小悪党の末路
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第一章
小悪党の末路
保谷宛道はただの学生だ。高校生だ。
だが高校でだ。彼は孤独だった。
陰気でしかも無口でだ。部活にも入らずクラスの仕事も徹底的に逃げる。尚且つ人見知りをするタイプだった。そうした人物だったので。
友達もおらず一人だ。彼はクラスの誰からも嫌われていた。
「暗いんだよ」
「しかも不潔だしね」
「ケチだし」
「すぐに陰口とか言うし」
「しかも陰険だし」
「もの取ろうとするし」
「言い訳ばかりするし」
陰気でしかもたまに口を開いたり動けばだ。そうしたことばかりしていたのだ。
だからクラスの鼻つまみ者だった。それで徹底的に無視されていた。
そんな状況でストレスが溜まらない筈がない。彼はおまけに勉強もクラスで最下位で運動神経も駄目だ。陰気な目でいつも俯いていてフケだらけの髪に酢の匂いがする太った小さな身体の持ち主だ。しかも足もかなり短いときている。
コンプレックスの塊でもあった。家族からも家事を手伝わず嘘ばかり言うので嫌われていた。妹の下着を盗もうとして怒られたこともある。
その彼の唯一の趣味はネットだった。ネットにおいてだ。
偉そうに言い他者を攻撃する。これを至上の喜びとしていた。
学校から帰るとすぐにだ。彼は自分の机に向かいパソコンの電源を入れる。そうしてだ。
ネットの掲示板やサイトにだ。次々と書き込んでいくのだった。
「御前は死ねよ」
「うざいんだよ」
「ほら、キモヲタニートが出て来たよ」
「厨は出て行けよ」
こうした言葉でだ。自分とは違う誰かを攻撃していた。ネットでの他者への誹謗中傷や人格攻撃が彼の唯一の趣味だった。その中でだ。
彼は自分の学校のことが書かれている某巨大掲示板のスレを見つけた。それを見つけるとだ。
クラスの、彼を無視している者達についてだ。次々に書いていった。
「川崎は野球部のマネージャーと付き合ってるけど三年の杜松先輩とも付き合ってるからな」
「清水は実はアニメヲタなんだよ」
「堀口は生徒会長に部費を都合してもらったんだよ」
「赤坂はな。援助交際してるからな」
こうしたことをだ。回線を切ったり携帯まで使ってだ。挙句には所謂串を入れてだった。
次々に書いてだ。そうしてクラスメイト達を誹謗中傷していった。その結果だ。
クラスメイト達は困った顔になってだ。彼等の被害を話し合うことになった。
「俺な。あれ書かれてな」
「マネージャーに疑われたのね」
「ああ、そうなんだよ」
その川崎、野球部のエースの彼はだ。たまりかねた口調で話した。
「三年の先輩、ええと杜松先輩な」
「その先輩のこと知らないのね」
「全然知らないよ。誰だよそれ」
まさにだ。彼にとってはそういったものだった。
「一体な」
「じゃあ本当に嘘なのね」
「そのことは」
「そうだよ。赤坂だってそうだろ」
「援助交際なんかする筈ないでしょ」
クラスの女子の間での中心人物である赤坂はだ。怒った顔でその噂を否定した。
「そんなこと。絶対に」
「だよな。それは」
「絶対に嘘だよな」
「あのね。援助交際なんかしなくてもアルバイトしてるから」
だからだというのだ。その赤坂は。
「お金には困ってないわよ」
「そうだよな。というか御前そんなことしないからな」
「援助交際なんてね」
「そうよ。絶対にしないわよ」
赤坂はムキになって否定した。そしてだった。
堀口、文芸部の彼もだ。こう言うのだった。
「うちの部活部費足りてるし」
「ましてやあんたが生徒会長にお金工面してもらったとかね」
「普通ないわよね」
「幾らあんたと会長さんが幼馴染でも」
「そうよね」
「そうだよ。僕と会長にはそんなつながりないし」
金を工面してもらうような。そんなつながりはだというのだ。
「誰があんなこと書いたんだよ」
「私がアニメヲタ?それがどうしたのよ」
長い髪の少女清水はその髪を不機嫌そうにかき上げながら言った。
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