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剣術と魔法で異世界生活

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第1章
やって来ました異世界
  第1話 死んで邂逅、そして異世界で復活

 
前書き
 ちょっとやってみたくやったオリジナル小説です。
 もしかしたら駄作かもしれませんが、よろしくお願いします。 

 
「単刀直入に言うと、キミは死んでしまったのじゃ」

 目の前にいる老人から唐突にそう告げられてしまった。
 現在、俺、暁月飛鳥は、だいたい四畳半ぐらいの和室にいた。畳の中央にちゃぶ台があり、上には二人分のお茶とお茶菓子として羊羹が置かれていた。
 そのちゃぶ台を挟んで、俺と先ほどのセリフを告げた老人が座布団に正座して座っていた。
 老人の特徴は、シンプルな和服、白髪の長髪をオールバックにして後ろで縛っており、見事な白髭を持ち、黒縁のメガネをかけ、のんびりとした穏やかな雰囲気を放っていた。歳は七十過ぎかな?
 俺たちを傍から見れば、孫と祖父が向かい合って座っているように見えるわけだが、この老人は俺の祖父じゃない。うちのじいちゃんはこの老人とは真逆のもっと破天荒な人だからな。そもそも、孫に向かって「おまえは死んだ」なんて言う祖父がいるわけ······いや、うちのじいちゃんなら容赦なく言いかねないか?
 さて、状況を整理するか。
 なぜか目覚めたらこの部屋の畳の上に寝ていた。起き上がると目の前にちゃぶ台と俺の分と思しきお茶と羊羹、そして老人がいた。そんでもって、老人は自分は神と名乗り、先ほどのセリフを告げられた。
 ············うん、情報が少なすぎるな。
 まずは目の前にいる神さま? に詳しく話してもらうか。

「えーっと、神さま。もう少し詳しく······」
「おっとすまんすまん。唐突すぎじゃったな」

 神さまはお茶をひとすすりし、事の顛末を話し始めた。

「まずはキミの死の原因じゃが······というか、わしの話を信じるのか? 普通は神と名乗る人物が現れればそいつのことを胡散臭く思うものじゃないのか? わしのことを怪しいとは思わんのか?」

 ああ、そのことか。

「祖父に鍛えこまれて、相手の僅かな仕草や反応から嘘をついているかどうか、またどういう嘘をついているかとかを俺は見抜けるんですよ。だから、あなたが嘘をついてないと俺は思いました」

 まぁ、このじいさんが完璧なポーカーフェイスを身につけてたら、話は変わるんだけどな。

「ああ、ポーカーフェイスはわし苦手なんじゃ。他の神々からすぐ顔に出ると言われておってのう。······ババ抜きとかしてもいっつも負けておるのじゃ······」

 それはお気の毒に。
 ていうか、いま心を読まれたな。
 読心術なのか神の力なのか。ま、どっちでもいいか。

「で、俺の死の原因とは?」
「おお、そうじゃったそうじゃった。しかし、落ち着いとるのう? 死んだと言われたのじゃ。もっとこう慌てたりするもんじゃないのか? キミの洞察力で嘘じゃないとわかっておるのじゃろう?」
「祖父から目の前で起こった現実は即座に受け入れ、適切な行動に移れ、と教えこまれた賜物ですかね」

 まぁ、死んだことに対して適切な行動も何もないんだけどな。

「キミのおじいさんはなかなかおもしろい教育をしておるのう」

 普段は破天荒で風来坊、いいかげんでがさつなんですけどね。

「おっと、また話が逸れてしまった。キミの死の原因なんじゃが······」

 そうそう、その話だ。
 俺の記憶が確かなら、朝学校に行き、昼休みにクラスの友人たちと昼飯を食べ、放課後に毎回来る剣道部への勧誘をやんわりといつも通りに断ってから自宅に帰り、普段通りに過ごして床についたはずなんだが。
 まさか寝ている間に何かあったとか?

「······キミの死はわしの不手際が招いたことなんじゃよ······」
「はい?」

 なんで神さまの不手際で俺が死ぬんだ?

「キミが死ぬ直前に美食神から羊羹の差し入れがあってのう」

 あ、このお茶菓子のことかな?

「美食神曰く、過去最大の渾身の出来、と言われてのう。それを聞いたわしは早速ウキウキしながらお茶を用意しようと立ち上がった際に······」
「際に?」
「······このちゃぶ台に足の小指を思いっきりぶつけてしまったのじゃ」

 うわぁぁ、それは痛い。俺も経験ある。頑丈なじいちゃんでさえ悶絶するほどだからな。

「神であろうとその痛みは想像を絶するほどじゃった。そして、その痛みに悶絶していたらつい誤って神の力を使ってしまった。その結果······」
「その結果?」
「·····寝ているキミに小隕石が墜落してしまったのじゃ」
「············」

 なんとも言えなかった。小隕石って······。

「事故とはいえ、わしの不手際でキミを死なせてしまった。本当に申し訳ない」

 神さまは深々と頭を下げて謝罪を口にする。

「頭を上げてください。悪意のない事故だったわけですから。俺は気にしてませんよ」

 湯呑み(あ、茶柱立ってる)を手に取りながら俺は言う。
 まぁ、これが俺じゃなく、家族や友人の誰かだったら文句のひとつはつけてたかもしれないが。
 お茶をひとすすりし、俺は神さまに訊く。

「ところで、謝罪を言うためにわざわざいち人間の俺をここに?」
「いや、すぐに生き返らせるつもりでキミをここに呼んだのじゃ」
「えっ、生き返らせることができるんですか!?」

 て、神さまならそれぐらい余裕か。

「ただのう、元いた世界に生き返らせるわけにはいかんのじゃよ」

 あー、確かに死んだ人が生き返ったなんて、後々にいろいろな厄介事や面倒事のタネになりかねないか。

「それもあるが、そういうルールもあるんじゃよ」

 なるほどなるほど、と頷きながら羊羹を口にする。
 うん、うまい! 美食神(十中八九食を司る神さま)の渾身の出来なだけある! まるで天に昇る(すでに天いるけど)ようなおいしさだ!

「こちらの不手際で死なせてしまったのに、こちらの都合に合わせてしまい重ね重ね申し訳──」
「いえいえ。ちゃんとしたルールは基本守るものです。どうかお気になさらず」

 神さまの言葉を遮って気にしてない旨を告げる。

「人間できとるのう」

 神さまはどこか感心したように言う。

「で、元の世界で生き返れないとなると······」
「うむ、別の世界で蘇ってもらうことになる」
「その世界はどんな世界なんですか?」

 元いた世界と違うところがあるのなら、いまのうちに聞いとかないとな。

「早い話、ファンタジー系のRPGゲームに出てくる世界じゃな」
「つまり、モンスターとか魔法とか?」
「うむ、あるよ。モンスターは魔獣と呼ばれておるな」

 なるほど。元いた世界に比べると、大分危険が多い世界というわけか。ま、上等だな。

「そうじゃ、罪ほろぼしに何か願いを言いたまえ。わしにできる範囲で叶えてあげよう」

 願いねぇ。あっ、そうだ。

「でしたら、あるものを持ち込みたいのですが」
「ふむ、何を持ち込みたいのかな?」

 俺は神さまに頼んで、元の世界にある実家の俺の部屋にあったものを取り寄せてもらった。

「小隕石の墜落でめちゃめちゃになっておったから修復しておいたよ」
「ありがとうございます」

 俺の手には一本の日本刀が握られていた。紅い柄糸を巻いた柄頭からは十五センチぐらいの長さの瑠璃色の紐が二本さげられていた。
 実を言うと、俺の実家は剣術道場なのだ。祖父が師範、両親が師範代を勤めている。
 この刀は俺が生まれた誕生記念にとじいちゃんが俺に贈ったものだ(······赤ん坊の孫に真剣を贈るなんて、いまさらだけど非常識だよな)。そして、俺が物心ついたときからこの刀を握ってきた俺にとっては、この刀は俺の一部みたいになっている。
 これから向かう世界でも役立つだろうし、ちょうどいいだろう。

「ところで、やっぱりというか、当然というか、その世界の言葉とか文字は······」
「うむ、キミの言うところの異世界語じゃ」

 だよなぁ。

「安心したまえ。わしの力で、話すことも読み書きすることもできるようにしておくから」
「それはありがたいです」
「それから、蘇ってまたすぐ死んでしまっては意味ないからのう。キミの基礎能力、身体能力、その他諸々底上げしとこう」
「あ、それは結構です」
「······なんでじゃ?」
「父から楽して得たものに価値なし、苦労の果てにに得たものこそに意味がある、と教えこまれてますからね」

 人間、楽を繰り返すと、そのありがたみを忘れてどんどん堕落してしまうからな。
 さすがに言葉に関しては甘えさせてもらうが。

「剣術家らしい教えじゃのう。なら、過度には上げずに伸び代として底上げしよう。これなら、教えに反しないじゃろう?」
「うーん、それなら」
「では」

 神さまが軽く手をかざすと暖かな光が俺の周りを包む。
 光が止むと、体が少し軽くなった。身体能力などが向上したからだろう。

「これで異世界語も大丈夫じゃ」
「ありがとうございます」

 その後、お茶と羊羹を楽しみながら異世界についての諸々の話を聞いた。

「さてと。そろそろキミを向こうの世界に送ろうかのう」
「はい、お願いします」
「向こうの世界でも頑張るのじゃぞ。では、またな」

 神様がそう言って微笑んだ次の瞬間、俺の意識はフッと途絶えた。


―○●○―


 目覚めると青空が見えた。雲がゆっくりと流れ、どこからか鳥のさえずりが聞こえてくる。
 体を起こし、周りを見渡す。
 草原が広がり、木々がまばらに生えており、俺はそのうちの一本の根元にいた。遠くには山々が見える。

「いい天気だな。絶好の異世界生活スタート日和だぜ!」

 立ち上がり、腕を思いっきり広げて空気を胸いっぱいに吸う。

「んー、空気がうまい!」

 さてと、そろそろ行動に移るかな。
 元の世界から持ちこんだ愛刀『龍絶牙』を制服のベルトに差す。
 ていうか、いまのいままでスルーしてたけど、俺、いつの間にか元の世界で通っていた高校の制服を着ているな。死んだのは寝ているときだったので、本来なら寝間着姿だったはずなんだけどな。
 まぁ、寝間着姿じゃ締まらないと神さまが気を利かせてくれたのかもしれないな。
 とにかく、こうして死んだ俺は異世界で蘇り、異世界での生活がスタートするのだった。 
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