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新訳紅桜篇

作者:Gabriella
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6 恋は人を、盲目にする。

  _「失礼します。」


  と言いながら、また子の部屋に入ると、また子はデスクの前に座っていた。



  とりあえず、借りていたタブレットを返す。


  _「あの…これ、お返しします。ありがとうございました。」



  また子は事務的な笑顔を浮かべ、「は~い。」と返事をしたものの、
  その、どこを見ているのか分からない虚ろな瞳は、暗く沈んでいた。


  いつも、あんなにパワフルなまた子が、こんなにしおれている姿を見るのは、
  初めてだ。

  …気になる。


  _「…どうされたんですか、また子先輩ィ?
    もしかして、恋の悩みですかィ?」


  冗談半分で、聞いてみる。


  すると、また子の顔が、ポッと 赤くなった。


  どうやら、図星だったようだ…。

  お相手は…たぶん、高杉(あいつ)だろう。




  しばらくたって、また子が重い口を開いた。



  _「わたし最近、晋助様のことを無性に、考えてしまうッス。 

    でも、私には、晋助様に「好きだ」と伝える勇気がないッス。
    会うたびに、言おうとするんスけど、いざ言おうとするとき、口が思うように、
    動かないッス。」

    
  ……あのまた子がねぇ…紅い弾丸と謳われる、また(このひと)がねぇ…。
   まさか、本当に好きだったとは…ねぇ…

  この場合、励ましの言葉でも行っておくべきなのか?



  私はとりあえず、それに従うことにした。


  _「…ま、先輩ィ…頑張ってくださいよぉ。先輩ならきっと、できますって。
    弾丸並みに、率直に。

    きっと、高…総督に…伝わりますって。」



  また子の目が希望の光を帯びて、こちらを見上げる。


  …先輩が、なんか…かわいい!!



  _「そう?アンナも、そう思う?」


  _「はい。そう思いますよ。」




  _「ありがとう……気持ちが楽になったッス。
    今度、勇気を出して、頑張ってみるっス。」


  _「いいえ…応援しまさァ。



  もうこの辺で、部屋に戻ろう。


    では、私はこの辺で、失礼します。」






  そう言って、私はまた子の部屋をあとにした。






  部屋に向かいながら、考える。


  _やはり、また子は高杉(あいつ)と、お似合いだと思う。

   きっと、いい恋人…もしくは、お嫁さんになれるだろう。




   また子にとっても、いいことではないか…。



  そう思いながら部屋の前に来ると、なぜか、高杉がいた。


  

  _「お前、何をしている?」


  高杉は、煙管をふかしながら、こちらを見て言った。


  _「お前、今日はオレと一緒に寝ないか?」



  …なんだ、突然。おもりか?



  _「…なぜ?…寂しいのか?1人で眠れぬのか?」


  私はそう言って、高杉(あいつ)の反応を見る。
  

  _「いや、お前と相談したいことがある。
    ほかのものに聞かれると、厄介なのでな。」




  …なんだ、相談か。なんか胡散臭いが、付き合ってやろうか…。

  だがとにかく、証拠は隠滅しておかないと…。
  バレたら、困る。


  _「…なるほど。分かった。では、準備をしてくるから、しばし待たれよ。」



  _「ああ。待ってやらァ。」





  そして私は、とりあえず、魔法の部屋へ行き、周りに人がいないかを確認した後、
  呪文で、鍵を開けた。


  急いで出来上がっているポリジュースに栓をして、薬箱のポーチに入れた。

  そして、魔法でラベルを書いて、張らせた。



  それをしている間に、暖炉の火を消して、戸締りをしてきた。


  そして、来た時と同じように、またロックをかけた。



  そして、羽織をはおりなおし、タンスからペンダントを取り出して、首にかけた。


  寝ている間に獣が動かないように、封じるための魔法がかかっている。



  準備を済ませると、部屋を出て、高杉とともに、高杉(あいつ)の部屋に行った。




  
  部屋に入ると、そこにはもう、寝床の用意がしてあった。




  _準備がいいな、おい。



  苦笑いしながら、高杉(あいつ)を見る。
  だがあいつは、奥のタンスの方へ歩いて行った。


  そして、何かの書類を出してきた。



  _なに、あれ?





  高杉は、その書類を持ってきて私に見せると、口を開いた。


  _「いいか、これは、今度の『江戸を火の海にする計画』の、計画書だ。
    お前には、これから重要な役割を演じてもらう。



  まさか、紅桜をもって、戦う…とかじゃないよね?



  _ この計画の、最も重要な部分……つまり、紅桜を真選組にバレないように工作する部分だ。


    お前は元…いや、現役の殺し屋だ。スパイ活動だって、今までずっとしてきただろう?

    その工作力を、オレたちのために使ってほしい。
    どうだ?やれそうか?」


  返事に迷う…。いやこれは、素直に聞いておくべきか…。




  _「…ああ、分かった。では私は、どうすればいいのだ?似蔵と、タッグを組めばいいのか?」



  _「ああ、そうだァ。分かっているじゃねェか…。頼んだぜェ…」




  これで終わりだよな?





  _「では、失礼する。」




  そう言って、高杉(あいつ)の部屋から私は、逃げるように去った。



  そうするしかなかったのだ。

  少しくらいは、大人になれ。
  
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