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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  接続不詳の暗殺者

これまでのあらすじ


五つの完全を率い、「EARTH」を急襲してきた男、アーヴ・セルトマン。

しかし彼が率いてきた五つの完全の内、「速度」と「再生」を撃破した「EARTH」。

召喚されたサーヴァントは五体。
その内、キャスターとバーサーカーも倒れた。

残された召喚枠は、二つ。


消耗しているのはセルトマン派ばかりであるにもかかわらず、彼の笑みは消えていない。


そして、最後の穴を埋める二枠。
弓兵(アーチャー)暗殺者(アサシン)のサーヴァントが召喚された―――――




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セルトマンの目の前で、二人のサーヴァントが召喚された。

一人はアーチャー。

着ている服装は制服。年齢は、20になったかそこらの青年。
オレンジ色の短髪がよく似合っている好青年だ。

セルトマンはどこで見たかなぁ?と、覚えはあるが思い出せないその制服を眺める。
しかし、そんなことはどうでもいいとばかりにアーチャーはポツポツと歩きだしてしまった。


「おーい?どこ行く」

「別に。俺に戦う以外の選択肢はないらしいからな。あんたと戦うのも有りだが」

「やめておけ。今ある自由が余計に減るぜ?」

セルトマンがゼストの際に行った令呪はその命令通り、彼の召喚したすべてのサーヴァントに適用されているらしい。

そして、彼の命令の中で「自害」と「同士討ち」は禁じられたが、セルトマン自体への攻撃は禁じられていない。
それは、セルトマンとしても彼等には自由に戦ってもらいたいからだ。


戦うことを強要する癖に、自由にしてもらいたいとは片腹痛い話だが、こればかりは仕方がない。
令呪の命令は絶対なのだ。


「だったら」

「ん?」

「あんたなんかにやられるよりは、俺はあいつと戦って負けたい」

「わざと負けんものなしだぞ?そのニュアンスで「自害」と言ったんだからな」

「解っている。そこまで馬鹿じゃない」


そう言って、特に走るわけでもなく歩いていくアーチャー。


彼にとって、相手はただ一人。
自分を倒す相手は、彼女のほかにありえない。




そして、もう一人の方は

「と、あとアサシン・・・・あれ?」

振り返ってアサシンの方を見るセルトマンだが、すでにそこにアサシンはいなかった。

っかしいなぁ・・・とため息をつくセルトマンだが直後、彼の首筋に刃が当てられた。


相手の姿は見えない。
後ろから首に手を回しており、当てられている刃はその手に握られたナイフである。


「解ってましたよね?」

「ん、まあ」

しかしその状況でも、セルトマンは何一つとして動きを見せなかった。

その必要がない。
その理由一つで、セルトマンはこの行動に対して防衛も対処もしない。


「まあいいでしょう。私はこれから行きますが・・・・」

「いいぞ。好きなやつ相手にして来い」

「ええ・・・・あの時やれないで後悔したので、今回はちゃんとやりますよ」

そう言って、アサシンも消える。


「さて。彼らの相手は決まりきっているし」

ザッ、トンっ

「とりあえず、俺はお役御免かな?」


そう言って、近くの樹の上に飛ぶセルトマン。
その上で、高みの見物と言わんばかりに戦況を眺める。

視線の先では、ゼストとクラウドがその刃を激しく打ち合っていた。




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「ヌァァアアアあああああ!!!」

「ゴッ・・・ハァアアアアアアアアッッッ!!!」

地上。
ゼストの突進を、クラウドが同じように大剣の突きで正面から打ち合おうとして、それを突き出した。

ゼストの踏み込んだ大地は、爆弾でも仕掛けられていたのかと思わせるほど飛び散り爆ぜる。
それを真っ向から受け止めるクラウド。

しかし、穂先同士がぶつかり合った瞬間に、ゼストの槍がピクリと動いた。


僅か0コンマ数秒の交差。
ゼストの槍はクラウドの大剣を絡め取るように跳ね上げさせ、クラウドは槍に対処するべく大剣を引き寄せて面でそれを受け止めた。

(オレより・・・速い・・・!!)

ゼストの妙技は、クラウドも同時に思いついていた。
しかし、そうなると後は読み合い。

どっちが先に動くのか、という単純な速さ比べではない。


相手が動くその一瞬先に動かねばならないのだ。

相手が穂先を少しずらしてくるのか
相手が腕をもう少し早く突き出してくるのか
相手が逆に引いて攻撃してくるのか

それらを読み、予測し、捌き動く。


相手の一手前に、じゃあこっちはその一手前に、その一手前――――

その読み合いの中、ゼスト・グランガイツはクラウド・ストライフに黒星をつけたのだ。



ゼストの突きに押されていくクラウド。

両足の筋肉を総動員させ、腰と腕を連動させ一つの塊とさせながら、それを受け止めることには成功していた。

しかし、彼が立つ大地はそれに耐えられない。
衝突の衝撃で、ミサイルでも打ち込んだかのようにクラウドの足元が後ろに向かって吹っ飛び、更にそこから押されて今も止まらないのだ。

地面は捲れ上がり、大地に刻まれるクラウドの二本の「足跡」。
そしてそれを、突進の勢いを衰えさせることのないゼストが踏み均して消し去っていく。


「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

突進の猛烈さを、そのまま声にしたかのような咆哮を上げていくゼスト。

しかし、ゼストは考える。

(押されるのはいいが、いつまでもこの状況に甘んじているとは。せめて数秒で突破してもらいたいものだが)

押されるのはいい。
しかし、押されすぎだと評価する。

そして軽い失望を抱いたとき、クラウドがそれを予見していたかのように

「ハァァアアああ・・・・!!フッ、フッ、フッ・・・ぬンッッ!!!」

呼吸を整え、一喝した。

一時停止ボタンを押したかのような制止。
それはビタッ!!というよりもバギンッ!と、空間そのものが凍結したかのような止まり方だった。


驚愕するゼスト。
止まったことにではない。その止まり方にだ。

そしてゼストがその感情に支配されているうちに、クラウドの手首が大剣をいじり、一本の剣が射出された。
それはクラウドの左手へと跳び、掴まれ、ゼストの肩を狙って薙がれて行く。


「ッ!?」

それを肩に食らうゼスト。
しかし、斬れたのはバリアジャケットのみ。

それが右肩に触れた瞬間、ゼストは身体を内側に回転させ、刃から回避していたのである。


「クソ・・・・!!」

「ぬんっ!!」

そしてそのまま回転しながら、槍を突き放すように突出させた。

大剣を軸に、クラウドの身体がくの字になってすっ飛んだ。
両手に握る剣を地面に突き刺そうとし、二、三回弾かれてからようやく突き刺し減速させる。


ガクリ、とクラウドの膝が折れそうになるも、それをどうにかこらえて立つ。

たった一合の剣撃。
一合と言い切っていいものかと少し疑問だが、そうでなくともこれまでの動作は「突き」「弾き」「押し切った」だけのことなのだ。

それだけで今、クラウドは息を切って呼吸を荒げていた。




ゼスト・グランガイツ
管理局において、オーバーSランクの魔道士。
かつてはリィンとユニゾンしたヴィータ、そしてシグナムですら勝つことのできなかった実力者。

クラウドからすれば、まだ相手を知っているセフィロスの方が戦いやすいという物だ。


それが、全くの未知数。
しかも相手はサーヴァントだ。マスターからクラウドの情報を得ている可能性がある。

だとすれば、開戦からしてクラウドは手痛いハンデを負っていることになるのだ。



しかし、クラウドが悲観しているのはそこではない。


(この男は、空を飛んでいた・・・・)

そう。彼は飛行能力を持つ「空戦魔導師」だ。
つまり、地上戦は「本分ではない」ということ。


しかし、本気ではないのはクラウドとて同じこと。
翼を広げ、その出力を跳ね上げていく。


「ほぉ・・・・その翼で力を上げるのか」

「ああ・・・・あんたには悪いが、時間も掛けていられない。さっさと決めさせてもらうぞ」

「そうか・・・・だったらこっちも「全力」を出させてもらうぞ。その翼、飾りではないだろうな?」

ゼストが言っているのは、侮蔑から来るものではない。
空は飛べるか、という質問に過ぎない。

そしてそれに、クラウドが応える。


「その時は、飛べない奴が悪い」

「フ、違いない」


空へとゆっくり昇って行く二人。

これで再び互角だ。
しかし、クラウドにはまだ奥の手がある。

勇気集束。
この序盤で使うには早すぎるが、今を越えねば先はないのだ。



(勝てる・・・!!)

しかし、油断はない。
クラウドが大剣に一本を組み込み、再び一本の大剣を構えた。


青いオーラが吹き上がる。
クラウドの魔洸が、剣と五体を包み込む。

そして


「フルドライブ!!!」

ゼストの魔力が噴き出した。
その呼び出しと共に、武骨な了解音声がデバイスから流れてきた。

噴出する魔力は、まるで旋風。
ゼストの足元から吹き出したそれは、全身を覆ってまだあまりある。



これで互角?
奥の手がある?

クラウドは、つい十秒前の認識をを改めた。


“そんな生易しい相手ではない”


大剣を握る手に、力が込められていく。
思わず、汗で滑りそうだ。


元時空管理局Sランク空戦魔導師と、自称元ソルジャークラス1st


その二人の実力は、現状において


「――――ゥオオアッッ!!!」

「・・・・ゼェアアッッ!!!」


前者が、わずかにして上である。



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「なんでオレら出ていけないんすか!?」

「待って、待ってください!!」


「EARTH」(仮)へとなのはと五代を連れてきたアリスは、次にそこから飛び出そうとするメンバーを抑えるのに精いっぱいだった。


「今行けば、あいつら全員ブッ倒せるだろ!?」

「俺達がそんなに信用できないのか?」

「あー、もー・・・でーすーかーらー!!話を聞きなさいこのおバカども!!」


「「「「「バカは城戸だけだ!!ふざけんな!!」」」」」

「テメェら俺の味方か!?敵か!?」

一同声を合わせて言い返す。
城戸は泣いてもいい。


ともあれ、話すだけの隙は出来た。
今の内にと、アリスは話を始めた。


「いいですか!?相手は大聖杯に手を加えています。よって、我々の想定できる聖杯戦争とは、根本から違ったものになる可能性があるのです!!」

「・・・・どゆこと?」

「つまりですね、七騎だと想定されていたサーヴァントは「七騎ではない」かもしれませんし、七騎のクラスも「既存の物とが違う」かもしれないんです。今ここで戦力を一気投入して、全力で「今ある七騎」を倒しても、さらに召喚された場合にどうするんですか!?」

「う・・・・・」

「関わる以上、絶対にあなたたちに好き勝手させません!!危険がある以上、行かせませんよ!!」


アリスは管理者だ。
わざわざ「EARTH」に関わり彼等と共にいる必要などない。

しかし彼女はかつての戦いから彼等と関わり、世界に身を置くことを決めたのだ。

ならば、引いた目などできる物か。
関わるのならば、全力で。


眺めるだけの無力な神になど、彼女はなる気など一切なかった。



しかし、それは先の見通せない推論でしかないことも確か。
今まで「敵と戦う」だけだった「EARTH」だが、「未知の敵」の出現によって、いままでの戦いが出来なかった。



戦いの場が広がっていく。
もはや、「EARTH」だけの戦いではなくなり始めていた。




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「おいアライア!!」

「なんだ?」

「お前に・・・ォラぁ!!聞きたいことがある!!!」

「獄炎砲放ちながら言うセリフではないな!!」

バグォッッ!!と、着弾と共に爆発を起こし、その煙の中から叫び出てくるアライア。
あらかたの物理攻撃を試した蒔風だが、アライアに有効的な一撃はなかった。


ならば、と思ってまずは獄炎砲を叩き込んだのだが、どうやらあの程度の炎熱では問題ないらしい。

しかし、その前に聞くことは聞いておく。


「あそこにいるのは、ゼスト・グランガイツだな!?」

「さあな!!お前たちの話は聞いていたが、召喚される者の名前など知らされていないからな!!」

放たれた獄炎弾を、裏拳で殴り飛ばすアライア。
アライアの一撃で後方上空へと打ち上げられた獄炎弾が、膨張して爆発した。

蒔風は次の手を練りながらも、その思考を奔らせていく。


(ゼスト・グランガイツ・・・だと?バカな。たかがその程度の人間がサーヴァントとして召喚?)

蒔風がゼストを「たかが」と評価するのは、強さのことではない。
その評価を付けるのならば、彼は間違いなくサーヴァントとして最高ランクだろう。

しかし、蒔風が思考するのはそのことではない。


(サーヴァントとして呼び出されるのは、世界各国に名を連ねる「英霊」たちだ。冬木のは製造過程故に西洋縛りだが、それは解除されているとみても・・・・)

ゼストが英霊として召喚されるのはおかしい。
先ほどガオウライナーが出現したのを見たが、あれならばまだ「時間破壊」という反英霊とはいえ素質がないとは言えない。

世界を危険に晒したのだ。
しかも、存在そのものに手を出す行為だ。ゼロとは言えない。


しかし、ゼストは違う。
いくら力が強くとも、彼が「英霊の座」へと召し上げられることはまずないのだ。

それには伝承が、畏怖が、信仰が必要であるからだ。


ゼストがいくら優れた魔導師で、その人生に様々なモノを抱えていようと、所詮は「一介の人間」に過ぎない。

その彼が、サーヴァントとして召喚されている。
蒔風が疑問に思っているのそこである。しかし、セルトマンが聖杯に手を加えているということを知っている今となっては、その疑問は簡単に解決できる。

問題は――――

(そう、セルトマンは大聖杯の接続先を「英霊の座」とは違うところに繋いだんだ。故に、英霊ではない者も召喚された。だが)


「問題は、一体どこに接続したんだ・・・・!?」

蒔風は、最初の違和感にそこで気づく。



かつて、彼はセフィロスを完全に消滅させたことがある。

フォーティーンの騒動の際、復活し、敗れたセフィロスを、ライフストリームの中に還元したのは他ならぬ蒔風自身だ。
自らの翼を使われた腹いせに、彼の魂を帰化させたのだが、ならばこの召喚はありえない。


魂をライフストリームに還されたにもかかわらず、なぜセルトマンはセフィロスを召喚する事が可能だったと言うのか。


(あいつが、セルトマンが大聖杯を接続した「座」は英霊の物ではない!!!)



呼び出されるサーヴァント。
しかし、それは英霊ではなかった。


では、だとしたら


「お前は一体、どこと接続させたんだ・・・・!?」



------------------------------------------------------------



「EARTH」の敷地をなぞるように、上空に円を描いて走り回るガオウライナー。
アヴィルドムを屠ってから、その後続の敵が出現してこない。


「なんだ・・・・もう終わりか」

飽きたのか、抑揚のない声でつまらなそうにつぶやく牙王。
眼前のモニターには、戦っている地上の映像が映し出されている。


今の彼は変身も解き、おもむろに取り出したグレープフルーツに丸ごとかぶりついて食っていた。

ガオウライナーも自動操縦。
もし、あの後にさらに喰いごたえのある敵が現れたのならば、この退屈もまぎれるかと思ったのだが・・・・・



「つまらん・・・・だったら、ここにある物全部喰らってやるよ」

《gaoh form》

手にしていたグレープフルーツを放り捨て、ベルトにパスをセタッチさせる。
オルガンのような荘厳な音声が流れ、同時に自身の名を同じフォーム名をベルトが発した。

銅のアーマーが装着され、牙王は変身を遂げる。


そしてライダーパスをマシンガオウストライカーに挿入。
自動操縦だったガオウライナーの瞳と言える部位に、意思のような光が輝いた。


『GAOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!』

「そうだ・・・何もかも喰らい尽くせ・・・・時間も、世界も!!すべてだ!!!」


ハンドルにある攻撃スイッチをスタンバイさせる。

それに応じてガオウライナーが鎌首をもたげ、その口内にエネルギーを充填し始めた。
放たれる標的は、ゼストと戦うクラウドだ。


同士討ちは禁じる、とされているが、この高度と威力ではそんなことは関係ない。
それを放てば、二人とも吹き飛ぶ。




現状、仮面ライダーガオウに敵味方の判断などない。

―――目の前の物を食らい尽くす
ただそれだけを、もはや本能ともいえる意識の中で、圧倒的な力で蹂躙する。


ガオウライナーの頭部に溜まるエネルギーはすでに、銅色を越えて黄金の域に達し始めている。


しかし、これほどの光があって――――本当に誰も気づかないものだろうか?


パチッ、と
ボタンを覆うカバーを、親指で上げる。

そして、腕の力ごと使って荒れ狂う力を、ボタンから押し出すように捩じり込み―――――


バグォッッ!!

「(ズンッ!!)がっ・・・なに・・・!?」

ガオウライナーが、黒炎弾の直撃を受けて揺れた。

地上を狙っていたガオウライナーが機体ごと揺れ、あらぬ方向を向かされてしまう。
放たれた破壊光線は上空へと伸び、雲を円形に散らせて虚空へと去って行った。



目の前の失態に苛立ちと殺意で舌打ちをするガオウだが、漆黒の炎弾はそれだけで終わらなかった。

その後二発目、三発目と撃ち込まれてきたそれは、後部の車両に命中して二、三両ほどを木端微塵にして破壊した。


周囲を見渡し、そしてそれが下から放たれていたことを確認してからガオウライナーが下を見る。


そこにいたのは、不敵な笑みを浮かべチョイチョイ、と誘ってくる男。
しかし、ガオウが目を見開いたのはその男にではない。


その男が立っている、その足場にしている「怪物」だ。


先ほどの黒炎のように、体躯は漆黒。
犬、と言えば可愛いものだが、その身体は優に20メートルを超えている。

その頭部は三つあり、それが連続して放ってくるのがあの黒炎なのだろう。


「これは下剋上って言うと思うかね?」

「貴様ァ・・・・・・」


蒔風ショウの誇る、魔導八天が魔獣の一・ケルベロス。

誰も、ガオウライナーの砲撃に気付かなかったのではない。
この男がいたからこそ、気にかける必要性など無かっただけの話だ。


ドフッ、とその四肢にて疾駆し、空を蹴り、ガオウライナーと同高度まで上がってくる。


ショウの言った意味は、ガオウには解っていない。
しかし、目の前の男を見ていると何とも言いようのない怒りに身体が支配されていくのを感じていた。



「こっちも消耗が激しいんだ・・・・全力でッ・・・・いかせてもらうぞ!!!」

ガオウライナーと対面し、そしてケルベロスの頭の上で魔導八天のうち二本を握って構えるショウ。
身体を半身に切りながらも、腕を大きく開いたスタイルだ。


ショウの前体重の姿勢に合わせ、ケルベロスも上半身を引っ込めていく。
それは、ダッシュの際の溜めのように――――


同時、ガオウもまたアクセルを捻りっぱなしだった。
ギアを解放すれば、この列車はその巨大な顎を以って眼前の化け物を喰らい、砕き、破壊するだろう。



「はぁぁあああああ」

「ふ・・・フフ・・・・・」

一人は溜め、一人は笑う。


そして、掛け声とともに疾駆した。


「行けェッ!!!」

「フハハハハハハァァッッ!!!」



駆けだす魔獣と列車。
両者とも剥きだすは牙を顎。

そして、その両者が組み付き、喰らいついた瞬間に


「ダァッ!!」

「唖゛破ぁ゛あああああ!!!!」


ガオウライナーからガオウが、ケルベロスの頭部からショウが飛び出し、お互いの大剣を振り上げ



ドォンッッッ!!!



激突した。



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「こら!!ここは今立ち入り禁止だぞ!?」

「ちょっとなによ!!入れなさいよ!!」

「待てハルヒ!!いくらなんでもお前無茶だろう!?」

「うっさいわねキョン!私たちだって「EARTH」に登録してんのよ?ってか、こういう時のために登録したのにそれで入れないなんて登録損よ!!裁判を起こすレベルよ!!」


「EARTH」敷地内に入るための、外門。
そこで、一悶着を起こしているグループがあった。

言わずもがな、SOS団である。


涼宮ハルヒとしては、不思議なことがあったらそれを目の当たり、もしくは体験するために「EARTH」登録したようなものだ。
だと言うのに、いざこの状況になって蚊帳の外では意味がない。


彼女の言い分はもっともだが、少しは状況を考えてくれ、とキョンは思う。


そしてこういう時、躍起になった彼女を抑え込む役目は自分しかいないのだ。
いつも通り長門は見詰めているだけだし、みくるはおろおろ、古泉は憎たらしい(とキョンは思う)笑みを浮かべながら、朗らかに笑っているだけなのだから。


「あ、あのぅ、さすがに危ないんじゃぁ・・・・」

「そうですねぇ・・・・涼宮さんに何かあるとは思えませんが、万が一ということもあります。ここは撤退させるのがいいのでしょうね」

長く、それこそ20分近くはキョンとハルヒのやり取りを眺めていた小泉だが、そろそろ潮時かと足を踏み出す。

眺めていた理由としては「飽きない、面白い」という感情からだが、中の状況からしてかなりヤバい相手らしい。



「開けなさいよコラァ!!」

「ちょ、本当にこの中危ないんだからグボア!?」

「ハルヒーーーー!?ちょ、おま、なにしてんですかコノ野郎!?」


「EARTH」の入り口を固めていた小野寺ユウスケの鳩尾に蹴りをクリティカルヒットさせてしまうハルヒ。

どうよ!!とドヤ顔をしている当人だが、キョンにはそれが偶然だったことは解っている。
ついでに、内心焦っていることもだ。


「ハルヒ。お前やっちまったな」

「な、なによ!?開けないこの人が悪いんだからね!!」

「お前が悪いわ!!」

「ぐぉお・・・」


膝を付き、腹を押さえて悶えるユウスケなど眼中になく、こうなったら柵を無理やり登って行ってやるとしがみつくハルヒ。

それを止めようとするキョンと、駆け寄っていくみくる。
古泉も仕方ないですね、と笑いながら進む。

しかし、何かを感じ取った長門が古泉とみくるを抜いて先に進んだ。


ハルヒをどうにかして降ろしたキョンが、ユウスケに謝りながら帰ろうとしているところに、話しかける。


「ここは危険」

「ん?ああ、ハルヒがこんなとこいたんじゃ、何はじまるかわかったもんじゃ・・・・」

「違う」


空気が変わる。
ピリピリとした、明らかな意思がそこには込められている。

気の抜けていたユウスケも、それに反応して周囲を見渡す。
咄嗟にアークルを出して、手をかけるくらいには、この場の空気は激変していたのだ。


この場には――――明確な殺意がある。



「違うって・・・なにがだ?」

ハルヒは止めようとしてくるみくるへの絡みで聞いていない。
一応ハルヒには聞こえ無いよう、キョンが長門に聞く。

「ハルヒは危なくないのか?」

「そう。今この場で、最も危険なのは―――――」

そこまで言って、長門が急に振り向いた。
そして、キョンの顔面に向かって猛スピードで腕を伸ばし、それが首筋から後ろに過ぎていく。

「あなた」


バシュ!!!という音がした。
振り向き、よろける様に下がるキョンが見たものは、凶悪なサバイバルナイフを握って止めている長門の手だった。


「な・・・これは・・・・」

それには、とてつもなく見覚えがあった。

忘れようか。忘れるはずもない。



それほどまでに、これが彼に与えてきたインパクトは大きい。

一度目は、放課後の教室。
二度目は、冬の日の北高校門前。

一度目は殺されかけ、二度目は腹に刺さりもした。


そして、その実行者が今―――――目の前に。



「あら?邪魔するのね、長門さん」

「彼は涼宮ハルヒを知るための重要な人間だから」


「彼女」を見た瞬間、古泉はハルヒを連れてみくると共に退散した。

言い訳など後からいくらでもできる。
今はこの現状から、彼女を遠ざけなければならない。



ズリズリと後退するキョンを、ユウスケが引っ張り込んで、庇うように背中に回す。

「彼女」はサバイバルナイフから手を放し、大きく一回転しながら後退していった。



「君も・・・・・召喚されたのか?」

ユウスケが問う。
いまこの状況で彼らを襲うのは、それしか考えがつかないからだ。

そして、キョンに視線を向ける。


「知り合い?」

「知り合いも何も・・・・」

声が震える。

無理もない。
キョンはこれまで幾度も「危機」に遭遇していたが、明確な「死」を思わせるような存在は、後にも先にも「彼女」だけだ。


「彼女は、私と同じ対有機生命体用ヒューマノイドインターフェース」

「ん?」

「あー。宇宙人、ってことっす」

「しかし、彼女はデータごと、情報統合思念体から消滅したはず・・・・」



「あー、そこはあれです。マスターのおかげで復活というか。で、私・・・・後悔しようにもやることやれてないので、やりきることにしました♪」

目の前の「彼女」は、取り出したサバイバルナイフを弄ぶように手元で回す。



「キョン君―――――」

そして、ユウスケの背後のキョンに切っ先を向け

「死んで?」

落ちた消しゴムを拾って?とでもいうかのような口調で――――――



――――アサシン:朝倉涼子はニコリと笑った。






to be continued
 
 

 
後書き

戦場が広がってキターーーーーー!!!!
「EARTH」の敷居から出て、ついにアサシン召喚!!!

蒔風の推測が正しいことの、何よりの証拠ですね。


ショウ
「そうか・・・・「英霊の座」に接続したわけじゃないから、英霊じゃないゼストや朝倉涼子を召喚できるわけね」

アリス
「あれ?じゃあどこに?」

どこでしょうねぇ?
うふふ。


さて、現状のサーヴァントは

セイバー:セフィロス

ランサー:ゼスト・グランガイツ

アーチャー:不明

ライダー:牙王(仮面ライダーガオウ)

アサシン:朝倉涼子

キャスター:“LOND”《撃破》

バーサーカーフォーティーン《撃破》


残るアーチャーは誰だ!?
そして、そろそろ次の完全にも終わりが・・・・・・?

理樹
「次回、硬度の完全、暴走・・・・?」

ではまた次回 
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