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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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ダン梨・M


 美人女性。好きだ。可愛い女の子。無論好きだ。人妻、熟女、幼女……まぁ、場合による。
 しかし好きだからその人の為に自分の時間を使うという風には思わない。俺の時間は俺のものだ。

「エイナさんにはバミューダも連れてくるように言われたんだけど、どーしても来ない?」
「行く理由がないし、何かあったらあとでベルに聞けばいいし、重要な話なら次にギルド行ったときに聞けばいいし。という訳で俺は行かん」
「エイナさん悲しむよ?バミューダってすぐに魔石押し付けてトンズラするんだもん、いっつもエイナさん心配してるんだよ?」
「そうは言ってもなー。俺は俺でやりたい事いっぱいあるんだもん」

 子供が心配でしょうがないギルドのエイナさんとしては俺の事が気になるらしいが、俺は面倒なので最低限しかエイナさんの話を聞かない。精神年齢がガキじゃないので付き合うのが純粋に辛いのが最大の理由だ。それに、今の俺は結構重要な案件を抱えているので今はエイナさんに構ってられねーというのもある。

「今度詫び石渡すからそれでカンベンしてって伝えといて?」
「詫び石って、あの魔石削って作ってる手作りの彫りモノ?まぁアレは綺麗だし喜んでくれるとは思うけどさぁ」

 魔石は削るといい感じのガラス細工みたいになるのだ。魔石灯にセットすれば光ったりもする。換金分を無駄にしてるので収入がちょいと減るが、その分は値引きでカバーしてるのでマイナスじゃないと叫び続ける。だって趣味ってそういうもんだろ。

「もぉ、それ伝えて一番気まずいのが僕なの分かってる?」
「………わぁった、次があったら必ず行く。それでカンベンしてくれよ」
「つまり絶対に今回は行かない、と。はぁ………ま、事情が事情だし今回は僕が折れるけどさー。エイナさん泣いたらキミのせいだかんね!」

 そう、俺は目下最大の問題に頭を抱えているのだ。

 その問題の名は――俺、どの武器を使えばいいのか分からない問題だ。あまりにも悩みすぎて月曜から夜更かししてしまった。

 町の安い武器屋を回ったりギルド支給の無料武器を試してみたりしていたのだが、俺にはどうも直剣は性に合わないらしい。なので色々と試しているのだが、どうも「これだ!」というしっくりくる武器がないのだ。相性は下記の通り。

直剣→△  短剣→〇
大剣→×   槍→△
戦槌→×  戦斧→×
弓矢→〇   杖→×

 ×は論外レベル。△は使えないことはないけどレベル。〇はそこそこだが、ベルと行動を共にするのなら武器被りは避けたいし、弓矢はダンジョンで使うには不便すぎる。男なら素手で勝負せんかい!と言われても、俺のステイタスは筋力と耐久以外が伸びていくビルドなので無理。

 という訳で、俺は変則的な武器やタダ武器を集めて回った。
 ボロボロで売りにも出せない品、キワモノ過ぎて理解されない品、売れないせいで倉庫を圧迫している品、そして掘り出し物……俺の全身全霊の交渉力を駆使した結果、いろんな物を手に入れた俺は我らが襤褸家の近くの空き地に一度帰還した。

「うーむ、八方歩んで集めに集めたり………しかし使い道のなさげなアイテムばっかり集まったな」

 アイテムその一、携行砲ボン・ボ・ヤージ。
 大砲を無理やり歩兵サイズにしたという文句のつけようがないゲテモノである。直径70センチ、重量30キロオーバー。弾丸は何を詰めても適当に発射出来るという仕様だが、薬室に火薬を籠めなければいけないのでデンジャラスな上に使い辛い。それと今の俺のステイタスで撃ったら間違いなく両腕の骨がカリポリ君である。まさに産業廃棄物。元大砲職人が暇を持て余して作った物を弟子が邪魔だからとナイショで譲ってもらったが、これは暫く出番なさそうだな。
 まぁ、レベル2になるまでは運用方法を考えるだけにしておこう。一発限りとはいえ火薬の量次第では普通に大砲の火力出るらしいし。

 アイテムその二、スリケン・チャクラム。
 投擲武器であるチャクラムに三枚の鋭い片刃の刃がくっつけられた趣味全開の代物だ。一応投げれば戻ってくるのだが、刃渡りが20センチもある三枚の刃が邪魔すぎて持ち歩くのもキャッチするのも一苦労である。これを作った赤装束の謎の男らしく、使いこなせたらワザマエ、だそうだ。名前と言い物言いと言い、あんたもしかして転生者なんじゃねーのか。押し付けられたし。
 まぁ、慣れればサブウェポンとして使えないでもないだろう。慣れるまで保留だな。

 アイテムその三、大鎌イーラナー。
 名前の通りイーラナーい系武器である。二メートル近いリーチは魅力だが、いかんせん鎌という武器が戦闘で使い勝手が悪すぎて話にならない。そして今の俺では鎌の重量に振り回される。もはや投擲武器として使うしかない。……いや、拷もゲフンゲフン尋問に使えるか?切れ味は本物だし。取り合えず持っておこう。

 アイテムその四、キズナックル。
 絆のナックルらしいが、見た目が相当ボロっちい。素手の戦いとか専門外もいい所なのでマジいらない。ただ、装着すると拳が光る魔法が込められているのでライトとして使える。あと、なんか人との絆を深めるごとにキズナグラムがペルソナって元気玉らしい。正直意味分からんので普通にガセか前に使ってた人のプラシーボ効果だと思う。ボロッちい見た目の通り譲ってもらった代物である。

 アイテムその五、エスエムチ。
 これは彼氏にフラれたというお姉さんっぽいお兄さんが捨てたのをコッソリ拾ったものだ。前にいかがわしい事に使っていた感がスゴいので一度洗ったが、そもそもダンジョンで鞭ってどうなんだろう。相手を怯ませるぐらいなら使えそうだが、メイン武器としては未知数だ。貴重な中距離武器ということで単純に相手を打倒する以外の使い道もありそうだし、何気にいい拾い物である。ちなみにお姉さんっぽいお兄さんは意外とイケメンだった。性的少数者に対する偏見が辛い世の中ですが頑張ってくださいとエールを送っておく。

 そしてアイテムその六、ウェポンホイール。
 手のひらサイズの車輪型魔道具で、武器と指定された物体を8つまで格納できるという超絶激レアアイテムである。が、使用の度にまぁまぁの魔力を消費する上に武器以外は一切格納できない。驚くことなかれ、今の俺では一回の使用が限界である。当分出番はないなコレ。ちなみにコイツは貧民街らへんの露店にあるのを発見してインテリアとして買ったのだが、帰り際に偶然会ったリューさんが使い方教えてくれた。ちなみにこのウェポンホイール、一個限りな上に製作者が不幸な事故で亡くなったために幻の品らしい。

『………リューさん、そんな一個しかない代物の事を何で使い方まで知ってるんでしょうか?』
『偶然です』
『まさかその製作者の事を何か知って……』
『偶然ですとも』
『昔、「疾風」という二つ名の………や、嘘です今のナシですからそんなに大仰なリアクションせんでください。モロバレじゃないっすか』
『ハッ!?こ、この話はナシですナシ!』

 俺の想像ではこいつを前に使っていた、或いはこれの持ち主を殺したのはリューさんではないかという根拠もない憶測をしていただけなのだが、口が滑った感は否めない。
 また豊穣の女主人勢力に若干のヘイトを稼いでしまった。実はシルさんが魔石の手口でベルを誘った時も、俺はうっかり「いや、落ちてなかったよね?懐から出さなかった?」と素でツッコんでしまってシルさんに笑顔で睨まれたのだ。あれは本当に悪い事をしたと思う。営業妨害イケナイ。



 
 で、数日後。

「バミューダ、援護!」
「ほいよッ!」

 バッチィィィンッ!!と痛々しい音を立てて俺の鞭が魔物の眼球にヒットした。

「アッギャアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」
「うるさいよ、ほいさ」

 痛みを通り越して苦痛に両目から血を噴出させて悶え苦しみながら泣き叫ぶ魔物に近づき、ギルド支給品の槍を魔石の近くにブスリ。魔物は絶命した。
 なんとこのエスエムチ、使い方を覚えると予想を上回る有用な武器であることが分かったのである。そもそもムチは元よりモノによっては先端が音速を超えて衝撃波を発生させるほどに速度が速い武器だ。つまり本質は破壊力ではなく痛み。いくら魔物でもやわらかい眼球に鞭をブチ当ててやれば眼球破裂間違いなしである。

「援護頼んでおいてなんだけどさぁ、エグいよ絵面が。眼球破裂させた後に槍で刺すとか冒険者の戦い方じゃないって。ヤクザでもそこまで酷いことしないよ」
「しゃーねーじゃん、破裂させられるものは。ん~便利便利♪」
「便利なのは分かるけどさ、最近その鞭使って手身近な物を取るのやめない?いつか手元が狂って僕にキツイの一発来そうで怖いんだけど」
「心配するな、死にはしない。ただ死ぬほど痛くて腫れるだけだ」
「それが嫌なんだってばッ!!」

 俺のレベルが2になったら十中八九「目潰(ブラインド)」とかになると思う。



 = =



 さて、どうでもいい話だが、俺はどうやら女神フレイヤの食指が働く魂の持ち主ではなかったらしい。それが証拠にベルがバベルの頂上から視線を感じた際、俺は別段何も感じなかった。俺が鈍すぎて気付かなかった可能性も存在するが、それはそれで面白いかもしれないのでいいかと思う。
 神が俺を眼中にないというなら、俺も神など眼中にないのだ。

 時に、俺のステイタスについて説明しておこう。俺のステはタンクやアタッカーに欲しい力と耐久が伸びにくく、器用と敏捷が上がりやすいという非常に分かりやすい後衛タイプとなっている。当然、具体的に聞いてはいないがリアリスフレーゼとかいう主人公補正全開なスキルのあるベルには総合的に負けている。

「く、悔しくなんてないんだからねっ!!」
「バミューダの凄い所は本気で悔しくもなんともない面しながらそういうセリフ吐けるところだよね。ていうかバミューダのステさぁ、器用値伸びすぎてない?なんか既にEとか行ってるんだけどステ伸び部分的におかしいよね?」
「え、そーか?ベル以外に比較対象いねーからわっかんねぇな。エイナさんにでも聞いてみるか?我らが主神様はこのまま俺らのスキルの伸びにしらを切り続ける腹積もりらしいし」
「あーね。あれで隠しきれてると思ってるんだから神様も可愛いよねー」
「ねー」

 人を疑う事を覚えてしまったベルはヘスティアがステイタスの事で隠し事している事にバッチリ気付いているが、バレバレなのに隠しちゃって可愛いなぁウフフ的なノリで放置している。なんやかんやでベルもヘスティアが意味もなく隠し事をしないとは信じている模様だ。

「今後の計画とかあるの?」
「んー、二人行動で結構隙潰せてるし、明日はもう一層攻めてもいいんじゃないかなぁって思ってる。エイナさんには怒られるかもだけど」
「ならせめて事前情報は仕入れていくか。荷物は……ま、虎の子のポーションを念のために持って行っとくか」
「えー、勿体なくない?高いでしょ、ポーション?」
「こういうのはケチらず使う。ラストエリクサー症候群ナメちゃいかんよ?」
「何それ?」
「勿体ない勿体ないって大事にし過ぎて結局使わないだけっていう無駄を端的に表した症状だね」
「何だ、ジレンマか。バミューダって訳の分からない造語作るの好きだよねぇ……特に去年おじいちゃんと一緒にやった『ゼノギアスおーぴーごっこ』って何だったの?まるっきり謎だらけだったよ?」

 その遊びは単にゼノギアスというゲームのOPムービーを再現するだけの遊びである。
 内容は以下のような感じだ。

バ「自立航行システム『ファウスト』へ高速言語にて干渉!位相空間ロジック、書き換えられています!」
  ↑無駄に女声
ベ「えるごりょーいき拡大、ろしん内にないぶちへーめん形成!くーかんてんいモードにシフトします!」
  ↑全然意味分かってない
じ「アルパ1から転移座標コード発信を確認!座標入力されました!NZ128、EZ061……本星ですッ!!」
  ↑意味が分かっているらしくノリノリ

「思い出したらまたやりたくなってきたな。今度神様誘ってゼノサーガのグノーシス初登場時のヴォークリンデのブリッジごっこしようぜ!」
「無駄に細かく指定してきたけど一切何言ってるか分からないよ、バミューダ?」

 波動存在やウ・ドゥとこの世界の神ってどっちが強いのかな。何とはなしにそう思った俺はその日のうちに波動存在とウ・ドゥの設定をザっと書き込んだ紙を用意して「神様本気出したらコイツに勝てるー?」って聞いてみた。

 神様ことヘスティアは真顔で俺の方を見て、「キミもしかして数千万年後から来た未来人か、禁断の果実を口にした追放者とかじゃないよね?」と聞かれた。何やら神の解釈に対する重大な何かが含まれた文章を書いてしまったらしい。なお、俺の書いたメモはその日のうちに竈にくべられ、ヘスティアには絶対にこの設定を他の神に伝えるようなヘマをしないようにと涙目で懇願された。

 俺は一体何を書いてしまったんだ。
 今日も今日とて梨を食べながら、俺はしきりに首を傾げるのであった。
  
 

 
後書き
M=目潰し喰らえぇぇぇーーッ!!のM。

波動存在……なんか発生確率0%のコトを無理やり起こそうとしたらひょこっと出てきたドジっ子。おうちかえりたい勢で主人公の主人公補正の原因の一端。
ウ・ドゥ……人間観察が趣味で上位領域に引きこもりな上に幼女ネピリムに首ったけな困った御仁。コイツのちょっかいで宇宙がヤバい。 
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