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機動戦士ガンダム・インフィニットG

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最終話「人の光」

 
前書き
最終話ということで、Gガンダムのあのナレーター様に出てもらうことに……!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!


ストーカー「皆様、物語もいよいよクライマックスに近づいてきました。新たに復活した悪魔の申し子『デビルガンダムJr』に、果たしてアムロたちは勝てるのでしょうか?」


ストーカー「そもそも、肝心なる主人公の嶺アムロはかつての忌まわしき記憶を呼び起こしたために、精神崩壊を起こしてしまいます。その彼に己の罪深さを抱いたヒロイン雛巳明沙は自らの生命(こころ)を犠牲にしてアムロの復活を試みました。 
一方の一夏達ですが、デビルガンダムJrへ戦いを挑むも敵わず、敗退を喫します。
しかし! そんな彼らの頭上に現れたのは、あのパーフェクトガンダム! まさか、装着者はあの少年なのでしょうか?」



「それでは! 機動戦士ガンダム・インフィニットG!! レディー……ゴオォー!!!」

OPテーマ「Just Communication 栗林みな実ver(ガンダム・トリビュートより)」
EDテーマ「ガンダムに愛をこめて」
最終話EDテーマ「merry-go-round」
 

 
「くっそぉ! びくともしない!!」
コンテナの扉をこじ開けようとするユウマだが、扉はびくともしない。真耶がマット達のことを心配して駆けつけてみれば、コンテナの中に閉じ込められてしまったという状況になり、さらにオペレーターのノエルたちも同様の状態であったため、人手としてユウマとシャルロットを呼んできたのだ。
「ど、どうしましょう……!」
どうにかならないかと、真耶は焦りだした。そんな彼女の隣では、シャルロットがコンテナの内部をスキャンしており、内部ではどうやらMSを装着したまま身動きが取れない教員たちの姿が見えた。
「おそらく、特殊なジャマーウィルスがMSの動きをシャットダウンしたんだと思う」
ノートPCを開いてシャルロットは言った。
「俺のイフリートのヒートサーベルで焼き切ることってできる?」
「ダメだよ? コンテナの中にはいろいろな機器も積んであるから、最悪の場合機械ごと切ったら、ショートを起こして爆発しちゃうかもしれない。それに未知のジャマーウィルスだから下手にMSでこじ開けたり、解除もできないし……」
「じゃあ、どうすんだよ?」
「とりあえず、MS学園に連絡しよう? 今はそれしか方法がないよ?」
「そこのあんたら、こんなところで何している?」
そのとき、ふと三人の背後から一人の、青年の声が聞こえた。彼らが振り返ると、そこには赤いハチマキに赤いマントを羽織った、一人の青年が立っていたのだ。

「……ッ!」
デビルガンダムJrは、突然感じたとてつもない不愉快さに見まわれた。憎しみと、悲しみ、怒りをつかさどる自身にとって、人から感じる温かさとやさしさ、そして光を携えた仇名す存在がこちらへ一直線に向かってくる。その存在は自分への敵意を感じ、すぐにでも迎撃態勢へ移ろうとするのだが、存在が迫りくる彼方から図太い雷光が走り、彼の肩をギリギリにかすめた。その力はとてつもなく自分には追い付けない強大な力であり、先ほど退けた数体のガンダムたちとは違い、すさまじい気迫と執念を抱き、そして何よりも自らが負ったダメージを修復することができずにいた。
その主は、気配漂う彼方から現れた、新たなガンダムタイプのMSであったのだ。重装備の使用のはずが信じられない機動力と運動性、そしてこちらのビーム攻撃が通じない防御率の高いIフィールドを展開したフルアーマー使用の機体である。
パーフェクトガンダムは、肩のメガ粒子砲を放つと、つかさずに中距離兵器で隙を与えずに迎撃を加える。それに対し、デビルガンダムJrは反撃の余地すら与えられない。続けて蕾状態になっての突進をくらわそうとするも、その猛攻をいともたやすくかわしつつ、ホーミングミサイルで迎撃することでデビルガンダムJrはさらに距離をとることができずにいる。
小癪だと、ふたたび逆さまの本体をあらわにしたJrは、それぞれの花弁をすべて放出して、疑似ファイターでパーフェクトガンダムを迎え撃った。
「……!」
パーフェクトガンダムは両手にサーベルを引き出すと、次々に襲い来る疑似ファイターはあっけなく切り裂かれていくではないか、その疑似ファイターの中にはコブラをかたどったガンダムの疑似が先の長い尾を伸ばしてパーフェクトガンダムの首へ巻きついた。
「なにを……!?」
しかし、パーフェクトガンダムの手がその尾をつかむと、それをパワーの限りに引っ張って、疑似コブラガンダムを引っ張り上げると、それをビームサーベルで真っ二つに切り裂いた。他の数体の疑似ファイターも、同じように二刀をビームサーベルで次々と倒されていった。
「ギギィ……!」
その時だった。ここまで追い込まれたデビルガンダムJrの逆さまの本体は急に頭を抱えて苦しみだした。
「デビルガンダムが? やったか……!」
パーフェクトガンダムから聞こえる青年の声、それはあのアムロであった。彼がなぜあの状態から復活を遂げたのか後程説明するとし、今はデビルガンダムJrとの状況を伝えよう。
「ギギギッ……!」
苦しみだすデビルガンダムJrからは軋むようなうめき声が不気味に垂れ流れた。自らの存在とは正反対の力に圧倒され、今の状態では確実にこの白いガンダムに完敗する結果で終わってしまう。謎の持ち主によって、ようやく地上の世界へ復活を遂げたというのに、このような場で終わってしまうなど否。
デビルガンダムJrは、再び巨大な蕾を再生させると、その蕾に身を包みこませ、次なる変化へと備えたのであった。
「この程度ではダメか……?」
その状態を見て、アムロは目の前に沈黙した標的から、とてつもなく邪悪な力を感じ取った。紫のつぼみは、次第に不気味な光を発して新たな姿へ生まれ変わろうとしている。その合間の攻撃などは蕾の周辺から放出されるエネルギー派によって防がれてしまう。
徐々に紫の蕾は膨れ上がっていき、そして今にも蕾が破裂しそうなほどに内部では何かが無数にうごめきだした。無数の巣太い管状の何かが蕾の内部で駆け回り、そんな蕾の耐久は限界を超えたその時。
「……ッ!?」
蕾が展開されたと同時に内部からは蛇体とガンダムの頭部を象ったガンダムヘッドの群れが無数に四方へ放出し、蛇の胴体をくねらせながら放出しだしてきた。その、すさまじい勢いの触手の流れにアムロはとっさにその場から距離を取って脱した。
しかし、ガンダムヘッドの群れはその刃の如く鋭い牙でパーフェクトガンダムへ襲い掛かる。四方八方、上下よりその牙でガンダムを食らいつかんと乱舞しだした。
「そこぉ!」
それの猛攻を避けつつ、パーフェクトガンダムのビームライフルでガンダムヘッドは次々に打倒されていく。
それでも、いくら倒そうがガンダムヘッドの群れは蕾から生え続けることを止めない。
「くそっ!」
ビームライフルの間合いを詰められてしまい、ビームサーベルでガンダムヘッド共を切り払い、薙ぎ払い続けるも、その物量的戦法はとてつもなく、一帯のガンダムヘッドがパーフェクトガンダムの背後へ回ると、その後部からさらに細い無数の触手を放出しだした。
触手は、パーフェクトガンダムの手首、足首を拘束する。
「しまった……!」
大の字に動きを封じられ、パーフェクトガンダムはその触手に囚われてしまった。動きを封じたところで、手こずらされたとデイビルガンダムはその姿をヌッとパーフェクトガンダムの前に現した。
……それは、ガンダムヘッドの数倍も巨大なガンダムの頭部であった。それを見てパーフェクトガンダムのアムロはかつて、世界を震撼させたおぞましきデビルガンダムの巨大な頭部を連想させられた。
――こ、これが……敵!?
「ギギギ……」
軋むうめきを続けるデビルガンダムは、散々手こずらせたパーフェクトガンダムをにらみつけた。奴から伝わる殺意はとてつもなかった。
だが、それ以上にアムロの心へ恐怖と絶句を与えたのはそれではない。
「ギギギィ……ガンダムゥ……!」
――しゃ、喋った……!?
「ギィギィギィ……! ガンダムゥ!!」
呻くような恐ろしく不気味な声が、巨大な頭部から聞こえてくるではないか。それに、アムロは目を見開いた。
「お、お前は……!?」
「ガンダムゥ……破壊スルタメノチカラ……ガンダムゥ……!」
――……破壊?
「食ラウ……ガンダムゥ……食ゥ!!」
「ッ!?」
突如、巨大な本体の頭部の顔面の後部よりマスクが横われて、その奥から無数の図太く長い、そして凶刃な牙が生えだしているのが窺えた。その牙を、捕らえられたパーフェクトガンダムへ襲い掛かろうとしたのだ。
「うわぁ!!」
アムロは叫んだ。しかし、その時だ。
「……ッ!!」
パーフェクトガンダムの両腕両足を拘束する触手が無数の銃弾、それもガトリングの銃弾によって次々に粉々にされていくのである。その隙にパーフェクトガンダムは遠距離へ脱出して、銃弾が放たれたと思われる後方を窺った。そこには、数体ものガンダムと、緑の巨大なMSと蒼いMS、それもジオンのものと思われるモノアイタイプで、四枚の巨大な翼をもった機体と、もう一体はイフリートであり、それらがこちらへ駆けつけに来た。
いや、それだけじゃない。もう一体後方からMFらしきガンダムも近づいてきた。あれはいったい……
「大丈夫か? アムロ!?」
マットの声である。ファンで浮上する陸戦ガンダムからは彼の担任、マットが纏っていたのである。
「よくもウチの生徒をかわいがってくれたな? この礼は倍にして返してやるぜ!!」
白と赤で彩られたガンダムタイプからはフォルド。
「このキャノンの威力は伊達じゃないぜ!」
その隣には白と青で彩られたもう一つのガンダム、これにはルースが。
「アムロ、援護する!」
僕のガンダムと同じカラーディングのフルアーマー使用の機体。そのガンダムにはユーグ先生が装着していた。
そして、四枚羽のMSからも聞き覚えのある女性の声が聞こえる。
「全く……世話の焼ける奴だ」
マリーダである。
「おっと! オレも忘れちゃこまるって!!」
イフリート、それは紛れもなくユウマである。
「先生、マリーダさん、ユウマも……皆、どうしてここに?」
僕は、キョトンと彼らを見た。
「我々も専用機で出撃しようとしたのだが、運悪くドクター・Tに足止めを食らってな? だが、ちょうどいいところにユウマ達と、あの人が助けてくれたんだ!」
マットがそういうと、最後尾に居るもう一体のMFへ陸戦ガンダムの顔を向けた。
「その機体、ひょっとして……!」
僕はその見覚えのある機体を見て驚く。無理もない、だって目の前にいるMFこそ日本を代表するガンダムファイター……
「加集土門だ、詳しい話はあとにして今はデビルガンダムを倒すぞ!」
キングオブハートの後継者、加集土門と彼の愛機「シャイニングガンダム」であった。
「す、すごい……本物だ!」
僕を目を丸くする。
「お前の戦いぶりは見事だ。だが、今はお前ひとりじゃ奴は倒せん。ここは連携をはって一気に倒すぞ?」
シャイニングガンダムとイフリートは僕のパーフェクトガンダムの隣で止まると、それぞれビームサーベルとヒートサーベルを抜く。
だが、そんな僕たちの彼方から再び新たな「赤い」機影が……
「待て、私も加わろう?」
それは、赤いザクⅡであった。
「お、お前は……!」
赤いザク、それは連邦のジェガンにも劣らぬ三倍の速さで滑空して標的を仕留めるジオンのエースパイロット「シャア・アズナブル」である。
「赤い彗星が何でこんなところに?」
マットは、神出鬼没の赤い機体に問う。
「話はあとだ。私もアムロ君たちと共に戦わせてもらいたい」
「大佐……」
マリーダは同じ同僚のシャアへ振り向く。
「久しぶりだな中尉、私も加勢しよう」
「ほう? 赤い彗星か……噂はかねがね聞いている。その3倍の速さとやら、十分に期待しているぞ」と、土門。
「任せてくれ」
「あ、ジョニーのパクリッ!」
ユウマのイフリートはそう指を向ける。
「私がオリジナルなのが……しかし、真紅の稲妻も大したものだよ?」
「まぁいい、行くぞ? 『ピンクの彗星』さんよ!」
「あ、赤い彗星だ!」
「だって、ジョニーがそう言ってた!」
「あっそ……で、アムロ君!」
「その声……もしかして!」
「静かに……これは秘密にな?」
「は、はい……」
しかし、駆けつけた仲間はこれで全部ではない。僕の元へ新たな通信が飛び込んでくる。
「アムロ!」
一夏のユニコーンと、カミーユのゼータ、ジュドーのダブルゼータ、隼人に該、エルにルー、顔なじみのクラスメイトも現れた。
「奴に借りを返しに来たのさ!」ジュドー
「このザラついた感覚は気に入らないな」カミーユ
「これ以上は好きにさせねぇぞ!」該
「僕だって!」隼人
「アムロだけじゃ心配かと思って!」エル
「第二ラウンドと行きましょうか?」ルー
「人の光……頼むぞ、ユニコーン!」一夏
ユニコーンはデストロイドモードへ変形する。
「みんな……!」
そうだ……僕は、一人じゃない!
「ガ、ガ、ガ……ガンダムゥー!!」
さらなる邪魔者たちを目に怒り狂うデビルガンダムに、シャイニングガンダムの土門はフッと笑んでみせる。
「フン……所詮は劣化コピーにすぎんが。キサマのような化け物を野放しにはせん!」
一気にシャイニングガンダムの後部からは赤いマスクと各部のアーマーが展開してスーパーモードへと変形する。
「見せてもらおうか? デビルガンダムの性能とやらを!」
シャアは、余裕の笑みを浮かべる。
「いよっしゃあ! 一気に決めるぜ!」
ユウマのイフリートもEXAMを発動させて、その機体は蒼い光に包まれた。
「……明沙、僕に力をッ!」
そして、僕のパーフェクトガンダムからは金色の光を放った。それと同時に各部に装備されていたアーマー、強化武装パーツは全部解除、取り外されて落ちていき、従来のガンダムの姿へと戻った。
「いくぞ! 各機、前の4機を援護するんだ!」
マットの指示に一同の専用機は一斉にとびかかるガンダムヘッドを一掃しだす。
「遅い!」
ガンダムヘッドの攻撃をテクニカルにかわすシャアザクは、ヒートホークやマシンガンで次々に邪魔な触手を蹴散らしていく。
「オラオラァー!!」
EXAMになったイフリートの異常な戦闘能力にもガンダムヘッドの群れは蹴散らされていく。
「突破口を開けるぞ!」
しかし無限に立ちふさがるガンダムヘッドの群れをダブルゼータのハイメガキャノンが一掃し、他の生徒たちが一斉に総射撃を加えだした。
「笑止!!」
そして、シャイニングガンダムもビームサーベルや得意の格闘戦で次々に本体の守護に回るガンダムヘッドを蹴散らして、そしてついにあの右腕をかざしだした。
「俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶゥ!」
その右手が黄金に光だした。
「必ッー殺!」
その手をデビルガンダム本体の顔面へ向けて叫びだす。
「シャーイニングフィンガァ―!!」
楯になるガンダムヘッドらを粉々に吹き飛ばすと、その右手はデビルガンダムの顔面を直撃し、一気にその巨大なガンダムのフェイスを粉々に崩した。その奥にDG細胞の全システムをつかさどるコアが。
「いまだ! アムロ!!」
土門が叫ぶ。
「イッケェー!!」
バーニアをフル回転させて、僕と僕が纏うガンダムは一直線に突き進み、そして両手に握るビームサーベルがそのコアの球体を一撃で貫いたのだ。
「ガンダム……それは、『守る』ための力なんだ!」
僕は、そうデビルガンダムのコアへ言い残すと、コアはニュータイプの力によってバラバラに砕け散った。
コアを失ったことで、ガンダムヘッドの残党も次々と砕け散っていき、デビルガンダムはそのまま海の藻屑と化して消えていった……

その後、僕は急いで旅館へ戻った。明沙のことだ。あの時……僕が目を覚ました後、そこにはぐったりと目を閉ざして横たわる幼馴染の姿があった。しかし、僕からは明沙が自分の力を使って行ってきてくれと、いうかのようにその状態が物語っていた。しかし、今は時間がない。時は一刻を争う。僕は、すぐに戻ると目で伝えてそのままデビルガンダムの討伐へ向かったのだ。しかし、やはり僕が返ってきても状況は変わらなかった。彼女は布団の中で未だに目を覚まさない。
やはり、夢の中で彼女が僕に自分の「生命(こころ)」を捧げるといったことが本当に起こっていたのだ。
僕は、明沙の全部を知った。これまで彼女がしてきたことには正直納得はできない。でも、彼女がそれを悔い、涙しながらも僕に償いを求めた。だったら、いつまでも僕の傍に寄り添っていてくれと僕は望みたい。それが君に求める君の償いだ。今度こそは、正直な真心を持って僕を愛しておくれよ……
頼むよ、目を開けてくれよ? 僕は明沙がいないと……!
「……」
いつまでも、僕は悲し気な顔をして明沙の傍を離れなかった。
僕も、思えば彼女に酷いことをしてきた。父親が死んだ悲しみから逃れるために僕へ救いを求めてきたというのに、僕は彼女の救いを一向に断るかのように冷たくしてきた。彼女は僕に泣きついてきたというが、本当は僕と労りあいたくて救いを求めてきたんだ。僕も、母さんの死で誰かに救いを求めたかった。けど、僕よりもつらい思いをしていた明沙に僕は気づこうともせずに……
僕らは互いに傷つき、傷つけあっていたのかもしれない。僕は君をそこまで憎みはしない、いや、憎もうとはしない。これからも支えあってくれる大切な人がいてくれればいいだけなんだ。これからも、傍にいてほしいのに……
「明沙」
僕は、彼女の身体に顔をうずめて泣き出した。
「もう、いじわるなんて言わない。お前の作ってくれた朝飯も毎日食うよ? 宿題や掃除だってサボったりしない! だから……もう一度、目を開けてくれよ?」
僕の涙が落ちて明沙の掛け布団に当たって染みる。明沙はいまだに目を閉ざしたままだった。
「……ごめんな? いままで世話になりっぱなしで」
僕は、明沙の布団をめくると、彼女を抱き上げてこの場を後にした。部屋の襖を開けると、そこには心配して外で待っている仲間たちがいた。
「アムロ……どうすんだ?」
一夏が問うと、僕はただこれだけ返答する。
「……明沙が、星を見たいってさ?」
そんな、泣き止んだばかりの僕の顔を見てか、周囲は黙った。
「アムロさん……明沙さんは大丈夫ですの?」
別のふすまから包帯だらけになってセシリアが出てきた。
「今は、そっとしておいてやってくれよ?」
ジュドーがそう答えた。
「うお~アスリンお姫様だっこだ!」
と、空気も読まずに本音が……
「こら!」
そうカミーユが本音にキツイ拳骨をお見舞いした。
「いった~い」
「……」
そんな中でもう一人、篠ノ之箒も姿を見せた。案の定彼女も包帯だらけだ。
「調子はどう?」
該が言うと、それに箒は困ったかのように微笑んだ。
「鼻っぱしをへし折られた気分だ……」
「そりゃ結構……」
「篠ノ之さん、ちょっといい?」
隼人が箒に問う。
「……?」
「あんた……何でアムロを嫌うんだ?」
「……さぁな? だが、強いて言えば、越えたい何かだったのかもな?」
越えたい何か、その言葉に隼人は敏感に反応した。
「越えた先の目標は何?」
「……?」
隼人のその問いに、箒は一瞬戸惑った。彼女は何も答えられなかった。
「越えたい人がいるっていうなら理由がいるよね? 何のためにその相手を越そうとしているの?」
「そ、それは……」
「隼人、もういいよ? 俺にはわかるから……」
と、一夏。
「一夏?」
隼人は、そんな一夏を見た。彼は、あきれた顔をして箒を見る。
「俺に構ってほしかった。それが理由なんだろ?」
「ッ!?」
箒は目を丸くした。どうやら図星のようである。
「学園で、俺とアムロが親しくなってるところ見て嫉妬したんだろ? それ以外にも俺とアムロが目立ったから、余計アムロが邪魔だった。そんな邪魔者を倒して目立てば……俺が振り向いてくれると思ったのか? 篠ノ之」
「……」
「そんなくだらない理由でか?」
隼人は、箒を睨んだ。しかし、その理由をくだらないと返された箒はキレだした。
「キサマァ……この量産型の三流風情め! この私の理由をくだらないというのか!? 凩隼人!!」
「はっきり言うよ? 君は学園にいた時、あんなに自分と姉は違うんだって叫んでいたのに今になってアムロに勝つためにって理由で、あんなに拒絶していた姉と連絡を取って何だか調子が良すぎやしないかい? っていうか、君の姉さんは指名手配犯なんだよね? どうしてなの?」
「おい、隼人? よせって……」
ジュドーがそう隼人の発言を制止させようとするが、しかし隼人はやめなかった。
「いいんだよ。これは、僕の推測なんだけどね? アムロと明沙がどうしてああなったのかってのは、篠ノ之さんに原因があるんじゃないのかな?」
「な、何だと……!!」
箒は、途端に足元に置いてあった竹刀を握った。
「僕も、少なからずアムロにライバル心を燃やしてるんだ。でも、僕が装着しているMSは量産された、ただのガンキャノンで、遠距離からの支援射撃だけしかできない地味な機体だよ。それに比べて、アムロはガンダムに乗ってカッコよく戦っているんだ。けど、僕は今持っているこの力でアムロに勝ちたい。今の愛機のガンキャノンで……だから、いくら勝ちたいからって、誰かの力をもらってアムロに勝とうなんて僕は嫌だ。周囲のガンダムと競うにも僕は同じ力を求めはしない。ズルをしたくないっていう維持があるんだ! 剣道に励んでる君ならわかるはずなのに!!」
隼人の理由、それは今の己の力でアムロや他のガンダムに勝つことだ。量産型だからと言って低評価するのではなく、装着者としての実力の差が実在することを世の人間たちにわかってもらいたい。
「よせって! 二人とも……」
ジュドーが止めに入るが、しかし次にカミーユがこう言う。
「確かに……お前の姉貴は国際指名手配犯のお尋ね者なのに、どうしてこうも簡単に会うことができるんだよ? お前、もしかして束とグルじゃないのか?」
「なんだと? キサマァ……!」
「もうやめて!!」
エルが怒号を上げた。そして、静かにすすり泣きだしてしまい、そんな彼女の鳴いている姿を見ると、周囲はまた静まり返る。
「過ぎたことなんて……どうでもいいじゃない! 今はさ、アムロのことを考えてよ……? 明沙が、ああなってんだからさ!?」
耐えきれなくなった彼女は、ルーに抱きしめられて思いっきり泣き出してしまった。
「エル……ごめん」
出過ぎたと隼人は謝罪した。

僕は、明沙を連れて波打つ岩場へと向かった。偶然なのか、晴れていて夜空ははっきりと見えた。これなら、明沙も満足してくれるだろうな?
「この辺でいいかな?」
しかし、明沙は目を閉じているのに、なぜか心地よさそうな表情をしている。きっと、僕がしたことをわかっているのだろうか? でも、やっぱり明沙は眠り続けている。
「ねぇ? 覚えているか? 初めて一緒に夜空を見たことを……」
僕は、かつての思い出を語った。
「……父さんと母さんが留守の時、僕は明沙の家に預けられてさ? 一緒の部屋で寝る前に、いつも窓辺からこうして星を見たよな? 流れ星が早すぎて、願い事なんて言いきれなくてさ? あの時の願い事、まだ覚えているかな? 僕はもう半分忘れかけているけど……確か、いつまでも僕と一緒に……」
そのとき、また僕は涙を流した。また耐え切れずに僕は泣き出した。もう、二度とかなわなくなった願い事の儚さと、今の現実に耐えることができずに……
「明沙……僕を一人にしないでくれ……!」
僕は、力いっぱい明沙を胸に抱きしめた。彼女の抜け殻のような体からはいまだに温盛と、いい香りは残っているも、それがいつまで続くかわからない。もう、目を覚ましてくれないのなら……
その時、ふと頭上を流れるいくつもの光に気づいた僕は泣き顔を夜空へ向けた。
流星群だった。僕は、その流れる星々の群れに向かって何をか叫びたかった。でも、かなうはずもないだろうかな? それでも、僕は心から彼女のことを願った。
僕は、明沙を抱きしめながら流星群が夜空から幕を閉じるまで見続けた。
そういえば、明沙は一度は生で流星群を見てみたいって言っていたな? こんな形であっても、夢はかなっただろうか?
その時、さらに流星群の群れが増した。それは幻想的で、まるでその流星の光一つ一つが人の魂、命の輝きのように思えた。流れる人々の魂。死んでいった人たちが見せる生命の輝き。あの流星の中に母さんや明沙のお父さんの流星も加わっているのだろうか?
――母さん……
僕はふと母さんを思った。しかし、もう箒への憎しみなんてどうでもよくなっていた。こうして、大切な人をまた失ってしまったことで、そんなことなんてどうでもよくなった……
しかし、そのあり得ない光景に僕は目を奪われている中、明沙の身に変化が起きていることに僕は気づかなかった。
「……アムロ?」
「ッ……!?」
胸元を、静かな声がくすぐった。これが現実であるなら、これが奇跡であるなら、僕は神様を信じたっていい。
もし、ニュータイプという見えない力が僕と明沙の中に眠っているのなら、僕はあえてその力を望み、信じたい。
人の心を照らす暖かな光が実在するというのなら、僕はその光を……「人の光」を信じ、守りたい。守り通していきたい。
「明沙……!?」
ゆっくりと、長い夢から目を覚まし、重たい瞳を開けながら、明沙は僕の胸の中で、僕を見上げて優しく微笑んだ。
「……もう……どこにも……行かないよ……? もう……アムロを……一人ぼっちになんて……しないから……」
「あ、明沙……!!」
僕は再び泣いた。そして、その泣き顔で彼女を思いきり抱き締める、今はそれしかなかった。
「奇麗だね……? 流星群」
「ああ、ずっと見てみたかったんだろ?」
「連れてきてありがとう……」
「ずっと、一緒にいよう……?」
「うん、これからもずっと……アムロの傍にいるから。もう、自分にうそをついたりしない。本当の正直な気持ちを大好きなアムロに伝いたいの」
「僕に……?」
「うん……大好きだよ? アムロ、これからもずっと私の傍にいてね?」
「僕なんかと?」
「その『僕』とだよ……!」
「じゃあ、明沙……これからも、一緒に暮らそう? いつまでも僕の傍に寄り添ってくれよ? もう明沙を避けたりしない、一人にしない。心からお前を受け入れたいんだ」
「うん……! よろこんで!」
流星群の夜空を背に、僕らは互いの唇を重ねた……
その後は、みんな驚いたよ? でも、同時に泣いてくれた。もちろんうれし泣きさ?
ニュータイプの力が生んだ奇跡、「人の光」。今はそれしか考えられなかった。これを通じて、僕は少しでも何か変わった気がするんじゃないかと思いたい。

「協力していただき、感謝します。キングオブハート・加集土門」
その夜、マットは旅立つ土門へ礼を述べた。
「なに、礼を言われるほどのことはしていないさ? それよりも、あのアムロとかいう奴だが……」
「アムロが?」
「ああ、あいつや一夏っていう生徒たちなんだが……もしかすると、『ニュータイプ』かもな?」
「ニュータイプですか……それが実在するのなら心強いかな?」
「いい生徒たちじゃないか?」
「ははは……ちょっと危なっかしいけどね?」
「じゃあな? もし……またDG細胞がらみの事件が起きたら呼んでくれ?」
「そうだな、次も頼むよ」
土門は、マットに別れを告げて旅館を出たが、その彼はもう一つ会うべき人物の元へ向かうのである。
ある崖のもとへ行くと先に先客がいたのか、連邦軍の士官と出会った。ユーグである。
「あんたは……?」
「誰かと思えば……久しぶりだな? キングオブハート」
しかし、土門は苦笑いした。その称号を撫で呼ばれるのにはまだ抵抗があるようだ。
「土門でいい。それよりも、あんたもか?」
「ああ、いい加減にケリをつけたくてね?」
「そうか……フン、そうこうしている間に来たな?」
「どーもくんじゃん? 束さんに何の用? 殺されにきたのかな~?」
いつの間にか、崖の先には束が仁王立ちしていた。
「フン、その言葉をそっくりそのまま返すぜ天災さんよ? 今日はアンタのケンカを買うために挨拶をしに来たのさ」
「織斑教員はどこだ? ドクター・T」
ユーグが睨んだ。
「私ならここにいるぞ? 大尉」
「その名で言うな、織斑……」
「あなたに呼ばれてきたのですから、なぜ私を避けるかをハッキリ答えてもらいますよ?」
千冬もそれなりの睨み目でユーグを見た。しかし、ユーグは呆れて動じないどころかため息もつかない。
「……当時、お前は私の部下であったことを覚えているか?」
「もちろんだ。昨日のことのように!」
「突然脱走し、その後白騎士事件を引き起こしたことも、昨日のことのように覚えているのだな?」
「ッ!?」
「お前が白騎士だということは、すでに連邦の上層部に知られている。後に、お前が白騎士になったことで私の部隊は解体され、ある者は厳重な監視下に置かれ、中には独房に送られた部下もいた。そして、何よりも彼女を……シェリーを失った」
「なっ……!?」
途端、千冬は冷静さを失い、ユーグの胸ぐらをつかんで激しく問う。
「か、彼女を……彼女を失っただと!? 失ったとはいったいどういう……」
「死んだ!」
「そんな……バカな!」
「当時、彼女はお前と一番親しかったじゃないか? 姉妹のように……だが、お前が居なくなった後に、シェリーがジオンのスパイだという事実が発覚した。その時のタイミングが最悪だった。世界に女尊男卑などという風習が広まり、IS委員会が結成されたことで、彼女がジオンさえも装ったIS側のスパイではないかという疑いさえ有情しだした。アリバイが少ないことから周囲からの疑心は少なくも、それを個人的に気に入らなかった連邦の粛清士官「グレイヴ」によって、シェリーは……タチアナは、暗殺された」
と、ユーグは胸ぐらをつかむ千冬の両手を鬱陶しいように振り払った。
「そ、そんな……!」
「嘘ではない! これも全部、お前が招いた代償だ……」
「う、うぅ……!」
「おい! 傷顔!! テメェ、ちぃちゃんを泣かすならぶっ殺すぞぉ!!」
泣き崩れる千冬を見て、束が黙っていなかった。しかし、そんな彼女の前に土門が立ちふさがる。
「やってみな! ただし、俺を倒してからだ……」
「くぅ……」
今の自分ではキングオブハートの彼にかなうはずはない。逆に返り討ちに合う。仮に勝つためには水爆や核弾頭を数十発用意しなければ無理だ。いや、それでも勝てるか否かも不明だ。
「チッ! 今度ちぃちゃん泣かしたらガチで殺すかんなぁ!!」
そういうと、束はテレポートで消えてしまった。
「天災、篠ノ之束か……あのように幼稚な感情さえなければ、きっと素晴らしい科学者として世界に貢献できただろうに」
ユーグは、そう彼女の存在を哀れんだ。

数日後、僕らは期間を終えて無事にMS学園へ帰ってきた。久しぶりの学園だ! どこからともなく懐かしさがこみ上げてくる。今思えばIS学園も寂しくなるが、やっぱり母校のMS学園が一番だ。
ジュドーとつるむモンドとビーチャの下らないコント、カミーユとファのカップル喧嘩、事務室で繰り広げられるモンシアさんたちのさらに下らない女話と、なぜかその会話に加わって盛り上げるバニング先生……
今日も、張り切ってマット先生と一緒に歩くノエル先生、最近になって二人みたいにユーグ先生とマオ先生が寄り添うように歩いている。
職員室では今日も騒ぎの種のフォルド先生にルース先生とミユ先生が必死に止めに入る。コウ先生は今日もニナ先生の後ろを見つめている。
あと、一夏の護衛についていたマリーナさんは、本国からの命令で今後も一夏の傍に付き添うようになったという。なにせ、ユニコーンの情報が予想以上のデータであると発覚した以上、ジオンも連邦に協力するという形で、袖付きも一夏の護衛を継続するとのこと……
隼人と該も、相変わらずだ。あと、今日も服装のことでエルにしつこく注意され、それを宥めて微笑ましく見つめるルー。
そして僕は……
「アムロ! 今日の放課後、暇かな?」
「ああ……いいよ! 一緒に行こう?」

僕は、初めて明沙に笑顔を見せた。

「やれやれ、僕のオリジナルは相当手ごわいようだね? けど、僕の野望は誰にも譲れないよ? イノベイダーこそが、世界の全知全能なのだから……」
「いずれは、私のオリジナルとも戦ってみたいものだよ……?」
「おや? 君は、赤い彗星の……」
「今の私は、フル・フロンタル。それ以上でもそれ以下でもない。嶺アムロの分身、リボンズ・アルマーク君?」
「フフフ……僕が、彼のクローンとでも言いたいのかい? それは大きな間違いさ? 僕こそが、彼を凌駕する真の存在。誰にもその事実を否定はできないはずだよ? 君こそ、どうなんだい?」
「何れは、ケリをつけるさ? 私こそが真の『赤い彗星』だということをね……」
「フッフッフ、会える日を楽しみにしているよ? 嶺アムロ……」


~完~
 
 

 
後書き
~どうでもいいコーナー~「最後回」

いまさらですが、明沙にそばかすを加えました。幼馴染というので、できるだけフラウに近づこうとして……

「……で、最近のガンダムはどうよ?」
「どうよって?」
「SEEDってさ? ダブルオーとかってさ? オルフェンスとかってさ?」
「オルフェンスは最終回は感動鬱だったな? 三日月死んじゃうもん」
「デスティニーとかもシンの扱いが酷すぎる」
「SEEDシリーズはアストレイ除いてアンチ扱いされてるからな?」
「で? 結局何が言いたいの?」
「要するに、SEEDは美形ばっかでコーディネーターっていう完璧人間らがメジャーってのが嫌だ。最初はかっこいいって思ってたけど、社会の負け組になってから、次第にキラやアスランたちをアニメなのに嫉妬してしまうようになった」
「ダブルオーは?」
「ガンダムのデザインはカッコいいよ? エクシアとか今でも好き! でも、やっぱ美形ばっか。でもSEEDと比べてはいくらか好きになれた」
「じゃあ、どういうシリーズが好き?」
「宇宙世紀だとサンダーボルトやダブルゼータ、外伝ものが好き。アナザーだと、Gガンダムとかあと俺は一番大好きなのは『ガンダムX』だな? ガンダムXって、打ち切りとかひどい扱い受けるけど、そういう奴ほど全然アナザーの良さを理解していない! SEEDとかは一回見れば二週目以降はピンと来ないんだ。でも、ガンダムXって何度見返しても味のある作品なんだ。なによりも、キャラの一人一人が良い味出してんだ! 主人公のガロードはまるで少年漫画の主人公みたいで見やすいし、ティファも可愛いし、俺はやっぱ戦後を舞台とした異色作であるガンダムXが一番だな! もし、面白いガンダムが見たいっていうなら俺は断然お勧めするよ!」
「へぇ? 俺も今度見てみるか……」

最後の最後まで作者の趣味の話でした。失礼しました……
  
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