ソードアート・オンライン -旋律の奏者- コラボとか短編とかそんな感じのノリで
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憂いの雨と陽への祈り
脆弱なる主人
「シィさんが前衛。 僕が後衛。 これで行こうと思うんだけど」
「ふにゃ? 私が前衛?」
「うん。 今までの戦い方とかさっきのとか見て薄々感じてたけど、シィさんってセオリーとか戦略とかなしにして暴れまわってたほうが好きでしょ?」
「そりゃまーね。 でも、それでいいの? 地力はフォラスのほうが上だよね」
「いいよ。 今回はシィさんのサポートに徹することにしたから。 もちろん危なくなってきたら退がってくれていいし、可能な限り援護するつもりだよ」
「……もしかしてさっきの根に持ってる?」
「持ってないって言ったら嘘だけど、だからって命のかかった状況にそんなものを持ち込むほど腐ってないよ」
「それもそっか。 変なこと言ってごめんね」
わかってくれたならいいよ、と吐き出して作戦会議の時間を終わりにした。
レベルを考慮に入れれば僕が前衛でシィさんは後衛が安全なんだろうけど、それだとシィさんの持ち味であるトリッキーな戦闘スタイルの大半が死んでしまう。 SAOのボスが搭載している戦闘プログラムは突発的な行動に弱いことが多いため、変則的な戦い方は十分に武器になり、それを使わないのはもったいないと思っての提案だった。
シィさんの心配はさすがに失礼だと思うけど、あのデュエル以来今の今までなにも喋らなかった僕にも原因があるので怒る資格はないだろう。
ここは目的地の2歩手前、らしい。 エルティさんからの事前情報通りであればこの先のボスが鎮座していて、更にその先に上層へと繋がる階段があるそうだ。 そしてそこに目的の装置がある、と。
どんなボスかの情報はなし。 危険は未知数だけど、道中の敵の傾向から恐らくはゴーレムタイプだろうと推測している。 最前線に身を置いていた僕や、(自己申告を信じるならば)時折最前線に出ていたシィさんからすれば問題になることはないだろうとも思っている。 もちろん油断は禁物だし、あらん限りの警戒はするけど、とは言え、だ。
正直な話、僕が前衛になって手数でゴリ押しにしても余裕はあると思う。 ゴーレム系のような硬い敵は僕みたいな軽量剣士には不向きな相手だけど、絶対的なステータスの差で相性は覆せてしまうだろう。 もしシィさんがもう少し弱かったら、いや、デュエルで実力の片鱗を見ていなかったらそうしていた。 前衛は言うまでもなく危険だし、片方が崩れればその余波はもう片方にまでやってくるのだから当然の判断だ。
けれど、シィさんは弱くない。 どころか強い。 かなり強いと言っていい。 だからまあ、これは信頼のようなものだ。
シィさんであればちょっとしたボス戦くらいなら問題にならないだろうと言う信頼。
その腕だけは信ずるに値する。 少なくとも精神攻撃なんて言う反則に近い手を使ったとは言え僕を負かせるくらいの実力はあるのだ。 いつまでも庇護対象扱いは失礼だろう。
「さて、じゃあいい加減行こっか?」
「ちょいその前に」
「ん?」
扉に手をかけた僕を止める声。
首を振り向けると頭を掻きながら冴えない表情のシィさんと目が合った。 らしくないと言えるほど親しくはないけど、それでもらしくない表情だ。 何かを言い淀んでいるのか、あるいは気まずい何かを抱えているのか。 どちらにせよ無視はできなかった。
「なに?」
「あー、これ、使っててもいっすか?」
言いにくそうに、ややおどけて言っているのはやはり僕に気を使ってのことだろう。 大鎌に対してそれなりに思い入れのある僕を慮っての言葉。 それを当然のことと享受できるほど僕の感覚も磨耗してはいなかった。
「いいよ。 いや、本音を言えばよくはないんだけど」
「やっぱり短槍に戻そっか?」
「ううん、大丈夫」
「…………」
「大丈夫だよ。 大鎌は嫌な記憶を呼び起こすけど、別に全部が全部嫌な思い出ってわけでもないから。 楽しかった思い出も、確かにあるから」
我ながら下手な言い訳だと思う。 声は掠れていて、きっと表情も沈痛なものなんだろうと思う。 それでも大鎌に関する色々な思い出もそろそろ清算しておかなければいけないと言うのも一応は本音だ。
大筋の理由が別にあるだけのこと。 嘘は、吐いていない。
「シィさんの前でカッコつけてもしょうがないから言うけどさ。 本当は怖いよ。 今でもそれを見ると足が竦む。 あの時のことを、彼女のことを思い出して、心が張り裂けそうになる。 悲鳴をあげて蹲りたい気分だ。 でも……」
「でも?」
「それでもそんな理由で生存率を下げるのは合理的じゃない。 僕の精神なんて構ってる場合じゃないことは明白だからね。 シィさんはそれがメイン武器なんでしょ? だったらそれを使うべきだ。 僕に気を遣う必要なんてない」
「薄々わかってたけど、やっぱフォラスって偽悪的だよね」
「……そう言うんじゃないから」
「おやおやー、照れてるのかな? かなー?」
「うっさい」
「うわ顔真っ赤—。 愛い奴よのう」
顔を背けて見ても回り込まれて覗き込まれる始末。 って言うかあの、顔近いんですけど!
「うむうむ、意外に純情でウブなフォラスに一個アドバイスね」
「なにさ」
「普段もっとツン成分を強めにしとくと君は立派なツンデレになれるぞ!」
「……さて、行こっか」
「無視すんなー!」
うがーっとがなるシィさんはまるっと放置していこう。 真面目に相手をするだけ体力が削られていく。 削られるのは精神力か? シィさんといつも一緒にいる彼の胃は大丈夫なのだろうか、なんてお節介なことを考えてみる。
そして考えながら扉を開け放った。
「お先にどうぞ」
「『シィ様は僕が守る! うぉおぉぉ!』みたいな気概とかないの?」
「ない。 シィさんって守られなきゃならないほど弱くないでしょ? と言うわけでサクッと終わらせてきてよ」
「はいはい。 ん、その言い方だと見物するだけみたいに聞こえるんだけど」
「ソンナコトナイヨー」
「ま、いっか」
「いいの?」
「なんだかんだ言いながら危なくなったら加勢する奴ってわかったからねー」
人をそんなちょろい奴扱いしないでもらいたい。 いやもう本当に。
視線による抗議なんてなんのその。 シィさんは悠々と僕の肩を気軽に叩いてボス部屋へと足を踏み入れた。 気楽に、それこそ食堂にでも入るような気安さで、ズンズンと先に進み、そして……
ゴガン
と重い音が響いた。
音源は部屋の最奥だろうか。 暗くて判然としないけど、動く巨大な影と怪しく光る紅蓮の光点がふたつ。
瞬間、部屋の松明が順に燃え出し、その姿を僕たちの前に悠然と晒す。
岩。
初めに抱いた感想がそれだった。
ゴツゴツとした質感の体表を持つ、目算5mほどにもなる巨大なゴーレム。 その証たる紋章を右肩に刻んだそいつは、僕程度なら丸呑みにできかねないほどに大きな顎を目一杯開口し、地を轟かせる咆哮をあげる。
vulnerable golem the talos
定冠詞が付いているからもボスであることは間違いない。 和訳すれば……脆弱なゴーレム・タロス、か。
脆弱な、なんて言うゴーレムに不釣り合いな単語は気になるものの、外見だけ見れば普通に普通の大型ゴーレムだ。 HPバーは7本。 31層であることを加味すれば明らかにHPが膨大すぎる感があるけど、ゴーレム系のお決まりと言えばお決まりでもある。
ゴーレム系は総じて防御力と攻撃力が高く設定されていて、HPも相当多くなることが多い。 もちろん例外もあるし、そんな例外を何度か見たことがあるけど、それでもまあそんな感じだ。 攻撃パターンは単調なものが多く、その破壊力に警戒さえしておけば問題ない相手とも言える。
問題はだからそう、相性の悪さか。
動きの遅いゴーレム系は身体が硬く、生半可な攻撃ではダメージが与えられない。 防がれるとか耐えられるなんて次元ではなく、文字通りダメージが通らないのだ。
そして言うまでもなく僕にしろシィさんにしろ恒常火力は決して高いとは言えないのが実情だ。 もちろんそれを補って余りあるだけの技術があるから硬い相手と戦うことになった場合の対策もある。 少なくとも僕にはあるし、シィさんだってあるはずだ。
それでも相性的に不利であることは否めないけど、とは言え今回はそこまで警戒する必要もないのかもしれない。 なにしろレベルの差が歴然すぎるほどに歴然だからだ。
カラーカーソルは鮮やかなピンク。 つまり圧倒的格下であることを示している。 更に言えば識別スキルで読み取ったレベル(識別スキルで読み取れる時点でレベルの差を示す証左だ。 これでレベルが近いとステータス情報の全てを読み取ることはできない)は48。 この層にしては破格の、けれど僕とシィさんを前にするには絶望的なまでに足りないレベル差だ。 これほど開けてしまうと相性なんてあってないようなものと言っていい。
「シィさん」
「任せんしゃい!」
僕の声を聞くと同時……どころか行動のほうが数瞬早かった。
ドンと地面を踏みしめる音を置き去りにして急加速したシィさんは、未だこちらを睥睨するだけで何も行動を起こさないタロスへと肉薄し、そしてそのまま股下を潜り抜ける。
その拍子にタロスの右足首に大鎌の刃を引っ掛けて急制動。 瞬間、跳び上がって右足の膝裏へと蹴りを叩き込んだ。 スキルを伴わない蹴りであるにも関わらずぐらりと傾いだタロスへと追い打ちとばかりに引き抜いた大鎌で今度は左足を水平に薙ぎ、それだけで完全にタロスの体勢は崩れ、重力に従ってゆっくりと倒れ込む。
もっとも、正確には倒れこみそうになった、か。
そんな隙だらけな敵を前にシィさんがなにもしないわけがない。 大鎌を薙いだ勢いで身体を捻っていたシィさんがその捻転力を解放し、地を這うような軌道から繰り出された斬り上げがタロスの左腕を吹き飛ばす。
レベル差を考慮に入れても呆気ないくらい綺麗に飛んだ左腕の行く先を視線で追うこともなく、振り上げの軌道で背後に回った大鎌を右手1本に持ち替え、タロスの左側にいながら右脇腹を抉ると言うなんともあれな追撃を加えてから飛び退いた。
さすがは元攻略組。 ステータスやレベルの差に驕らず、初見の敵に様子見を選択するのは至極真っ当な戦法だろう。 これがわざわざ手を出す暇もないほど一瞬で行われた攻撃なのだから頼もしい限りだ。
今の交錯で削ったHPは1段目のバーの約半分。 ソードスキルを使わなくても圧倒的なレベル差を考慮すれば当然と言えるだろう。 正直、殆どイジメと言っていい。
が、さすがと言えばこちらもさすがはボスだ。 斬られた左腕の切断面が隆起したかと思えば瞬時に腕が再生されてしまう。 HPの回復はないところを見ればトカゲの尻尾のようなものだろう。 再生速度からは全力で目を背けるけど。
そして今度はこちらの番だと言わんばかりにシィさんへと特攻するタロス。 しかし相手が悪すぎる。 シィさんは余裕の笑みで迎撃の体勢を整え——
「シィさん!」
視界の端を何かが掠めた。
そう認めた瞬間に僕はすでに叫んでいた。 肝心のシィさんはタロスの巨体で視界が塞がれ、死角だらけとなっていたらしい。 こちらの忠告の声に不思議そうに首を傾げ、同時にそれでも警戒に値すると判断したのだろう。 タロスとの距離を取るように後方へと大きく跳んだ。
それを追うように距離を詰めるタロス。 だが、その鈍重さでシィさんを捉えることは叶わない。 振り払った巨腕は未だ滞空しているシィさんをギリギリで空振り、タロスの後方より飛来した左腕が結構な速度でシィさんへと迫る。
「にゃにぃ⁉」
驚愕の声を上げながらもキチンと大鎌の柄で防御するシィさんの身のこなしは本当に賞賛ものだ。 それでも地に足のついていない空中での攻撃だったため、そのまま更に後方へと吹き飛ばされるけど、猫科動物を思わせる器用な体捌きで難なく着地まで決める始末だった。
「ちょい! 斬った腕が飛んでくるとかなにそれ聞いてない!」
「事前に教えてくれるわけないって」
「シィちゃん的には反則だと思います!」
「審判はいないけど……僕的にはありだと思うよ」
「裏切ったなこらー」
タロスを間に挟んで気の抜けたやり取りである。
いやまあ、斬られて飛んだはずの左腕が誰も触ってないのに動き出して、しかもシィさんに向かって飛んでくのを見たときは肝を冷やしたけど、とは言えレベルの差は如何ともしがたい壁だったようだ。 最前線に出る雑魚モンスターの攻撃のほうがよっぽど速いしよっぽど重い。 要するにシィさんを脅かすにはスピードもパワーも圧倒的に足りていなかった。
「って言うかサボんなー」
「はいはい。 じゃあ、働こっかなっと」
ごもっともなお叱りが来たので働くとしよう。
僕に背を向けているタロスに全速力で迫り、双剣を閃かせてまずは両足を同時に斬り飛ばす。 剣にかかる抵抗は殆どゼロと言っていいくらいなく、低くなったタロスの肩口をこちらも両方とも斬り落としてみた。 やはり抵抗はない。
そしてやはり斬った四肢が動き、こちらに攻撃を仕掛けてくる。
「ふむ、やっぱり部位欠損扱いで消失するんじゃなくて。斬った先がこっちを襲ってくるみたいだね。 いやはや厄介だよ」
「絶対わかっててやったよね⁉ 絶対わざとだよね⁉」
「やだなあ、確認だよ、確認。 十中八九こうなるってわかってたけど確認って大事だからね」
「馬鹿なの? ゼロなの?」
「まあ、優しさはゼロかもね」
「言ってる場——って、こっちに来た⁉」
「目がないから声に反応してるんじゃないかな?」
「『かな?』じゃねー!」
うむ、とても楽しい。
飛んでくる腕とか足とかを避けて、しかも手足を再生させて攻撃してくる本体を余裕であしらいながらの会話だ。 もはやアトラクション扱いと言っても過言ではない。
と言うか、ボス部屋前でやったシリアスな会話を返してほしいよ、本当に。
そこからは本当にただの遊びのような戦闘だった。
以下抜粋。
「で、どうする?」
「斬撃がダメなら刺突で殺るまでのこと! ってなわけで死に晒せぇ!」
「…………」
「……嘘—ん」
「……1名様ご案内でーす」
「うぎゃー!」
「って言うか、短槍投げるくらいなら腕なんて狙わないで身体を狙おうよ」
「えーだって負けた気がするじゃん」
「なるほどね。 シィさんが馬鹿だってことはよくわかったよ」
「お? 喧嘩か? 喧嘩売ってんのか?」
「とか言ってる間に斬れた腕を取り込んでHP回復してるよ」
「うわなにそれ卑怯でないかい」
「おー、見てる間に全快だね」
「冷静に実況してる暇があるなら止めろー」
「だって僕の武器、斬るしかできないよ?」
「身体を斬れば解決!」
「えーだって負けた気がするじゃん」
「……わかった。 よーくわかった。 後で絶対泣かす!」
「はいはい頑張って」
「って言うかフォラス、体術使えたよね?」
「こんな岩の塊を殴れって? いやだってほら、こんなに細腕」
「腕捲りしてる場合じゃねー!」
「それにほら、僕ってAGI型だしね」
「ヘーイ、貧弱非力貧相もやしー」
「あ、もやしはちょっとカチンと来たかも」
「ヘーイ、もやしもやしー」
「ふん!」
「…………」
「なにか言った?」
「ちょ! なんで左手1本でゴーレム吹っ飛ばせるの⁉」
「このガントレットにノックバック増大の効果があるからね。 体術のソードスキルを使えばこのくらい簡単だよ」
「は、は……」
「は?」
「初めから使えアホー‼」
なんて言うか、うん。 なんだろうこの非常に馬鹿っぽい感じは。 まあ、終わりよければ全て良しと言うことで。
最終的には「再生するなら徹底的にボコればそのまま削りきれるんじゃにゃーの?」と言う、脳筋を通り越して魂まで筋肉で出来ているのではないかと疑いたくなるくらい単純な作戦ですらないなにかの前にタロスは呆気なくポリゴン片へとその姿を変えた。 なにを言っているのかよくわからないと思うけど、僕自身よくわかっていない。
で、現在。
「そっか、ユーリはこう言う気持ちだったんだ……ちょっと反省しそうだよ」
「どんな気持ち?」
「振り回されるってこんなに胃が痛いって知らなかった……」
「ん? それだと僕がシィさんを振り回してるみたいなんだけど」
「振り回されてるからね!」
相も変わらず緊張感の欠落した会話をしつつ歩いていた。 この階段の先に雨を止めるための装置があるのだろう。 事前情報通りならこれで戦闘パートは終了と言うわけだ。
このクエストが終われば僕はまた平穏に……いや、アマリのいない寂しい時間に逆戻りになる。 あの宿屋から飛び出してからは色々と激動だったので考えることもなかったけど、1人になればそうもいかないだろう。 独りになれば、考えないわけにはいかない。
「はあ……」
かなり気が重い。 正直な話、このままシィさんと馬鹿をやっていたい気分でさえある。
これが終わったら意地を張らず黒猫団のホームにでもいって彼らの手伝いでもしようかな。 ケイタさんも人手が足りないって嘆いてたし、考える余裕がなくなるくらいには忙しくできるかもしれない。
「って言うかさー」
余程暗い顔をしていたのだろう。 隣を歩くシィさんがヒョイと顔を覗き込んできた。
「なんで謝らないの? 『ごめん許して』って言えばアマリちゃんも許してくれるんじゃない?」
「むぐ……」
「なんだかんだ言いながら1人でいるほうが楽とか?」
「うーん、確かにそれもあるんだけど、なんて言うのかな……冷静になる時間が必要? うん、まあ、そんな感じ」
「冷静にって、アマリちゃんが?」
「いや、僕が」
ふぃーん、と適当に相槌を打ってまた前を向くシィさん。 興味がないのか納得したのか、あるいは踏み込まないほうがいいと思ってのことか。
なににせよ今はクエスト攻略に勤しんだほうがいいだろう。 考えるのはこの先いくらでもできるんだから。
と、階段がようやく終わる。
出たのはやや開けた空間。 円形の部屋で、僕から見て正面と左側に先へと続く道があり、その先は暗くて見通せない。
「ふむ、どっちに行く?」
「とりあえず左に行ってみよう」
「即答だね」
「そっち側に装置があるらしいからねー。 ほれ」
言いつつ可視化したウィンドウにマップを表示してくれた。 このマップデータはエルティさんからシィさんが受け取ったもので、これを元に最短距離をひた走っていたらしい。
らしい、と言うのは、シィさんの後ろをついて回っているだけだからだ。 気分としてはカルガモ。
「足取りに迷いがないと思ったらそう言うことだったんだね」
「そうとも知らずについてきてたの?」
「そりゃ僕は首を突っ込んでる側だからね。 特に必要がなかったら攻略方法に口は出さないよ」
「もしかして結構投げやり?」
「ああ、いや、そう言うわけじゃなくて、シィさんならヘマしないだろうって安心してるんだよ。 そもそも僕はあんまり先頭に立つタイプじゃないしね」
「へえ、ちょっと意外かも」
「そう?」
そんな適当な会話をしつつ進んでいた僕の視界に見知った桜色が映り込んだ。
「え?」
通路の先にアマリが立っていた。
後書き
シィちゃんが振り回されてる、だと……(諸悪
と言うわけで、どうも、迷い猫です。
長かったコラボもそろそろ終わりが近づいてきたなーとか思いながらの今回の更新、いかがでしょうか?
普段は振り回す側のシィちゃんですが、うちの主人公の方が振り回す側になりましたね。 シィちゃん、胃薬あげようか?←おい
さてさて次回は両サイド合流回、にはなりません。 合流はもう少し先なのです。
ではでは、迷い猫でしたー
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