世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
復活の狂獣
これまでのあらすじ
偶然のおかげとはいえ「速度の完全」セルトマン一味の一人コールを倒した俺たち。
そこから解ったことは、敵の完全にエネルギー切れなどないと言うこと。
これ以上は時間を与えられない。
俺たちは多少強引な、半分以上が賭けになる作戦に出た。
しかし、それは失敗した。
俺たちは遅かったのだ。
大聖杯は起動してしまい、聖杯戦争は始まった。
そして今、俺たちの前に現れたのは――――!!!
★☆★☆★
「セフィロス!!!」
「召喚されたのか――――!!!」
今、蒔風たちの前にはかつて戦った、過去の英雄が立ちふさがっていた。
「さしずめ、あなたはキャスターと言ったところでしょうか」
「さぁてな。クラスを設けるならそうなるだろう」
そして、ショウとアリスの前には、消滅させられたはずの“LOND”
遠くに見える影を捕え、観鈴が驚きの声を上げた。
「二騎!?」
「そんな・・・・サーヴァントは一人一騎じゃないの!?」
当然のことながら、「EARTH」ビルで待機しているメンバーの誰一人として、令呪を宿したものはいない。
無論、外で戦闘を行っている者にもだ。
「マズイ!!」
アライアと交戦していた理樹が、その光景を目の当たりにして声を荒げた。
即座にアライアとの戦いを投げ捨て、「EARTH」ビルの地下に向かってバリアを発生させようと腕を振るう。
もはや、猶予はない。
召喚された以上あの二体は仕方ないとして、それ以上の召喚は防がなければならない。
こうなれば、ここの地脈が死ぬことになっても大聖杯を止めなければ―――――!!!
「おいぃ!!私を無視して何しようとしているのだァァァアアアアア!!!!」
「なッ、がゥッ・・・・!?」
しかし、その攻撃はアライアの突進によって止められた。
背中のど真ん中を突かれ、バリアは張ったものの体勢を崩される。
周囲には、リトルバスターズのメンバーがいる。
理樹の装甲を纏い、武器にしているもののいかんせん押され気味だ。
リトルバスターズ、というチームは、確かに心強いチームではある。
しかし、その本質は何でも屋という側面が強く、戦いに強い、というメンバー構成ではない。
事実、戦い向きではない小毬やクド、西園たちは裏方のサポートに回っている。
さらに理樹のバリアを纏っても、硬さが防げるだけでその威力が完全に防げるわけではない。
あくまでも彼らは「武装」しているだけなので、あくまで身に着けているだけなのだ。
喰らえば、その勢いはしっかりと体に食らう。
要は、防弾チョッキと同じようなものだ。
銃弾は防ぐが、その威力は殺せない。
理樹自身が持てば変わってくるのだが、この状況でそれは難しい。
それを踏まえ、この中で本当の意味で無傷と言えるのは理樹だけだ。
そして、アライアに攻撃らしいものを入れられるのは真人と理樹のみ。
アライアは、あの一瞬からさらに硬化していっていた。
もはや理樹自身の力か、真人の怪力でなければ傷を負わせることすら難しい状況だ。
(そんな中で、彼ら暴走させるなんて・・・・・!!!)
もう、理樹の中で倒すことに迷いはない。
しかし、実際にそれが実行可能かどうかは別問題だ。
「恭介!!みんなを下げて!!」
これ以上、戦いがどう激化するか予測がつかない。
そんな中での戦いとなれば理樹のバリアの出番なのだが、アライアと戦いながらそれができるわけもない。
故に、理樹は恭介に皆を下げてもらうように頼んだ。
彼がついていれば、恐らく大丈夫だろう。
絶対とは言い難いが、「EARTH」(仮)まで下がればまだ無事なはずだ。
「俺は残るぜ、理樹っち」
「俺もだ。これ以上この筋肉バカにいいところを取られてはいられんからな」
だが、その理樹の左右に真人と謙吾が並ぶ。
謙吾の攻撃は確実に命中しているのだが、真人に比べるといかんせんパワーが足りないのだ。
歯がゆい思いをしているのは、彼が一番だろう。
「うん。僕一人じゃ辛いしね。頼むよ!!」
「おう!!」
「任された!!」
バリアのナックルを打ち鳴らし
バリアでの竹刀を振るい
そして、その友の想いを翼にはためかせ。
薄緑の翼は、再び最硬の敵に挑みかかる。
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「セフィロス・・・・あんた、セイバーか」
「・・・・らしいな。だが今となっては意味のないことだ」
クラウドが語りかけ、その中で蒔風が思考を整理する。
(考えろよぉ・・・・・・セルトマンは大聖杯を起動させ、こうして英霊を召喚させた・・・・)
緊張した面持ちで、蒔風がセフィロス、そして遠くの“LOND”を見る。
(かつて世界を破滅させようとした男。かつて世界を一つにしそれを我が物としようとした男・・・・英雄としちゃペケだが、反英雄としちゃ及第点・・・・)
そこで、違和感に引っ掛かる。
しかしそれがなんなのかはまだわからない。
(とにかく、セルトマンは一人で召喚したとみていい。確かに、魔力量さえあれば複数のサーヴァントを率いることは可能だ。しかし)
令呪だ。
いくら魔力量があろうとも、令呪一種につきサーヴァント一騎だ。
セルトマンはどのようにして二種の令呪を集めたのか。
しかも、魔力量があればとは簡単に言うが、サーヴァント一騎維持するのにも、膨大な魔力が必要となるのだ。
一騎程度ならば大聖杯からのバックアップで何とかなろうが、それが二騎。しかも、それを同時に戦闘に出してはマスターの枯渇は目に見えている。
無論、セルトマンに枯渇して死ぬなどということはないだろう。
さらに言うならば、セルトマンが得ているサーヴァントが「一騎である保障」はない。
「退くぞ・・・・」
「なに?」
「こうなった以上、俺たちが大聖杯に手を出す意味はない!!というか不可能だ!!こんな状況で、こいつら相手に手出しなんかできんだろ!?」
「―――――・・・・・・くっ!!!」
蒔風の言葉に、クラウドが反論しようとして口を開き、言葉を選んで、しかし何も出てこなかった。
この状況で、今できることなどたかが知れている。
「行くぞ!!」
立ち上がり、来た道を戻ろうとする。
それを笑って追うセフィロス。
その後から、セルトマンがゆっくりとビルから出てきた。
「なるほど。確かに今はその手しかない――――いや、こうなった以上、有効的な手だ。しかし」
言葉をとぎらせ、セルトマンが掌をかざす。
すると、その真下の地面に魔法陣が出現した。
そして、セルトマンが呟いた。
「バーサーカー」
それだけだ。
それだけで、魔法陣は煌々と光りはじめたではないか。
そして、その呼ばれたクラスにふさわしい者が、魔法陣上に召喚された。
「GA・・・・・」
「追え。できれば倒しても構わない。まあ、できるなら」
「GAAAA・・・・・」
言葉は発さない。
その理性、思考の全てを狂化させたバーサーカーには意思疎通の方法を持たない。
しかし、こればっかりはそうとは言い難い。
なぜなら、もともとこいつは言葉を発さないからだ。
「暴れまわれ、フォーティーン」
「GAGAGAGAGAGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
咆哮。
その膨大な音が、塊となって蒔風達の後頭部を軽く小突いた。
振り返り、二人が驚愕の表情を浮かべる。
「フォーティーンだと!?」
かつて戦ったクラウドは、その巨体を再び目の当たりにしたことに対するもの。
「そんなことはありえない・・・・!!」
そして資料上のみで知る蒔風は、絶対にありえないものを見る目でそれを見ていた。
「あいつは英霊でもなんでもない!!ただの怪物だぞ!!あんな奴に伝説も神話もある物か!!!」
「だがかつて存在した以上、そう言ったものが・・・・」
「だとしても・・・・ありえない!!フォーティーンがサーヴァントとして召喚だと!?」
そこで、蒔風は違和感に気付いた。
そう、彼らは召喚されるとして反英霊。正義の徒としての存在ではない。
それが冬木の聖杯戦争で召喚されたのは、第三次以降。
アヴェンジャーが聖杯に取り込まれ、「悪であれ」と彼それ自身が誰かの願いだったために聖杯が汚染された事からだ。
しかし、あの聖杯はただの大聖杯。
魔力汚染も何もない。
つまり
「セルトマンの野郎、冬木の大聖杯を参考に、まったく別の物組み上げやがったのか!!!」
それなら説明がつく。
令呪が配布されないのも、一人で複数騎召喚したことも。
だとすれば
「サーヴァントが七騎とは限らない・・・・いや、そもそも俺たちが知っている物とはまったく違うクラスが出てくる可能性も――――!!!」
そこで、二人が跳び上がった。
走っていた地面にフォーティーンの巨大な剣が突き立てられ、それを回避して跳んだのだ。
その勢いに体勢を崩されながらも着地し、なおも進む。
しかし、このままでは埒が明かない。
クラウドが大剣を振りかぶって、フォーティーンへと向かう。
「俺がいく・・・俺ならばあいつと戦ったことがある!!」
「ま・・・・」
クラウドはそう言うが、セフィロスだって追ってきているのだ。
ともすれば、蒔風が相手をするのは決まっている。
「くっそ!!もういっぺんブチのめしてやる!!!」
「来い・・・・」
飛ぶように迫ってきたセフィロスに、蒔風が朱雀槍を構えた。
セフィロスは長刀・正宗をこれから突き出すかのような体勢で引き締め、一気に蒔風と激突していった。
上空では、大剣をフォーティーンへと振り下ろすクラウド。
セルトマンの大聖杯への干渉は解った。
しかし、それでもまだ蒔風の脳内には疑問がある。
それは―――――――――――
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「私を前にして、どうにも落ち着いているな、蒔風よ」
蒔風、と呼ばれたのは、セフィロスと戦っている方ではない。
呼ばれたショウは、アリスの心配とは裏腹にどこまでも無表情で“LOND”を眺めていた。
否、無表情というよりは、無感情的だ。
まるで能面をかぶったかのような面持ちである。
「なんだ。取り乱しでもすればいいのか」
「いやいや・・・・私としては、君がここまでの力を持ったのは私のおかげだと言いたいところでね」
不遜、傲慢
“LOND”という男はそう言う管理者だった。
その二人を交互に見ながら、アリスは内心ハラハラしていた。
(もしも・・・もしも“LOND”があの頃の野望(結合した世界を我が物とする)をいまだに狙っているとしたら・・・・・・)
ショウをチラリとみる。
もしかしたら、“LOND”は彼を「奴」へと戻すつもりかもしれない。
(もしそうなったら、まずいだとかヤバいだとかの話ではなくなります・・・・ここは・・・・)
「手を出すなよ、アリス」
意を決し、一歩踏み出そうとしたアリスを、ショウの言葉が止めた。
アリスがショウの顔を見た。
その顔は、意外なことに笑顔だった。
しかし、無感情的な表情だというのは変わりない。
「今更お前のせいでこうなっただとか、テメェがいなきゃ俺の世界は、とか言うつもりは毛頭ねーんだわ」
ガリガリと頭を掻きながら、ショウが何でも無いように言う。
無表情、無感情なのは変わらないが、これが本心なのだろうと言うことはなんとなくわかった。
しかし、だとしたら
「だから、お前に対してまき散らす怒りなんてものは、俺にはない」
ショウの周囲に次々現れていく、魔導八天のは何を意味しているのか。
「だけどよ・・・・・俺はおまえ潰すぜ」
「ほう?」
魔導八天の一本を手にすると、残りの七本は腰の高さで止まり、スカートの様に下半身を覆う。
握っている一本分を開けて、魔導八天が戦闘位置につく。
「聴こう。特に恨んでもないのに、なぜだ?」
“LOND”が聞く。
それに対し、ショウが静かに
「一つ。お前個人が嫌いだ」
静かに
「二つ。昔俺を唆した時、ブツブツブツブツうるさく安眠妨害しやがって」
静かに
「三つ。さらに基本的に俺は管理者が嫌いだ。このアホはともかく」
静かに
「四つ」
そして
「手前のせいで消えた―――――「あいつら」の怒りが止まらねぇ!!!」
ドゴォウッッ!!
吼えた。
もはや今まで面持ちなど有りはしない。
そこにあるのは、純粋なる憎しみ、恨み。
そして、殺意のみが放たれていた。
「俺ァいい。だがな、それで巻き込まれ消えて行った「あいつら」の分は、俺が代わりにブチギレんだよ!!!」
魔導八天が、叩きつけられる。
爆発が起き、アリスが腕で顔を覆う。
そして、目を開けた時にはもう二人は遥か上空へ。
それを見上げながら、アリスは
「ア、アホって言われた・・・・・」
変なところで落ち込んでいた。
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「おっほー!!はじまったぜ!!!」
「へぇー。あれと戦うのも面白そうだねー」
召喚された三体を見て、オフィナとフォンが感嘆の声を上げていた。
今は、三人の仮面ライダーに囲まれたフォンのもとに、暇になったオフィナが突っ込んできた状況だ。
二人の声に幾ばくかの緊張も何もない。
しかし今この状況は、容易に安穏と言える状況ではない。
オーズ・タカウーターの鞭が唸り、上空からのブレイドジャックフォームの攻撃。
そして、バーニングフォームのアギトである。
途中からアギトはオフィナの相手をし、フォンには二人の攻撃が休みなく放たれている。
真上からの攻撃、というのは思った以上に対処の難しいものだ。
それを視界の隅に入れただけで、即座に見切り回避するフォン。
しかも、その中でオーズの電気ムチまで飛び交っているのだ。
フォンという男の脳の許容範囲はいかほどなのだろうか。
そして、当然ながら攻撃の完全・オフィナとアギトバーニングフォームのぶつかり合いも筆舌に尽くしがたい。
日は昇って日光が射しているものの、アギトはシャイニングフォームにはならないでいた。
パワー、出力ならばバーニングが上だ。もしもシャイニングになろうものならば、ただの一撃で捻りつぶされていたところだろう。
「映司!!これ使え!!」
戦いを遠くから眺めていたアンクが、オーズへと別のメダルを投げ寄こした。
もともと、タカヘッドで見極め、チーターレッグで走り回り、ウナギアームの武装で攻撃する手筈の亜種フォームだったのだろう。
しかし相手がそれを見切るのであれば、これ以上の攻撃を行わなければならない。
《クワガタ!ウナギ!チーター!!》
亜種フォーム・ガタウーターへと頭部のみを換装し、電撃鞭のみならず頭部からの電撃をも加えて攻撃していくオーズ。
仮にそれがブレイドに当たったとして、そもそも雷の力を使うブレイドからすればなんてことはない。
「追い詰めろ!!そうすりゃ自滅すんだ!!」
「簡単に言うなよな・・・・お前も手伝えよ!!」
彼等の完全は、その内で暴走することは決してない。
追い詰め、焦らせ、そしてそのステータスを全部振らせるしかないのだ。
上空からの攻撃のブレイドは、幾度もヒット&アウェイを繰り返す。その速度を順々に上げ、縦に円を描く形で高速移動に入っている。
オーズの猛攻すれば大したことのない頻度だが、一撃が大きい。さらに言えばこの攻撃はまずオーズの一撃を入れさせるための物なので、攪乱や消費の意味合いが強い。
そうして、各自それぞれが敵の完全を追い詰めようと挑むも、未だにその底は見えない。
それは、加々宮を相手にしていたなのはたちもそうだった。
「ディバインバスター!!」
「タァリャァ!!」
ドッ、ゴゥッ!!
数々の攻防の果て、再びなのはの砲撃とクウガ・ドラゴンフォームの攻撃が命中した。
胴体に大穴があき、肩に打たれた封印の刻印が脳に届いて内部から焼く。
加々宮の口や鼻から、その煙が漏れ出ていき、ばったりと地面に倒れ
「っとぉ」
その身体が地面につくより早く、体勢を整えて頭を振る。
腹の大穴は逆再生でも見ているかのようにグシュルと戻り、数回の咳をしてから煙を吐き出していた。
「これでもダメなの・・・・?」
「ど、どうすりゃいいんだ・・・・・・」
唖然としてしまうなのはにクウガ。
お互いに顔を見合わせ、そして一言も発さずに正面を見る。
何を言ったらわからない。
糠に釘、ということはまさにこれだ。
しかし、糠の方はまだ別の方法が試せる分、マシだろう。
「あの蒔風ですら、俺を完全に殺すことは不可能だったんだぜ!?焼いても、潰しても!脳だろうが心臓だろうが、全身だろうがなんだろうが!!消し去ったって俺は完全に再生して見せるのさァ!!」
腕を広げて笑う加々宮。
彼等の完全という物は、服や装飾品にも効果があるらしい。
彼等は何も気にすることなく、その力を実行することになる。
「だからよォ・・・・そろそろそこ退けや」
「やば!?」
「五代さん!!下がって!!!」
バチィン!!
「なぉ?」
いよいよもって二人を吹き飛ばそうとしたのか、力を込めた加々宮だがなのはのバインドによってそれは留められた。
そして、周囲に囲まれた魔力スフィアが一斉になだれ込んでいく。
「うわ!?」
「ちょっと荒っぽいので行きますよ!!」
《All Range Genocide――――Wing Open》
レイジングハートの認証。ウイングシステムが開かれ、レイジングハートから翼が大きく開かれた。
アクセルシューターが休みなく叩き込まれ、加々宮の身体を削り落としていく。
そして、そこに放たれる一大砲撃。
「エクセリオンバスター!!」
「うわわわわぁ!!」
太い、という話どころではない。
衛星兵器を地上で真横にぶっ放したかのような、そんな砲撃が加々宮のいた場所に向けて放たれた。
その中で、マーキングでもしていたのかアクセルシューターが四方八方へと飛び散って行った。
加々宮が再生する場所を狙っているのだろうか、そこに集まりつつあった塵を、再び霧散させていってしまう。
「レイジングハート!!」
《Barrier Burst》
さらになのはが止まらない。
ドーム状のバリアを張り、その正面に魔力を収束して爆発させのだ。
なのはを中心に、桜色の爆発が周囲を覆う。
クウガはなのはの言葉に従い、即座にその場を退避していた。
その間にもアクセルシューターのスフィアは縦横無尽に飛び回り、更に砲撃がに三回振り回すように放たれた。
本人は荒っぽい、とは言っていたが、そんな次元では済まされない。
だがなのはにしたら、これで「荒っぽい」程度なのだ。
一体どういう脳の構造をしているのだろうか。
そんなことを思いながらクウガが眺めていると、どうやらその攻撃も終わりに近づいていた。
桜色の魔力と、その爆発の煙に支配されていた空間が次第に晴れていく。
なのははレイジングハートを杖のようにし、しがみつくように立っていた。
顔は下を向き、顎は開きっぱなしだ。
流石の彼女でも、これだけの魔力放出は堪えたようだ。
そして、クウガがキックを放った。
ちょうど、なのはの真後ろだ。
その後頭部に出現した加々宮を、マイティキックが弾き飛ばした。
ゴロゴロと転がっていく加々宮。
しかし効かねぇよ、と不敵に笑う加々宮にはあまり意味のないことだ。
「ほぅ・・・・俺が現れる場所、よく分かったな。そんな時間があったわけじゃないはずだけどな」
「君が現れるなら、相手の後ろだ。それが一番だろうし、君らしい」
クウガ――五代の言葉が、加々宮を評価していく。
それに対し、加々宮はなかなかいいぞ、と笑みを浮かべる。
昔から身体の弱かった彼は、この「再生の完全」を得て完全なる肉体を得たと自負している。
自分よりも前に設計された完全を得たコールはもちろん、その後の完全の三人を超えてなお完全だと信じて疑っていない。
空を見上げる。
そこでは、クラウドと交戦するフォーティーンが、想像以上の苦戦を強いられていた。
もともと暴れまわる怪物、理性のない化け物だったフォーティーンだ。
それをいまさら狂化したところで、伸びるステータスなどたかが知れている。
しかもクラウドがかつて戦ったフォーティーンは、十の少女の力を取り込んだ、大怪獣ともいえる存在。
今更になって苦戦するわけもなく、その胴体が斬り裂かれていく。
敗北はもう、決定的だろう。
それを指差し、加々宮は笑った。
「見ろよ!!かつては不死の化け物と言われたあれだって、一度負けて負け犬、また殺されて使い捨ての駒だ!!それに比べて俺はどうよ!!一回も負けてねぇ。一回も殺されねぇ!!これが完全だ!!さすがにセルトマンには勝てないが、俺が一番の完全なのはどう見たって明らかだろう!!!」
力を誇示する。
否、誇りにすら思っているからこそ、これ以上はないと自信を持つのだ。
それ自体は悪くない。
その思いは自身を奮い立たせ、大きな力としてくれるだろうから。
「お前らは無駄に戦い、無駄に攻撃し、無駄に疲労して、無駄に俺に殺されるのさ!!!」
生まれつき。
ただそれで体が弱いだけで、自分は社会から疎外されてきた。
座っていても、少し環境が変われば体調が崩れる。
身体を動かす運動など、五分もできればいい方だ。
次第に人は離れて行き、親は刑務所同然に自分を病院に放り込んだ。
今までの人生が無駄だった。
そう思えるほどに、今のこの力、身体は素晴らしい。
「さぁて・・・・あのメチャクチャの攻撃は面白かったが、あんなんじゃだめだ」
そう言って、メキメキと拳を握りしめる。
常人の何倍だろうかの力を、そこに秘めているのだ。
「いくらライダーの装甲や魔導師のバリアジャケットだって、ベルトにデバイスぶっ壊せば意味ねーだろ?」
加々宮自体の攻撃力は、リミッターを外した人体の十数倍だ。
無事とは言えないが、バリアジャケットでも何とか防げる。
だが、デバイスその物などを狙われてはそうはいかない。
なのはが構え、迎撃しようと迎え撃つ。
それに対し、ゆっくりと歩く加々宮。
砲撃が放たれる。
その衝撃に身体が一瞬止まり、少し後退するがなおも歩みを止めない。
「効かねッぇって・・・・言ってんだろ!!!」
そして、駆ける。
なのはの前にクウガが立ち、それを援護する様にスフィアが展開された。
そして、衝突していく瞬間
「君は――――――だね」
「あ?」
クウガの一言が、加々宮に変化をもたらした。
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「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――・・・・・!!!!」
ズ、ズゥ・・・・・
胴体を切られ、更に頭部をバックリと割られたフォーティーンが、その巨体を大地に叩きつけながら倒れ伏した。
目の前でメラメラと炎を上げて消滅していくそれを、セルトマンが眺めている。
そして、その消滅していく巨体の上にクラウドが立った。
炎で照らされるクラウドの顔には、言いようもない迫力が満ちる。
フォーティーンが完全に消滅し、クラウドが地面に降り立った。
そして、大剣を向けてセルトマンに勧告する。
「今すぐこのふざけた戦いを終えろ」
「おやおや・・・・まだ始まったばかりだぞ、クラウド」
降参する様に手を上げるセルトマンだが、明らかにその気は無い。
ふざけた態度でひらひらと手を上げる。
「セイバー、キャスター、バーサーカー。まだ三騎しか出していないんだ。まだ四騎、見て行こうぜ?」
「・・・・ッ!! 動k・・・・」
「ランサー」
ドッッ!!!
両手を上げたまま、セルトマンが唱えた。
そして、地面に魔法陣が現れその中から現れた人物によって刃が振るわれた。
セルトマンに真っ直ぐ向けた大剣を引き、その面でその一突きを受け止めるクラウド。
「あんたは・・・・?」
クラウドは、その顔に見覚えがない。
ならば、他の世界の人物だったのだろう。
一方相手の男は、その武器を引き戻してから仁王立ち状態でクラウドを眺めた。
それは長物ではあるが、「槍」というよりは「薙刀」や「青龍偃月刀」の形に近い。
「剣士か・・・・」
「・・・・あんたは?」
珍しく、クラウドが相手に興味を持つ。
その瞳に秘められたものが、恐らくはあまりにも深いものだったからだろう。
その問いに、かつて時空管理局に属したSランク魔導師は答えた。
「ゼスト。ゼスト・グランガイツだ」
一騎撃破するも、ランサー召喚。
この戦いは、またまた終わらない。
to be continued
後書き
呆気なくやられるバーサーカー・フォーティーン。
完全にかませですねwwww
現状のサーヴァントは
セイバー:セフィロス
ランサー:ゼスト・グランガイツ
アーチャー:未召喚
ライダー:未召喚
キャスター:“LOND”
アサシン:未召喚
バーサーカー:フォーティーン《撃破》
ですね。
早速一騎減りましたが、まったく問題ないです。
セルトマンは、蒔風の言うとおり冬木の聖杯戦争のシステムをもとに、いくつかの改変をしています。
さて、一体どの推測があっていて、どれが外れているのでしょうか・・・・?
そんなことより、加々宮に死亡フラグがwwww
五代
「次回、咆哮の再生」
ではまた次回
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