魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第4章:日常と非日常
閑話10「中学校生活」
前書き
大体114話と115話の間ぐらいの話です。
本編中にあまり関わりのない学校生活の話です。
…正直蛇足でしかない程何も発展しないので読み飛ばし可です。
普段はこんな感じで日常を過ごしてるんだ程度に捉えて貰えれば。
=優輝side=
「(小学校の入学式、卒業式でも思ったけど…一度経験した行事をまた経験するってなんか変な感じだな…。違う学校だから色々違いはあるけど)」
今日は中学校の入学式。
僕や司は無事に小学校を卒業し、こうして入学式の真っ只中にいた。
「……あ~…眠かった…」
「お前、隣の奴が小突いてくれなかったら寝てただろ…」
入学式が終わり、HRも終わって今日の中学校は終わる。
放課後になって、僕は聡や玲菜、司と合流していた。
「しかし、見事にばらけたな」
「6組もあったからね」
「ま、休み時間や放課後は一緒になれるからいいだろ?」
違うクラスだという事に、聡と玲菜はどこか不満そうだった。
なので、フォローを入れると今度は少し恥ずかしそうに…なんだこのバカップル。
「そういえば、部活はどうするんだ?」
「え?…そうだな…」
この学校では部活に入るのは必須。
明日から部活見学などができるようになり、来週の月曜から入部できる。
既に今日から各部活の勧誘が始まっているが…。
「…入るとしたら、陸上部辺りか…?」
「あ、じゃあ私はマネージャーで…」
「二人一緒なのは確定なんだな…」
付き合う前のすれ違いとかは何だったんだ…。
まぁ、仲がいいのは良い事なんだが。
「そう言う優輝はどうなんだ?」
「…弓道部辺りか?精神統一とか、役立ちそうだし」
「私もかな…。こう、和弓ってなんだか惹かれるものがあるし」
かくいう僕らも被ったようだ。
と言っても、戦闘とかで役立つからって言う結構おかしい理由なんだがな。
後、アリシアもいるから気楽でいられそうだ。
……部活ってこんな理由で入ったらダメだったっけ?
「…って、うわぁ」
「やっぱり集まってるよね…」
下駄箱まで来て、その先の光景に思わず後ずさる。
そこには、全ての部活の部員が勧誘のために待ち伏せていたのだ。
前世でもあった事だから予想はしていたけど、やっぱりだったか…。
「じゃあ、駆け抜けるか」
「そうだな」
聡も同意見なようで、最低限の受け答えをしながら勧誘の波を乗り切った。
…何気に弓道部員としてアリシアが勧誘に混ざってたぞ。
「いらっしゃーい!よく来たね!」
「アリシアちゃん、凄いサマになってるね」
翌日、部活見学と言う事で僕と司は弓道部に訪れていた。
そこでアリシアが出迎えてくる。ちなみに今のアリシアは袴姿だ。
「ちっちっちー、二人共、ここでは私の事は“先輩”と呼ぶように」
「あはは…」
「じゃあ、先輩(笑)、よろしく頼みますね?」
アリシアの言葉に司は苦笑いし、僕は敢えて乗ってあげる事にした。
しかし、丁寧な物腰な僕は違和感があるのか、アリシアは引いていた。解せぬ。
「…ごめん、やっぱなしで。というか、今の(笑)はなに!?」
「いやぁ…アリシアってなんか先輩っぽくないし…」
「ひどいよ!?」
霊術の特訓でよく一緒にいるし、よくてムードメーカーなお姉さん止まりだ。
なんというか“先輩”らしいイメージがない。
「あ、もしかしてアリシアに弓を教えた人と一緒にいた?」
「それに、小学校の頃“聖女”とか呼ばれてた…」
他の先輩方が僕らを見てそう言ってくる。
司は有名だったからいいとして、椿たちと来た僕も覚えられてたのか。
「どうやらあの時の勝負が結構印象に残ったみたいでさー、あの場にいたほとんどの人は椿の事を覚えてるんだよね」
「だから一緒にいた僕もついでに覚えられてたのか…」
「最近は大丈夫なんだけど、当時は椿に師事したい人が多くて頼まれたりもしたね」
他の部員が集まってくるのを、アリシアはやんわりと帰しながら言う。
…まぁ、弓においては椿はトップクラスだからなぁ…。
「でも、OBでも師範でもない椿を指導のために連れてくるのはなぁ…」
「以前は見学だったからね」
学生どころか一般人ですらない椿は、原則的に指導はできない。
まぁ、見本として弓を引く映像を撮って皆に見せるという事はできるけど。
「それにしても、アリシアも随分と弓道部員らしくなったな」
「立派な先輩らしくなったよね」
「ふふーん。もっと褒めてもいいんだよ?」
僕らの言葉に胸を張るアリシア。
…そういう所は子供っぽいし、変わらないんだな。
「他の人もいるんだし、アリシアも戻った戻った。お前が引いてる姿を見た方が、他の連中も入りたいと思うだろ」
「おおっと、それもそうだね。いつまでも喋ってちゃダメだった」
そういってアリシアは道場に戻っていく。
僕ら新入生は道場の隅の方か、矢取り道で見学する事になっている。
ちなみに、僕らの他に来ていた新入生は、ほとんどがアリシアと司の二人と一緒にいる僕を羨ましそうに見ていた。
まぁ、二人共美少女だしなぁ…。他の小学校から来た奴も含めて、一緒にいる僕を妬ましく思っても仕方ないか…。
……授業がつまらない…と思うのは間違っているだろうか。
いや、先生によっては生徒との会話で面白い事もあるだろう。
ただ、前世が社会人だったため、いくらレベルの高い中学校と言っても、勉学を怠っていない僕にとって簡単すぎて…。
「復習にはなってるんだが…司はそこの所どう思う?」
「どう…って言われても、仕方ないんじゃないかなぁ?」
放課後、部活に向かうために司と合流してその話をする。
なお、僕らは結局弓道部に入部した。
「まぁ、レベルが高いだけあって先生の話も面白かったりするけどさ…つい、マルチタスクとか使いながら別の事しちゃんだよなぁ…」
「霊力で遊んだり?」
「頭ですぐ理解して、ノートに書くだけだからね。どうしても手持ち無沙汰になってしまってそうなってしまう」
霊力で遊ぶ…感覚としてはノートに落書きしたり、手遊びするみたいなものだ。
細かい操作の練習にもなるから、別に無駄ではない。
「まだ中学校序盤だから仕方ないか…。後半になれば、いい復習になるだろ」
「そうだね。…あ、じゃあ私はこっちだから」
中学生の問題とはいえ、後半は複雑になる。
そこまでいけば僕とてつまらないと思える程の余裕はなくなるだろう。
そう考えて、僕らは更衣室で別れて着替えた。
「あぁー、重心がずれてたね。もっと背筋を伸ばす感じでやると、上手くいくよ」
「は、はい!」
弓道場…ではなく、校舎内の多目的ホールに僕らはいた。
この学校の弓道部は、弓を引く練習の前に、礼儀作法から入るらしい。
そのため、弓道での座り方や立ち方などを僕らは先にやっている。
指導するのはもちろんアリシアを筆頭とした二年の先輩方だ。
「…人気だねアリシアちゃん」
「まぁ、それに見合うだけの努力はしているからな。椿が叩き込んだのは弓を当てる技術だけ。ああして礼儀作法を教えれるのは、偏にアリシア自身の努力の賜物だ」
一年が先輩を呼んで見てもらう方式を取っているのだが…アリシアは人気だ。
ほとんどの人(特に男子)から呼ばれて引っ張りだこ状態だ。
「…それはそうと、優輝君も早くない?」
「司も人の事言えないだろ」
なお、僕らは…まぁ、うん。だいぶ進むのが早い。
重心や姿勢が重要となってくる立ち方と座り方だが、僕らの場合は…な。
司達に霊術を教えている時から、重心とかの事も教えてある。
既に実戦で活かせるようにもなっているので、礼儀作法も何度か集中してやれば、コツを掴むことも容易いのだ。
その結果、他の部員の三倍以上のスピードで上達してしまった…。
「っと、背筋を伸ばす際は、上に吊られるのをイメージするといいぞ」
「足が痛くなった時は無理しないでね?」
そして、早く進みすぎたため、部活動の半分くらいの時間は先輩方と一緒になって他の皆を教えてたりする。ただし司と二人組で。
このままだとあまりに進みすぎて変に人数を割く事になるからと、アリシアから言われたからだ。僕らも同意したので、問題はない。
「……………」
「………」
…まぁ、もちろん、そんな事になれば嫉妬だって起こる。
幸い、同じ学校だった奴らはそつなくこなす僕らに慣れたのか、何も言わない(むしろ司に対する尊敬度が上がった)が、そうではない人は妬みや僻みを言ってきた。
今だってそういう視線をひしひしと感じる。
「(…面倒ごとにならなきゃいいが…)」
別に魔法とかが関わる訳ではないから、そこまで心配はしていない。
でも、だからといって人間関係が拗れるのはなぁ…。
「おい、あんまり調子乗ってるんじゃねぇぞ?」
…はい、案の定厄介ごとになりました。
あれから数週間後の放課後、下駄箱を見ればそこには呼び出しの手紙。
そして校舎裏に来てみれば数人の男子生徒…と。…ありがちだな。
「少し優秀でテスタロッサ先輩に気に入られているからって、“自分は優等生です”ってか?ふざけんじゃねぇ」
「……被害妄想かよ」
うん。呆れる。単純って言うか、薄っぺらいって言うか…。
転生者以外でこういう“現実にいるのか?”って奴らいるんだな。
「うるせぇ!てめぇのすました顔を見るだけでもイラつく!おい!」
「恨むんなら、変に目立った自分を恨むんだな!」
集まっている男子の内、二人は弓道部の奴だ。
他は違う部活の奴…多分、二人の友人か何かだろう。
まぁ、こんな事に協力する奴らだ。碌な奴らではないだろう。
…と言うか、まだ入学して二か月も経ってないのにこんな事していいのかよ。
「おい、こんな所で何やってんだ?部活始まるぞ?」
「あ、聡」
「あ?なんで優輝がそこに……」
すると、声を聞いてか聡が校舎の角から顔を出してきた。
どうやら部活が始まるにも関わらずここに来ている連中を呼びに来たのだろう。
となると、こいつらは陸上部の奴らなのか…。どうでもいいが。
ちなみに、僕は他の弓道部員に呼び出されて遅れる事を伝えている。
なぜ司ではないかと言うと…司も呼び出されたのだ。しかも女子に。
「……あー、一応言っておくが、何やってもお前らの自業自得だからな」
「巻き込まれたくないからって丸投げするなよ」
一目見て状況を理解したのか、聡は引っ込んだ。
まぁ、同じ小学校から上がった奴は皆あんな感じで大丈夫だと丸投げしてくる。
何気に僕や司の万能っぷりがいつの間にか広がっていたようで…。
「はっ、お友達に見捨てられたな!ざまぁみろ!」
「(違うんだよなぁ…)」
それを別方向に勘違いしたらしく、囲ってる連中がさらに調子に乗る。
……さて、聡が先生を呼びに行ってくれてるだろうし、軽く伸すか。
「っ、このっ!」
「っと」
あれから数分。僕は反撃はせずに受け流すだけにしていた。
いやぁ、いくら正当防衛だからって、怪我させるのは…ね。
ただ、殴りに掛かってこけるのは自業自得だけど。
「はぁっ、はぁっ……なんで当たらねぇ…!」
「んー、あまり言いふらす事でもないけど、一つ教えてあげる。僕と司がなぜ弓道の上達が早く、こうして攻撃が当たらないのか…ね」
聡も大丈夫だと思っているからか、教師が来るまでまだ時間がある。
攻撃は全部受け流していたので、既に残っているのは同じ弓道部の一人だけだ。
「武術、それと武道では“重心”が関わってくる。その重心を理解し、コントロール出来れば、こうして攻撃を受け流す事もできる…っと」
「くそっ…!」
半身をずらすように拳を躱す。
もう我武者羅な殴り方なので、本当にあっさり避けれる。
「僕と司はちょっとした伝手で、そういった武術に通じていてね。そこで重心についてしっかり学んであるんだ。だから上達も早いし、攻撃も当たらない」
「くっ…ぁああっ!!」
「ほいっ…と」
殴り掛かってきた拳を受け止めるように受け流し、こかせないようにしながら僕と彼の位置を入れ替える。
「実を言うとアリシア……テスタロッサ先輩も僕らと同じで武術に通じてるよ。だから、今はああやって皆を指導する立場にいるんだ」
「なっ……!?」
衝撃の事実だった…と言うより、単に想像しづらくて驚いただけだろう。
実際、普段のアリシアからは武術らしい気配はないからな。歩き方はともかく。
「っと、それよりも時間だ。…ってあれ?」
こちらに来る四つの気配。一つは聡で、他二つは教師。
なら、後一つは?と思えば…。
「これは…一体どういう状況なんだ…?」
「あー、やっぱりこうなってたかぁ」
「……司?」
そう、司だった。司も別の場所に呼び出されたはずだけど…。
「今更…っていうか、前にも言った気がするけどさ、お前弱点あんのか?」
「全然焦ってない割には随分な言い様だな聡。一応、多対一には弱いぞ」
「説得力ねぇぞこの状況!?」
僕の周りには、数分前まで囲っていた男子生徒達が息を切らして倒れ込んでいる。
ついでに言えば、先生が来た事で全員、顔を青褪めさせている。
怪我は自爆した以外ではさせてない。まぁ、無駄に体力は使ったようだけど。
…まぁ、これも多対一だし、聡の言う事は尤もだ。
「…あー、とにかく、こうなった経緯を説明しろ、志導」
「あ、はい」
こめかみを押さえながら言う先生に、僕は軽く状況を説明した。
「なるほど、聖奈と同じか」
「あ、そういえば司はどうしてここに…」
「偶然、俺と榊先生が見かけてな。そこへ大宮が来て、ここに駆け付けた訳だ」
「それでここに…」
榊先生は今話した先生の隣の先生だ。ちなみに、話している方は近郷先生と言う。
確か……二人共陸上部の顧問だったっけ?
「大宮が慌ててない事から、正直起きているのかすら半信半疑だったが…」
「おい聡」
「去年高校生を倒したお前がやられると思うとでも?」
確かにその通りだけど…せめて疑われないようにしろよ。
「今回は無事に済んだから良かったものの…これは保護者を交えてしっかり話をした方がいいかもしれんな」
「ああ。いじめ問題はしっかりと潰しておいた方がいい」
数人相手を軽くいなしていた僕の事はさておいて、先生方はそういう。
まぁ、当然の判断なのだが…僕に関して親の事を出されるとなぁ…。
“保護者”と言うのなら士郎さんでいいんだけどさ。
「…なんだか、面倒ごとになりそうだね」
「“出る杭は打たれる”って奴だ。…なんとなくこうなるのは予想してた」
僕だけが巻き込まれるのならいいが、士郎さんとかを巻き込むとはな…。
やっぱり、学校での問題は一人では解決できないか。
……結論から言えば、僕らとしては穏便に事が運んだ。
僕と司、どちらも大した被害を受けていないのであっさりと許したのもある。
仕掛けてきた方も親にこってり絞られて反省しているようだ。
ちなみに、司はバケツの水とかを掛けられそうになったらしい。躱したけど。
…やっぱり男子より女子の方が陰湿だな。こういうのは。
「いやぁ、それにしても優輝達も遭うなんてね」
「いじめなんてちょっとした切欠で起きるからな。だからなくそうとしてもなくせない。それが問題とまで言われる所以だな」
「それを正面から堂々と打ち破る優輝も優輝だけどね」
現在昼休み…ではなく、夏休み前の午前授業後の部活までの時間。
僕と司はアリシアと共に弁当を食べていた。
…え?時間が飛んでるって?だって特筆する出来事はなかったしな。
「結局、司は人気者に、僕は相変わらず嫉妬の対象…と」
「同じ学校だった男子に感化されてたねー」
最初は嫉妬などがひどかったが、僕と司で悉く跳ね除けていた。
そうしたらいつの間にか無意味だと思われたのか、悪戯とかはなくなった。
…それはいいんだけど、相変わらず僕は嫉妬されていた。
「で、でも優輝君も人気だよ?」
「ん?そうなのか?いや、別に人気者になりたい訳じゃないんだけど」
「そーだねー。小学校の時と違って司が色んな女子に……」
「あ、アリシアちゃん!?」
アリシアが言い切る前に司が口を塞いだ。
「司?」
「べ、べべ、別に悪い事は考えてないよ?ただ、いつも一緒にいるからって聞かれて、それに答えただけで…」
「もごもご…もご……」
「お、おう…」
慌てて弁解しようとする司と、何か言いたげなアリシア。
それを見て、なんとなく察する事ができた。
大方、僕の為人を司は話していたのだろう。
「あら、やっぱり一緒にいるんですね」
「あ、藍華。それに明人。もうお弁当は食べたの?」
「ああ」
やってきたのは大和撫子のように美しさを持つ女性と、寡黙な印象を受ける男性。
アリシアの同級生である龍堂藍華先輩と千台明人先輩だ。
ちなみに二人は由緒ある家系同士で婚約を交わしているらしい。
由緒ある家系だからか、龍堂先輩は茶道や琴など、千台先輩は柔道や剣道など色々と習い事もやっているとの事。大変そうだな…。
「二人共部活に来れるのは珍しいね」
「部活も学業の一端ですもの。疎かにはできませんわ」
「なるほどねー」
習い事があるからか、二人はあまり部活に顔を出さない。
それでも、なんでもそつなくこなす人達なので、アリシアに次いで弓道は上手い。
「では、お先に」
「また後でねー」
そのまま二人は更衣室の方へ向かっていった。
実は、アリシアは気軽に接している二人だが、あまり人気がある訳ではない。
むしろ、家系の事もあって腫れ物を扱うような反応が多い。
そこへアリシアの分け隔てない交流が役に立ち、こうして仲良くなったとの事。
「…ふと思ったが、夏休みの大会、出れるか…?」
「……あー…」
「確かに……」
弓道にも当然大会はある。
しかし、管理局から支援を要請される場合もあるため、棄権の可能性もあるのだ。
基本バックアップのアリシアはともかく、僕と司はよく駆り出される。
嘱託魔導師なので拒否する事も可能だけど…。
「…ここは学業優先とさせてもらうか」
「義務教育なんだからそれが正しいよね」
苦労人なクロノには悪いが、余程でない限り断らせてもらおう。
いや、別にいつもクロノから要請が来る訳ではないんだけどな。
「……んー…」
「…どうしたアリシア?」
「いや、なんというか…うーん…?」
アリシアは僕らをじっと見つめて首を傾げている。何か引っかかるのだろうか?
「なんというか、二人共馴染んだというか…。いや、今までも特に違和感とかはなかったんだけど…。…あーダメ、言葉に表せられないや」
「馴染んだ…?どういうことだ?」
「普段は関係ないんだけどね。学校での話。中学に入ってからようやく馴染んできたように見えたの」
アリシアの言葉に、僕は考えを巡らす。
“馴染んだ”…その言葉が表す意味は…。
「…そうか、僕は前世では社会人。司も高校生途中までの授業過程は終えている。…つまり、“二度目”になるんだよ」
「あー、そういえばそうなるんだね」
前世についての話はアリシアももう知っている。だから訳は話せる。
霊術で認識阻害を張っておいたから、他の生徒とかに聞かれる事もないだろう。
「中学だからか、そこまで来たからかは分からないが、それまではどうしても馴染み切れなかったんだろうな。何せ、もう終わったはずの事。見せかけてもどこか綻びがある」
「…ん?…んん?」
…あ、やばい。アリシアが理解しきれなくなってきた。
自論を広げるのは悪い癖だな。理解が及ばない場合もあるっていうのに。
「まぁ、あれだ。アリシアが感じた違和感のようなものは、僕らが二度目だったからだ。その違和感のようなものが、ここでようやくなくなったって感じだ」
「あー…そう言う事かぁ…」
「自分ではもう馴染んでいたつもりだったんだけどなぁ…」
納得するアリシアと、そうだったのかと呟く司。
ちなみに司には僕も同意見だ。
「…それなら、そこまで気にする事でもないか。じゃあ、私達も準備をして道場に行こう。遅れたら承知しないよー?」
「それはそっちも同じだぞ?」
「じゃあ、優輝君。また後でね」
二人と別れ、僕も更衣室に向かう。
ふと、思い返すのは学校での日常。
適度に授業やテストをこなし、クラスメイトや教師と会話したりする。
“テレビでこんな事をやってた”、“最近こういう事が”…etc
他愛もなく、問題もない何気ない日常。
魔法関連の事が合間にあったとしても、やはり平和なものだった。
つい一年ほど前まで大きな事件などに巻き込まれてたからだろうか。
そういった感慨深さはふと思っただけで強く湧いてきた。
「……よし」
あの時、転生させられて。
普通の日常はもう歩めないものだとは思っていたけれど。
…こうして、平和な時間はちゃんとある。
「あっ、早い…!」
「まだまだだなぁ。アリシア“先輩”?」
「わぁ、煽るなぁ…」
着替え終わり、二人が来てから僕はそう言い放った。
…この光景も、また一つの“日常”。
ただただ平和を享受する、何気ない日々。
アリシアが言っていた“馴染んだ”と言う言葉は、何も二度目だったからではない。
こうした平和を、気兼ねなく享受しているからそう見えたのだ。
「優輝君?」
「ん、なんでもないよ。じゃあ、行くか」
道場に向けて、僕らは歩き出す。
…こんな“日常”がいつまでも続けば…と思うのは、高望みだろうか…?
後書き
榊先生、近郷先生…二人共陸上部の顧問。体育会系な肉体をしており、もし学校内で暴力沙汰が起きれば大抵この二人が出てくる。男女共に人気のある先生。
龍堂藍華、千台明人…二人共由緒ある家系で、婚約している。おまけにちゃんと両想いなので二人の間に割り込む隙はない。ちなみに、二人の家は月村家やバニングス家と交流があったりする。
せめてただの蛇足にならないようにしたら最後が束の間の平和みたいになった…。
とりあえず、魔法とかが関係ない時は本当に描写する事もない程に他愛のない日常を過ごしています。平和すぎて描く事がない…。
ちなみに、来年はなのは達も入学してくるので、また前半のような面倒ごとがあったりします。…と、言っても優輝も予想はしていたので対策は取ってあります。(司による魅了防止の結界とか)
それと、二年では優輝達は聡たちも含めて全員同じクラスです。(どうでもいい)
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