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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica3-Fマリアージュ事件~Children’s Adventure~

 
前書き
遅ればせながら、あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いします! 

 
†††Side????†††

「あいたた・・・」

全身に奔る痛みで僕は目を覚ました。少しカビ臭くて、「けほっ。砂埃が・・・」舞ってるから咳を何度か繰り返す。体を起こして僕は周囲を見回す。白色のレンガで造られた四角い広間の床には僕と「ヴィヴィオ・・・!」が居た。ヴィヴィオは力なく倒れてたから急いで立ち上がると、「痛・・・!」右脚首から痛みが・・・。

「こんなの・・・!」

右足を引き摺りながらヴィヴィオの元に向かって、「ヴィヴィオ、しっかり!」って声を掛けるけど返事がない。口の前に手を持って来て「大丈夫、息はしてる」って確認する。シャマルお姉ちゃんやアイリお姉ちゃんから、簡単な応急処置などを習っておいてよかった。

「まずは消毒・・・」

ヴィヴィオも擦り傷とかしてるし。背負ってるリュックを床に降ろして、中から医療キットを取り出す。それからヴィヴィオの体勢を仰向けに変えて、お姉ちゃん達に教えてもらった手順を思い起こしながら、消毒や絆創膏って処置を施してく。

「よし。これで目で見える範囲の怪我の処置は終わったけど・・・」

あとは目に見えない服の下の怪我なんだけど。さすがにそこまでやったら嫌われる。それだけは絶対に嫌だから、「そこだけは魔法で治そう」って考えに至る。僕とヴィヴィオの足元に、父さんと一緒のサファイアブルーに輝くベルカ魔法陣を展開。そして、お姉ちゃんたち直伝の治癒魔法の「静かなる癒し・・・!」を発動する。

(魔法が必要ないレベルの怪我なら、患者の自己治癒力に任せて処置だけにすること。って約束守れなかったけど・・・。ヴィヴィオを護るためなら・・・)

魔法を掛けてる最中、「う・・ん・・? フォルセティ・・・?」ってヴィヴィオの意識が戻ってくれた。抱きしめて無事を喜びたい気持ちを必死に抑えて、ヴィヴィオの顔の前で人差し指を立てる。

「ヴィヴィオ。指、何本に見える?」

「え?・・・1本だけど・・・。あ、うん、大丈夫だよ、フォルセティ。意識はしっかりし始めてるし、ちゃんとフォルセティの顔もブレなく見えてる♪」

そう言って上半身を起こしたヴィヴィオが「あ、これって・・・」って、腕や足に巻かれた包帯や張られた絆創膏に気付いた。僕は「ちょっと怪我してたから」って伝える。

「ありがとう、フォルセティ!」

「うんっ!」

ヴィヴィオも目を覚ましたことだし改めて状況を把握。まずは外部と連絡できるかどうか。僕とヴィヴィオで通信端末を取り出して見せ合いっこ。だけど、どっちも壊れちゃったのか「繋がらない・・・」みたい。学院で習った念話も使ってるみるけど、ノイズが酷くてすぐに解除した。

「外との連絡は出来ないね・・・」

「うん。こうなったら救助が来るまでココで待つしかないと思う」

壁が崩れて、天井も上階の瓦礫で塞がってる、いつ崩落するかもしれないココで。頭の中で学院で学んだ魔法、お父さん達から学んだ術を何度も繰り返す。学院での基礎と応用、お父さん達との実戦。それを駆使してヴィヴィオだけでも逃がさないと。

「?・・・ヴィヴィオ?」

ヴィヴィオが僕の肩にピッタリとくっ付くほどの近くに座り直した。不安がってるって判る。僕がしっかりしないと。頬に叩いて気合いを入れ直そうとした時、「うぅ・・・」って呻き声のようなものが聞こえた。ヴィヴィオと顔を見合わせて、どこから聞こえたのか周囲を見回す。

「フォルセティ。あの瓦礫の後ろじゃないかな・・・?」

僕の袖をクイっと引っ張って来たヴィヴィオが、「ほら、あそこ」って崩れたレンガの山を指差した。僕はヴィヴィオに「ここで待ってて」って伝えて、1人で瓦礫の方へと静かに歩み寄る。そして瓦礫の後ろに回り込んで、「あ、女の子・・・!」が1人倒れてるのを見つけた。

「え、女の子!? フォルセティ、医療キット!」

ヴィヴィオが医療キットを手にこっちに来てくれる。その間に僕は女の子の上に乗ってる小さな石を払い除ける。背格好からしてたぶんだけど、僕やヴィヴィオと同い年くらい。

「フォルセティ、持って来たよ! 何か手伝えることない?」

「あ、えっと。ちょっと待ってて」

女の子の呼吸は正常だし、気を失ってるけど外傷は見た感じ無いっぽい。目に見える傷はヴィヴィオの時みたく、消毒液や絆創膏などで処置を施す。そして終わったところで、「フォルセティ」ってヴィヴィオが僕の服をクイッと引っ張った。

「さっきから爆発音や地鳴りがあるよ? それに天井から小さな石を落ちて来てる・・・」

そう言われてみれば、って辺りを見回す。この女の子の処置で精いっぱいだったからそこまで気が回ってなかった。確かに振動がお尻から伝わって来るし、砂が落ちて来てる。

「こういう場合って、あんまり動き回るのは良くないんだけど・・・。瓦礫に潰されて圧死なんて嫌だし。移動しよう、ヴィヴィオ」

「うんっ!」

「僕のリュック、お願い。僕はこの子を運ぶから」

なんとか背負えるように女の子の態勢を変えて、「よいしょっ」と背負う。ヴィヴィヴォと頷き合って仄暗い広間から出る。壁のレンガが薄らと光ってくれてるおかげで、荒れた舗装の通路でも躓くことなく歩ける。

「フォルセティ。そこちょっと出っ張ってるから気を付けてね」

「ありがと!」

先頭を歩いてくれてるヴィヴィオが注意を促してくれるし、このまま安全に進めると思ってた。だけどヴィヴィオと僕の間の床からピシッ、バキッ、って嫌な音がし始める。僕は「走って!」って伝えた直後・・・

「ふわ・・・!?」

「やば・・・!」

足元が一斉に崩れ始めた。僕とヴィヴィオはすぐに駆けだすけど、「ダメだ・・・!」到底間に合わず、そのまま階下へ落下し始める。僕はすぐに「フローター!」を発動して、階下の床に叩き付けられることを回避する。

「おお! すごいフォルセティ!」

盾役(ガード)支援役(サポーター)としては、これくらい出来ないとさ・・・」

先に瓦礫が全部階下に落ちるのを見届けながら、僕たちはゆっくりと降下を始める。フローターはあくまで対象を浮かしてそっと降ろすための魔法で、空に飛ばすものじゃないから。効果通りに階下の瓦礫の山に着地した僕とヴィヴィオは、少しでも広い場所に行こうとまた歩き出す。

「んぅ・・・? んみゃあ・・・?」

背負ってた女の子が呻き声を出して身じろぎをした。そして「あれ?」って目を覚ましたようだ。だから、大丈夫?って声を掛けようとした瞬間・・・

「誰ぇぇぇーーーーー!!? いやぁぁぁーーーーーっ!!」

「へぶっはああああ!?」

思いっきり殴られた。僕に背負われてる状態でのこの威力。絶対に格闘技経験者だよ、これ・・・。殴り飛ばされた僕は、当然背負ってた女の子を離しちゃうわけで。あの子が「きゃん!?」って落ちて尻もちをついた。

「きゃあああ!? フォルセティ!? 大丈夫!?」

慌てて駆け寄って来てくれたヴィヴィオに上半身を起こされた僕は、「なんとか・・・」って答えながら、手当てされた自分の体を見て呆然としてる女の子に「驚かせたよね? ごめん」って謝る。

――女の子には常に優しく、紳士的に。まずはこちらに非があったかどうかを考えようか。んでもし、フォルセティに非が無くても、すぐに暴言・暴力に訴え掛けるのはアカン。そやけど家族や友達を護るためなら、そこは大義名分で戦って打ち負かすことを、お母さんとお父さんが許可します――

お母さん達からの約束もあるし、いきなり殴られた事を今は水に流す。あの子だって状況が判らない中で、見知らぬ男の子が自分を背負ってた、なんて混乱してもおかしくないもん。

「えっと・・・。この包帯とかって・・・?」

「うん。この子、フォルセティが手当てしてくれたんだよ」

ヴィヴィオがそう説明してくれると、あの子は「ごめんなさい!」って腰を90度くらいまで曲げて謝ってくれた。だから「どういたしまして!」って僕は返した。素直に謝れるのは良い子の証拠だ。

「えっと・・・。あたし、リオ! リオ・ウェズリー!」

「わたしは高町ヴィヴィオ!」

「僕は八神フォルセティ!」

自己紹介をした後は、今の僕たちの状況をリオに伝える。マリンガーデンの地下深くにある遺跡に僕たちは居るってこと、少しでも安全な場所を探してることなどなど。

「・・・そっか。他に落ちて来た人は・・・居ないんだよね?」

「うん。わたしとフォルセティとリオの3人だけ」

シャマルお姉ちゃんも一緒に落ちて来たと思ったんだけど、その姿が無いから気のせいだったんだね。

「リオも家族で来たの?」

「うん。一緒に落ちて来たんなら心配なんだけど」

「大丈夫。今、僕のお父さんやお姉ちゃん達が救助に入ってくれてると思うから」

「フォルセティのお父さん達って・・・もしかして管理局員?」

僕もヴィヴィオも話してないことをリオが言い当てたから「え?」って聞き返すと、「ルシリオン・セインテストさんでしょ?」ってお父さんの名前を口にした。

「うん。そうだけど。でもなんで・・・?」

「なんでって。だってそっくりだから。それに今思い出したけど、フォルセティとヴィヴィオってザンクト・ヒルデ魔法学院の生徒でしょ? あたしも同じ学院の生徒で3年生なんだ!」

「え、そうなんだ! それじゃあどっかですれ違ってたこともあるかもね~!」

それから道すがらお互いの事を話し合う。僕とヴィヴィオはミッド出身だってこと、家族構成、何組の生徒で友達の話。でも生まれた経緯とクローンだって事は黙ってた。いきなりそんな事を教えられてもリオだってどうしたらいいか判らないだろうし。それでリオはルーフェンって世界の出身で、春光拳っていうリオの実家に由来する独自の格闘技を習ってるとのことだった。

「通りであんな態勢で強烈な一撃を打てるわけだ」

ちょっとイジワルしたくなって殴られた左頬を擦るとリオが「ホントごめん!」って本気で謝ってきたから、僕も「ごめん、もう気にしてないから」って謝り返すことに。ヴィヴィオは「イジワル禁止~」って僕の頬を結構強くツンツン突いてきた。

「あはは! ヴィヴィオとフォルセティは何かやってるの? 2人の親ってどっちも有名な管理局員だし」

「あ、うん。わたしも格闘技やってるんだよ。ストライクアーツっていうの。先生はママじゃなくて、友達なんだけど」

ストライクアーツは、ミッドで一番競技人口が多い格闘技の事。ヴィヴィオとコロナはノーヴェを師匠として、日々自分の格闘技の腕を磨いてる。そしてそれが、僕が後衛魔導師になることを選ばせた理由だったりする。

(たとえこの・・・ヴィヴィオのことが大切だって想いも、ヴィヴィオを護れる騎士でありたいっていう気持ちも、僕を造ったプライソンって人が与えた偽物でも・・・)

その事実を素直に受け止めつつ、ヴィヴィオを大切にしたい、支えたい、守りたいって気持ちは、誰にも否定させたくないって思う。だから最初は僕が前衛で、ヴィヴィオを護る盾役になるつもりだった。でもヴィヴィオがストライクアーツを学んで、ゴリゴリのアタッカーになっちゃったからさぁ大変。
ヴィヴィオの魔力資質って格闘型に不向きな高速並列運用型で、攻防力も並よりちょっと下な学者型か中後衛型。それでもヴィヴィオは前衛型を選択した。ヴィヴィオとコロナの先生であるノーヴェは、視野が広くて反応と動作の速度が優れてるっていうヴィヴィオの良いところから、カウンターヒッターっていう道を示して、そしてヴィヴィオを導いてる。

「あ。わたし達の友達にコロナって子がいるんだけど、ここから出られたら紹介するね。コロナもわたしと一緒にストライクアーツを学んでるんだ~」

「そうなんだ! フォルセティは? フォルセティも格闘技やってるの?」

「うん。ヴィヴィオやコロナとは師事してる人は違うけど一応は」

医療関係はシャマルお姉ちゃんとアイリお姉ちゃんから、戦闘技術はシグナムお姉ちゃんやヴィータお姉ちゃんから、格闘技はザフィーラやアインスお姉ちゃんから、魔法はお父さんとお母さんから教わってる。

「でも前衛格闘は僕の領分じゃないから。どっちかって言うと魔法戦が得意だよ」

「時々わたしもコロナもフォルセティと試合するけど、すっごい強いよ!」

「おお、そうなんだ~! ねえねえ、今度あたしとも試合してよフォルセティ!」

目をキラキラ輝かせてるリオに「いいよ、やろっか」って応えておく。春光拳というのがどう言った格闘技なのか実際に体験して、何が起きても良いように対策などを練っておきたいし。

†††Sideフォルセティ⇒ヴィヴィオ†††

「あ、広い部屋に出たよ!」

「さっきからずっと思ってたけど、壁が薄ら光ってるのってなんか不思議~!」

「2人はちょっと入口で待ってて。僕が調べてみるから」

わたしとフォルセティ、新しく出来た友達のリオは、原因の判らない爆発で起きた地面の崩落に巻き込まれて、ルシルさんとアイリに教えてもらっていた海底遺跡にまで落ちて来ちゃった。コロナの姿はないから、たぶん崩落には巻き込まれてないんだと思う。それだけは不幸中の幸いだよ。

「フォルセティって、こういうこと得意なの?」

ひとり広い部屋に入って床や壁や天井を調べるフォルセティを見て、リオがそう聞いてたから「うん。サポート系は強いよ」って答えた。でもホントは格闘技でも強いのに、魔力だってAAA-もあるのに、それでも後衛を選んだフォルセティ。ちょっともったいないな~って思ってた。

「ヴィヴィオ、リオ。ここで救助を待とう」

フォルセティが手招きしてくれたから「うんっ!」って頷き返して部屋に入る。そしてフォルセティの提案通り、何かがあってもすぐに逃げられるように出入り口付近の床に座り込む。

「はふぅ~」

体力はノーヴェとの訓練で少しは上がったって思ってたけど、やっぱり状況が状況だからか普段より疲れがすぐに溜まっちゃうみたい。リュックから水筒を取り出して、「はいどうぞ、リオ」お茶を注いだコップをリオに差し出す。

「いいの! ありがとう! じゃあたしはね~・・・クッキー!」

リオのリュックから出て来たのは、お土産屋さんで売られてたマリンガーデン印のクッキー缶。それを見たら、きゅ~、ってお腹の音がわたしとリオのお腹の中から聞こえた。リオは「あっはっは~、お腹空いた~!」って気にしてない風だけど・・・。

「あぅ、恥ずかしい・・・」

絶対フォルセティにも聞こえたよ今の音。チラッと見ると、フォルセティも自分の水筒のお茶を飲んで「はふぅ~」って一息吐いてるところだった。様子からして今のお腹の音には気付いてないみたいで「よかった」ってホッとする。

「何が良かったの?」

「あ、ううん、こっちの話! えっと、いただきます!」

リオが空けてくれた缶からイルカの形をしたクッキーを1枚手にとって、「はむっ」と齧る。うん、美味しい。フォルセティも「じゃあ僕も、いただきます!」ってサメの形をしたクッキーを食べて「美味いな~」って頬を綻ばせた。

「あたしも、いただきます!」

どれだけ待てばいいのか判らないけど、独りじゃないから寂しくない。3人でお喋りしてると、フォルセティが急に立ち上がって反対側の出口をキッと睨みつけた。そして「2人はここに居て」って告げて、フォルセティ1人でそっちへ向かおうとした。

「待って!」

わたしも立ち上がってフォルセティの右袖を掴み取る。フォルセティがわたしに振り返ると、「大丈夫。ちょっと見て来るだけだから」って微笑んだ。わたしは少し渋ったけど「う、うん。気を付けてね」って袖から手を離した。

「んっ。リオ。ヴィヴィオのことよろしく」

「判ったー!」

リオと2人でフォルセティの背中を見送る。フォルセティが出口から通路の奥へと進んで行って、その姿が完全に見えなくなったところで、カッと何かが光ったかと思えばフォルセティが「うああああ!」悲鳴を上げて、部屋の中央にまで飛ばされてきた。体は強張ることなく、ぐるぐる考えることなく、わたしの体はそれが当たり前だって言えるほどの反応で、「うっく・・・!」フォルセティを抱き止めた。

「「フォルセティ!?」」

「いっつう~・・・。ダメだ、2人とも逃げて、マリアージュだ・・・!」

足元が覚束ないのにフォルセティはまた通路に戻ろうとした。だから「逃げよう!」ってフォルセティの腕を掴んで、無理やり背後の通路へ戻ろうとした。

「ここでどうにかしないとダメだよ! 逃げた先で別のマリアージュと鉢合わせたら挟み撃ちにされて一巻の終わりになる! どうする、どうすればいい・・・!」

顔を青褪めさせて、こっちに向かって来てるマリアージュをどうやって倒そうか必死に考えてるフォルセティに「わたしも戦う!」って提案してみる。するとやっぱり「ダメだ!」ってすごい剣幕で却下された。

「だけど・・・!」

「相手はアイリお姉ちゃんが言ってた連続殺人犯だ! しかも自爆するような兵器だ! そんな奴とヴィヴィオを戦わせるなんて出来るわけないだろ!」

「じゃあどうするの! フォルセティだけじゃ相手に出来ないかもしれないでしょ!」

「何とかしてみせるよ! そのための僕だ!」

「そうやってまた無茶をするつもりなら、わたしは絶対に許さないから!」

「待って待って! 言い争ってる場合じゃないよ、2人とも!」

わたしとフォルセティの間に割って入って来たリオに、「ごめん」って2人で謝る。そうこうしてるうちに、フォルセティを吹き飛ばした犯人、マリアージュがこの部屋に入って来た。

「聖王と魔神を確認。これより確保に入ります」

「「確保・・・」」

改めてそう言われて、アーケードでもマリアージュが、わたしとフォルセティを確保する、って言っていたようなことを思い出した。わたしは小声で「確保されるフリはどうかな?」ってフォルセティに提案してみる。

「危なすぎるよそれは。・・・僕がなんとかしてみせる!」

わたしの事を一番に考えてくれるのは素直に嬉しいけど、もう少し話を聞いてくれても良いと思う。フォルセティは足元に蒼色に輝くベルカ魔法陣を展開して、両手の人差し指に魔力スフィアを1つずつ作り出した。

「まずは・・・!」

右人差し指をマリアージュに向けたフォルセティに、マリアージュもグッと身構えて臨戦態勢に入った。

「コード・レヴォルヴァー!」

フォルセティの右の人差し指の前方に浮かぶ魔力スフィアから放たれるのは砲撃、と言うよりは細い光線。それが6連発。それらはマリアージュの体に当たることはなくて、全弾が足元に着弾。床を円形に撃ち抜くと同時に爆発した。その爆発で床が崩れて下の階に落下しそうになったマリアージュだけど、「このようなもの・・・」跳んでこっち側に移ろうとした。

「させない!」

――コード・シュロート――

「フォイア!」

左の人差し指から放たれた魔力スフィアはマリアージュの頭上、天井に着弾した。着弾直前に小さな魔力弾にバラけたことで着弾ポイントは広範囲に亘ってる。だから天井の大半が一気に崩落して来て、その瓦礫は「ぅぐ・・・!?」マリアージュの頭に落下。そしてもろとも階下へと落ちて行くんだけど・・・。

「「わああああああ!!」」

わたし達の頭上の天井も崩れて来たから、わたし達はさっき通って来たばかりの通路へ全力逃走。フォルセティは「フォーアベライトゥング」って詠唱して、今度は10本の指すべてに小さな魔力スフィアを作り出した。

「すご。デバイス無しであんな事が出来るんだフォルセティって・・・!」

「うん。フォルセティ、天才だから」

テストだって常に学年1位だし、魔法戦も強いし、格闘戦も強いし。だから背負っちゃうんだよね。だからわたしも強くならなきゃって思う。わたしだって、フォルセティの事を守りたいし支えてあげたいから。

「止まって!」

先頭を走ってたフォルセティからそう指示されて、「うんっ!」ってわたしとリオも急ブレーキで止まる。耳を澄ませてるようだからわたしも耳を澄ましてみると、コツコツって足音が聞こえてるのが判った。

「まさかマリアージュ・・・?」

「かも知れない。けどそうじゃないかも・・・」

「どういうこと?」

「さっきのマリアージュとは足音が軽いんだ。それに歩幅も狭いみたい」

リオの質問にそう答えたフォルセティに、「そんなのも判るんだ・・・」ってリオが驚いた。

「アーケードでもさっきでもマリアージュの姿形は一緒だった。でも今度は違うかもしれない。そう考えると迂闊に前に出られない。救助隊の誰かであることを願いたいんだけど、足音は1人分。まさかこんな形で実戦を経験するなんてさ~・・・」

フォルセティの深い考察にわたし達は「なるほど~」って感嘆した。フォルセティに庇われるように通路の奥をジッと見詰めてると、足音の主の姿が見えてきた。その姿にわたし達の緊張はほんの少しだけど緩くなった。そこに居たのはわたし達と同い年くらいの女の子だったから。

「え・・・!? オーディン様、オリヴィエ様・・・!?」

「「え・・・?」」

その女の子が、わたしとフォルセティのオリジナルにあたる人の名前を口にした。目を丸くしてると、「いえ、そんなわけがありませんね」って首を振った女の子が「敵ではありません」って両手を上げた。

「私はイクスヴェリアと申します」

あの女の子こそが古代ベルカの王様の1人、冥府の炎王イクスヴェリアその人だった。
 
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