうわけか遺跡の中だと念話も通信も遮断される始末。以前この遺跡を調査したって人たちは、どうやって外部と連絡手段を取ってたんだろう・・・。
(2人がマリアージュと遭遇する前に、なんとしても合流しないと!)
あたしの他にアイリ、それにシャルさんが遺跡内部に突入してるけど、どっちにしても先に合流しないと危ないことには変わりないし。焦りばかりが募ってく。フォルセティは八神家のみんなからの英才教育で、9歳でもう信じられない程に強い。だけどヴィヴィオを守りながら戦うってことになると、経験値が足りてないと思う。
「マッハキャリバー! 生命反応とかまだ拾えない?」
≪はい。連絡系・探知系の魔法が上手く機能しません。地道に探すしかないかと・・・≫
「うぅ~。この遺跡って6階層に分かれてるし、ヴィヴィオ達がどの階層にまで落ちたかくらいは判りたいな・・・」
ヴィヴィオとフォルセティが落ちた場所に一度行ってみたけど、階層をぶち抜いたような崩れ方をした穴があった。しかも瓦礫で穴が埋まっちゃってて、そこから降りることが出来ないから遠回りして、階段っていう正規ルートで階下に降りないといけない。そうなると余計に2人から遠ざかってしまう可能性もあるわけで。
「床を打ち抜いてショートカットが出来ればな~」
≪冗談でも笑えませんよ≫
「だよね」
結界で遺跡全体が潰れないようにしてあるらしいけど、内側は普通に崩れてるから無理をするとやっぱり崩落する。急いでるからと言って遺跡を壊す真似は出来ない。
――コード・レヴォルヴァー――
「うわっ・・・!?」
“マッハキャリバー”の速度を45kmくらいにまで抑えて通路を駆け抜け、大きな広間を突っ切って行こうとしたところに突然、「サファイアブルーの魔力・・・!」の光線が前方の天井を撃ち抜いて来て、さらに止まることなく床まで撃ち抜いた。その所為で前方の天井と床が崩落し始めて、瓦礫が両方の開いた穴を塞いでく。それに巻き込まれないために「マッハキャリバー!」のホイールを逆回転して停止する。
「おっとっと。あっぶな~・・・じゃない! 6連発の光線ということは、フォルセティのレヴォルヴァー! ちょっ、待って待っ――!」
無駄だと判ってながらも埋まってく天井に手を伸ばしていた時、瓦礫に紛れて何かが落ちて来た。ここに来るまでに何度も殴り飛ばして来た「マリアージュ!」だった。またか~、って思う反面、フォルセティの頭の良さに感心した。
ただ背を向けて逃げるんじゃなくて足元を崩して敵を階下に落とすなんて、緊急時なら尚更すぐには思いつかない。しかもそれがたった9歳の子供が思いつくなんて、普通はありえない・・・と思う。あー、でもなのはさん達は9歳の頃にはトンデモ戦績を収めてるらしいし。
「まずは、マリアージュを殴る!」
LASと違ってマリアージュは喋るから、ちょいやり辛さはあるんだけど・・・。大切な友達をどうにかしようってしてる敵だから「しょうがない!」よね。右腕の装着してる“リボルバーナックル”のカートリッジをロード。
「脅威レベル5の管理局員を視認。迎撃に入り――」
「おおおおおおおッ!」
言いきる前にあたしは突進して、高速回転させてるナックルスピナーの生み出した衝撃波を拳に乗せて直接相手に打ち込む打撃魔法・リボルバーキャノンを繰り出す。対するマリアージュは、周囲に瓦礫の山が出来てるから回避は出来ない。だから自然と両腕を体の前に掲げてのガード姿勢をとった。
「ガードの上からぶん殴る!」
一切の手加減なしで両腕に向かって拳を打ち込んだ。でも「は!?」これまでのマリアージュとは違う手応えが襲ってきた。ズブズブと両腕だけじゃなくて胸にまで拳がめり込んだ。そう、マリアージュが体を液状化させたんだ。
「うわ、うわっ! それはまずいって!」
マリアージュは可燃性の液体に変化できる。ゼロ距離での爆発なんて受けたら、いくらバリアジャケットに変身していたとしても無傷じゃ済まない。引き抜こうとしても、もう一度実体化した両腕があたしの右腕を抱きしめてる所為で、「抜けない・・・!」事態に陥った。
「この・・・!」
ナックルスピナーのスピナーを高速回転させて、マリアージュの胴体にあたる液体を周囲に撒き散らせつつ、“マッハキャリバー”のローラーを逆回転させて全力後退を実行。少しずつ抜けそうになったところで・・・
「おお! スバルをはっけ~ん!」
――アイスマン――
マリアージュの周囲に冷気が渦巻いたと思えば、一瞬にして氷で出来た雪?だるまになった。すると簡単に腕を引き抜けることが出来て、マリアージュもガシャァン!と崩れた。振り返ればそこには「アイリ!」が居た。真っ白なドレスの裾や腰から生えてる一対の翼を靡かせながら、アイリが「危なかったね~♪」大手を振りながらフワフワ浮いてやって来た。
「助かったよぉ~、アイリ~」
「どういたしまして~。それにしても、ホント至るところにマリアージュが居るね。ここに来るまでに7体を潰してきたし~」
「うん。・・・って、フォルセティ達が見つかった言うか、どこに居るかが判ったんだった!」
「ホント!? どこどこ!?」
今さっき起こった事をアイリに伝えると、「あれ~!? 何でアイリ達、あの子たちより下の階に居るの?」って首を傾げた。それはあたしも思った事だけど、「今は合流を考えよう!」って伝える。
「上の階に上がるための階段まで戻ろ――って、アイリ・・・?」
急いで来た道を戻ろうとしたんだけど、アイリだけはその場に留まった。何をしてるの?って聞く前にアイリの手元に4枚の羽根が舞い降りて、羽根を指の間に挟み込んだ。
「ラオム・ツー・ストッペン!」
そして羽根を天井に向けて投げ放った。すると羽根の突き刺さった個所を結ぶように魔力のラインが走って、その内側を瞬時に凍結した。パキィンって綺麗な音を立てて天井が割れて、キラキラ輝く氷の破片となって通路に舞った。
「力尽くで破壊して連鎖的に崩落するのを心配したんだろうけど、崩落しないように凍結させちゃえば良いんだよ」
「でも融けたらどの道崩落するんじゃ・・・?」
「そうかもね。でもマリアージュによる破壊活動の所為でもうメチャクチャだし、何より遺跡全体が崩れないように結界があるんだから、大丈夫だいじょ~うぶ~♪」
そんなやり取りをしながらアイリはす~っと音も無く上階に上がって、あたしも魔力の道・ウイングロードを発動して上階に上がる。アイリはさっきと同じように瓦礫を凍結粉砕していて、あたしでも通れるほどの路を造ってくれていた。
「足跡から見るとフォルセティ達、一度この部屋に入った後、来た路を戻って行ったみたいだね」
「マリアージュに襲われたから・・・?」
「だろうね。気になるのは、足跡が3人分だということ。靴の大きさや歩幅、足跡からして・・・2人と歳の近い女の子だね」
アイリが床に薄らと残ってる足跡を見てそう言った。あたしも試しに見てみて、「あー、ホントだ」って、アイリの意見に納得した。
「一般人かも知れない。急ごう、スバル!」
「うんっ!」
凍った床の上に伸ばしたウイングロードを疾走して、前を飛ぶアイリを追い駆ける。そして割とすぐに「見つけた!」ってアイリが嬉しそうに大声を出した。体を傾けてアイリの向こう側を見ると、ヴィヴィオとフォルセティ、あと見知らぬ女の子2人が奥に向かって走ってた。
†††Sideスバル⇒アイリ†††
「フォルセティ~~~!」
無事な姿で居てくれたあの子たちを見つけた瞬間、アイリは腰の白翼を羽ばたかせて速度を上げて、フォルセティに抱き付いた。
「アイリお姉ちゃん!」
「スバルさんも!」
「うんっ。ヴィヴィオも無事そうで良かった!」
ヴィヴィオにもし何かあったら八神家の沽券に関わるからね。預かっておきながら何で守ってくれなかったの!?って。包帯が巻かれてたり、絆創膏が張られてたり、完全な無傷じゃないっぽいけど・・・。
「あ、フォルセティが手当てしてくれたから平気だよ♪」
「そっか。・・・そっちの子もフォルセティがやったんだよね」
アイリと同じように頭の上に在るリボンと八重歯が特徴的な、活発そうな女の子の怪我の度合いを見ながら「本局医務官、アイリ・セインテストです」って自己紹介すると、「リオ・ウェズリーです! 今日からヴィヴィオ達の友達です!」って元気ハツラツとした声で返してくれた。
「スバル寄りの元気っ子だね~」
「あはは、だね~」
「うん。処置も教えた通りにやってる。偉いよ、フォルセティ」
「やった! ありがとう、アイリお姉ちゃん!」
「んっ。さてと・・・」
もう1人の女の子へと目を向ける。夏とは言え遺跡内の涼しさに耐えられるようなものじゃない薄着で、しかも裸足っていう不審すぎる子だね。スバルが「君はどこの子かな?」って目線を合わせた上で質問した。
「スバルさん、アイリ。この子がルシルさん達が捜してるイクスヴェリアだよ」
「え・・・!?」
「いやいやいや、ちょっと待って! アイリ、イリュリア戦争でイクスヴェリアに会ったことあるよ! だから断言できる! その子は違うよね!」
アイリの知ってるイクスヴェリア陛下は男の人で、もちろん子供なんかじゃなく女の子でもなかった。マイスターだってイクスヴェリアと2人きりで話したことがあるって言ってたし、その上で女の子だったなんて言ってないもんね。。
「戦場では一緒にならなかったので、円卓会議でのことですね」
「っ! 円卓会議のことを知ってる・・・! でもそれは古代ベルカ史に詳しい人なら、知ってるような知識でもあるし・・・」
決戦前に行われたアウストラシアでの円卓会議は、一部の歴史書にも書かれてるらしいけど、そっち系に詳しい歴史学者や歴史マニアしか読んでいないようなレベルの書物だから、一般人が知ってるわけないんだけど、でも知ってる人は知ってるってレベル。
「では、これはどうでしょう。ダールグリュン帝がオーディン様を試すために挑発を行い、あなたともう1人の融合騎・アギト、それに騎士ヴィータが乗ってしまったのですが、オーディン様と騎士シグナムがお止めになった。これはどうです?」
「本当にイクスヴェリアなんだ・・・」
そこまで詳しい事はさすがに書かれてないよ、どこの歴史書にも。だから信じるしかなかった。でもスバルだけは「えっ? ホントにこんな小さい子が・・・!?」って未だに信じられないって風だ。
「これでも1000年以上生きているんですよ?」
「「「1000年・・・!」」」
ここで驚くのはフォルセティ達。背格好で言えばフォルセティ達3人と似通ってるんだから、イクスヴェリアのことをよく知らない子にとっては当然とも言えるよね。リオが「大お婆ちゃんだ!」って超失礼なことを言ったから、イクスヴェリアが「おばあちゃ・・・!?」ガーンとショックを受けた。
「うわ! ダメだよリオ!」
慌ててヴィヴィオがリオの口を両手で塞ぐけどすでに手遅れ。壁にもたれかかったイクスヴェリアが「確かに年齢ではお婆ちゃんですけど、でも・・・」ってブツブツ何か言ってる。アイリだってお婆ちゃん扱いされたらああなるよ、うん。
「イクスヴェリア・・・陛下。アイリ達は今の次元世界の秩序安定を担う時空管理局っていう組織の一員なんだけど。マリアージュがあなたを捜す過程であちこちで悪さしてるの。今すぐ機能停止してくれると助けるんだけど・・・」
「倒すことはそう難しくないけど、その数が結構厄介で・・・」
アイリとスバルがそう伝えると、「ごめんなさい。出来ません」ってまさかの返しが。アイリは「マリアージュの統制権限は?」って尋ねる。イクスヴェリア→軍団長→分隊長の順で権限があるって話だったんだけど・・・あれ?
「今の私にはもう・・・マリアージュを生み出すことも操ることも出来ないんです。前に目覚めた際、機能障害を起こすほどのダメージを受けたことが原因ではあると思うのですが・・・」
「えっと、つまりは今動いてるマリアージュって、その前に目覚めた時に造ったヤツで、その戦いの時の負った怪我で権限の全部を失ったってことで、今の君は無力・・・と」
「ざっくりし過ぎてまた落ち込みそうですが、概ねその通りです。その機能も未だに修復できていない中、マリアージュの軍団長が以前の機能を元に私を再び王として担ぎ、導こうとしたいようで。私を捜している理由はそれでしょう。ですがもう・・・世界は、私やマリアージュが必要になる時代の先を行っていますから、もう終わりにしたいんですけど・・・」
そう言って悲しそうに顔を伏せるイクスヴェリア。望まないのに戦に巻き込まれる悲しさは、マイスターも抱いてるのかな・・・。アイリはスバルと顔を見合わせて、「どうすればいい?」って聞いた。
「軍団長を打ち倒せれば、全てのマリアージュが機能停止します」
「んじゃあ倒そうか、スバル」
「オッケー!」
そうは言うけど、その軍団長がどこに居るのかが判らないんだけどね。それでもやる気満々なアイリ達に「ダメです! 軍団長の強さは尋常ではないですよ!」って水を差してくるイクスヴェリア。
「アイリ達がたとえダメでも、地上にはルシル達が居るから大丈夫!」
「ルシル・・・? 先ほどもその名前が出ていましたがどなたです?」
「ルシルさんは、セインテスト家の直系なんですよ。恐ろしく強いんで、何も問題ないですよ♪」
「そして僕のお父さんです!」
「フォルセティの父親・・・」
スバルの返答を聞いて、目を見開いて驚いたイクスヴェリアがアイリを見てきた。だからマイスター・オーディンはエリーゼと子供を作って、その子孫のシュテルンベルク家が現代に残ってることや、スバルの言うようにマイスターがセインテスト家最後の子孫である(実際はそれも嘘の内なんだけどね)ことなどを伝えた。イクスヴェリアは少し考える仕草をした後・・・
「ヴィヴィオとフォルセティがその、オーディン様とオリヴィエ殿下の遺伝子を基に生み出されたクローンと言うのは・・・」
アイリに近付いて来てそう耳打ちしてきた。2人とも、初めて会ったばかりのイクスヴェリアにそこまで話しちゃったんだね。ということは、リオにも言っちゃってるのかな~。こりゃコロナに伝える日もすぐ近くなるかもね~。
「そうだよ。今はそれぞれ養子縁組で、優しく厳しい家族と楽しく過ごしてるよ」
「そうですか・・・。判りました。少しの間お世話になります」
「うん。スバル、イクスヴェリア陛下を背負ってあげて。さすがに裸足でこんなところを歩かせるわけにはいかないし。マリアージュの迎撃はアイリが請け負うよ」
念のために変身魔法を解除して本来の姿に戻る。変身魔法に回してたリソースや魔力をすべて戦闘に回すためだ。30cmくらいになると、「わあ! 小っちゃ~い!」ってリオが騒ぎ出した。融合騎ってホント珍しい存在だし仕方ないよね。
「うん、判った。えっとじゃあ・・・なんて呼べばいい・・・でしょうか? 陛下? でもヴィヴィオも陛下呼びは嫌だって言ってたし・・・」
「だってわたし、陛下じゃないもん。確かにわたしは、大昔の王様の遺伝子で生まれたけど、わたしはわたし・・・オリヴィエさんじゃなくてヴィヴィオだもん。だから陛下じゃないの。でもイクスヴェリアさんは正真正銘の王様だし・・・」
「うん、イクスヴェリア陛下だ」
「陛下!」
「そうですね・・・。ベルカもガリアも無い今、私ももう王ではなくなったので・・・、イクス、と呼んでください。ヴィヴィオ、フォルセティ、リオ。それと・・・」
「スバル! スバル・ナカジマです! スバルと気軽に呼んでください、イクス!」
そんなやり取りの後、アイリ達はこの遺跡から脱出するために行動を開始。魔法に魔力を回せるようになったことで、「壁抜きで一気に遺跡最上階へ向かうよ」って伝えつつ、足元にベルカ魔法陣を展開する。
「巻き込まないようにはするけど、念のために離れててね~。この魔法、発動直後にアイリの周辺をコッチコチに凍らせちゃうから」
スバル達に注意勧告してから、白翼から30枚の羽根を離して10枚で1つの輪を作って3重の環状砲塔にする。さらに両手の指に8枚の羽根を挟み込んで、周囲の魔力を集束させる。マイスター直伝の集束砲を今こそ・・・撃っちゃおう~っと。
「ゲシュテーバー・・・」
魔力を集束させた8枚の羽根を一斉に一番手前の輪に投げ放った。
「カノーネ!」
8枚の羽根の魔力が1つに纏まって砲撃と化す。今の小さな体の状態でしか撃てないのがネックだけど、その分破壊力は折り紙つきだ。冷凍集束砲は天井を撃ち抜いて、脱出路を確保してくれた。破壊による通路崩壊も、穴の周囲が凍ってるから防がれてる。
「「「さむ~」」」
アイリの周囲も完全に凍りついていて、氷柱が至るところに立ってる。みんな夏の格好してるから余計寒いよね。アイリは「スバル、ウイングロードお願い」と指示を出しつつ、アイリは一足先に上階に上がる。
「マリアージュの姿は無し、と。良いよ、スバル、上がって来て~」
穴に向かって声を掛けるとすぐにウイングロードが伸びて来て、フォルセティ、ヴィヴィオ、リオ、そしてスバルとイクスヴェリアの順で上がって来た。スバルがさらに上階へと螺旋状にウイングロードを伸ばしたのを確認して、またアイリから上階へと上がる。
「次で最上階だよね、確か。よしよし。マリアージュの姿も無~し♪ スバル、どうぞ~!」
「は~い!」
スバルの返事の後、タッタッとフォルセティ達が駆けて来る足音が聞こえてきた。みんなが揃ったところで、またアイリが先行して上がろうと「いってきま~す」ってフォルセティ達に手を振りながら飛び上がったその時、いきなりフッと陰った。
「「「「上!!」」」
フォルセティとスバルとヴィヴィオとリオが叫んだ。そのおかげですぐに「パンツァーシルト!」を発動できた。頭上を確認するより早く、ガァンとシールドを殴った衝撃と音が襲ってきた。シールド越しにアイリに攻撃を仕掛けて来たのが誰かが判った。
「マリアージュ! みんな、アイリの下から離れてて!」
――フリーレン・ドルヒ――
マリアージュの周囲に氷結の短剣を30発と展開して、「フォイア!」号令を下して発射。するとアイツはシールドを足蹴にして飛び上がってやり過ごしたかと思えば、左腕の形状を変化させた。銃身というか砲身というか、どちらにしても何かを発射する機構を備えてる腕に。
「発射」
たった一言そう発したマリアージュの砲身から「ニードル弾・・・!」が射出された。ニードル弾がシールドに着弾すると一瞬で貫通、そして砕くとアイリの右脇腹を掠めて行った。ヴァクストゥーム・フォルムだったら直撃してたよ確実に。
「アイリ、気を付けてください! この信号は軍団長です!」
イクスヴェリアが教えてくれた。だったらこっちも最初から「全力全開!」だよ。重力に従って落ちて来るマリアージュへ向けて、氷槍の「コード・シャルギエル!」を12本と展開、そして発射。するとアイツは砲身から今度は「火炎放射!?」を放ってきた。
「スバル! みんなを防御!」
――マオアー・フェーダー――
「うんっ!」
――ファイアプロテクション――
羽根10枚を前面に飛ばして、ソレを中心に円形のシールドが多数展開される。オリジナルはマイスターのコード・ケムエルだ。小さな円いシールドを何十・何百と広範囲に重ねて展開するアレ。マイスターにケムエルの魔法版プログラムを教えてもらった時、ホントは名前もケムエルにしようとしたんだけど、オリジナルの名前を付けた方が愛着が湧くってことで、羽根の城塞って意味のこの名前を付けた。
「うぐぅ・・・!」
魔法じゃないのにすごい威力。目の前に広がる炎の海の中を突っ切って来たマリアージュは、左腕も砲身に変化させていて、シールドに両腕の砲門をゴツッと当てた。チラッと見えてるニードル弾の先端がアイリに直撃コースだ。
「陛下と聖王と魔神の確保の邪魔をするな」
「うるっさいな~。もう放っておいてあげなよね!」
迎撃用の魔法を準備しようとしたところで、ゾワッと背筋に寒気が奔るレベルの魔力を感じ取った。
――瞬神の風矢――
目にも留まらない速度で飛来した何かがマリアージュの軍団長の頭部を吹っ飛ばして、さらに衝撃波で胸部や両肩も削り取っていった。炎も一瞬で掻き消されたことで、アイリはシールドを解除。そして新しい防御魔法を準備する。
「この特質な魔力・・・。すっごい身に覚えがあるんだよね・・・」
何かが飛来した方へと体を向けつつ、「スバル達は先に行って!」って指示を出す。アイリじゃまず間違いなく足止めすら出来ない相手だよ、この感覚が正しければ。だからみんなを逃がさないと。絶対に味方じゃないもん。
――ウイングロード――
「あれは、仮面持ち・・・!」
最上階へとウイングロードを螺旋状に伸ばしたスバルが攻撃手を見て身構えた。ここ広間と繋がってる通路の奥から姿を見せたのは、般若の仮面、裾の長いスカートのセーラー服姿の女。左手には大きな弓を携えてる。
「たぶん当たってると思うんだけど・・・。あなた、エグリゴリでしょ・・・?」
バンヘルド、シュヴァリエル、リアンシェルト、レーゼフェアと似通ってるこの魔力・・・間違いないよ。残ってるのは男性型のガーデンベルグ、女性型のリアンシェルトとフィヨルツェンの3機で、リアンシェルトは弓使いじゃないし、属性は氷雪。でも今のは風嵐系。なら消去法で・・・
「フィヨルツェン・・・!」
ということになるよね。フィヨルツェンが「冥王イクスヴェリアを渡してくれます?」って弓を構えると魔力弦を引っ張った。作り出されるのは風が集束して出来た1本の矢だ。
「急いで! 早く!」
――コード・シャルギエル――
周囲に展開した氷槍10本を「行けっ!」て射出すると、フィヨルツェンは番えてた矢を弦から離して、弓を横薙ぎに振るった。たったそれだけでアイリの氷槍は全て粉砕された。
「冥王イクスヴェリアの確保を頼まれたので。邪魔しないでもらえます?」
「ホンット、どいつもこいつも・・・!」
フィヨルツェンの魔力が跳ね上がる。あんな魔力での攻撃を受けたら確実にアイリは死ぬ。でもその恐怖より・・・ベルカも戦争もとうの昔に終わってるっていうのに、平和な時代で友達や家族と笑って過ごしてるっていうのに、また戦乱に引きずり込もうとする連中に、アイリの怒りゲージはもう限界突破。
「ふざけ――」
――光牙裂閃刃――
――煌き示せ、汝の閃輝――
フィヨルツェンの頭上から紅と蒼の砲撃が落ちて来て、アイツは何も出来ずに砲撃に呑み込まれた。
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