恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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90部分:第八話 董卓、城を抜け出すのことその十二
第八話 董卓、城を抜け出すのことその十二
「董卓様は董卓様よ」
「それはその通りなのだが」
張飛はその賈駆の言葉を聞きながら首を少し傾げさせていた。
「けれど御前ムキになり過ぎなのだ」
「それは気のせいよ」
そう言われるとさらにムキになる賈駆だった。
「気にしないでいいから」
「気にするななのだ?」
「そうよ。あの連中も確かに頑張ってるわよ」
それは認めるのだった。
「けれどね。董卓様には董卓様のやり方があるのよ」
「そうですね。それでなのですけれど」
ナコルルが言ってきた。
「ここに化け物が出ると聞いて来られたのですね」
「はい、そのことですが」
董卓もナコルルに応えて述べた。
「呂布さんのしたことは確かに悪いことです」
「いえ、それは」
村の長老が董卓に対して穏やかに言ってきた。
「もう済んだことですし」
「いえ、それでもしっかりと終わらせないといけません」
董卓の声はしっかりとしたものだった。
「ですから」
「そうなのですか」
「はい。しかし身寄りのないワンちゃんや猫さん達を想ってのこと」
そのことも見ているのだった。
「それに呂布さんも反省されています。ここはその食糧の分を呂布さんの給与から弁償するということで終わらせることとします」
「私の給与」
呂布は董卓の言葉を聞いて述べた。
「ということは」
「えっ、じゃあ呂布を?」
「はい。呂布さんさえ宜しければ私のところに来てくれませんか」
こう言うのである。
「それがお嫌でしたら弁償は私の方で」
「いや、御願いする」
呂布の方からの言葉だった。
「恋、悪いことした。それの弁償しないといけない」
それはわかっている呂布だった。
「それに董卓様いい人。仕えたい」
「そうですか。それでは」
「やっと人手が入ったわね」
賈駆はこのことを素直に喜んでいた。
「有り難いわ。華雄将軍もこれで楽になるわ」
「そしてです」
董卓の顔と言葉が変わった。厳しいものになったのだ。
「詠ちゃん」
「どうしたの?急に」
「村の人達がお役所にこのことを話しても化け物だと言って取り合わなかったそうだけれど」
「いえ、それは」
また長老が言ってきた。
「もう済んだことですし」
「いえ、そういう訳にはいきません」
董卓は真剣だった。
「どんなことでも民の言葉はおろそかにしてはいけません。民あっての国なのですから」
「だからですか」
「はい。だから詠ちゃん」
「え、ええ」
「二度とこういうことがないように厳しく注意しましょう」
自分に対する言葉だった。
「それはね」
「わかったわ。それはね」
「それと」
話はまだあった。
「ワンちゃんや猫さん達だけれど」
「どうしたの?」
「うちで飼わない?兵隊さん達と一緒に警護にあたってもらうってことで」
「犬や猫を?」
「ええ。それでどうかしら」
「けれどそれは」
賈駆はそのことを聞くと困った顔になった。
「それ位のお金はあるし」
「ううん、犬とか猫は」
何故か困った顔になる賈駆だった。
「僕、あまり好きじゃないっていうか」
「駄目なの?」
賈駆の言葉を聞いた董卓は困った顔になった。
「それは」
「駄目って訳じゃないけれど」
「御願い、詠ちゃん」
うるんだ目での言葉だった。
「放っておいても可哀想だし」
「うう、そう言われたら」
「警護も手伝ってくれるし。それに皆も楽しめるし」
犬や猫はいるだけで人の癒しになるのである。賈駆もそれは知っているのだ。
「だから」
「わかったわよ」
遂に賈駆も折れた。
「それじゃあいいわ。擁州で置きましょう」
「有り難う、詠ちゃん」
「けれど勘違いしないでよ」
ここからが賈駆の真骨頂だった。董卓から顔を背け腕を組んで言い返す。
「今回だけだからね。本当だからね」
「詠ちゃん大好き」
しかし董卓は賈駆のその言葉を聞いて満面の笑みになってだ。そのうえで彼女に抱きついたのである。
「有り難う!」
「だから勘違いしないでよ」
まだ言う賈駆だった。
「今度だけなんだからね」
それでも董卓のその頬を摺り寄せてくるのにはまんざらではないようである。素直ではないがそれでもそれは誰が見てもわかるものだった。
そして呂布もそれを見てだ。静かに二人のところに来てだ。
そのうえで賈駆に頬を摺り寄せてきた。二人で彼女を囲む形になっている。
「ちょっと、何であんたまで入って来るのよ」
「皆でいると楽しい」
だからだというのである。
「だから」
「わかったから。犬も猫も面倒見るわよ」
賈駆は二人に抱かれながら言った。
「だからもう離れてよ。あっ、月はいいから」
「うん、詠ちゃん」
こうして化け物の話は終わった。関羽達は董卓達と別れ今度は洛陽に向かうことにした。そしてそこでは思わぬ再会が彼女達を待っていたのであった。
第八話 完
2010・4・21
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