異世界に転生したら、強くてニューゲームでした。(編集中)
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深夜の大失敗
その日から、僕は深夜の特訓を始めた。幼児といえど、伯爵家の子供だ。自分の部屋はあったので、余程のことがない限り見つからない。
あの後、また隠れて書庫に行き、持ち出した教科書を開く。
大きな窓から、月明かりが差し込んでいる。今夜は下弦だ。教科書が読めないということはなかったけど、読み間違えたら困るので明かりをつけた。
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⒈[最初に]
まず、貴方の魔法属性の確認をしましょう。
属性とは、使える属性の中でも特に協力な魔法を使えるものです。
光は、エルフ族。闇は、魔神族しか使うことは出来ませんが、火、水(氷)、木(花、草)、風属性のごく簡単な魔法は、誰でも使うことが出来ます。
種族により、使える魔法の限られている人もいますが、この確認は一通りしておきましょう。
【確認方法】
出来るだけ強力な魔力を必要とするものを出してみましょう。
出せるものが強力なほど、魔力が強いということです。
例:火属性⇨火龍 呪文⇨炎の龍神《フラム・ロン》
例:水属性⇨水龍 呪文⇨水の龍神《インフェルノ・ロン》
例:木属性⇨木龍 呪文⇨木の龍神《ストロム・ロン》
例:風属性⇨風龍 呪文⇨風の龍神《ウェントス・ロン》
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(うわぁ、なんかそれっぽいことが書かれてる!魔法使いって感じだなぁ。
どれを出そう?火龍は、火事とか怖いし。やっぱ木龍でいこっと。よし、じゃあ早速…)
教科書を床に置き、口を開いた。
「すとりょ…」
(し、舌噛んだ…)
痛みで泣きそうになる。僕の歯はまだ生えそろっていないけど、二本の前歯と歯茎で噛んだ舌は、思いの外ジンジンと痛んだ。
しゃがみこんで口を抑えること約30秒。
復活した僕は、気を取り直して言った。
「ストロム・ロン!」
《ズズズズズズ……》
僕から2メートルほど離れた床に、緑に輝く魔法陣が現れた。
そこから、色とりどりの花が出てくるーーーえ、花?
《ズズズズズズズズ……》
僕が呆気にとられて驚く間に、魔法陣からは、どんどん花が溢れている。赤や黄、オレンジなどの一般的な花の他に、青や金、輝く花など、見たことがないものも混ざっている。
数秒後、花に埋もれる形で出現した木龍は、ほんの子供だった。小さな翼をパタパタと動かし、しきりに鳴いている。
魔方陣は、いつの間にか消えていた。
部屋に残る僕(準備不足)と子供木龍(花まみれ)。
(あれ、この子の消し方って!?)
慌てて教科書を捲る。だが、目的のページは見つからない。
(うわぁぁ、どうしようどうしよう…)
そうこうしているうちに、誰か起きてしまったみたいだ。
木龍の鳴き声だろうか。焦った僕は、取り敢えず教科書を隠し、証拠隠滅を図る。
でも、木龍を隠そうとしたところで、部屋の扉は開けられてしまった。
《ガチャッ……》
(ぎゃあああああああ!!!)
硬直する僕。鳴き続ける木龍。床に散乱する花。そして、扉を開けた姿勢で固まるお母様。
「……………………………」
「…………………………」
(……沈黙が辛い。もっと調べてから召喚したら良かった…)
ネグリジェ姿のお母様は、木龍の鳴き声を僕のものと勘違いしてきたようだ。
驚くお母様の視線は、僕と木龍を何度も行き来した。そろそろ10往復はするんじゃないかってとこで、やっと口を開く。
「い、イヴ……?この木龍、あなたが召喚したの?」
木龍を指差してそう言った。
隠しても、いずれはバレてしまうだろう。ぼくは、素直に頷いた。
「あい、おかーしゃま」
その答えを聞いて、お母様は驚きと嬉しさの混ざった顔をした。てっきり怒られると思っていた僕は拍子抜けする。
(………?)
「いい?イヴ。あなたの年で木龍を召喚するのはとても凄いことなの。木龍は魔力が高いし、珍しいもの。このことは、明日お父様とお話しましょうね」
僕の目線にしゃがみ込み、諭すお母様。だが、その魂胆は分かっているっ!!
明日は、お父様とお母様からのお説教タイムが待ち受けているに違いない。
でも、仕方ないことだ。僕が撒いた種だもの。心中では泣きたいのを我慢する。観念し、
「……あい」
と返事をすると、お母様は笑って撫でてくれた。
優しい表情に安心するけれど、明日のことを想像すると僕の心臓はバクバクだ。
おかげで、木龍と花を消したお母様が部屋から出て行った後も、あまり寝付けなかった。
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