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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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純粋な心の青少年と汚れた大人達の物語

 
前書き
田鰻さんがサラボナのキャラの事を思い出させてくれたので、
急遽書く事にしました。
掲載は「外伝」になってますが、物語の時期的な物は「えくすとら」の100話前後です。
 

 
(サラボナ)
ルディーSIDE

僕のお祖父様は商業都市サラボナを纏める大商人だ。
だから世界中に情報網を張り巡らせており、遠いグランバニア王国の事も随時把握出来るようにしている。
そんな訳で、まだこのサラボナの人々には浸透してない“マリー&ピエッサ”という音楽ユニットの情報も既に知っている。

そしてグランバニアで大人気の音楽ユニットをプロデュースしたウルフ宰相閣下とも知り合いなのだ。
ウルフ宰相閣下と言えば自他共に認める超天才で、王様のリュカ陛下と共に色々な世界を冒険し、勿論大活躍で陛下をお助けした方で、戦闘も政治も行える凄い人だ。

更に凄いのは、閣下の絵の上手さだ。
マリー&ピエッサがグランバニアで有名と聞いたお祖父様は、ウルフ閣下にお願いしてお二人のステージシーンを絵に描いて贈ってもらった。

その絵は今にも動き出しそうなほどリアルで、僕も父様も母様も……そして絵とかに煩いデボラ叔母様も唸るほど綺麗で上手い絵だった。
何よりデボラ叔母様の娘、デイジーも瞳を輝かせて絵に見入っていた。

デイジーは叔母様の趣味で何時も派手な服を着ているが、凄く恥ずかしがり屋で人見知りな女の子の為、普段だったら家族以外の人が居る場所では叔母様か僕の後ろに隠れて顔を出さない子なんだけど、ウルフ閣下の絵が綺麗すぎて絵を持ってきてくれたお祖父様の部下の前でも、恥ずかしいのを忘れて出てきてしまったくらいなのだ。

それ以来、暇があればマリー&ピエッサの絵を見ている。
それを見たお祖父様がデイジーの為に彼女等(マリー&ピエッサ)をサラボナに呼ぶと提案し、大人しい彼女(デイジー)が屋敷中を跳ね回って喜んだ。

いくらグランバニアの宰相と知り合いのお祖父様でも、そんなに人気のお二人を簡単に呼べるとは思ってなかったんですけど、詳しく聞いたらボーカルのマリーさんは、リュカ陛下の娘さんとの事で、お祖父様の頼み事を快く聞き入れてくれたそうです。

しかも驚いたのはマリーさんはデイジーと同い年……
ウルフ閣下の絵では僕よりもお姉さんだと思ってたんだけど、まさかの年下でした。
もしかしたら絵で見ると大人っぽく見えるのかと思ってましたが、直接お目にかかっても大人っぽくて吃驚です。

更に吃驚なのは、ウルフ閣下が直接来てくれた事です。
お祖父様も父様・母様もウルフ閣下と一緒に来たグランバニア王太子殿下ご家族にお礼を言っていました。
でも閣下は『ルーラを使えば直ぐですから、例には及びませんよ』って優しく仰ってくれました。

ただ『リュカさんもリュリュさんも面倒臭がって……』と小声で謙遜してました。
そうやって我々に遠慮させないように気遣ってくれるなんて、出来る男は格好いいですよね。
しかし……何で殿下と奥様と娘さんが一緒に来たのかは不明です。

ティミー殿下とウルフ閣下には何度かお目に掛かった事があるのですが、奥様と娘さんには初めてです。
殿下が抱いてる娘さんを紹介された時、素直に『アミーちゃんと言うんですか。凄く可愛い女の子ですね』って感想を言ったら、最初は笑顔で『ありがとう』って仰ったんですけど、直後に『嫁にはやらん!』と言われました。

何のことかポカンとしてると、奥様が『ルディー君が驚いてるでしょ!』て後頭部を叩いてました。
殿下に対してそんな事して良いのかと驚いてると、ウルフ閣下も『本当……あんたキモいわぁ~』と白い目で見ながら言いました。なんか大丈夫みたいですね。

そうそう絵を見て憧れてたデイジーは、最初こそ恥ずかしがって僕の後ろに隠れてたんですけど、マリーさんが『貴女凄い格好ね。そのままステージに立って歌うこと出来るんじゃないの?』と言われ、彼女に教えられるがまま歌を歌ってます。

最初は僕等だけの為に来てくれてたマリー&ピエッサですが、ウルフ閣下が『こんな少人数の為だけに俺がルーラを使うのはもったない。ルドマンさん、今すぐ町の人々を集めてコンサートを開きましょうよ』と提案!
凄い吃驚です。

でも一番吃驚なのは『ちょっとぉ~……私の歌は安くないのよ。これ(親指と人差し指で輪を作り、お金を意味してる)は大丈夫なのぉ?』って残念な事を言うマリーさんだ。
もうちょっと懐の広い女性かと思ってたのに……

でも流石はウルフ閣下だ。
『馬鹿だな。ここは通商国家で商業の中心地だぞ。無償で歌を披露して、世界中に評判を広めて貰えれば、長い目で見て大いなる利益になるだろうが』とマリーさんを説得。

確かにその通りだと言う事で、急遽ステージを屋敷の前に設置。
いきなり歌えと言われて歌える物なのか疑問だったけど、マリーさんも軽く歌い、ピアノを弾くピエッサさんも動じることなく演奏をする。

全ての曲目が終わり、僕の感想は……
凄い! 凄く良い!!
今まで聞いた事のないリズムに、感動出来る歌詞。

それらを綺麗に融合させるピエッサさんのピアノ伴奏と、全てを完成させるマリーさんの綺麗な歌声。
ウルフ閣下の絵は、まさにそのままを描いた凄い絵だけど、やはり音楽が加わると芸術性が格段に向上する。
デイジーはお二人の大ファンになってしまった。

でも僕はウルフ閣下の大ファンになってしまった。
だってコンサートが終わって屋敷に入ると、そこには大きな絵が置いてあり、皆がコンサートに夢中になってる間に書き上げた、僕等(僕・デイジー)がマリー&ピエッサと一緒にピアノの前に居る絵なのだ。

これは僕にだけでなく、デイジーにも思い出に残る一枚となるだろう。
あの恥ずかしがり屋なデイジーが、屋敷で待ってたウルフ閣下に抱き付くくらいなのだから。
先刻(さっき)のコンサートには僕の友達も沢山来てたから、自慢出来るよ。

ルディーSIDE END



(サラボナ)
ティミーSIDE

僕は来るべきじゃなかったのかもしれない。
可愛いアミーを自慢したくて、ウルフ君等に付いて来ちゃったけど、愛娘を狙う野獣を増やしてしまったかも?
でも今の内に牽制しておいたら嫁に後頭部を叩かれた。

それを見てたウルフ君は『そんなんじゃ生ぬるいから、今後はグリンガムのムチを持ち歩いた方が良い』と嫁にアドバイス。
殺す気ですか?

しかし、それ以上に来るべきじゃないと思えたのは、ウルフ君が目敏すぎるからだ。
アンディーさんとフローラさんの息子であるルディー君と、デボラさんの娘のデイジーちゃんを見て、僕にコッソリと尋ねてきた。

『あの……デイジーちゃんの父親って……アンディーさん?』
何で判るのー!?
答えに困ったね。

でも、そんな僕の様子を見て彼は直ぐに悟る。
『やっぱりそうなんですね。しかも公には出来ないんですか……』
凄くない? この人、凄く聡くない?

『虫も殺せないような顔してて、俺やリュカさんサイドの住人なんですねアンディーさん』
いや……色々あるんだよ。
でも説明出来ないんだよ。

でも一番来た事を後悔したのは、ルドマンさんがグランバニアの新兵器について、色々聞く為にウルフ君を呼び寄せた事だった。
マリー等のステージが終わって帰り支度してると、僕と彼を書斎に呼び、真剣な表情で問うてきた。

「リュカが凄い兵器を発明させたと聞いたが、それは真実か?」
「真実ですが、お売りする事は出来ませんよ」
流石はやり手の大商人。孫娘の為にマリー等を呼べばウルフ君が連れてくると読み切り、本当の目的を隠しおおせた。

「だがなウルフ宰相。グランバニアだけが独占しているのでは、いつかは我々の町に侵略してくるかもしれないと考える者が居るやもしれんぞ。世界の均衡を保つ為に、多少は情報を広めては如何かな? 勿論有料にすれば、一財産稼ぐ事も出来るであろう……」

「財産に興味があったら、今頃俺はグランバニアの王になって、お前等全員奴隷にしてるよ。リュカさんもティミーさんも、以前は俺に王位を譲っても良いと言ってたんだからな。でも興味ないから、それらの権利を放棄してお二人のサポートに回ってるんだよ」

「なるほど……裏方で権力を振るうと言う事かな?」
「俺みたいな小物が大いなる権力を暴走させない為に、絶大な正義感とカリスマを持った人間がトップに君臨する治世を作ってるんだよ」

「そうは言っても時が経てば、権力に振り回される統治者が誕生するだろうて……その時は如何するつもりなのかな? お前もリュカ等も死んでるであろう」
「その時はアリアハンのマスタードラゴン様が、神の鉄槌を下されるだろう。権力に振り回される小物では、リュカさんのように神々を平伏させる事は出来ませんからね」

「ほほう……随分と自身があるようだが、リュカも同じ考えなのかな? (くだん)の新兵器を一度見せて貰って、直接リュカに真意を確かめたいのだがな」
「はっはっはっ。ルドマン殿はアサルトライフルの性能を存じないから、我が王が交渉に応じると思えるのです。実物を一度でもご覧になったら、交渉する気も失せる事でしょう」

「逆ではないのかな? それ程の威力を誇るのであれば、良い金儲けだと私が考える……そうは思いませぬのか?」
「完成した新兵器が究極形だと思ってた頃は私もルドマン殿と同じ事を考えたでしょうが、悪しき者の手に新兵器が渡れば、更なる進化も有り得ると陛下に教えられ、思い改める事が出来ました」

「ほう……更なる進化があると聞いては、余計に知りたくなりますなぁ」
「製造方法等は決して教えられませんが、世界中に新兵器の威力を知らしめる為に、ルドマン殿たち商人等には知っていて欲しいです。ですから後日グランバニアに視察されては如何ですかな? その時に我が主を説得出来れば、私にリベートを払わずにもう一財産築けるでしょう」

「なるほど……ではその様に計らって戴けますかな、宰相殿?」
「陛下への説得以外の手はずは私が承りましょう」
こ、こわい……

何、この人達?
凄く悪い事を話し合ってるようにしか見えないんですけど!
いや、実際悪い事だよね?

あの兵器は絶対に世の中へ広めちゃダメな物だと思う。
でも商人のルドマンさんは、凄い金儲けの事柄だと考え、是が非でも武器を欲しがってる。
ウルフ君はウルフ君で、世界中にグランバニアの強さを強調したくて、父さんの意にそぐわない段取りを取っちゃってる。

父さんは大丈夫だよね?
あの兵器をルドマンさんにとは言え売ったりしないよね?
でも勝手に交渉の場を作ったりしたら、絶対に怒るだろうなぁ……

ウルフ君はそれを計算に入れてルドマンさんと打ち合わせしてるのかな?
僕は何も聞かなかった事にして、グランバニアに帰ったら口を噤もう。
こう言う悪巧みはウルフ君に任せるに限るからね。

そうと決まったら、こんな暗黒空間から逃げ出して、可愛い娘とステキな時間を楽しもう。
僕は気配を殺して、ルドマンさんの書斎から出て行こうとした。
でも気配は消せても姿は消せないから、二人に直ぐバレて……

「もう行きますかティミーさん?」
とウルフ君に聞かれちゃった。
「う、うん……君等のお話も終わった様なので」
終わったかどうかは判らないけど、逃げ出す口実は欲しい。

「そうですね、俺等の密談も終わりましたし、サッサと我が家に帰りましょう」
あぁ終わってたの……本当に。
それは良かったですね……

先に扉へ向かっていた分、ウルフ君より早く退室したけど、僕の側まで早足で彼は近付き「リュカさんに先程の密談を話しますか?」と聞いてこられちゃいました。
もう忘れたいのだけど、答え方次第で彼に利用されそうなので、何も言えないでいる。

「グランバニアに帰っても、その状況を貫いた方が良いですよ。リュカさんからの怒りは俺が一身に受けますから、殿下は清廉潔白を貫き続けてください」
清廉潔白を貫かせたいんだったら、こんな事に巻き込まなきゃ良いのに……

でもやっぱりお言葉には甘えよう。
父さんの怒りも怖いし、彼等の悪どさも怖いから……

ティミーSIDE END



 
 

 
後書き
このストーリーは、たった1日で書ききったんですけど、
前半と後半の落差が凄い事になってると読み返して思う。
作者の心はどうなってんの? 
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