世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
緊迫の再会
「よくもいろいろ、やってくれたみたいだなッ、と!!」
蒔風が放ったそれは、男の上着に引っ掛かって張り詰める。
繊維の先端についている小さな窯には反り返しがあり、引っ掛かったら簡単に外れない構造だ。
が、男はそれを見てもなお余裕を崩さない。
上着から腕を抜き、捨てることでそれを回避する。
「うまくいくと思うか!?」
しかし、男は脱いだはずの上着に拘束されてしまった。
見ると羽織っていたそれの前部を、蒔風の投げた鎌が縫い合わせていたのだ。
男の認識は間違っていた。
これは決して釣り針ではなく、相手を捕縛する縫い針なのであると。
「この局面でこの小技・・・!!」
「フッ!!!」
ギッ!!という甲高い音を立て、蒔風が糸を引く。
そこから出ている繊維が、男の上着を締め上げてその上半身を拘束した。
で、あるならば男が黙っている必要はない。
男が引かれる勢いに乗って一気に駆け、蒔風にハイキックをブチかましてきた。
それに対して蒔風は軽くバックステップし、繊維に多少のたるみを生む。
そして腕を回すと、それが渦を巻いて男の足に絡まりその自由すらをも奪っていく。
足一本のみを支えとしなければならなくなった男に、蒔風からの容赦ない足払い。
簡単に男は転がり、蒔風が糸を街灯に投げて括りつけ、それをグンッと引っ張って男を釣り下げた。
「ふぅ・・・ったく、何の目的かは知らないけどさぁ、楽しみにしてた戦興行どーしてくれんのよ?あんた」
「すまないね。だがあれが一番のタイミングだったんだ」
「・・・・理樹の血含め、あのアイテムはなんだ。お前は何者だ」
「私か?私は魔術師だよ。はぐれだがね」
「無所属か?まさか封印指定じゃねぇだろうな」
「私の一族は、全員生まれた時からそのレッテルを張られていてね。困ったものだよ」
封印指定
セイバーや士郎などのいた世界における魔術師の世界の言葉だ。
そして、魔術師にとっては誉れであり、また厄介な称号でもある。
表向きには「貴重な魔術等を持つ人材を保護する」とされているが、いわば「手元に置いて管理したい」と言う内容で、幽閉されるに近いらしい。
これを行うのは倫敦に存在する魔術教会、通称「時計塔」だ。
それを生まれた時から受けている、と言うことは、彼もまた特異な体質持ちだということになる。
後で凛にでも聞くか、と考えていると、男の方からも一つの質問が飛んで来た。
「・・・・一ついいかな」
「あ?」
ブラブラと揺れながら、何とも締まりのない体勢で男が聞く。
「何故それしか使わない」
「気分だ」
「ああ、そう言えばそういう気分屋だったね」
「なにをっっ!!」
気軽な発言、まるで良く知った間柄であるかのような会話。
その後、男は力づくで蒔風の拘束から脱した。
糸を引きちぎったのではない。
「まるで糸をすり抜けたかのよう」に、男はそこから抜け出したのだ。
「なに・・・・」
「身体を切って、糸を通過した直後から接合再生。思いつきだけど、うまくいくもんだ」
「お前もか・・・」
「いや、ああいう動かなくていい状況だったからできたんだよ」
そのカラクリを自慢するようでもなく、本当に説明のためにしゃべっているかのように話す。
「何のつもりだ・・・・」
「少女にしか用はないよ。危害を加えるわけでもないんだ。少し協力してくれればいい」
「その理由をお聞きしたいね」
「それ言ったら邪魔するだろ」
「じゃあダメだ!!!」
ドンドンッッ!
「また銃かい!」
蒔風の発砲を、今度は身のこなしで回避する男。
発砲しながら接近し、撃ちきると同時に投げ捨てて蹴りを放つ。
それを男が受け止め、左拳で反撃した。
蒔風は首の皮一枚でそれを回避、頭突きで男の額に一撃を喰らわせた。
思わず目を瞑って後退する男。
蒔風の、両足を砕こうと放たれたローキックを跳躍して回避する。そのままビルの側面に足をつくが、追ってきた蒔風を回避して反対側のビルへ。
「この街を粉々にする気かい!?」
男はビルに片足をめり込ませて、そこで膝立ちのようにして蒔風を見る。
一方蒔風は、腕をめり込ませてビル壁に足を付けていた。
男の言葉を無視し、蒔風が飛び出していった。
それに対抗し、男も蒔風に向かう。
蒔風の右拳に対し、左手で上に受け流し、空いた手で反撃。それを受け止められるも、受け止めた右腕をすべるようにして、左手で蒔風を打ち落とした。
地面に叩きつけられた蒔風だが、即座に転がり、落ちてきた両足を回避する。
瓦礫を腕でガードするも、男の後ろ回し蹴りが直撃、蒔風の身体が面白いように転がってビルに叩きつけられた。
「蒔風舜。「EARTH」局長、銀白の翼人。開翼しないのは、疲れているからかな?足止めは思った以上の効果を発揮したようだ」
「迅ッ!!」
男の言葉をぶった切って、再び蒔風が駆ける。
眼前にまで接近し、思い切り腕を振りかぶる。
ダンッッ!!
「!?」
「甘ェよ!!」
その瞬間、蒔風が足を思い切り踏み鳴らす。
そちらに意識を持って行かれた男が、意識を戻して顔のガードに腕を回した時には
「ぐぼぁっ!!」
「こっちだ」
蒔風の拳は、その腹にめり込んでいた。
意思外を狙った攻撃。
男は腕を振るって捕えようとするも、蒔風の姿はそこから消える。
バチィンッッ!!
「かふっ!?」
今度は後頭部。
弾いたような音を発する蹴りが、男の後頭部を直撃した。
「さぁすが!!暗殺を得意とする事だけあるぅ!!」
答えはない。
あるのはただ、攻撃のみ。
「だが・・・・そこだ!!」
空手の正拳突きのような。
うねりのきいた拳を、振り返りざまに放った。
その一撃は蒔風の胸のど真ん中を砕き、反対側の壁に激突させた。
「ゲ・・・・ばぁ・・・ッ!!!」
全身に走る衝撃。
口内には血が溜まり、勢いよく外に吐き出されていく。
打ち付けた背中はコンクリートの壁をやすやすと砕き、円形にそれを破壊する。
それを見て、男が踵を返して反対側へと向かう。
そちらには、彼の言う「少女」が隠れている。
蒔風への攻撃の手ごたえは確実なものだ。
もう立てはしないはず――――
―――ドォッ!!
「な!?」
「いかせねぇ!!」
しかし、その予想に反して男の背中に蒔風がしがみついてきた。
身体は傷だらけ。特に胸は、先ほどの一撃で真っ赤に染まっている。
そのような身体状態で、こんなにも動けるはずがない。
いや、たとえ動けたとしても・・・・これだけの力が発揮されるのはありえない!!
「しつッ(グッ、ビタンッ!)・・・こいぞ!!(ドゴォッッ!!)」
不可解なことに加えて、そのしつこさに少し苛立ち、男が背中の蒔風を引き剥がして地面に叩きつける。
そしてバウンドしたその体を、一回転してからの回し蹴りで吹き飛ばした。
叩きつけられる蒔風。
その蒔風を、数秒見つめる。
すると、まるでゾンビか何かのように蒔風が再び立ち上がってきたのだ。
「なんだ・・・その体は・・・?」
「そっくりそのまま、聞きたいよ」
ゲホッ、と咳をしながら、襟を引っ張り呼吸を整える蒔風。
その時、男はわずかながらにも見た。
「胸の傷が・・・・・ない!?」
確かにあの一撃は蒔風の胸を穿ったはず。それだけの一撃だったはずだ。
よしんばあれから多少治癒したとして、完全になくなっていることはありえない――――
「使ってみると、案外便利だったりするんだ――――」
「何を言って・・・!!」
男が少しの焦りを浮かべて、蒔風へと挑んでいく。
それに対し、蒔風もトントン、と少しステップを踏んでから一気に男へと向かって行く。
そして―――――
バガァッッ!!!
猛烈な衝撃波を周囲にまき散らし、男と蒔風は衝突した。
その勢いに双方とも吹き飛ばされ、蒔風が地面に倒れ、男が膝をつきながらも滑って耐える。
「だ・・・大丈夫ですか・・・・・?」
「え・・・・」
ビルの中から、声がした。
どうやら、うまく男を吹き飛ばしつつ少女の近くに行けたみたいだ。
あの男の狙っている少女と言う子の声がした。
蒔風はそちらに目を向ける。
いつも通りに笑って、大丈夫、と言う。
否、――――言おうとした。
現に、顔は笑い、口は「だい――」までは動いていた。
しかし、それが止まる。
少女ではない。少女の声は、まったく初めて聴いたものだ。知り合いのものではない。
蒔風が止まったのには、隣の青年が関係していた。
「音・・・無・・・?」
そこにいたのは
いつかの世界で出会った青年。
死後の世界で、大切な人と再会することを祝福し、送り出した青年だった。
だが
(こっちでも同じ音無って名前だとしても、アッチはもう俺のことは知らないからな――――)
そう、もし転生したのならば、彼にその記憶はない。
だがとりあえず、蒔風のやる気は上がった。
瞬間
青年の言葉が、蒔風の思考を止めた。
「蒔風!!お前蒔風だよな!!何がどうなってんだ!?」
「は――――――?」
――――――――思考が停止する。
ダァンッッ!!
「ッッ!?クソッ!!」
男の猛然とした、大地を駆る足音。
その音に蒔風がハッとして構え直す。
(いまどうしてこうなったのか・・・・それは、後だ!!)
ワンテンポ遅れて、蒔風も男に向かって駆け出す。
拳を構え、相手と正面からぶつかるつもりだ。
「だがとりあえず・・・・お前はここで倒さないといけないようだ!!」
音無の記憶が戻った。
それ自体はまだいいが、その要因が問題だ。
世界には自己防衛機能がある。
かつて蒔風が世界をめぐったときも、それはいかんなく発揮されている。
時に戦う力を戻し、時には失った記憶を取り戻させた。
そのおかげで蒔風の話も早く進み、「奴」への共闘の話も手早くすすめられる。
さらに言えば、単純に戦力増加にもつながるのだ。
本人が戦いたがろうとなかろうと、世界はそれを実行する。
もし
今回の音無の記憶が戻ったことが、その要因ならば
蒔風との記憶があった方が、迅速に事態を処理できると考えられるのならば
「世界」がそこまでして、この男と少女―――立華奏との接触を回避させようとしているのならば
この男には、世界を破壊させる目論見がある。
「それだけはさせない――――!!!」
当然、それだけの危機はこれまでもあった。
最大の物で赤銅大戦だ。
しかし、あの時には世界の抑止も、世界の助力もない。
蒔風、ショウ、翼刀の三人がそろい、他のメンバーが脇を固めれば勝てる相手だったということだろし、加えて、赤銅も消滅を願っていた節がある。
それに対し、ここでそれが発動するということは
蒔風が腕を振るい、引いてから拳を突き出す。
打滅星の体勢を取って、放たれたそれは男の顔面に伸びる。
「打ほ・・・・」
ガッ!!
「・・・腕を回してからの打滅星。だが、これなら」
それを、男が止める。
まだ腕も伸びきっていない状態のそれを。
男の左手は、蒔風の右肘の内側に添えられていた。
それがつっかえ棒のようになって、それ以上の拳を止めていたのだ。
返す身体で、蒔風が左掌底を伸ばす。
「!!」
ブチンッッ!!!
その左腕を、男の腕が引き裂いた。
蒔風の腕が舞い、離れたところに落ちる。
「ッ゛・・・・!!」
鮮血が舞い、男の顔にも二、三滴ほど付着する。
蒔風の顔面が、信じられないものを見るかのように驚愕に染まる。
見開かれた眼は、先を失った左腕と、男の顔を映し出す。
男の顔が勝利を確信する。
いくらなんでも、腕を失っては蒔風と言えど――――
「六風――――」
「なぁ!?」
だが、蒔風は一瞬のそれをも今は飲みこみ、拳にエネルギーを込め上げる。
彼の使う六つのエネルギーを、拳に乗せてブチかます。
「させるか・・・!!」
「―――波爆ッッ!!!」
男の反撃。
それと同時に、蒔風の右拳がうねりを上げた。
男の手には、光の槍が。
それを掌底と共に蒔風の胸に押し当て、その体を貫いた。
対して蒔風の拳は、男の腹部に叩き込まれる。
エネルギーが暴れまわり、男の背から吹き出して、暴風となって吹き飛ばす。
両者ともが同時に吹き飛び、余剰エネルギーがビルの窓ガラスを叩き割る。
十秒
その三倍以上に感じただけの静寂の後、瓦礫を押しのけて立ち上がったのは
「ぐ・・・は・・・・まさか・・・あの状態でここまでやるとは・・・・な・・・・」
男が、腹を押さえて血を流す。
ヨロヨロと、脚が力なくふらつく。
その先には
「まさか・・・・そんなになった状態で、あの威力の六風波爆を打ち込んでくるとは思わなかったぞ!!蒔風!!」
そう叫ぶ男の目の前には、ボロボロになって瓦礫の中に倒れる蒔風がいた。
叩き叩きつけられたのか、ブチ込まれたのか。
その身体はビルの壁を突き破り、瓦礫に囲まれて地面に倒れていた。
腰を付き、背後の壁を背もたれにし、脚を投げ出し、両腕もだらりと投げ出されている。
顔はうつむいているが、完全に戦闘続行不能の状態。
男の方はと言うと、満身創痍であるものの、いまだに意識ははっきりしている。
捨て身気味の六風波爆を食らったのだ。
この場合、万全でなくともここまで食らわせる蒔風がすごいのか、万全でないにしろそれを食らって立っているこの男がすごいのか。
「フゥーー、フゥーッ!!・・・・きちんと完成してから・・・・力試しはしたかったがな・・・・」
ガラ、と瓦礫の中から鉄骨を取り出す。
片手でつかめる程度の細さだが、この破壊によって先端は不揃いに、槍のように尖っている。
「再認識したよ。やっぱり君は強い・・・・楽しみがなくなるのは残念だけど・・・・やはりここで消えてもらうのが一番・・・か!!」
それを振り上げ、思い切り蒔風へと突き立てる。
狙うは、心臓。
その後に、頭を潰す。
そこまでやれば、死なないはずがない。
ギッ、ガキィッ!!
「・・・・させません」
「これ以上は、さすがに出るぞ」
しかし、その先端は蒔風に届かない。
男が体重をかけるそれを、二つの刃が交差して止めていた。
一つは、青龍刀。もう一つは、獅子剣。
担うものは、当然その使役獣。
蒔風の左右に立ち、主に迫る刃を押しとどめていた。
「いま去るのならば、我らも追わん」
「・・・・お引き取り・・・・くださいませんか?・・・・」
「(ニィッ)・・・・・断る!!」
「「ッッ!!!」」
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「結弦・・・・今の人、知ってる人?」
「ああ・・・ちょっと前にな・・・・」
「死後の世界?」
「ああそう・・・って?お前も思い出してんの!?」
「ええ・・・・」
「もっと驚きそうなもんだけどな・・・・」
一方、ビルの陰に隠れていた二人―――音無結弦と立華奏は、外の様子を見ようとしていた。
お互いに記憶が戻ったらしいが、特に取り乱すこともなく目の前の状況に対応している。
先程大きな音がして、二か所から何かがぶつかる音がした。
それきり、外は静かだ。
音無は記憶を辿り、蒔風のことを思い出す。
そう、あの男はかなり強かった。その時の相手はもっと強かったが。
さらに現世での記憶からして、あの赤銅と戦ったのもあいつだ。
だったら、負けるなんてないだろう。
「ちょっと見てくる」
「だ、だめ・・・」
冷や汗を流しながらも、少し顔を覗かせようとする音無。
しかし、それを奏が止める。クイクイと音無の裾を引き、行かないように止めた。
不安なのだ。
いくら前の世界で様々な経験をした彼女でも、怖い。
前の世界なら、いくらでも無茶は出来た。
でも、今は違う。
今の自分たちは、生きている。
死んでしまうかもしれない世界にいるのだ。
「行かないで・・・」
「・・・・わかったよ」
ふっ、と少し笑って、奏の隣に座る音無。
でも何かあったらすぐにこっから逃げるぞ?、と念押しし、頭を撫でていると
「お熱いトコロ、申し訳ありませんが」
「わ」
「おぅ!?」
ビルの向こうから、朱雀がやってきていた。
確か、前の世界で見せてもらったことがある、と音無が安心して立ち上がる。それに合わせて奏も立つが
「伏せろッッ!!」
「ッ!?」
その立っていた場所を、何かがビルを破壊して通過して行った。
音無と奏に、朱雀と飛び込んできた玄武が覆いかぶさり、彼等を護る。
もし玄武が遅ければ、二人の頭部どころか上半身が吹き飛んでいただろう。
「出ます!!外は!?」
「青龍と獅子が止めとる!残り三人は外の警戒をしておるから、急げ!!」
手を取って二人を立たせ、こっちだと誘導して行く朱雀と玄武。
外に、出ると
足場のほとんどは瓦礫に埋まっていた。
その中で、天馬と白虎、麒麟が待つ。
「オレら二人が先を行く!!」
「私が殿を務めます!!」
「朱雀とじっちゃんは、そのまま二人と一緒に進んでね!!」
即座に陣形を汲み、二人を逃がすことを優先する。
ふと、音無が背後を振り返った。
「あ・・・ぁ・・・・」
男が、龍を振り回していた。
青龍の尾を掴み、片手でそれを振り回すその姿は鬼神か阿修羅かを思わせる。
先ほど、ビルを崩したのは青龍の胴だ。
それを受け止めようと、獣神体と変わって獅子が受け止めようと飛び掛かる。
が、青龍を腹に直撃させられ、二人まとめてビルに叩き込まれる。
男と、視線が合った。
「なにをしている!!早くしろっつってんだろ!!」
天馬の怒声に、ビクッ!と体を震わせて音無が走り出した。
最後に見たのは、男の背後から跳びかかる獅子と、雷撃を放つ青龍――――
ダン!!ドガァォッッッ!!!
「そん・・・な・・・」
「莫迦な・・・・!!!」
しかし、その青龍たちをもう一度見た。
難しいことは何も起こっていない。
ただ、男によって吹き飛ばされた青龍たちが、音無たちの前に落ちてきただけだ。
「その子を殺そうだとか傷つけようだとか、そう言うつもりじゃないんだよ。少し協力してくれれば、それでいい」
コツ、コツ、と
瓦礫の中を、綺麗な姿勢で歩いてくる。
痛めたのか、肋骨のあたりをさすり、そして深呼吸して真っ直ぐ彼等を見据えた。
「さあ?返答は?」
「・・・・お主の目的が世界の危機に直結することが分かった今、それを呑むことは出来ぬわ!!」
「そんなもん、あとで止めなよ。今この行動自体は直結してないし」
彼等にそれが嘘であるかどうかはわからない。
だが、たとえそうでもこれがその要因である以上、看過することなどできようはずもなく――――
「二人を連れて逃げろッッ!!!」
「やはりそうなる――――!!(ダッッ!!)」
駆けだす男。
それを迎え撃とうとするのは、麒麟と玄武。
残りの三人は、二人を連れて一気に退がっていく。
衝突し、そして――――――
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避難誘導が始まり、それが完了してから、実に六分。
報告
蒔風舜――――全身打撲、胸部貫通、左腕損壊
青龍――――戦闘続行不可能。
獅子――――同じく戦闘続行不可能。
玄武――――甲羅を叩き割られて高架橋下に転落
朱雀――――上空で撃ち落とされ、ビルへと衝突
白虎――――四肢の関節、脛骨が破壊される
天馬――――頭蓋を掴み叩きつけられ、脱落
麒麟――――最後まで二人を護るも、喉を切断される。
上記七獣は上四体が獣神体、下三体が人神体で発見される。
ティアナ・ランスター――――全身強打なるも、命に別状なし
氷川誠――――内臓損傷するも、回復。後遺症なし
名護啓介――――頸椎にヒビが入る。絶対安静。
音無結弦、立華奏
少し離れたベンチで、寄り添うように眠っているのを発見。
両者とも心身に異常は見られず。
戦場となったエリア、避難勧告地域から半径150メートルは半壊。
逃走した首謀者の男と、共謀者の四人は今だ行方をくらましている。
to be continued
後書き
敵のヤバさを伝える戦闘でした。
とりあえず打滅星を見切らせてみました。
初見でそれやべぇだろ・・・・
様々な疑問を残しながら、蒔風を圧倒して去って行った男。
一体何が目的なのか。なぜ奏を狙ったのか?!
あの六つのアイテムがどうして奏を指したのか!?
それ以外にも謎がありますが、それは追々に!!
というか蒔風はホントにどうなってるんだ?
というかAngel Beatsがついに参戦(こっちの世界的な意味で)!!
作者自身、第一章だけでもうそれ以降の章には出ないと思ってたけど、出てきました!!
作者は基本、伏線とかまったく考えないで書いてますからね。
敵の男のこと考えたら、これが一番だと。
章をまたいでの伏線はありませんが、章の中ならあったりします。
そう、天馬のラジオにガルデモが流れたのはこういうことだったんだよ!!(バーン!!)
色々急展開ですが、次回は一応日常編。
あいだにいろいろ挟んでいきますよ~!
理樹
「次回、舜はどうしたのか」
ではまた次回
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