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東方
古明地こいし進化しました
In America, you always find a party.
In Soviet Russia, a party always finds you.
アメリカでは、あなたはパーティーを楽しむ
ソビエト・ロシアでは、党があなたを監視する!
◆
「はい、粛清完了」
古明地こいしは、恐れられている。
泣く子も黙る秘密警察を率いるのが彼女だからだ。
だが、それ以上に恐れられているのはその能力ゆえだろう。
さとり妖怪である彼女は人の心が読めるのだ。
どんな犯罪者もこいしの前には無力だった。
犯罪者――思想犯や政治犯も含む――を容赦なく粛清する彼女だが、昔は気弱で大人しい少女だった。
人の心を読むのに疲れ果て、自らの力を封印して、あてどなく漂っていたのである。
そんなとき出会ったのが、フランドール・スカーレットだった。
こいしの上司であり、狂信的な愛情を注ぐ絶対的な対象である。
今日も今日とて、フランドールのために思想犯をルビヤンカの地下送りにしていた。
きっと笑顔で拷問を楽しむのだろう。想像するだけでぞくぞくとして、笑みがこぼれる。
「おっと、いまは仕事をしないと」
今でも思い出す。あの真夏のシベリアの大地でフランドールと出会った日を。
心を読む能力が嫌で嫌でたまらなかった自分を、彼女は優しく諭してくれた。
フランドールもまた、自らの能力に振り回された経験をもっており、こいしに親近感を抱いたのだろう。
彼女は、こいしにささやいた。
『せっかくの能力だから、思いっきり利用して人生楽しめばいいのよ』
事実、フンドールはその破壊に特化した能力で、姉のレミリアの敵を文字通り粉砕していた。
そんなフランドールにとって、敵対者の心を読めるこいしの能力は喉から手が出るほど欲しかったのだろう。
いや、それ以上に、フランドールにとって、こいしは自らのあり得た未来だったのかもしれない。
もしレミリアがいなければ、こいしの立場にいたのは、あるいは自分だったのかも、と。
こうして、ソ連にこいしは加わった。
約束通り、彼女の能力を最大限利用できる舞台を、部隊を、用意したのだ。
最初は、恐ろしかった。自分の能力で、処刑台へと送られていく人や妖怪を見るたびに、怖くなった。
ある日、スメルシ("スパイに死を")として活動していたとき、スパイをあぶり出して、心を読み人類連合軍の大規模侵攻計画を入手した。
結果として、情報を入手したソ連側の先制攻撃により、100万人の将兵が死傷した。
今までと桁の違う犠牲者数を見て、怖くなった。
しかし、怯えるこいしに、フランドールは言い放ったのだ。
『一人の死は悲劇だが、百万人の死は統計に過ぎない』
恐怖心から依存しようとしたのかもしれない。こいしは、すっかりフランドールに心酔した。
フランドールのために、喜々として粛清を行うようになり、恐怖は快楽へと進化した。
こうして立派なドSが誕生したのである。
――――やがて、再会したこいしの姉は号泣したという。
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