ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D
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ハイスクールD×D 革新のリアン 4
おい、嘘だと言ってくれよ。
「えっ、なあ、本気なのか?本気でその程度の力しかないのか?えっ、嘘だろう!?真面目にそれが限界なのか!?いやいやいやいや、手加減したんだよな!?接待プレイだよな!?」
倒れ伏すマリータを除いたオレの眷属達とソーナとその眷属達に尋ねる。
「リアン様、これが現実なのです。落ち着いてください」
「いや、だって、嘘だろう?オレのギリギリ及第点の正統剣術だけに負けるってどうなのよ?」
刃こぼれ一つしていない血塗られた数打ちの直剣を手に混乱する。前世のオレは最低限の自衛程度しか出来ない完全後方型だった。その後方に攻め込まれることはそこそこあったから経験だけは積んでいた。その経験が錆びついたオレにボロ負けする実力しかないなんて。一体どういうことなのかを思考の海に沈んで考えようとした所で黒歌が外氣を取り込んで自然治癒を促し始めた。
「えっ、もしかして内氣を使ってないのか?」
「仙術を使えるのは私と白音だけだけど?」
「やっぱりそういうことか!?仙術は外氣を扱う術で内氣を扱う術とは別物だ!!」
気を失っていない奴らが驚いているようだ。
「ああ、もう、そんなことも知らなかったのかよ。ということは、一般的に使ってる奴らのは偶然かよ。ええい、全員に仕込んでやるよ」
「はい、授業を始めま〜す。今日は氣の違いについてと内氣の初歩的な使い方ね」
模擬戦の翌日の日曜日、駒王学園のボードゲーム同好会の部室に集めて授業を始める。
「まず、氣とは何なのかの説明から入るぞ。簡単に言えば氣っていうのは無機有機生命体その他もろもろの全てのものに存在する生命力的な何かだだ。簡単に言えば重力とか熱量とかそういうのと一緒の括りだと思って構わない。詳しく語ると一週間以上掛かるから要点だけ簡単に説明していくからな。そんでもって内氣っていうのは自分自身の氣のことを指し、それ以外の氣を外氣という括りで分ける。ここまではOK?」
誰も質問してこない以上は問題ないのだろう。
「そして氣っていうのは非常に変質、というか染まりやすいとでも言えば良いのかな。他の氣と触れ合ううちにどんどん混ざりあっていく。だからこそ内氣を直接撃ち出す技術ってのは殆ど無い。あっても至近距離で炸裂させる程度だ。そして氣が染まりやすい性質を利用して魔力の代用品として扱うのが一般だな。そこら辺は黒歌が一番分かっているはずだ。感覚的でも何かに変化させるのが容易いはずだ」
「それは、確かにそうだけど」
「ちなみに氣は魔力とは異なり自然回復か仙術で外氣を取り込むしか回復手段がない。これは既に試してある。多少自然回復量を増やせる薬もあるが、恐ろしく苦い。その上5%増えるかどうかだ」
ソーナの手作りのお菓子に比べればマシだが、比べる相手が問題だからな。
「で、仙術を使うと暴走するっていうのは氣の染まり易さから、外氣を取り入れた際に内氣を染められてしまうことによって発生する事例だな。源泉すら染められると二度と帰ってこれないが、それ以外なら時間が立てば戻ってこれるし、一度に大量に氣を放出させればすぐに戻ってこれる。やりすぎると死ぬけどな。なんせ生命力みたいなものなんだから」
ケラケラ笑うと皆が顔を青ざめる。
「まあ、メガンテみたいなことも出来るには出来るがするつもりはないよ。教える気もない」
それを聞いてほっとする一同に授業の続きを行う。
「さて、長々と説明しているが外氣を扱うのには危険が伴う。ほとんどセンスの問題だ。だから使えないなら使えないで良い。だが、内氣は別だ。内氣とは自分そのもの。スポーツなんかでもよく言われているが、本来の力を発揮するには全身を万遍なく動かさなければならない。その動かしていない部分が内氣だ。俗に言う達人級と言われる人間の武道家は全員がこの内氣を無意識の内に扱っている。そして経験的に学び、弟子に伝えていっている。オレが教えるのはその先、経験的なものではなく、理論的に身に付ける術だ。とは言え、オレも教えれるのが肉体の活性化位でな。簡単に言うと、肉体強化と人間だと年をとっても若々しく見える位だっけ?」
女性陣の目の色が変わったな。男所帯の騎士団では大して見向きもされなかったのにな。肉体強化の方が本命なのに。
「とりあえず黒歌から教えるぞ。オレの内氣の流れを覚えれば黒歌も教師役に成れるはずだからな。あと、マリータも教師役を手伝ってくれ。二人程度でかまわないから」
「分かりました。では、イザイヤ様と椿姫様は私が」
「ということでやるぞ。仙術が使える分、抵抗は容易いだろうが、受け入れろ」
互いの両手を重ね合わせる。
「集中しろ。慣れるまで続ける」
少量の内氣を黒歌に送り込み、染め上げられる前に一通り内氣の通り道を一周させる。
「今のが経路だ。もう一度、流す。分かるか?」
「血管じゃなくて、骨に近い?だけど流れは、噴水?けどポンプに当たる部分がない?」
「よしよし、中々良いセンスだ。少し手伝ってやるから仙術で外氣を取り入れる要領で内氣を動かしてみろ」
「う〜んっと、こうかにゃ?」
「さすがに仙術を使えていただけはあるな。その感じだ。最後、オレが内氣を送り込んだように、今度は黒歌がオレに送り込んでみろ。最初は抵抗する」
「え〜っと、なんだろ、スライムを突いているみたいな感じ?」
「抵抗する時は強固な壁を作るんじゃなくて粘つかせる感じが一番効率が良い。それじゃあ、受け入れるぞ」
ああ、外氣を取り込むのは気持ちが悪い。才能が無いから特にそう思う。正確に言えば、純度の高い内氣に染まりきっているから余計なものが入ってくるとそれに抵抗できない。それが嫌悪感と嘔吐感としてオレに現れるんだよな。
「よし、これで教師役は任せられるな」
それから黒歌にも教師役を任せて全員に基礎を教え込んだのだが、嘔吐感が酷すぎて教卓に完全に身体を預けた上に口元を抑えた状態で今日の授業を締める。
「日頃から、うっぷ、内氣を動かす、練るように、うぇ、強化は、今度な。ごめん、限界」
そのまま床に転がって目元を覆い隠しながら内氣を整え直す。総量が3割ほどになり、濁った氣を元に戻すのには2日は掛かるだろうな。
「リアン、大丈夫ですか!?」
「あんま、だいじょばないです」
ソーナがかけよってくるが今だけはそっとしていて欲しい。薬とかで治るものでもないから。マリータと二人がかりで運ばれて婚約者で同棲してるのがバレました。後日、ソーナの眷属がソーナが真っ赤になって可愛かったと言っていた。もちろん同意した。
全く、自慢の頭脳とやらが聞いて呆れます。高々チェスと将棋とリバーシと囲碁とバックギャモンの同時打ちが出来ないなんて。しかも、どれか一つでも勝てればいいなんてハンデまであげたと言うのに、あまりに暇すぎて左手だけで5×5のルービックキューブを5個も揃えてしまいましたよ。
「ルービックキューブも飽きましたね。メイリア、500ピースの白板のパズルがあったはずですからそれを」
それに怒ったのか、チェスと将棋の盤をひっくり返し、駒が囲碁の盤面をめちゃくちゃにしましたが無駄です。時計を止めて全く同じ盤面に整え直して差し上げて時計を再度動かす。1分もかかっていないだろうその行為に心が折れたのか下を向いてブツブツと何かを呟いている。はぁ、面倒ですね。大体先が読めます。私が取った黒のナイトを右手に隠し持ち、飛びかかってきた相手の顔面に叩きつける。
「チェックメイト!!」
全く馬鹿ですね。ここはイカサマがなかったと証明するために監視術式と記録術式が仕込まれているのを知らないのですかね。時間の無駄でしたね。なるほど、リアンの機嫌が悪くなるはずです。これと似たようなことに引っ張り出されたのでしょう。折角の休日をこんな無駄に付き合わされれば機嫌も悪くなる物です。
「時間の無駄でしたね」
メイリアにコートを着せて貰い部屋から退出する。
「お嬢様、よろしかったのでしょうか?」
「何がです?」
「きちんと勝敗が決していませんが」
「ああ、そのことですか。あの盤面からひっくり返すことは不可能ですよ。ネチネチと甚振っていただけですから。それに王様は討ち死にしたでしょう?配下の騎士の裏切りで」
持ってきてしまった黒のナイトを手元でいじりながら答える。
「それに不正を二度もされたんです。これで文句を言ってこようものならリアンが動きます。というよりは、もう動いているでしょうね」
物凄く嫉妬深いですからね。あと、バレバレの不正が大嫌いです。巧妙に隠された不正には敬意を表した上で敵対しているなら叩き潰し、そうでないのなら目をかけて育て、敵対した時点で叩き潰す。そして、叩き潰しても生き残った者を配下に誘う。乗れば手厚く遇する。乗らなければすっぱりと終わらせる。
それとなく浅い部分だけではあるがマリータがそれを教えてくれる。たぶん、全てを隠していると私が余計な部分まで探ろうとするからだろう。だから初めから知られても問題のない部分だけを選別して教えてくれているのだ。それがリアンの妥協点なのだろう。不満ではあるが、リアンの思いも知っているから我慢できるし、ストレスの発散も手伝ってくれる。
いえ、ストレス発散は言い方が悪いですね。結果的にストレスが発散されるだけですから。正確に言えば多幸感に溢れるが正しいでしょう。女の幸せってやつですね。リアンはタフな私に最後まで付き合ってくれますし、気持ちよくしてくれますし、意外と鍛えられている身体に抱きしめられるのも……
ちょっと思い返すだけで顔が熱くなる。しっかりしなくては。
「それにしても、あの短慮さで頭脳派とは笑えますね」
「お嬢様やリアン様とお比べになる方が間違いかと。普通ルービックキューブを文字通り片手間で揃えるほうがおかしいのですから」
「両手で1個ずつとかも出来ますよ。リアンのように器用ではないので4個も5個もジャグリングしながら揃えるなんてことは出来ませんけど」
「……ノーコメントで」
でしょうね。あんなの他に誰が出来ると言うんでしょうね。
「では、私は戻ります。父上たちには相手方の馬鹿な行いをちゃんと伝えておいてください」
「かしこまりました、お嬢様」
転移で人間界の自宅に戻るとリアンがキッチンで何かをしていた。
「おかえり、ソーナ」
「何を作っているのですか、リアン」
「ああ、ちょっとした染料だ。街の結界の強化に使うんだよ。最初から張ってある結界、魔力不足から穴だらけなんでな。ちょっと弄るのに必要なんだよ」
結界に穴?予めグレモリー家が張っている結界が?
「何故半年以上も放置していたんですか?」
「メンツの問題があるだろう?若造の方が鋭敏な結界を張れるなんて言われたら商売が出来なくなる。半年以上も放っておいたのはそこそこランクの高いはぐれが来るのを待ってたんだよ。潜り抜けられたからこっちでも別個の強化をするとか何とか言って元ある結界を強化するんだよ」
鍋で温めていた染料を幾つかのボトルに詰めていきながら答える。
「あとは一晩寝かせて完成だ。それで、自称頭脳派はどうしたんだ?」
「知っていたのですか?」
「先週、オレが叩き潰した。折角タイマーとかも全部相手が有利になるようにしてやったのにな。暇すぎてルービック・キューブが5個も完成して文庫本が3冊も読み終えたな」
「考えることは同じですか」
「あ〜、じゃあ、盤をひっくり返してきて」
「全く同じ盤面に整え直しました」
「ならまだましか。オレは地面に落とさずに空中で整えて元に戻したからな。ついでに詰ませた」
それはプライドがずたずたでしょうね。
「全く、無駄な時間を使わせられるのが増えてきたな」
「そうですね。平日にも呼び出される時がありますし」
放課後ならまだ良い。だが、昼間に呼び出されて今日のような無駄な時間を使わされるのが面倒だ。リアンが言うにはサーゼクス様が裏で動いているようだけど、そろそろ弾切れだそうだ。それまでは我慢しよう。その分、リアンには頑張ってもらいましょう。
「えっと、まだ日が傾き始めたばかりなんだが」
「駄目でしょうか?」
「最近、そればかりで鈍ってるだろ。それにそろそろ眷属に使い魔を持たせたいと言っていただろう。ザトゥージがそろそろ調査を終えて戻ってくるそうだ。鍛えなおしておいたほうが良いぞ。学園でもたまにだが色ボケ状態になってるぞ」
「むぅ、確かにそうでしたね。それにしても色ボケですか。気付かれてます?」
「眷属にはバレてるな。気が緩んでいると出やすいみたいだ」
「くっ、これではお姉様のことを言えなくなりますね。ふぅ、分かりました。代わりと言っては何ですが、多少の手ほどきをしてもらっても?」
「構わないといいたいところなんだが、もう少しで奥の手その2が完成しそうなんでな。それの最終調整に時間をかけたいんだよ」
「奥の手、その2ですか」
「その1は超限定的で現在使用不能だからな。その2は普段使いになるが、これが完成した暁にはオレは、兄上を上回る力と汎用性を得ることになる。生まれつきの才能を努力でねじ伏せる。くくく、これほど心が沸き立つことは珍しい」
珍しくリアンが興奮と自信に満ち溢れている顔をしている。昔から作った笑顔はよく見せても感情に従った表情を見せることが少ないリアンのその顔に下腹部が熱くなるのを感じますが我慢です。後で貪り尽くさせて貰います。
「それにしてもルシファー様を超える、ですか。それはどういう?」
「説明は難しいな。理論上は行けるはずなんだが、制御に手こずっている感じだ。だが、制御が完璧になれば絶対的な汎用力を得ることになる。滅びの魔力をただ目の前のものを滅ぼすことにしか使えない兄上には絶対に踏み込めない領域だ」
「具体的には?」
「う〜ん、見せたほうが早いな。とは言っても3割程度しか成功しないんだよな」
そう言ってリアンが見せてくれた奥の手は、絶対的な汎用力を持った既存を超越した極みとも言えるものであった。これを完全に扱えるようになれば、史上3人目の、いえ、もしかすればルシファー様が転落する可能性すらあった。
ルシファー様のは言っては悪いがバアル家の滅びの魔力が極端に大きいだけと言える。色々とブーストを掛けまくれば理論上は再現可能だ。それに対してリアンの奥の手は再現はほぼ不可能だ。才能を努力でねじ伏せると言っているが、生まれつきのセンスがなければ再現は出来ないだろう。逆に言えば滅びの魔力とセンスさえあれば、莫大な努力を元にたどり着ける領域でもある。
その分、危険も少なくない。リアンのことを危険視する者も必ず出てくる。だが、気付いた時には既に遅いのだろう。三人の協力者によってリアンの計画は更に加速している。リアン以上に悪魔らしい悪魔はいないだろう。私も悪魔に魅了されてしまった口だからだ。誰にも止めることは出来ないのでしょうね。
あ〜、泥まみれで隠密行動なんて前世以来だな。
『見えるか、リアン坊』
直ぐ側にオレと同じようにザトゥージも泥まみれで匍匐状態でいる。隠密行動中のために短距離念話で話しかけてくる。
『200m先、1時40分の方向、高さは1mちょいって所か?』
『そうだ。幼体だが、あれが擬態中のオオナズチだ。アレがあと4倍ぐらい大きくなると平均だ』
眷属の使い魔候補をザトゥージに案内してもらっているのだが、相変わらずザトゥージのオススメはやめたほうがいいな。初心者に扱える相手じゃない。
『アレの4倍かよ。龍にしては小さい方だな』
『その分、擬態が凄いだろう』
『天然の光学迷彩は恐れ入ったな。おい、目があったぞ』
『逃げるぞ!!』
匍匐状態から素早く立ち上がり背中を向けて走る。オオナズチは光学迷彩のままこちらに走ってくる。
『注意点は!!』
『カメレオンが毒を吐くと思え!!』
カメレオンが毒を吐くってことは注意点は舌か!!微かに聞こえた風切音に合わせて飛翔する。あまり高く飛ぶと他の龍に気付かれるために高度は低く滑空するように飛ぶ。そして目の前をオオナズチの舌が通り過ぎるのがわかった。至近距離で目を凝らせばなんとか見える程度の光学迷彩なのだろう。森でなければもっとはっきりと見えたかもしれない。
『ザトゥージ!!こいつは狩っても良いのか!!』
オレの前を走るザトゥージに確認を取る。
『保護対象だ!!殺さない程度に撃退してくれ!!』
『難しい注文だなっと!!』
再び襲い掛かってきた舌を手刀に滅びの魔力を纏わせて切り落とす。痛みによって擬態が解けたのかオオナズチの姿がくっきりと浮かび上がる。なるほど、確かにカメレオン系の顔をしてやがるな。
『距離を一気にとる!!リアン坊、しっかり付いてこいよ!!』
『任せる!!』
速度を上げるザトゥージを追いかけるために木を蹴りながら羽を使って滑空と方向転換を駆使する。ザトゥージが下級悪魔にも関わらずこの森の管理を任せられるはずだ。並の上級悪魔を超える身体能力と魔物相手の絶対的な経験値を積んでいる。何より、森に慣れている。
今もオレ以上の速度で走っているにも関わらず、足を置く場所は必ず木の根か石の上、大型の魔獣の足跡のみである。自分の足跡を残さない。森で行動する上での常識だ。足跡ほど存在をひけらかす物は存在しない。ついで匂い、音と続く。体臭を誤魔化すために全身に泥を塗りたくり、同時に迷彩を施す。音は草や葉に触れないように身を捩り、巧みな体重移動によって着地音を消す。
素で戦っても十分に強いだろうが、どちらかと言えば前世のオレ達側の存在だ。だが、引き込もうとは考えない。こうやって何度も付き合っていると分かる。ザトゥージは魔獣以外に興味がないのだ。だからここの管理を任せる限りは何処にも手を出さない。そういうやつなのだ。
だからこそ魔獣を使い魔にするというこの森の管理人の仕事には真摯に応える。こうやって前日からおすすめできる魔獣をリストアップするぐらいにな。
「リアン坊、とりあえずはこんなところだぜぃ。運が良ければ渡り鳥タイプが増えるだろうが」
「了解した。まあ、あとは個人の感性に合う合わないがあるからな。気長に探すとしよう」
「じっくり探すと良い。そういうリアン坊は使い魔は持たないのかい」
「ああ、既にいる。紹介しよう」
体内に潜んでいる使い魔に合図を送る。そうすれば左腕から黒い霧のようなものが顔を出す。
「ゴーストの亜種ってところか?それにしては自我らしきものが残ってやがるな。ドロドロとした感覚から弱くもないな。なんだ、こいつ?」
「初見でよくそこまで言い当てるな。流石だな。こいつはオレの負の念を食って育つ怨獣という人工生命体だ。オレのとっておきだ。普通の使い魔の仕事はさせられないが、それは別の物で補っている」
無論、オレの手足たちのことだ。最近は他の流派を吸収して多様化してきてもいる上に潤沢な予算を使用して次世代の育成にも余念がない。
「感情のコントロールか?効率的ではあるが」
「余計なものまで操作されないか心配か?」
「そうだな。懐いてもやはり根本は違う。それが魔獣だからな。いつ本能をむき出しにするか分からん」
「だからこその人工生命体だ。出来る限り設定を施した上で特定の行動しかしないように調整してある。定期的に新しいものに交換もしているしな」
「使い捨てかよ。態々生命体を使っている理由は?」
「念ってのは生命体が生み出して、生命体か土地か物に定着する。どれに定着しやすいかは念の種類にもよる。また定着まで時間がかかる。その非効率を解消するのが念が定着しやすい人工生命体だ。ちなみにこいつで23代目だ。軽蔑するか?」
「いや、その為に生み出されたのなら使命を果たして死んで逝くのが一番だろう。命に関しては何処まで行っても対立する。そこに口を出すつもりはない。だからこちらにも口を出すな。それがオレの持論だねぃ」
「そうか」
人工生命体を再び体内に戻して念を食わせる。しっかり育ってくれよ、奥の手その3。
後書き
次ぐらいから原作に入ろうかな。
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