ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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SAO:アインクラッド~神話の勇者と獣の王者~
パーティープレイ
セモンはキリトとアスナ、そして歯ぎしりをしているクラディールの方に体を向けると、満々の笑顔で言った。
「よう、キリト、アスナ。久しぶり!」
「久しぶり、セモン君」
「久しぶりだな、セモン。まだそんな趣味悪い格好してたのか」
「うるせぇ。そりゃこっちのセリフだ。お前こそその黒づくめ……」
セモンはキリトの服装についてあれこれ文句を言いだした。その頭を、ハザードがばしん!と叩く。
「いて!」
「何を馬鹿なことをわめいておるんだお前は。キリトよりお前のほうが趣味が悪いわ」
「ハザードてめぇ……キリトが自分と同じ黒尽くめだからって」
すると猛威一度ハザードがセモンをはたく。
「ぐは!」
「お前は少し黙ってろ。……久しいな、キリト、アスナ」
「ああ。ハザードも久しぶり」
「最近見てなかったから心配したわよ」
するとセモンがするりとアスナに近寄り、言った。
「(アスナはキリトのことの方が心配だろ?)」
「――――――――!?!?!?!」
アスナが顔を真っ赤にする。意地悪そうな笑みを浮かべるセモン。きょとんとした表情になるキリト。ハザードがその拳を握りしめ、三度の鉄槌をセモンに下そうとしたその時。
「き、貴様らぁあ!!先ほどから放っておけばべらべらべらべらと……この私を無視して喋るかぁ!!?」
「あれ、あんた……誰だ?っていうかいた?」
「居た」
ばしんとハザードがセモンをはたく。
「いてっ」
「貴様ら……そこまでこの私を侮辱するか……!?……そうかテメェら、確か《ビーター》だな!?」
クラディールが合点が行ったとさも自慢げな顔をする。
「……《ビーター》であることと侮辱することに関係はないと思うがな……。それと俺βテスターと違うし」
セモンが申し訳なさそうな顔をする。
「お前の口で言うな」
ハザードの突込み。
「アスナ様!!こいつら自分さえよければそれでいい奴らですよ!!こいつらといるとろくなことがないんだ!!」
「自分さえよければそれでいいっていうのは確かだな。俺達攻略組は皆自分が優越な立場にいるために戦っているに等しい。お前もそうなんだろ?」
ハザードがクラディールに言い放つ。
「子灼なぁ……このガキィ!!」
クラディールが腰の剣帯につられた両手剣に手をかける。
「そこまでよ」
その時、アスナの冷淡な声が響いた。
「クラディール、今日はこれで帰宅しなさい。副団長として命令します」
「し、しかしアスナ様……」
「命令だと言ったはずです!」
アスナに睨みつけられたクラディールは、キリト、セモン、ハザードの三人をキッと睨み付けると、もう一人の護衛と共に去って行った。
「ふん!」
「なぁアスナ、よかったのか?」
「いいんです!」
不機嫌なアスナをしり目に、キリトはエギルに言う。
「悪いな。取引は中止だ」
「お、おう……なぁ、俺達友達だよな?味見くらい……」
「感想文を百字以内で書いてきてやるよ」
「ひでぇ!あんまりだ!!」
「ほらキリト君!さっさと行くわよ!」
アスナに首根っこをつかまれて、引きずられていくキリト。
「はははは……」
「相変わらず仲がいい奴らだ」
セモンとハザードも笑った。
***
アインクラッドの七十四層の迷宮区には、戦士型のモンスターが多数生息している。それらは平均的な強さではあれど、モンスターだからと言って実力を侮ってはならない。むしろモンスターだからこそ、人間にはできない戦い方をする者もいるのだ。
「なぁ、ハザード」
「なんだ?腹でも減ったのか?」
「いや。飯はさっき喰ったからいいんだけどさ。……この層が攻略されるのは、いつのことになるんだろうな」
「さぁな。マッピングはもう大方完了してるんだろ?」
セモンの問いに、ハザードはあくまでも平静に答える。
アインクラッドがいつ攻略されるのか、それはあらゆるプレイヤーが抱いているであろう疑問だ。同時に、それを知ることが希望ともなる。
「そうだよな……あとはボス部屋に突入して、ボスを倒すだけ、か」
「今日中に俺達だけで片付けるか?」
ハザードの問うたことは、常人には考えられないことだ。
アインクラッドの階層同士をつなぐ迷宮の最上階に潜むその階層のフロアボスモンスターは、皆が皆相当な強者だ。彼らの討伐は普通一つから二つのレイドパーティーからなる大規模討伐隊を結成して行われる。それを、たった二人で行おうなどと――――。
「う~ん……いいや。やめにしておこう。俺らがたった二人でボスモンスターを倒しちゃったらまた騒ぎになっちまう」
「そうか……それもそうだな」
以前の失態を思い出してハザードはうなずく。
「ふぅ……あらかた片付いたか?」
「そうだな。しばらくPOPはないだろ」
セモンが首肯し、あたりを見回す。モンスターの気配はゼロだ。
「よし……。それじゃぁそろそろ主街区に戻るか?」
「そうだな。ふぁあああ……活動しすぎた。眠い」
「またかよ……」
ハザードはよく寝る。彼の実力は折り紙つきだが、その実力に変わるコストとして、極度の眠気の様なものが襲ってくるらしい。彼は時折ダンジョンの中で眠りこけることもある。
「迷宮区のど真ん中で倒れられても困るしな。帰るか」
迷宮区から出ると、貴重な転移結晶を使うのがもったいないので、多少面倒ではあるが徒歩で主街区に変えることにした。すると……
「……ん?」
ぽーん、という音と共に、セモンの視界に《メッセージ:1件》のマークが。
「メッセ?……キリトからか」
差出人はキリトだった。セモンはメッセージ欄をタップし、キリトからのメッセージを開く。
『アスナとパーティーを組むことになった。二人きりは不安だからお前らも来い』
「……何で命令口調?」
「セモン、キリトからか?」
「ああ。何でわかった?」
「……アスナからメッセージが来たからだ。………見るか?」
「お、おう」
『キャ――――――!どうしようどうしようどうしよう!!明日キリト君とパーティー組んでめいきゅうくにいくことになっちゃった!!やった―――!!どんな装備にしていこうかな。アクセサリはどうしよう。あ、どんなふうに戦ったらいいかな。ハザード君、何か案ある?』
「……相変わらずキリトのことになるとテンションが高いな」
「恋する乙女というやつだ」
「お前が言うとおっさん臭いよ」
「おっさんとはなんだ。俺は十七だぞ」
「へいへい。わかってますよ。冗談が通じない奴だなぁホントに」
笑いながらセモンはキリトに『了解』とメッセージを送った。
次の日に、面倒なことに巻き込まれるとは知らずに。
後書き
書き直しました。オリジナルの部分が増えています。
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