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提督はBarにいる。

作者:ごません
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夏の素麺レシピ特集・その3

「提督、カレー味のつけ麺なんて作れます?」

 そんな突拍子もないオーダーをしてきたのは大食いコンビの片割れ、蒼龍だ。実は蒼龍、無類のカレー好きで休みの日となると街に下りて色んな店でカレーを食べまくり新規開拓をしているらしい。全く、カレー好きは黄色と相場が決まっているだろが。なんて話はともかく、最近はカレーライスに飽きてきて、カレーうどんやカレー南蛮等の変化球的なメニューの美味しい店を巡っているらしい。

「まぁ……出来なくは無いけどな」

 ちょうどカレールーもあるし、作ってみるか。

《蕎麦屋風の簡単カレーつけ汁》※分量2人前

・水:300ml

・長ねぎ:2/3本

・カレールー:2個(約40g)

・めんつゆ(ストレートタイプ):大さじ3

・一味唐辛子:お好みで


 手軽に出来るしシンプルだから応用も利く、簡単カレーつけ汁がコイツだ。まずは長ねぎは斜め薄切りにしておく。鍋に入れるよりも薄くな。

 水を鍋に張り、火にかける。沸騰してきたらめんつゆとねぎを加え、柔らかくなるまで煮る。ねぎが煮えたらカレールーを入れて溶かす。

器に盛り、お好みで一味唐辛子を散らせば完成。



「そらよ、『簡単カレーつけ汁』だ」

 出されたつけ汁を見て、蒼龍は不満顔だ。

「ちょっと!シンプル過ぎない?」

「どこが?ちゃんとカレー味のつけ汁だろ?」

「だからぁ、提督の作るつけ汁だからもっと具沢山で豪華な奴を想像してたのっ!」

「んだよ、最初からそう言いやがれ」

 このつけ汁最大のウリはそのシンプルさだ。後から具材を足してもいいし、カレーのスパイスを足して辛さを追求してもいい。

「ほらよ」

 俺が出してやったのは、焼き目を付けた豚バラ肉に鶏モモ、サッと油通しした茄子やピーマン、ヤングコーン等の夏野菜。それに粉チーズに納豆等だ。

「好きなのを入れて食べな」

 俺の号令で、ワッと全員が具に飛び付く。半ば奪い合うようにして、後から用意した具はどんどんとその数を減らしていく。……さて、この大食らい共が貪ってる間に、俺はもう1つカレー味のつけ汁を拵えるとしますかね。



《和洋折衷!トマトカレーつけ汁》※分量2人前

・トマト:1個

・豚バラ薄切り肉:140g

・長ねぎ:50cm位

・水:500cc

・カレールー:40g

・めんつゆ(3倍濃縮):大さじ4

・塩コショウ:少々

・ピザ用チーズ:40~60g

・素麺:200g

・茹で玉子(固茹で):2個

・刻みネギ:大さじ4




 さて、作っていこう。まずは具材のカットから。トマトは1.5cm角の角切りに、長ねぎは4cm位に切り揃えて縦4等分に。豚バラ肉は3~4cmの長さに切り揃える。カレールーは溶けやすいように粗めに刻んでおくと楽だぞ。

 鍋に水を張り、カレールーを入れて火にかける。煮立ってきたらトマト、長ねぎ、豚バラを入れて3~4分アクを取りつつ煮る。めんつゆを加えて軽く煮立たせたら味見して、塩コショウで味を調える。

 器に盛り、熱い内にピザ用チーズと刻みネギを散らす。後は別の皿に茹でた素麺と食べやすい形にカットした茹で玉子を添えれば完成。




「んぉ?さっきのカレーと違う匂いがする……」

 カレーつけ汁で素麺をズルズル啜っていた蒼龍が、ヒクヒクと鼻を動かしている。

「目敏い……いや、この場合だと鼻敏いか?流石はカレー好き」

 早速嗅ぎ付けやがったらしい。温め直したトマトカレーつけ汁を器に盛り、チーズと刻みネギをパラリ。

「ほらよ、『トマトカレーつけ汁』だ」

「そうそう、こーいうのを待ってたんですよぉ!」

 嬉しそうに飛び付いた蒼龍は、我先にと素麺を付けて具材と麺を絡ませ、ズルズルと啜る。暫しの沈黙……と、いきなり目をクワッ!と見開くと、

「う~ま~い~ぞ~!」

 と叫んだ。お前はどこの味皇様だよ。

「だってだって!トマトから溶け出した酸味をたっぷりと含んだ甘味と旨味に、クタクタになるまで煮込まれたネギの甘味!そして豚バラから染み出す肉の旨味!そこにカレースパイスの辛味とめんつゆのコクが加わり、それら全てが渾然一体となって織り成す味のハーモニー!そりゃ叫びたくなりますよ!」

 と力説された。

「蒼龍」

 そんな蒼龍の暴走?に待ったを掛けたのは、同じく二航戦の飛龍だ。

「ん?どしたの飛龍?」

「美味しいのはわかったけどさぁ……」

 飛龍は額に青筋を浮かべてピクピクさせている。

「カレーの汁、飛ばしすぎっ!」

「え?……あ」

 蒼龍が周りを見渡すと、周りに座っていた全員に蒼龍が啜っていたつけ汁から跳ねた汁が飛んでおり、顔や服に付着していた。しかも最悪な事に、蒼龍を挟んで飛龍の反対側に座っていたのが、白い制服の大和。その純白の上着には、蒼龍が飛ばしたのであろうカレーの汁がまだら模様のように点々と黄色い染みを残していた。

「そ・う・りゅ・う・さ・ん・?」

「ひいぃ~ん、助けて提督ぅ!」

「無理」

 俺がバッサリ切り捨てた瞬間、ゴチンという鈍い音が店内に響いた。




 大和と飛龍の拳骨を貰い、頭にデカいたんこぶを作って気絶した蒼龍をソファに寝かせ、試食会は続行という事に。


「さて、気絶したバカはほっといて……今度は素麺を他の麺に見立てて調理してみようと思う」

 知っての通り、麺と一概に言っても様々な物がある。蕎麦や饂飩、焼きそばに中華麺、パスタにと実に様々。そんな様々な麺料理を素麺で再現してみようというワケだ。

「ほほぅ、中々興味深いな提督よ。で……まずは何を食わせてくれるんだ?」

「まずは俺の地元……ってワケでもねぇが、出身県の名物でもある『じゃじゃ麺』風の素麺を作ってみようと思う」

 岩手県の堅調所在地である盛岡市には、『盛岡三大麺』と呼ばれる麺料理がある。ひとつは一口で食べきれるサイズに小分けにされた蕎麦を食べ、その椀の数を競う『わんこそば』、もうひとつは北朝鮮の平壌を故郷に持つ料理人が産み出したとされている『盛岡冷麺』、そして最後が『じゃじゃ麺』だ。

 名前の響きからピンと来た人もいるかもしれんが、ルーツは中国大陸の麺料理であるジャージャー麺がルーツとされており、第二次大戦後、引き揚げ兵によって盛岡に持ち込まれたジャージャー麺が変化したもの、と言われている。じゃじゃ麺とジャージャー麺の大きな違いは、使われている麺だ。ジャージャー麺は当然ながら縮れて黄色い中華麺だが、盛岡のじゃじゃ麺は茹で立て熱々の饂飩。まだ湯気の立ち上る饂飩にに肉味噌や千切りにしたキュウリ、薬味などを乗せて麺と絡めて食べるのがじゃじゃ麺なのさ。

「成る程……それをおそうめんでやろう、という事ですね?」

「そういう事。んじゃ、早速作りますかねぇ」

《シメまで美味い!じゃじゃ麺風そうめん》※分量2人前

・そうめん:2束(200g)

・合挽き肉:120g

・長ねぎ:1本

・味噌:大さじ2

・にんにく:2片

・豆板醤:小さじ1~2

・酒:大さじ4

・みりん:大さじ2

・砂糖:小さじ1

・椎茸:2枚

・筍(水煮でOK):1/2個

・キュウリ:1本



 さて、作っていこう。といってもほとんどは肉味噌を作る行程なんだがな。まずは野菜を刻んでいく。キュウリは千切り、にんにく、長ねぎ、椎茸、筍は細かくみじん切りにしておく。椎茸と筍はそれぞれ旨味出しと食感を加える為に入れてあるが、入らなくても十分美味いぞ。

 さぁ、炒めていこう。フライパンに油を薄めに引いて熱し、刻んだにんにくを入れる。香りが立ってきたら合挽き肉を加えて炒める。

 合挽き肉の色が半分程変わったら、みじん切りにした長ねぎ、椎茸、筍を加えて中火で炒めていく。ネギがしんなりしてきたら味噌、豆板醤、酒、みりん、隠し味の砂糖を加えたら火を弱め、弱火で汁気が無くなるまで、焦がさないようにかき混ぜつつ煮詰めていく。豆板醤の量は自分の舌に合わせて調節してくれ。水気が飛んだら肉味噌は完成だ。

 素麺を茹で上げたら流水で〆てやり、水気を切ったら皿に盛り付ける。その上に肉味噌と千切りにしたキュウリを乗せてやれば完成だ。……あ、肉味噌は2割程乗せずに取っておいてくれ。コイツはシメに使うんでな。 
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