転生とらぶる
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ペルソナ3
1788話
「ショートボウの調子は……問題ないようね」
部屋の中で、ゆかりがショートボウの調子を確信しながら、満足そうに呟く。
ちなみにショートボウは俺の空間倉庫に入れてあるので、荷物になったりといったことはない。
本来ならこういう調整とかは夜……あの現象が起きる前にしておけば十分なのだが、今は折角ゆかりがこの部屋にやって来たということで、どうせならと、ゆかりは今夜塔に向かう際の武器の準備をする事にしたのだ。
……電気ストーブの前で。
まぁ、この電気ストーブは元々ゆかりが俺の部屋で使う為に買った奴だし、それは別にいいんだけど。
俺の場合は、特に寒さとかは感じないし。
勿論感じようと思えば感じる事も出来るのだが、今は特に感じる必要はない。
取りあえず俺もゆかりの真似をして、ゲイ・ボルグの様子を見ていたのだが、さすが宝具と言うべきか、万全の状態であって、特に何かをする必要はなかった。
なので、俺がやるべき事はもうなく、今はTVを眺めていた。
もっとも、この時間にやっているのはドラマの再放送とか、情報番組とか、そういうのが殆どなのだが。
そんな中……
『今から約10年前に起きた、ムーンライトブリッジの事故ですが、現在でもこの事故についての謎は多く残っています。中でも……』
ぶち、と。
モニタに映し出されていたコメンテーターの女が何かを言うよりも前に、ゆかりがリモコンでTVのチャンネルを変える。
「どうしたんだ?」
「……ううん。ちょっと今のコメンテーターが嫌いだったから」
「ふーん」
何か嫌いという以外に思うところがあるというのは確実だったが、それを聞いても答えないだろうというのは容易に予想出来た。
『見てください。まだ2月だというのに、何故か桜が咲いています! 何故この1本だけがこれだけ早く咲いたのか……専門家も、不思議がっていました』
ゆかりが変えたチャンネルに映されていたのは、2月に咲く桜というかなり不思議な光景だった。
「へぇ、珍しいな。異常気象って奴か?」
「どうかしらね。けど、この季節に桜が咲いてるのは……ちょっと見てて、不思議な気分になるわ」
しみじみと呟くゆかりは、TVに映し出された光景に目を奪われ、先程の嫌いなコメンテーター云々の件は忘れているように思えた。
勿論それが本当に忘れているのかどうかというのは、俺には分からないが……それでも、こうして見る限りでは、いつも通りに見える。
「今度の休みにまだ咲いているようなら、ちょっと早いけど花見にでも行ってみるか?」
「え? ああ、そう言えばアクセルの魔法なら、距離とかは関係ないんだっけ。……そうね、ちょっと興味あるけど……人が多いんじゃない?」
「どうだろうな。2月だし、まだ花見にはちょっと早いって事で、少し見に来るような奴はいるかもしれないが、実際にしっかりとした花見をする奴はそう多くないと思うけどな」
2月ももう少しで終わるだけに、寒さも大分緩んできてはいるが、それでもまだ普通ならコートもなしで出歩くような真似はしないし、下手をすれば雪が降ってもおかしくはない。
その辺りの事を考えれば、花見をするかと言われれば……うん、やっぱりちょっと難しいだろう。
勿論世の中には酔狂な奴もいるので、絶対に誰もいないとは限らない。だが……それでも、普通に花見と聞いて予想するような光景になるかと言われれば……それはないと断言出来た。
「そう、ね……」
「あの現象や塔について気にしてるのは分かるが、気分転換ってのも必要だろ?」
実際、俺から見てゆかりは何だか一生懸命な気がする。
いや、普通に考えれば一生懸命というのは全く悪くない……どころか、いい事なのだ。
だが、ゆかりの場合、それは色々と不味い方に向かいつつあるのが心配だった。
下手に真面目なだけに、視野狭窄になるとか、そんな感じで。
だからこそ、この辺りで一旦ゆかりに気分転換をさせておきたかった。
「それに、そろそろ矢を買いに行く必要もあるだろ? この辺りだけじゃなくて、遠くの店で矢を買えば、あまり怪しまれないんじゃないのか? そのついでに花見って事でどうだ?」
そう告げると、ゆかりの表情が少しだけ揺れる。
直接花見に行くというのは、ゆかりにとってすぐに頷ける事ではなかったのだろうが、そこに矢を買いに行くという塔の攻略に関わる事が混ざれば、それはゆかりの心を動かすには十分な説得力を持ったのだろう。
そのまま数十秒程迷い……やがて、ゆかりは小さく頷く。
「そうね。分かったわ。アクセルがそこまで言うのなら、今度の休日にでも行ってみましょうか」
今日木曜なので、休日まではもう少しだな。
「料理の準備は任せておけ」
空間倉庫を持つ俺にとって、出来たての料理を花見に持っていくというのは、得意な事だと言ってもいい。
まぁ、大っぴらに空間倉庫を使う訳にいかない以上、大きめのバッグとかである程度偽装工作をする必要はあるだろうけど。
「花見……か。ちょっと楽しみね」
そう呟くゆかりの横顔が、強く印象に残る。
多分、花見という行為に対して何か色々と思うところがあるんだろうな。
「じゃあ、そういう事で。……花見については、また後で話すとしよう」
「そうしましょ。……それで、結局眞宵堂はどうだった?」
「ん? 言っただろ? 宝石は……」
「じゃなくて、眞宵堂の店の人。美人だったでしょ?」
「なんだってそっちに話が飛ぶのかは分からないけど……まぁ、どちらかと言えば美人なのは間違いなかったな」
「じゃあ、今度花見に行く時に誘ってみない?」
「だから、なんでそうなるんだよ」
つくづく、俺との噂を消そうと必死になっているのが丸分かりだな。
いやまぁ、ゆかりにとっては、本当に付き合っている訳でもないのに、俺との噂が流れているというのは面白くないんだろうが。
「だって、美人なんでしょ?」
「……そうだな。けど、だからって俺が誘うなんて事にはならないだろ」
もっとも、あの店主と仲良くなっておくのが塔を攻略する上で有利になるというのは、間違いのない事実だろうが。
色々と俺にはない知識とか持ってるし、アドバイザー的な意味では間違いなく有益だろう。
「ふーん。……そうなんだ」
俺の言葉に、どことなく不機嫌そうで……それでいながら、どことなく嬉しそうな様子すら見せるという、複雑なゆかりの様子を見ながら、俺は首を傾げる。
ただ、ここで何かを言えば色々と藪蛇になるような感じがしたので、その辺りにについては言葉にしない。
ともあれ、ゆかりが弓の調子を見終わると、もうそれぞれ暇になるのは間違いなく……
「じゃあ、取りあえずそろそろ帰るわね」
ゆかりの口からもう帰るという言葉が飛び出すのは、そう不思議な事ではなかった。
「分かった。じゃあ送っていくか? 電車で帰るより、俺の影のゲートを使って帰った方が手っ取り早いだろ?」
「……そうね。じゃあ、お願い出来る? ああ、けど別に寮の中に直接出るような真似はしないでね。一応帰ってきたというのを他の人に見せておく必要もあるから」
「そんなものなのか?」
多少疑問に思わないでもなかったが、ゆかりがそう言うのであればこちらとしてもそれを聞かないという選択肢はない。
ゆかりが手早く帰る準備を終えると、特にこれといった用意をする必要がない俺は、そのままゆかりと共に影のゲートに沈み込んでいく。
そうして影から姿を現せば、ゆかりの住んでいる女子寮からそれ程離れていない場所にある建物の陰だった。
「ここでいいのか?」
「ええ。じゃあ、また夜に」
一瞬送ろうか? と言おうかとも思ったが、俺との噂を打ち消すのに躍起になっているゆかりが、その提案を受け入れる筈もない。
なら言わない方が、ゆかりの機嫌を損ねず……結果として、塔の攻略で有効に働くのは間違いないだろうと判断し、それ以上は何も口にしない。
そうして建物の陰から去って行ったゆかりだったが……うん、少し離れた場所で俺とゆかりが建物の陰に一緒にいるのを見て驚いた様子を見せている女がいたのは、きっと気が付かなかったのだろう。
幸いにも影で転移してきたところは見ていなかったようだが、建物の陰に俺と密着した――影のゲートで転移したのだから当然だが――状態でいたところや、そんな状態から離れていくところを見られたゆかりがどんな風に噂されるのか、ちょっと楽しみなような気がしないでもない。
少なくても、今回の件については俺は悪くない筈だし。
俺と目が合うと、その女は急激に頬を赤く染めながら走り去る。
うん、まぁ、俺は悪くない。敢えて何が悪いのかと考えれば……ゆかりの運が悪かったんだろうな。
そう判断し、折角だからという事で適当に周囲を冷やかしながら歩いていく。
近くにあった書店に入り、暇潰しに使えそうな本を適当に買う。
お、この漫画は他の世界にはなかった、この世界だけの奴だな。
こっちの小説も中々……うん? グルメマップ? これも一応買っていくか。
そんな感じで漫画やら小説やら雑誌やらを適当に買い、書店を出て……
「うん?」
ふと、視線の先を1台の車が信号で停まったのに気が付く。
いや、それだけであれば、特に気にする必要はなかっただろう。
だがその車がかなり豪華な……いわゆる黒塗りの高級車なのが俺がその車を気にした理由の1つでもあったし、その車の後部座席に赤い髪をした女が……以前月光館学園の中で見た、俺に奇妙な感覚を抱かせるような相手だったというのが、大きい。
すると、そんな俺の視線を感じたのか、その女はふとこちらに視線を返してくる。
空中で絡まる、俺と女の視線。
お互いが何の理由もなく、相手から視線を逸らせなくなり……やがて、車の中にいる女が何か口を開こうとした瞬間、信号が青になり、そのまま車が進み始めた。
後部座席に座っていた女は首を曲げてこちらを見てきたが、結局そのまま何も言う事はないまま、車で去ってしまう。
……さて、あの女は一体何だったんだろうな?
月光館学園の中で見た時も奇妙な違和感があったが、今回もまた同じものを感じた。
実はあの時に感じた何かというのは、俺の気のせいだった……そんな風に思う事が出来ない訳でもなかったが、真っ正直にそれを信じる訳にもいかない。
一度本人に当たってみるか?
それもまたいいだろうが……出来ればそれは最後の手段にしたい。
可能であれば、あの2人から受け取った感覚の正体を理解してから、行動に……
そう考えるも、ふと気が付く。
そう言えば、月光館学園の2人以外にも同じような感じを受けた相手がいたと。
携帯で時間を確認すると、そこに表示されているのは午後4時くらい。
書店で本を選んでいる間に、既に薄暗い時間になってしまっていたらしい。
それでも、今日は晴れだった為かまだ薄暗いで済んでいるが……これが雨だったり、曇りだったりした日には、もっと暗くなっているだろう。
そんな事を考えつつ、携帯に登録してある電話番号に電話する。
『アルマーか? どうした?』
「荒垣、今どこにいる? ちょっと話があるんだけど」
電話に出たのは、今日の昼一緒にお好み焼きを食べた荒垣。
『ああ? 今か? 今はポートアイランド駅の裏だな』
どうやら、いつもの場所にいるらしい。
……2月なのに、そういうのは全く関係なくそこが溜まり場になっているのは、色々と凄いとは思う。
別に荒垣達は、俺のように寒さを感じないという訳でもない。
そんな状況であっても、2月の夕方……もう少しで冬になるこの時季であっても、自分達の縄張りを守るといった様子を見せるのは、いっそ見事と言いたくもなる。
「分かった、今からそっちに行く。ちょっと荒垣に用事があってな」
『おい、待て。ここにお前が来れば、またいらない騒ぎになるのは間違いないだろ。電話じゃ駄目なのか?』
「そうだな、結構大事な件だから、出来ればこの件は会って話したい」
『……分かった。なら、俺がポートアイランド駅で待ってるから、そこで会うぞ』
「俺は別にどこでもいいから、構わない」
『じゃあ、そういう事で』
そうして短く約束をすると、電話を切る。
人の姿がない場所に向かい、そこで影のゲートを使ってポートアイランド駅の近くに転移し、駅の入り口付近で待つ。
「……お前、こっちにいたのか?」
俺が待ち始めてから10分もしないうちに荒垣が現れ、既にそこに俺がいた事に驚きの表情を浮かべていた。
「そんな感じだ」
まさか影のゲートの件を言う訳にはいかず、そう話を誤魔化す。
荒垣も特に俺を怪しむ様子もなく、そのまま近くにあるファーストフード店に向かう。
別にこのままここで話をしてもいいんだが……出来れば、しっかりと座って話したい。
そうして適当にハンバーガーのセットを頼み……まずはという事で、最初に照り焼きダブルチーズバーガーにかぶりつくのだった。
後書き
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1389
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