血の付いた大扉
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第四章
「このことは他の三国も同じです」
「イングランド、スコットランド、ウェールズもですね」
「イングランドもそうなのは癪ですが」
歴史的な経緯からアイルランドとイングランドひいてはこの国が中心であるイギリスとか犬猿の仲である、それでえオーウェンも苦い顔でこうも言ったのだ。
「しかし我々四国は妖精の国でもあります」
「人と妖精が共に暮らしている国ですね」
「ですから」
それでというのだ。
「このことはです」
「ああして死ぬ人の家の扉に血がかけられることも」
「あります」
アイスランド等ではというのだ。
「おそらくそのお家の人は近いうちにお亡くなりになります」
「私もそう言われました」
「そうですか、やはり」
「何でも病院にすぐに入院させられたとか」
「では」
「そうですね」
余命幾許もない、それ故の入院は明らかだった。
「神父様も呼ばれていましたし」
「やはり」
「はい、そして」
「それで、ですね」
「他にはバンシーという妖精もいまして」
「バンシーですか」
「こちらは美しい少女か老婆の姿をしていまして」
そうした妖精だというのだ。
「その家で死ぬ人がいますと」
「血をですか」
「いえ、泣きます」
「泣くのですか」
「その家の近くで」
そうするというのだ。
「そうして死を知らせるのです」
「そうですか」
「はい、こうした妖精もいます」
アイルランド等にはというのだ。
「デュラハンの他に」
「そうなのですね」
「アイルランドに来られたのですから」
オーウェンは笑顔でミカエラのにこのことも話した。
「こうしたことも頭の中に入れて頂ければ」
「嬉しいと」
「アイルランド人としては」
そうだとだ、オーウェンはミカエラに話した。
「まことに」
「そうですか」
「はい、宜しければ」
「わかりました、ファンタジーは好きですし」
「それならですね」
「私も学ばせて頂きます」
ミカエラの方もこう答えた。
「是非」
「それでは」
「こうした妖精もいるとは」
「他にも様々な妖精がいますので」
「彼等のことを知ることもですね」
「アイルランドを知ることです」
この国をというのだ。
「宜しければです」
「学ばせて頂きます」
ミカエラは微笑んで答えた、そしてこの日から数日経ってだった。彼女は隣家の老人が老衰で死んだのを知った、それを知ってあらためてこの国の妖精のことを思った。この国のもう一つの住人達のことを。
血の付いた大扉 完
2017・4・13
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