とある世界の物質破壊≪ディストラクション≫
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幻想御掌2 -失敗と勘違い-
前書き
湊『今回は~何やら~展開が~』
美琴『……アンタまともにやる気無いわよね。』
湊『いや、急展開しまくりじゃん?』
美琴『まぁそうだけど。』
湊『それを表現しようかと。』
美琴『……そんなんで表現出来るなら苦労しないわよ。』
湊『ですよね、てことで本編へ行こうか!』
美琴『今回も湊視点よ!』
あの後、美琴が取引場所になっているファミレスに訪れ何とか情報を得ようとした。
俺と黒子は近くの席から見守る事にし、先程から続いている美琴の"超ぶりっ子のか弱い女の子"の熱演ぶりを見ていた。
因みに、黒子は美琴の発言や態度を聞いたり見る度に飲み物を吹いたり、テーブルに頭をゴンゴンとぶつけながら何やらブツブツと言っている。
──……うん、放っておこう。
俺は苦笑いで黒子を見ながら、コーヒーを飲み次の事を考えていた。
──もし、仮にもここで幻想御掌を手に入れたとする。
だが、手に入れてどうする?
実態すら分かっていないものを無闇に試してみるのも危険だ。
こんな沢山の目がある中で取引をするという事は、見た目はそんなにも不審なものでないという事が考えられるけど……。
「黒子、何食べてるの?」
「かき氷ですの、お兄様もお食べになります?あ、でしたらこの黒子が!」
「かき氷は今は要らないから食べていいよ。」
黒子はしゅんっとなりながらも黙々とかき氷食べ続ける。
俺は視線を美琴の方に移動する。
──いったい、幻想御掌って……
「んー!」
「ど、どうした!?」
突然目の前で頭を抑えながら唸り始めた黒子。
「かき氷で頭がキーンってなったんですの。」
「あぁ、かき氷あるあるだね。」
「キーンってなるのは嫌ですわ。」
「赤色って事は苺か、共感覚性だね」
「この前お姉様も同じ事を言ってましたわ。」
「へぇ……ん?」
「どうなさいましたの、お兄様?」
──待てよ、共感覚性って……
「あー!」
俺は思い付いた事で、勢いよく立ち上がる。
すると、それに驚いたのか黒子は飲み物でむせてしまいゴホゴホと苦しんでいた。
そして、その声は美琴達にも聞こえてしまい…
「ちょっと湊うるさいわよ!」
「ご、ごめん、幻想御掌の正体が分かったか……」
俺はつい口にしてしまった。
よく思い出してみよう。
美琴は現在、幻想御掌の情報又はその物自体を手に入れるために取引してる奴らに話しかけに行っている。
"超ぶりっ子のか弱い女の子"を演じて。
だが、俺が幻想御掌という言葉を口にしてしまった。
その俺と美琴は会話をしてしまっている。
「……お前らグルか!」
──やっぱりそうなりますよねー!!!
俺は美琴と黒子を連れて、外に逃げる。
「ちょっと離しなさいよ!」
「今は逃げるべきだー!」
「何でよ、焼いちゃえばいいでしょ!?」
「簡単に人を焼いたりしないの!」
そうして、不良と俺達の鬼ごっこが始まった。
今、俺達は病院に向かっていた。
何でも風紀委員が独自に調べていった結果、幻想御掌の正体は音楽で俺の考え通り共感覚性によって能力を向上させているかもしれないと判断された。
それに伴って、脳外科の先生である木山先生の協力のもと本当に共感覚性で能力を向上させているのかを調べるため黒子と会うため一緒に向かっていた。
「き、昨日はとんでもない目にあった……」
「アンタがいけないんでしょ!?」
「その説はすみませんでした!」
俺は親友のような華麗な土下座を決め、謝罪する。
美琴は俺の行動に慌てた。
「わ、分かったから土下座は辞めて…!」
こんな流れが続いて黒子と待ち合わせの病院に着いた。
病院内に入り、受付で理由を話して黒子が来るのを待つ。
すると、俺達が来た方向と反対からいきなり現れた。
「お待ちしておりましたわ、お兄様、お姉様。」
「黒子、アンタ病院内を移動する時ぐらい歩きなさいよ…」
「瞬間移動の方が早いんですの、それにお2人にお待ち頂くなんて黒子にとって言語道……」
「あはは…、黒子移動しようか?」
黒子が熱く語る前に美琴が手で口を封じる。
俺は目の前の光景を少しばかり呆れつつも、脳外科の先生と合流する事になった。
「ここで座って待っていればいいみたいですわ。」
「じゃあ、座って待ってましょ。」
この会話から数十分経った。
「………暑いですわね。」
「……黒子、言うともっと暑くなる。」
病院内にいるはずなのに、この暑さ。
クーラーが効いてるはずでは?と思ったのだが、何でも昨日の停電で電気がストップし自家発電を医療に使っているらしく効いていなかった。
「……ん。」
「お姉様、寝てしまわれましたわね。」
「うん、疲れてたんだろうね。」
黒子と俺の間に座る美琴はこの暑さの中、気持ちよさそうに寝ている。
俺は何か飲み物でも買ってこようかと体を動かそうとした時、左側に何かが乗ってきた。
「あら、お姉様大胆なこと。」
「………。」
俺の左肩ら辺に乗ってきた何か、それは美琴の頭だった。
身長が俺の方が高いため肩には乗らないが、腕ぐらいの高さに美琴が寄っかかっている。
「お兄様。」
「…ん?」
黒子はそんな俺と美琴の状況を楽しんでいるような表情を浮かべながら、話しかけてきた。
もちろん、美琴が起きないように小さな声で。
「お姉様の事、今は"妹"として見てますの?」
「………どうだか。」
「何ですの、今の微妙な間は。」
「……俺がというより美琴が変わった…気がする。」
そう、俺は妹として見てはいる。
だが彼女という者を作った事が無いから勘違いなのか、最近美琴が好意を寄せてるのでは?と感じる点がかなりある。
「確かに、お姉様も最近お兄様への見方が変わってきているとは思いますわ。(毎日、湊に会えるかな~とかボヤいてますもの。)」
「そ、そうか。」
「お兄様はどうなんですの?」
俺は答え方に迷った。
少し考えてから、黒子に。
「"昔は恋愛の意味で好きだった"。」
そう言った瞬間、美琴がいきなり立ち上がった。
「お、起きたの……か……」
俺は驚きを無理やり隠し通そうとするが、俺の言葉は美琴の表情を見て変わった。
それは黒子もで。
「お姉様……!?」
「……ごめん、帰る。」
「え、ちょっと待った…!」
俺は走って帰ろうとする美琴の腕を掴み、止める。
「帰るって、そんな顔してる奴を帰せるわけ……」
「お願い…離して……」
そんな弱々しい声を聞いてしまったら、離してしまう。
「お兄様、多分ですが……」
「あぁ、聞かれたな…続きがあったんだけど…」
「続きですの?」
俺は頷き、もう一度座り直す。
「分からないんだ。」
「え?」
「さっきも言った通り、昔は確実に恋愛の意味で好きだった。けど、色々あって好きだった子を妹として見なければいけない。向こうは俺を兄だと思っている。
俺はあの子の"兄"として生きるんだって自分の中で割ったからなのか、幼馴染みって関係に戻った今、良く分からないんだ。」
「お兄様…」
「守りたい、そう本当に思ってる。でも、それが兄としてなのか1人の男としてなのか……ね。」
──それに俺に出来ることは兄として守る事だ。
「でも、美琴は好きな奴がいると思う、多分アイツだ。」
そう俺が言うと黒子は驚いた顔をして、反論しようとしてきた。
「お兄様、それは……!」
「遅くなってしまったね。」
だが、黒子の言葉は前から来た女性に消された。
「いえ、まさか貴方が脳外科の先生だとは思いませんでした。」
「あの時はお世話になったね、城崎湊くん。」
「"二つの意味で"ですよ、木原先生。」
俺はこの人と出会うのは3回目だった。
後書き
また喧嘩させてしまったー!
気づいたらこんな展開になってました( ̄▽ ̄;)
次回は美琴視点です。
(少女漫画を読んだ方が良いのだろうか……)
では、また次回!
────────────────────
『"昔は恋愛の意味で好きだった"。』
聞きたくなかった。
偶然起きた時に聞こえた言葉。
最初は誰の事だろうと思った、けど私はいても立っても居られなくなって立ち上がると分かった。
──あぁ、私の事だったのか。
こんなだったら起きなければ良かったと後悔した…
次回『幻想御掌3 -魔の手は身近にまで-』
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