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ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D

作者:ユキアン
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ハイスクールD×D 照らし出す光




「ここでこうして、こうやって、こう!!」

時間は今までのベストを更新。

「よっしゃあ!!」

「先生、うるさい」

「授業をサボってるグレモリーさんに言われたくありません」

ゲームをセーブして電源を落とす。ベッドの一つを占領して寝ていたグレモリーさんに答える。この娘は3年になっても変わらないな。自由で不自由で傲慢で寛容で背反が両立している不思議な娘だ。これがパラドの言うメインキャラクターなのだろう。歪でありながら美しいと思えるのが特にそう思う。

「ところで先生、マイティの噂を知ってる?」

「何?裏技とか隠しコースとかは全部暴いてるけど?」

ゲーム機を見せながら見当違いの答えを出す。

「あ〜、先生に曖昧な聞き方をした私が悪かったわ。夜な夜なマイティとかゲームのキャラクターが現実に現れてるって噂」

もちろん知ってるさ。

「是非ともサインを貰いたいな。あと、握手と写真撮影も」

「やっぱりそういう反応か」

「僕に何を期待してたのさ」

「……小猫が先生がマイティになるところを見たって」

見られていたか。よし、脅そう。

「ふ〜ん、夢でも見てたんじゃない?」

グレモリーさんに背中を向けて引き出しからゲーマドライバーを取り出して装着する。ガシャットは、何方を使うか。見た目から威圧するならこちらだな。

「隠しても、何、それは」

「君には消えてもらう。僕の、オレ達の平穏な日常を荒らされる訳にはいかない」

マキシマムマイティXガシャットとハイパームテキガシャットを構え、両方のスイッチを入れる。

『マキシマムマイティX!!』
『ハイパームテキ!!』

同時に背後にゲームのタイトル画面が投影される。

「うぇっ!?一体何が」

驚いている隙に変身を終わらせる。マキシマムマイティXガシャットをゲーマドライバーに挿入し、ハイパームテキガシャットを構える。

『ガッチャーン!!レベルマーックス!!』

「ハイパー大変身!!」

ハイパームテキガシャットをマキシマムマイティXガシャットと合体させ、マキシマムマイティXガシャットのアーマライドスイッチとハイパームテキガシャットの上部のスイッチを押し込む。

『ドッキーング!!パッカーン!!ムーテーキー!!』

オレの姿がマイティアクションレベル2に変わり、頭上に現れたマキシマムゲーマに収納され、マキシマムゲーマに金色の流星が流れ込む。そしてマキシマムゲーマが崩れる。

『輝け!!流星の如く!!黄金の最強ゲーマー!!ハイパームテキエグゼイド!!』

まだ混乱が続いている内にステージセレクト機能を使用して、いつもの採石場のステージを選択する。

「て、転移!?何も感じなかったのに!?」

保健室から急に採石場に移動したことに驚いているようだな。

「さっきも言ったけど、知られるだけなら別に放っておいた。だけど、オレ達の日常に干渉するのならゲームを終わらせる」

『おいおい、永夢。巻き込まれる可能性は十分にあるって最初に説明しただろう』

今は僕の中にいるパラドがオレを止めようとする。だけど、今はそれを無視する。パラドは一人ぼっちだったオレの友だちになってくれた。それに厄介事も全部引き受けてくれた。それが嬉しくて、心苦しくて、手伝いを申し出たのに失態を犯した。犯したミスは自分で決着をつける。

『分かった。だが、殺すなよ。余計に面倒が増えるぞ』

分かってる。我儘に付き合ってくれてありがとう。









この世界に転生して最初に思ったのは、あの神は邪神とか悪神とかそういう類の輩だったらしい。確かに注文通りガシャットとドライバーに関する知識を与えてはくれた。そこは感謝しよう。ハイスクールD×Dの世界なのも最初にちゃんと教えてくれた。それも感謝しよう。だが、オレの体はバグスターとして、それもまともな体を構成できないほどの量のバグスターウィルスでしかなかった。あのままなら消滅していただろう。そんなオレは勘頼りに感染できる相手を探した。そして、この世界の宝生永夢を見つけた。

原作同様一緒に遊んでくれる友達を求めていた永夢に取り付き、ウィルスを培養させた。最初は完全に利用してやるつもりだったのだが、永夢は純粋で良い子ちゃんだった。そんな永夢に絆されて、平穏で楽しく過ごせるように脅威を排除するためにガシャットを作成して力を使ってきた。

それでも大学時代に一度だけ事件に巻き込まれ、永夢の目の前でパラドクスに変身して戦ったことから本人も守られるだけでは嫌だということで喧嘩にもなった。オレは戦わせたくない、永夢はオレだけに戦わせたくない。最後にはオレが折れる形でガシャットとゲーマドライバーを作成して渡した。

代わりにゲーマドライバーに細工を施しプロトマイティアクションXガシャットオリジンのコンティニュー機能を搭載した。これは永夢にも秘密にしてある。コンティニュー出来るからと無謀になられては困るからだ。もっともオレがそんな状況には追い込ませない。

十分に鍛え上げもした。大抵の相手に負けはしない。それにハイパームテキエグゼイドが負けることはない。目的を達せないことはあるだろう。だが直接的に負けることだけはない。ハイパームテキエグゼイドはそういう存在なのだ。

衝撃はあるがダメージはない。特殊能力の類を一切受けない。この世界で分かりやすく言えば、神滅具の攻撃をくらおうが吹き飛ばされるだけ、白龍皇の半減は無意味、滅びの魔力も無意味。世界そのもの改変と変身前に潰す以外での攻略法はない。

改めてチートだよな。確か無敵の主人公が無双するゲームだったか。実際に発売されたら30分ぐらいは楽しめそうだ。

そんな風に過去を思い返している内に決着は付いていた。ハイパークリティカルスパーキングが直撃する直前にデータを書き換えてダメージを1に固定しておく。そしてリアス・グレモリーが倒れ伏す。意識はあるみたいだな。

「オレ達に関わらないでくれ。この力はただ降りかかる火の粉を払うための力なんだ。君達の事はある程度知っている。だからこそ余計に僕達を巻き込まないで欲しいんだ」

『落ち着いたか、永夢』

『ごめん、パラド。大丈夫だよ』

『いいさ。オレはお前でお前はオレなんだ。苦労なんかは二人で半分ずつ、楽しさは二人で倍に。それがオレ達だろう』

『そうだね。ありがとう、パラド』









あれから暫くの間は永夢に付きっきりでリアス・グレモリー達が何か仕掛けてくるかを警戒していたのだが、どうやらオレ達のことには触れない方針でいてくれるようだ。それならいいさ。原作も始まったみたいだしな。兵藤一誠は悪魔へと転生した。しばらくすればアーシア・アルジェントも悪魔に転生する。オレ達は介入するつもりはないが、コカビエルの時ぐらいはこっちもヤバイから介入する可能性はある。それまではゲームを楽しもうぜ。

毎日のように通っているゲーセンでドレミファビートのランキングを確認する。此処の所、このゲーセンのランキングにオレと永夢以外の名前が乗ることがたまにある。それを塗りつぶす作業だ。パーフェクトを出し、スコアが同じ場合は新しい方のスコアが優先される。そのシステムを利用して蹴落とす。

「見つけたッス!!毎日のようにウチの記録を潰してまわってるのはアンタッスね!!」

ちょうど記録を塗り替えた所で背後から声をかけられる。マナーを守ってるのは良いのだが、ここでは声を大きくする必要がある。

「外に出るぞ。周りの迷惑だ」

ゲーセンの中では声を大きくする必要がある。それを避けるには外に出るのが一番だ。それに気持ちを切り替えるには一番だ。なんでこいつがゲーセンに入り浸ってるんだよ。外に移動して近くの自販機からオレンジジュースを購入する。もう一本購入して投げ渡す。

「とりあえずは自己紹介だ。オレは天才ゲーマーコンビ『MP』のP、パラドだ。一番得意なのはパズルゲームになるな」

「知ってるッスよ。コンビで年収2億円以上と言われる天才ゲーマー。その伝説はウチが破ってみせるッス。ギリギリチャンバラで勝負!!」

「面白い、良いだろうと言いたい所だが、ここのギリギリチャンバラの筐体は劣化が酷くてな。主にオレとMがやりすぎたせいなんだが。店を変えよう。隣町まで行くぞ。幻夢コーポレーションの店があるからな。時間は大丈夫か?」

「あ〜、今日は微妙ッスね。偶々見かけてとりあえず声をかけただけッスから」

「日によってはMも来れるはずだ。オレ達コンビに勝てるかな?」

「ふん、絶対に勝って最強ゲーマーの座を奪ってやるッス」

「ふふっ、いいぜ、オレを熱くさせてみろよ」

「ふふん、Pもそうっすけど、Mにも勝ってゲーマー界でMと言えばウチのことを指すようにしてやるッス」

「ほうMをねぇ」

「あっ、自己紹介がまだでした。ウチはミッテルト。これでも成人してるんすよ」

まあ、人外だからな。見た目と年齢が合わないのは知っている。見た目と年齢が合ってるのもいるけど。

その日は連絡先を交換して別れ、次の土曜日にMと共に返り討ちにしてやった。人外のスペックでかかってくるのかと思えば、人間に合わせたスペックのみで己のセンスと努力でゲーマーとしての実力をつけてやがった。たまに大会に賞金目当てで参加している人外がいる。それらを真っ向から潰してきたオレ達に食らいつく時点でこいつはすげぇやつだ。チョイ役とは思えないぐらいにな。気に入った。だから、こんなことをしている。

「よう、ミッテルト」

「パラド!?どうやってここに来たんすか!?」

「はん、これでもオレも人外でな。この世でひとりぼっちの種族、バグスターだ。オレの能力を使えば忍び込むなんて分けないのさ」

旧校舎を覆うように張られている結界内に最初から忍び込み、実体化したオレを見てその場にいた奴らの動きが止まる。

「なんで来たんすか」

「永夢の奴がおせっかいであのシスターを助けに行ってな。オレもミッテルトを、楽しませてくれた礼に最後ぐらいは楽しいゲームで生を終わらせてやろうと思ってな」

「助けてくれるとは言わないんすね」

「助けてやってもいいが、これからもクソみたいに使い捨てにされ続けるぞ。それ位なら最後ぐらい楽しんで死ね」

「ははっ、厳しいッスけど、優しいッスね」

ゲーマドライバーを装着し、ガシャットギアデュアルを装填する。

『The strongest fist! What’s the next stage?』

「マックス大変身!!」

パネルを開く。

『マザルアップ!赤い拳強さ!青いパズル連鎖!赤と青の交差!パーフェクトノックアーウト!』

現れたスクリーンを潜ると共に仮面ライダーへと変身を終える。ゲーマドライバーを見た時点でリアス・グレモリーが少し怯えていたが、パラドクスの姿を見て若干安心したようだ。

「さっきのスタート画面はパーフェクトパズルとノックアウトファイター。それにその姿は」

「仮面ライダーパラドクス パーフェクトノックアウト。これがオレの力だ」

ステージセレクト機能を使ってミッテルトだけをギリギリチャンバラのステージに引きずり込む。

「ここは、ギリギリチャンバラのステージ?」

「そうだ。ミッテルト、後悔を残すなよ」

パネルからガシャコンブレイカーを選択してAボタンを押して構える。ミッテルトも光で自前の刀を作り出す。

「いいっすね~、コンティニューが出来ないギリギリチャンバラッスか。ゲームだからこそ真剣に」

「一度しか出来ないからこその楽しみ」

「「燃える」ッス」

同時に駆け出し一瞬の交差、それで終わった。ミッテルトは鮮血を流しながら倒れ、オレのライダーゲージのメモリが減る。タイミング的にはミッテルトの方が速かった。手加減したつもりはない。つまりあの一瞬だけ、ミッテルトはレベル99を超えるだけの力を発揮したのだ。

「オレの負けか」

振り返りミッテルトに近づくとまだ息がある。側に寄って抱き起こす。

「へへっ、ウチの、勝ちッスね」

「そうだな。オレの負けだ」

「やっぱり、ゲームは楽しいッスね」

「ゲームは誰かを楽しませるためにあるものだからな」

「そうっすね。ウチも、随分、楽しませてもらって」

そこまで言った所でミッテルトが泣きながら溜め込んでいたものを盛大に吐き出す。

「ウチは、楽しいことが、したいだけだったのに!!誰にも迷惑をかけずに、ゲームで!!楽しんだだけで堕天させた神なんてクソ食らえ!!堕天使だからって反社会的だと決めつける奴らなんて全部滅びろ!!誰も傷つけたくなんてないのに!!」

そういうことか。この世界のミッテルトは弱くはないんだ。ただ誰も傷つけたくない心が力を発揮させないだけなのだ。オレが死なないと分かったからこその一撃がさっきの斬撃だったんだな。このまま治療するだけならエナジーアイテムの回復を与えれば大丈夫だろうが、それでは完全にはぐれの堕天使になってしまう。ならオレに出来るのは一つだけだ。

「ミッテルト、バグスターとして生まれ変わるつもりはあるか」

オレはプロトガシャットを取り出して尋ねる。







廃教会の前に兵藤君と木場君と塔城さんがいるのを見つけてバイクを側に止める。

「宝生先生?なんで此処に?」

「まあ、君と同じ理由になるのかな、兵藤君」

「オレと同じって、アーシアを?なんでそれを知っているんですか」

「僕の相棒が教えてくれたんだ。ちょっとしたおせっかいかな」

パラドが言うには相手はこちらの話を聞かない狂信者ばかりで治療は不可能だそうだ。だけど、相手は人間だ。命を奪うことまではしたくない。

「さて、ちょっとだけ準備をさせてもらうね」

ゲーマドライバーを装着してマイティアクションXガシャットのスイッチを入れる。

『マイティアクションX』
「変身!!」

ガシャットをゲーマドライバーに装填して展開されるキャラクターパネルからアクションマイティを選択する。

『レッツゲーム!!メッチャゲーム!!ムッチャゲーム!!ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!!』

「本当にマイティに変身するんだ。著作権的に大丈夫なんですか?」

「ああ、幻夢コーポレーションって僕の相棒の会社だから。このゲーマドライバーも相棒が作ったものさ」

一人ぼっちだった僕と友だちになってくれたパラド。最初は打算的な目的があって僕と友だちになったって後から正直に話してくれたけど、それでも良かったんだ。打算的であったとしても、寂しい思いをせずに済むようになったから。パラドに出会ってからは特にそう思う。ゲームをしてもパラドは僕に付いてきてくれた。いつの間にかゲーマー界のトップみたいに扱われるようになってもそれは変わらない。出会った頃に書いていた子供のぼくのかんがえたげーむを作る会社も建てて一緒に遊んでくれる。

そんな貰ってばかりの僕はパラドの好きなものをあげたいって思っている。そしてパラドの好きなものは笑顔。誰の笑顔でも良い。ただ笑顔で楽しそうにしている人達をみたり、一緒に楽しむことが何より大好きなんだ。だから、一番多感的でその後の人格形成や交友関係を気づきあげていく学生たちの力になりたいと養護教諭への道を進んだ。

カウンセリングの資格も持っているから多くとはいえないけど、笑顔になれない子に笑顔になれるように。出来る限り力になってきた。だけど、そんな子たちを裏で食い物にしている奴らもいる。それに対抗するための術をパラドは用意してくれた。その力で今回はあのシスターを救う。それだけだ。

「それじゃあ、行こうか」

そう言って教会の扉の前にまで移動して扉を背にする。

「何をするんですか?」

塔城さんが首を傾げながら尋ねてくる。兵藤君は僕が何をするのか気付いたようだ。

「あの、もしかしてアレをするんですか?」

「そうだよ。と言うわけで場所を開けててね」

場所を開けてもらってから壁に向かって走り、壁を蹴った勢いを使って跳ねるように転がりながら教会のドアを吹き飛ばして中にいた神父も跳ね飛ばす。だが、運が悪いことに突っ込んだ先に地下への道があった所為でそのまま地下へと転がっていき、その先にある広い空間まで転がり込む。そしてそのまま転がっていき、十字架に激突して折ってしまった。そしてそれに縛り付けられていたシスター、アーシアさんをキャッチする。

「一体何なのよ!?」

隣で黒い翼が生えた女性が怒鳴っている。堕天使の仕業か。とりあえずはアーシアを逃さないと。側にあるブロックを壊して中からエナジーアイテムを取り出す。

「よっしゃあ、高速化GET」

運が良いことに手に入った高速化を使って入口に向かって跳ねる。空中で足元にチョコブロックを精製しながら跳ねる。ちょうど入り口に当たる部分まで戻ると兵藤君達もやってきた。

「よし、早くアーシアさんを逃してあげて」

兵藤君にアーシアさんを渡してガシャコンブレイカーをパネルから選択して取り出す。

「いや、先生、相手はあの数なんですよ!?それにそんなリーチの短さでハンマーって」

「そこまで心配することかな?まあ、安心できないって言うなら、だ〜い、変身!!」

僕を心配する木場君を安心させるためにゲーマドライバーのレバーを開く。

『ガッチャーン、レベルアーップ!!マイティジャンプ、マイティキック、マイティマイティアクション!!エックス!!』

スクリーンを潜り抜け、2等身から通常の等身へと戻る。このレベルアップに木場君達以外に神父服の男たちや堕天使の動きが止まる。

「これで問題はないでしょ。さあ、ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!!」







アーシアを助けてから数週間の時が流れた。アーシアは宝生先生のツテで幻夢コーポレーションに入社して働いている。今日は、新入社員には自社のゲームがどんなものなのかをちゃんと理解してもらうために幻夢コーポレーションのゲームセンターのクーポン券が渡されるのでアーシアに誘われて隣町のゲームセンターに向かっているのだ。

「アーシア、新しい生活は大丈夫なのか?」

「はい。皆さん良い人ばかりですし、しゅらば、ですか?そういう時期じゃなければ大丈夫だってパラドさんが言ってました」

「パラドさん、先生の相棒のバグスターだっけ?」

「あまり詳しくは教えてもらえませんでしたけど、悪魔や天使みたいな括りで言うとバグスターって種族で世界のバグで生まれたとだけ聞きました。パラドさんは宝生先生と一緒に遊べるならそれでいいって」

そんな話をしながらゲームセンターに入ってみるとイベントでもやっているのか一角にものすごい人だかりが出来ている。確か前に来た時はギリギリチャンバラが置いてある場所だっけ?気になったのでアーシアと一緒に向かってみると見知った姿がギリギリチャンバラをクリアしているところだった。

「疾っ!!」

ラスボスの必殺の居合をしゃがみながら鞘で上方に反らし、返しが来るまでの一瞬での抜刀でラスボスの刀を切り捨て、返しで胴体を薙ぎ払うゴスロリ服を着たプレイヤー。周りからノーコンティニューでクリアしたことに賞賛の拍手が上がる。

「どうもどうも〜」

周りの観客に手を振り、こちらに気付いて思いっきり手を振る。アーシアも振り返す。なんであいつにそんな風に笑顔で手を振り替えせるんだよ。あいつは、あの堕天使はアーシアの命を狙ってたんだぞ。それに死んだはずだ。部長達が目の前で消滅するのを見ている。それなのに何故!?

アーシアも話がしたいのか休憩スペースまで移動する堕天使の後を追う。

「ウッス、ウチはミッテルト。堕天使を止めてバグスターになったからそこんところよろしくッス」

「そんな簡単に種族をやめれるのかよ!?」

「そういうアンタだって人間やめて悪魔やってるじゃないッスか」

そう言われると言い返せない。

「ああ、ちなみにウチはしがない下っ端でレイナーレさんの命令で仕方なく敵対していたわけで、めんどくさい柵がなくなった今は自由気ままに当分ヒモ生活ッスね。バグスターの体にも慣れる必要があるッスから。見た目はともかく中身は全然違うッスからね。完全なパワーアップってわけでもないッスけど、弱くなったかと言われれば答えはNO。色々試すのにはギリギリチャンバラとかバンバンシューティングが結構使えるッス」

どちらも幻夢コーポレーションが玄人向けに開発したゲームだ。世間で一流だと言われる古武術の先生や色々な勲章を持つ軍人よりもゲーマーの方が成績を出せる。文句は多く寄せられたが

『ゲームだからこそ真剣になれる。ゲームだからと慢心した結果が君達(大人)もスコアだ。大人が子供のようにみっともなく泣きわめくんじゃない』

その一言が世間を味方に付けた。何方のゲームも何度もゲームオーバーになりながら攻略方法を身につければそこそこまではクリアできるようになっているのだから。

「さっきのギリギリチャンバラも感覚がずれてるせいで最後に鞘で弾くモーションを入れる必要があるって分かっただけ収穫物ッスよ。前までなら向こうの居合を居合で切り捨てるなんて出来たのに」

「はぁっ?ちょっと待てよ!!お前、まさかレイナーレより強いのか!?」

「ウチ、グリゴリの中じゃ下からより上から数えたほうが早いッスよ。レイナーレさんは下から数えたほうが圧倒的に早いッスけど。まあ、一定以上の障壁を張れる相手には勝てないッスけど」

いつの間にかその手にはいつの間にか光の刀が握られていて、服に隠れていない部分の肌の産毛が飛び散る。認識できないほどの速度であの刀で剃られたのだとようやく気がついた。

「こんな具合っすね。女の子とのデートなんスから身だしなみはちゃんと整えておくッスよ」

「そんなデートだなんて」

アーシアが照れて顔を赤くしているが、オレの顔は逆に青くなっているだろうな。ミッテルトが本気だったら何も分からずに首が飛んでいた。光の刀はまたいつの間にか消えている。

「……何が目的なんだ?」

「楽しくゲームで遊ぶ。それだけッスよ。それじゃあ、バイバ〜イ。また何処かで」

休憩スペースから離れていくミッテルトをオレは見送ることしかできなかった。あの時もそうだ。宝生先生のエグゼイドがはぐれの神父達を倒す中、オレ達は何もできなかった。もっと、オレに力があれば……ちくしょう。


 
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