世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
止まらぬ再生
これまでのあらすじ
大聖杯の起動。召喚されるサーヴァント。
セイバー・セフィロス
キャスター・“LOND”
バーサーカー・フォーティーン
かつて倒された怪物たちが、再び目の前に現れる。
更に、なおも止まらぬ完全の従者。
そしてバーサーカーを破ったクラウドの前に、新たなるサーヴァントが召喚された―――――
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「ゼスト・・・・グランガイツ?」
「元時空管理局員だ」
クラウドが名を繰り返し、自らの出自を語るゼスト。
ガチャリと、地面に立てられた槍が抜かれた。
それに反応し、剣を構えるクラウド。
しかし、その切っ先はセルトマンの方へと向けられた。
「・・・・・・・」
「おう?どういうことかな?」
「解っているだろう。この戦いを終わらせろ」
ゼスト・グランガイツ。
元時空管理局Sランク魔導師。
彼はもともと、悪人ではない。
結果としてスカリエッティという悪に加担してしまっていたが、彼自身は正義と平和のためにその力を使う武人である。
その彼が、今この状況でセルトマンの言うことを聞くかというと、そうではない。
「終わらせるんだ」
「おいおい。君の願いは良いのか?死んだ部下を生き返らせるんだろう?」
「そうだ。しかし、彼らに刃を向け、なおも貫く願いではない」
死んだ部下、というのはスバルとギンガの母、クイント・ナカジマ等のことだろう。
彼等の死に納得のいかない彼ならば、自らを置いておいたといしても彼女たちを復活させたいと願ったとしてもおかしくはない。
だがその為に必要なのはサーヴァントを倒すこと。
この聖杯戦争は、セルトマンによって歪められたものだ。彼としては本意ではない。
「まったく・・・・まあそうなるよな。あなたならそうなると思っていた」
「なに?」
しかし、その状況でセルトマンはやれやれと肩を竦めて見せるのみ。
「サーヴァントとして召喚されたものは、確かに願いを以って召喚に応じる。それが、この聖杯戦争に参加する意味であり目的だ」
だからこそ、サーヴァントもこの戦いにすべてをかけるのだ。
その生涯にて果たせなかった、願望をかなえるために。
しかし
「私の大聖杯の使い方は違う。そんな方法での至り方は出来ん」
セルトマンの「目的」
世界を破壊し、それでなお自らの存在を証明することで自らの「完全」を証明してみせること。
だが、彼の言う目的とは単純な破壊では済まないらしく、彼なりのやり方があるらしい。
大聖杯は、その為の物。
(・・・・まて。だとすれば!!)
クラウドがそこで思い至る。
確か、この戦いが始まる前、セルトマンは―――――!!!
『ただ目的を完遂しても面白くない。君らを障害として選んだんだ。せいぜい楽しませてくれ・・・・』
そうだ。
彼はこの戦いに意味はないと言っていた。ただ、「EARTH」との交戦を楽しむためだと。
ならば、今の発言は矛盾している。
彼は間違いなく「大聖杯が必要」だと言ったのだ。
しかし、自分たちの知らない別の場所で大聖杯を使用すればいいのを、わざわざ来たんだ、という考えもできる。
それなら、クラウドの推測は外れる。
しかし、セルトマンのニュアンスではそれは違う。
何より、確定的なのは―――――
「君達には戦ってもらわねばならない。そして、もっとデータが欲しいんだよ」
セルトマンの言葉。
クラウドがいると言うことを失念しているのか、それともこのことを聞かせて楽しんでいるのか。
これを意味することは、ただ一つ。
(まだだ・・・・まだこいつを止めるのは、遅くない!!!)
クラウドが、蒔風に連絡を取ろうとする。
今、彼はセフィロスとの交戦中だ。
しかし、それでもこの情報は伝えねば・・・・
「令呪を以って命ずる。ランサー、否、この戦いを拒否するサーヴァントたちよ。“自害、若しくは同士討ちを禁じ、戦闘の拒否をすることは許さない”。誰と戦うくらいの自由は与えてやるよ」
ガクン、と、ゼストの身体が揺れた。
連絡を取ろうとしたクラウドの手も止まる。
どうやら、そうしている場合ではなくなったようだ。
「すまない。どうやら、戦いを拒否することは許されないようだ」
「かまわないさ」
戦うだけの人形にはされないらしい。
だが、それでも意にそぐわないことをされるのだろうと思うと、クラウドはセルトマンへと怒りを込めて睨み付けた。
それは相手の想いを無視した行い。
翼人はそれを決して許さない。
しかし
「ただし・・・・戦ってみたいとは思っていた」
「・・・・なに?」
「俺が死に、世界はいろいろと変わったようだが・・・・果たして今のお前達に「世界を護るだけの力はあるのか」を試してみたかった」
ゼストが言うことももっともだ。
自分がいなくなった後の世界が、大丈夫かどうかを案ずるのは。
その思いは、果たしてセルトマンの令呪から来る思い込みか。
それとも、本来彼が持つ想いなのか。
「行くぞ。証明して見せろ」
その瞳に曇りはない。迷いもない。
あるのはただ、目の前の敵と戦うと言う一人の武人の、鉄の意志の想いのみ。
「・・・興味ないね」
それを皮肉るように答えながら、まんざらでもない笑みで返すクラウド。
そして、クラウドが駆け出そうとした瞬間
「ゼァッッ!!!」
ゼストの一閃が走り、クラウドへと斬撃が飛来していった。
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「あれは・・・・!?」
「余所見をしている場合か」
「グゥッッ!!!」
召喚されたゼストと、クラウドの激突を見ながら、上空の蒔風はセフィロスの一撃を朱雀青龍刀で受け逸らしていた。
セフィロスの背には、片翼の翼が。
サーヴァントとして召喚されるのはその人物の最盛期の姿でだ。
クラウドへと移されたはずの漆黒の翼があるのは、そう言うことだろう。
「それにしてもお前、よくも一回俺の翼を使いやがったな」
「あれか・・・・フ」
「あ?」
「大したことのないモノだった、と思ってな」
「ンだとコラ!!!」
蒔風が押し切り、一回転して玄武盾を投げた。
空を裂いて飛んでいくそれをセフィロスが弾き、その隙に接近した蒔風が青龍刀で斬り裂いた。
それを当然の如く受け止めるのがセフィロスだが、蒔風の姿が一瞬だけブレた。
「なに・・・・・ごァ・・・・!?」
目の前の蒔風の姿は、まるで投影していた映像の様にブレ、青龍の姿へと変わった。
そのことに驚愕するセフィロスの背後に、突き刺さる白虎釵。
背後には、深々とそれを両手で押し込む蒔風がいた。
「移し身・・・・・か!」
「移ったんじゃない。映したんだ」
七獣たちは、蒔風の姿を取ることができる。
かつて青龍も、蒔風のふりをして行動していたことがあった。
ただそれは姿だけなので、看破されれば一瞬だ。
しかし、この戦いのさなかではその一瞬が命取りになる。
「貴様・・・・!!!」
背後からの一刺しに、セフィロスが身体を返そうとする。
しかし、蒔風の瞳にはいやらしい笑みが。
「っと、いいのか?」
首だけを返して、セフィロスが前に再び首を戻す。
そこにいるのは青龍。
手に持つ青龍刀は、正宗で押さえているため攻撃には転じないだろう。
そして、青龍の姿が消えた。
正確には剣の状態へと姿を変えただけだが、その一瞬がセフィロスに緊急回避行動をとらせるには十分だった。
もう一本の白虎釵が、飛来してきていたのだ。
青龍刀を抑えることで固まっていた正宗。それを握る腕を強引に引き上げ、背中の痛みを無視してでも体勢を崩しながらそれを弾いた。
そして、そのまま回転して背中の蒔風を引き剥がす。
放り出される蒔風。
気配を断って背後に立つためか、開翼はしていない。
その蒔風に、その回転のまま正宗が振るわれた。
振り落とされ腕が開いてしまった蒔風に、受ける術はない。
回避しようにも、今から開翼では間に合わない。
「っと、いいのか?」
しかし、蒔風はこの言葉を繰り返した。
セフィロスが、即座に振り返る。
しかし、そこには何もない。
直後、胸に重い一撃と、激痛が走る。
「同じ手を二回もするか」
蒔風が、セフィロスの胸に白虎釵を突き立てていた。
いつの間に回収したのか。
セフィロスの体内で前後から突き刺さった二本の白虎釵がカチンと接触し、接合したかのように離れなくなった。
そして、両方の柄から白い光が伸びつながっていく。
「ォオ、ラ!!!」
その光の紐を掴み、蒔風がセフィロスを振り回した。
地面へと叩きつけ、上空から落ちてきた朱雀槍を手にしながら一気に落下、開翼して加速する。
セフィロスの脳天から串刺しにし、消滅させるつもりだろう。
朱雀槍を突き出したのと反対の手で、白虎釵を引き上げセフィロスの身体が蒔風へと向かった。
無抵抗で引き上げられていくセフィロス。
しかし、その腕が一瞬の動きで白虎釵の紐を断ち切った。
「んあ!?」
「甘い」
背と正面から白虎釵を突き刺されているというのにもかからわず、セフィロスは涼しい顔をして白虎釵を抜き蒔風へと投げ放った。
それを朱雀槍で受け止め、その両先端に装着し朱雀白虎釵へ。
今更止まらぬ加速を以って、蒔風がセフィロスと交差する。
―――――ブシュッ
「グォゥッ!!!」
唸り声をあげたのは、蒔風。
つんのめったかのように上半身から体勢を崩し、地面へと落下して行くのは蒔風だ。
胸と背中から血を流すセフィロスは、それを撫でた。
「どうやら、こうしている間にも治癒は進んでいるらしい・・・・サーヴァントというのもなかなか便利な物だ」
セフィロスは簡単に言うが、そんなものでは到底ないだろう。
マスターは確かに、サーヴァントの怪我を治癒しうる。
しかし、これだけの傷をすでにここまで修復しているというのはあまりにも桁外れだ。
(グッ・・・ッ・・・・いくらなんでもセルトマンの魔力がそんなにあるとは・・・・しかし、他が思いつかない!!)
セルトマンがその全てを大聖杯から魔力のバックアップを受けている、という考えもできる。
しかし、あれだけの物をただのバックアップとして使うだろうか?
セルトマンの能力やカラクリは解らないが、いままで接してきた人物像からしてそれは違うと思う。
ならば
(アーヴ・セルトマンには、あれだけの魔力がある。若しくは、それを可能にするだけのきっかけがあると言うこと!!!)
前者の考えは切って捨てた。
理由は簡単。セルトマンかそれだけの魔術師ならば、生まれた時から封印指定なんかになるはずがない。
つまり、彼を封印指定とさせている「何か」を突き止めない限り、彼の魔力に終わりはないと考えた方がいい。
ドフッ!!という重い音がして、蒔風が地面へと墜ちる。
即座に体勢を整え、上空を見上げる。
自分を見下ろしているはずの、セフィロスがいない。
周囲を見渡すと、大回りしてきたのかそれだけの勢いをつけてセフィロスが刃を構えて突っ込んできていた。
それを、バックステップしながら畳返しで妨害していく蒔風。
後ろへと蹴る足で地面を撥ね上げていくが、乱立させたそれ程度ではセフィロスをとどめることができない。
クソ!!と悪態をつきながら、思わず腕を出して剣を取り出そうとしてしまう蒔風。
しかし、そこに天地陰陽がないことを思い出した時にはもう遅く―――――
ギャァンッッ!!!
「なに?」
「舜!!!」
その刃を、理樹がバリアで受け止めていた。
自分の斬撃が、振り切られることなく完全に止められたことに、セフィロスの口が笑った。
「理樹?」
「こっちは僕がやるから、舜はあっちをお願い!!」
「あっち・・・?っておぉう!?ダァッ!!!」
理樹の言う方向を、なんとなしに振り向いてみる蒔風。
するとそちらから放たれてきた拳が蒔風の鼻先を掠った。
倒れ込むようにそれを回避し、地面に手を押し当てて蹴りをぶちかまし、迫ってきたアライアを押し返す。
「ヅっ!?」
「任せたよ!!」
ドンッ!!とそれだけ言って理樹がセフィロスを押し切って飛んで行った。
一方、蹴り飛ばされたアライアは去って行った理樹に罵声を浴びせて叫んでいた。
「おい貴様!!決着もつけずにどこへ行くのだ!!!」
そして、一気に跳躍しようとしゃがみ込んだ。
上を見上げ、正面が視界に入っていない。
故に、そこに蒔風の土惺による一撃が命中した。
「がッ!?・・・ぶぁ、何をする!?」
「うぇ・・・あの巨岩ぶつけられて吹っ飛ぶだけか」
「当たり前だ。その程度の硬度では、私を傷つけることは出来ん!!」
硬い、とはいっても、アライア自身の重さは変わらない。
土惺の攻撃は効いていないようだったが、その重さで理樹を追うことをやめさせることは出来た。
「まあいい・・・・今度は貴様が相手をしてくれるのか?まあ、直枝理樹はもうつまらなかったからな。あれは最後にまで置いておこうとするか!!」
蒔風を新たな標的に定め、意気込み叫ぶアライア。
それに合わせて、しゃがんでいた蒔風が立ち上がる。
「まあ、任されたからな」
「俺たちもいるぜ!!」
「まったく。俺たちのリーダーは自由だな」
にやりと笑いながら言う蒔風の隣に、真人と謙吾が立つ。
謙吾は理樹を見上げながらひとりごち、真人が拳を向けてまだまだという意気込みを見せた。
「さぁて・・・・硬度の完全だったか」
「そうだ。直枝理樹よりもなお硬く!!そんな私を、どう倒す!?」
「それでもやんのがオレらなんだよ」
「リトルバスターズを舐めるな」
アライアの言葉に、二人が応える。
その中、蒔風の内心は
(やっべ・・・・・)
最初に蹴り飛ばした時、右足を痛めた。
硬い硬いとは聞いていたので、理樹を蹴り飛ばすつもりで蹴ったのだが、まさかここまでとは。
更にはセフィロスに切り裂かれた胸部。
今は大丈夫だろうが、いざという時に痛むと厄介だ。
しかし、それでもやらねばなるまい。
「EARTH」局長が、大きく一歩出て指を指す。
「ここの硬さじゃ、負けねぇんだが」
そう言って、胸のあたりを指す。
無論、意志の固さで勝てる相手ではない。
しかし面白かったのか、アライアが肩を震わせた。
そしてその笑い声が大きくなっていき、大笑いへとなりながら、一気に三人へ突っ込んできた。
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変身を解いた五代となのはが、唖然として目の前の光景を見ている。
とはいっても、そこに何かあるわけではない。
否、そこにはさっきまで確かにあったのだが、消滅してしまったのだ。
二人はその空間を、じっと眺めていた。
あまりの光景に、いまだに目を反らせられない。
事の始まりは、簡単だった。
ぶつかり合った瞬間の、五代の言葉がきっかけだったのだ。
「君はまた、そうして死ぬんだね」
その一言は、あまりにも加々宮にとってプライドを揺さぶられた。
当然だ。どんなことをされても死なず、必ず再生してきた彼が「死ぬ」という評価を受けたのだから。
「どういうことだコラ」
クウガを殴り飛ばし、聞き返した加々宮。
荒い息を整えようとしながら、クウガは言葉を紡ぐ。
「君はそうして何度も死ぬ。そのたびに再生する。一体どれだけ、その死ぬ苦しみを味わうんだ?」
「ハ・・・死んでねェし!!俺は死なないから「再生の完全」なんだよ!!」
「その為に君は何度も死んだ。それだけ再生したと言うことは、それだけ「死んだ」ということだよ」
再生の証明。
それは、最初は小さな傷から始まった。
即座に完治する傷。
訓練で、痛みもなくすことができた。
次は指を切った。
即座に再生した。
腕を切った。
即座に再生した。
脳をつぶした。
心臓を抜き取った。
全身を焼いた。
五体をバラバラに放り捨てた。
それでも再生した。
彼は吼えた。
俺は、絶対に死なない、と。
しかし、その証明のために行われたのは「死ぬ」ということ他ならない。
不思議なことだが。
決して死なないとされた彼は、誰よりも死を経験していたことになる。
五代雄介は、そのことを可哀そうだと言った。
実際にそう言ったわけではない。しかし、仮面に隠れても加々宮にはその意思を感じることができた。
言葉に、それを感じ取れたのだ。
「一体何度死んだんだ・・・・一体何度、殺されてきたんだ!!そんな命を投げ出すようなこと、するな!!」
この戦いで、クウガも当然加々宮に攻撃をした。
しかし、それは避けられる範囲だったし「避けてくれ」という思いもあった。
だがそれを加々宮は受け、そして再生した。
途中からなのはの攻撃が主体になったのはそう言うことだ。
これ以上、仮面ライダークウガ・五代雄介に彼を攻撃することは出来ない。
「お、俺が・・・・死んできただと・・・・?」
「だってそうだろう?それだけして死なないとわかっているということは、それだけ殺されてきたということなんだから」
「違う・・・オレは、俺は死んでねぇ!!一度も死なねぇ!!俺は完全なんだ!!」
「もうやめよう・・・これ以上は・・・・」
「ア、ぁあア!?テメェこれ以上言ってみろよ・・・・殺すぞ!!!」
「俺たちを攻撃するのに、君は一体何回死ぬつもりなんだ!!!」
「ウルっせんだよ、バァァアアァッッッッカ!!!!」
加々宮が吼える。
今まで築いてきたものが、今危険な状態であると彼の中でアラームを鳴らしている。
五代雄介に、そのつもりはない。
しかし、その言葉は彼を確実に抉り取っていた。
前回、加々宮の誇りや自信はいいものだと言った。
確かにそうだ。それはその人の背中を押し、自信となり、力と成る。
しかし、それがまずいことになる場合もある。
これこそがその典型だ。
「見てろテメェら、俺が死ンできただとぉ・・・・・何度も死んだだとォア!?そのこと後悔させてェ・・・・テメェらこそ死んでしまえ!!!」
自身を支えていたそれが揺さぶられ、崩れた時、それを守る方法がないからだ。
そして、加々宮にはそれしかなかったがゆえに、他で支えることが出来なかった。
「アぁ・・・ああああ!!――――――ッッッッ!!!」
加々宮の言葉が切れ、その姿が消えた。
一瞬の出来事に訳が分からなくなる二人。
しかし直後、なのはの側頭部が殴り飛ばされてその身体が吹き飛んだ。
レイジングハートにヒビが入り、バリアジャケットの上半身はその衝撃に吹き飛んだ。
そのままぐったりと木の根元に崩れ落ちるなのは。意識はある物の、身体が動かない。
そしてその後、クウガの胸部に一撃が叩き込まれた。
地面にクウガを押し付けるように叩きつけられたそれは、クウガの身体を地面に埋めた。
その衝撃に耐えられなかったのか、一発で変身が解除されてしまう五代。
だが、加々宮の怒りは止まらなかった。
地面に倒れた五代の首を掴み、その身体を持ち上げた。
「ガ・・・ハ・・・・」
「おぉぅ?あんたもなかなか頑丈な体してんなぁ・・・?」
「ゲぅ・・・・」
アークルに埋め込まれた霊石アダマムによって、五代の身体は変身せずともそれなりの強度を持つ。
しかし、それは今の加々宮の腕力に少し耐えられる程度の強度しか持ち合わせていないのだ。
「見ろよ・・・見ろ!!この腕には今、俺の自身の身体すら弾け飛んじまうような力が籠っている!!!!だが、弾けない。その意味が解るか!!」
五代を掴む右腕ではなく、左腕を万力で握りしめる加々宮。
見たところではただ思い切り握っているだけなのだろうが、実際には違う。
「何故弾けないのか。それはなァ、それよりも早く再生してるからだよ!!俺はもう傷つかねぇ。死なねえんだよ!!その前に俺の肉体は再生される!!」
ドォンッッ!!!
見せつけるように叫ぶ加々宮。
その身体を、横っ腹からなのはの砲撃が貫いた。
辛うじて動いた腕だけを動かし、ボロボロのレイジングハートで何とか放った一発だ。
しかし、そこには穴が開いていない。
確かに通過したはずなのに、そこには穴の一つも空いていないのだ。
「ははははははは!!これだ、これで完成だ!!完ッ全だ!!もう俺は傷つかない。傷ついたとしても「それが効く前に再生しちまう」んだからなァ!!!」
その再生とは、いかほどなのだろうか。
そして、その再生は―――――
「はははは・・・あ?なんだ?なんでお前ら大きく・・・・」
加々宮が疑問の声を上げる。
自分が持ち上げているはずの五代が、だんだんと下がってきていた。
五代の足は地面につき、ついに首から手が離されて転がる。
加々宮の意志ではない。
しかし、それもしょうがないことだ。
加々宮の手は、すでに五代の首を掴めるほどの大きさをしていなかったのだから。
「若返って・・・る?」
「ゴホっ・・・これは・・・・」
もう見ることしかできないなのはと、首を抑えて地面に倒れる五代。
加々宮から転がって離れ、五代は加々宮の全身を見た。
若返っていた。
最初は二十代前半かそこらだった加々宮だが、今は小学生ほどの大きさになっていた。
人は年を取るとともに身体が疲労し、摩耗していく。
もしも、それすらをも「肉体の損傷」と考えるのであれば。
そして、それを再生してしまい、抑えが利かなくなってしまったら――――――
「クソッ!!止まれ、止まれ!!再生、やめろ!!やめろ!!お、おれが、俺が・・・消え・・・消・・・・k・・・・・」
その「再生」は止まらない。
加々宮という男の逆再生を見ているようだ。
否・・・・まさに逆再生、なのだろう。
その再生は加速度的に早まって行き、身体はついに赤ん坊へ。
それでも彼の意識は残っているのか、その表情は赤ん坊の物とは思えないものをしていた。
そしてだんだんと小さくなり、髪の毛が短くなって頭に収められていくかのよう。
腕や足は関節の位置が曖昧になってきて、身体全体が丸まって行った。
そして次第に丸まっていた身体が、本当に丸へと近づいて行った。
腕や足が胴と繋がり、顎と首がくっついた。
瞳は引っ込んでいって、瞼が閉じられる。
しかし、ここまで行くともはや二人には見えていない。
そんな大きさをしていないのだ。
そしてその足や腕、頭などの箇所すらなくなり、コンマ数ミリの球体へと「再生」した。
そして、そこから二つの物質に分かれ、それが離れて行き――――――
パチン、と
小さな音を立てて、再生の完全・加々宮は消滅した。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
二人の呼吸音だけがする。
遠くからは爆音が聞こえてくるが、それもよく耳に入らない。
唖然とするばかりだ。
蒔風から彼らの暴走を聞いてはいたが、あまりにも衝撃的な光景に声が出ない。
百聞は一見にしかず、というのはこういうことを言うのだろう。
勝ったのか。
そう確認し合うように、五代となのはが顔を見合わせた。
そして、安堵の息を吐こうとした。
ド、ドンッッッ!!
その瞬間、まともに動けないなのはと五代の前に、“LOND”とショウが降りてきた。
「ショウ君!?」
「と・・・敵か・・・・・!!」
実際には降りてきた、というほど生易しくはない。
猛烈な勢いで落下してきた、というのが表現としては正しい。
そして、二人の目の前で
その衝突の余波を気にすることもできないまま
“LOND”と蒔風ショウは、お互いに轟撃をブチかましたのだった。
to be continued
後書き
満身創痍でボロボロ。
もうこのまま横になりたいところに“LOND”とショウがドーン!!
巻き込まれてまう!?みたいな終わりです。
加々宮、敗退。
一番生き残りそうだった彼が、言葉一つに翻弄されてしまうとは・・・・・
ちょくちょく書きましたが、加々宮はもともと身体の強い人間ではなかったのです。
そこで、この完全。
そりゃ、あれだけのプライドも持ちますよね。
セルトマンも令呪で縛ります。
これはもう戦うしかない。というか戦ってもらわないと困る。
作者のストーリー展開的に。
蒔風
「次回。ライダー召喚」
一体誰だ!?
蒔風
「結構いるなぁ・・・・」
ではまた次回
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