奇妙な暗殺教室
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
映画村の時間
丈一郎達が見た目も中身もオンボロ旅館に泊まり、修学旅行の2日目を迎え暗殺計画が本格的に始動するこの日と同時刻一室で1人の青年と闇の世界で生きる者との回線越しの会話があった。
「そうですか……はい。やはり彼の他にもいるんですね」
『はい、確認した者だけでも彼を含めて4人いました。彼以外の3人はドラック漬けや何らかの身体的な障害がありマトモな生活を送れていなかったので我々が保護しました。』
「そうですか…もし、彼らが更生したら彼らの身柄は僕達が預かります。彼らの様な人達にこそ、居場所が必要ですから」
『分かりました。ですが、この事は彼にもご報告させてもらってもよろしいですね?』
「はい、是非お願いします。元々彼の頼みで始めた身辺調査なのですから彼に報告するのは当然の事かと」
『分かりました。では、分かり次第連絡いたします。』
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
そう言い青年は電話をきると部屋にあった時計の針が深夜0時を回っていた。
「む…どうやら長く話し過ぎてしまった様だ。日が変わる前に部下から送られた書類の整理をしようと思ったのだが…まぁ問題無いな10分で済ませよう」
そう言い青年は部屋の中央にある椅子にもたれかかるとディスクの上に山積みとなった書類を1つ1つ整理し始める。すると扉の向こうから『トントントン』と3回ノックが聞こえた。
「入れ」
青年がそう言うとスーツを着た40代半ばの男性が入って着た。
「ボス…クリス様とアリシャ様が現地に到着したと連絡がありました。他の幹部もあと、2日後にはご到着すると思われるのでボスも今日の午後にはお向かいになった方がよろしいかと」
「分かった。今日の午後3時に出発する。飛行機を手配しておけ。あと、アッサムティーを一杯頼む。できるだけ濃くしてくれ」
「かしこまりました。」
男と青年にとって毎日おきまりの会話を終え、男は部屋から去っていった。
「ふぅ…月が爆発して以来この国もとんでもなく慌しくなった。彼がいる東の小さな島国程じゃないけどね」
そう言い青年は机の上に上がっていた一枚の資料を見てふと笑みを浮かべる
「やれやれ…君は相変わらずの不幸体質らしい。僕も飛行機の墜落事故には巻き込まれた事はあるけど流石に世界規模トラブルに巻き込まれるのはないな」
でも、なんだかんだ言って彼はそんな不幸とも言える状況でも…いや、こんな状況すら利用して楽しく過ごしているだろう。まぁ何にしても
「そう遠くない将来…君がいる日本に行くことになりそうだ。」
青年はそう言い東の空を仰ぎ見た。その方角にいる1人の友と無事に再開できる事を祈りながら
◆◇◆◇◆◇◆◇
同時刻、丈一郎が所属している第2班は、朝食を終えて殺せんせーを殺す為の狙撃スポットを目指していた。
「は、はっくしょっい!」
だが、ほぼ不眠不休と移動の疲れが出たのか丈一郎は少し風邪気味であった。
「あのジョジョでも風邪を引くのね…意外だわ」
「それとも誰かに噂されているのかもな」
そう言い速水と三村は首を傾げ、それを見て中村が「ジョジョの噂ってwww」っと言いなが必死に笑いを堪えている。確かに誰かが噂話をしているときにくしゃみがでるというが、個人的にめんどくさいんで迷信であってもらいたい。
「確か1回目のくしゃみは、批判されている噂。2回目は、笑い者にされている。3回目は、誰かに惚れられ、4回くしゃみをするようなら、それは風邪をひいている…だったな」
「へー私は1回目は、誰かに褒められている噂。2回目は、誰かに憎まれている。3回目は惚れられている噂。4回目は風邪をひいているって聞いたよ」
「私は1回目は褒められ、2回目はふられ、3回目は惚れられ、4回目は風邪だって聞いた」
上から三村、不破、速水の順にくしゃみに関する噂を披露していく。共通しているのはどの噂にも3回目と4回目は同じ内容だが、1回目と2回目はやはり地域性(?)がでている。
「まぁジョジョの噂は酷いのばっかりだけどねwwwwww」
「おいこら、その噂の原因は殆どカルマとお前なんだが?」
にっこりとこの上ない笑顔で中村に問いかける。無論、丈一郎のこめかみには青筋を立てていた。
「あはは……そうだっけ?」
中村はヤバイと感じたのか速水や不破に助けを求めるが、『触らぬ神に祟りなし』『沈黙は金』という格言に従い黙秘を貫く。
「お陰でほぼ毎日不良に絡まれたり何個かバイト辞めさせられるわ踏んだり蹴ったりでな…まさか心当たりが無いとは言わないよな?」
その言葉を聞くと心当たりがチラホラと浮かぶ。いや、多すぎて何が原因なのかわからなかった。となればやる事は1つだ。
「あー……えーと……ごめんなさい。」
素直に謝る中村が意外だったのかキョトンとするが、ふと笑みを浮かべ頭の上でかるく手をはずませる
「別に怒ってねーよ。起きてしまった事をいつまでもネチネチ言う気はねーからな。まぁいつも誰かをいじり倒すお前がアタフタするのは見てて面白そうだったからな…からかってみた」
そう言い丈一郎は微笑んだ。
「えぇ……と…その……」
突然投下された微笑みの爆弾を喰らい、中村は恥ずかしそうに辺りをうかがるが、周りにいる不破達は面白いオモチャを見つけた子供の様にニヤニヤと2人を見つめる。
「おい…どうした?急に黙り込んで」
「だ、大丈夫…問題ないから」
「?…変な奴だな。まぁ無駄口たたいていたら目的地が見えてきたよーだぜ」
そう言い丈一郎が指差す先には時代劇のドラマでよく見る様な塀の様な物が見え始めた。
「アレが京都の有名な観光地の1つ…映画村だ」
京都映画村とは時代劇の世界をオープンセットとして繰り広げているいわゆる体験型テーマパークである。
時代劇の殺陣ショーや俳優のトークショー・撮影会・握手会などのほか、スーパー戦隊シリーズや仮面ライダー等のキャラクターショー、殺陣講座などの体験企画やドラマや映画の撮影にも使われる。有名どころは『科捜研の女シリーズ』『おみやさんシリーズ』『子連れ狼』などといった御年配の方々が好んで見そうな渋い作品や、最近では『銀魂』の実写化もこの映画村で撮影されたのが話題を呼んだ。
「はい、これが事前に予約して手に入れたチケットな」
三村がチケットを班員に配り、それを手にして6人は映画村へと入っていく。
「さて、現在の時刻は午前9時予定では殺せんせーは、11時頃にこっちに来るってさ。勿論着いたら連絡もする様に言った」
「という事は?」
「無論観光だ。一応、修学旅行生なんだから楽しまなきゃ損だろ」
丈一郎がそう言うと、不破がパンフレットを開く。それを見るように他の5人も覗く。
「先ずは京都映画村の名物とも言えるからくり屋敷から回るか」
◆◇◆◇◆◇◆◇
からくり屋敷
中には、隠し通路や回転する床や、飾りの巻物の裏にある紐などで動く仕掛けが目白押しで、建築家から見ればアイディアと技術の宝庫といっても過言ではなく、建築家の道を志そうとしている千葉もその技術とアイディアに感心している。
そんなからくり屋敷を千葉と速水は狙撃で培われた持ち前の広い視野と観察眼で丈一郎は野生の動物顔負けの第六感で仕掛けを超えていき、中村達は彼らに追いつこうとなんとか食らいつく
「あの3人早すぎじゃない?」
「速水ちゃんと千葉君はまだかろうじて見えるけどもうジョジョは見えないね」
「あぁ…ジョジョのからくりを見抜くスピードが初見のレベルを超えてるよな」
三村の言う通りジョジョは完全初見のはずのからくり屋敷をあたかも知って居たかの様なスピードで攻略していく。その様はクイズ番組で問題を言われる前に正解を答える様なものだった。
「まぁジョジョの負けず嫌いは筋金入りだからしょうがないんだけどね」
そう言い中村はどこか楽しそうに微笑みまた1つ仕掛けを乗り越えた。
「よお…遅かったな」
中村達がやっと思いでからくり屋敷を抜けると先にからくり屋敷を攻略した丈一郎達が待っていた。
「ジョジョ速すぎ…本当に初見なの?」
「まぁな…こういう類の物は変に考えるよりも直感力に頼った方が良いんだよ。」
プロ棋士が次の一手を選ぶ際『思考』ではなく『直感』で選ぶ打たれる事が多いと言われる。
これはプロがアマチュアにはない脳の神経回路を駆使しているからだといわれる。
それは長い訓練により得られる力でありこの力を世間一般では『直感力』と呼んでいる。
つまり、直感力とは、その分野に精通し数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験や思考の蓄積の中から得る事ができる研鑽の力なのだ。
「まぁ最後は速水に負けたけどな」
「「「………え?」」」
「最後の仕掛けが二択あって速水の実力を見てみたくなったから速水と千葉がくるまで待ってたら気づいたら負けたらスウィーツを奢ることになってな。コイントスでルートを決めて同時にスタートしたらタッチ差で負けた。」
丈一郎がそう言いチラッと視線を向ける先には美味しそうに抹茶タルトを頬張る速水と千葉がいた。
「ふーん…でも意外だね。ウチが知ってるジョジョは相当な負けず嫌いな筈だからこうゆう勝負にも手を抜かないと思っていたよ」
中村の発言に三村と不破もウンウンと首と縦に振るう。
「確かに…俺は勝負で負けるのが嫌いだがそこまで大人気ない訳じゃない。それにあんなに差をつけた時点で俺は十分に満足したんであそこで負けても痛くも痒くも無い」
丈一郎の言う通り、あれ程の大差をつけた時点で丈一郎の勝利はほぼ確定されてと同然だった。つまり、今回は試合に負けて勝負に勝ったと言うことになり、丈一郎がそう思う事は彼らしいと言ったら彼らしい考え方だった。
「さて、お前らが出てくる前に殺せんせーから連絡があってな。そろそろ此処に来るってよ」
そう言うと丈一郎の表情が真剣な表情に変わる。
「とりあえず殺せんせーが此処に来るまで待機してるのが良いんじゃねぇか?」
と呟いた時、ヒュン!! と2班にの前に現れた殺せんせーに6人は「来た・・・」と声をそろえて言った。
「皆さん、楽しんでますか? 私は、先程、1班の方へと先に行き、トロッコ列車に乗ってきましてねぇ・・・素晴らしい眺めでしたよ」
「へぇ…そりゃあ良かったですね。」
殺せんせーは何時もの様にシマシマ模様のナメている表情を浮かべる。
だが、そのナメた表情がどんな表情に変わるのかと思うと心なしか心が踊る。
「私達これから次の場所に行くんですけどせんせーも来ますよね?」
「ええ、ご一緒します。しかし、どこへ行くのですか?」
「それを聞くのは野暮ってもんでしょ」
「そうそう見てからのお楽しみって奴ですよ」
不破と中村がぐいぐいとせんせーを引っ張りながら言うので、せんせーはそれに従って目的地まで向かった・・・
映画村は、時代劇やドラマ、映画の撮影だけに目を向けられがちだが、実はトンデモナイ人気スポットがある。
「こ、これは……」
殺せんせー一行の目の前には他の学校の修学旅行生の行列と『大映お化け屋敷』日本でも屈指の怖さを誇ると言われるお化け屋敷だ。
その証拠に建物に入る前にこんな注意書きの看板があった。
* 付き添いのない車いすの方
* 妊娠中、酒気を帯びている、体調がすぐれない方
* 心臓が弱い、疾患がある方や、高血圧、低血圧の方
* 本格時代劇扮装や、コスプレをしている方
* 2歳以下の子ども
* 16歳以上の同伴者がいない未就学児童
* 係員の指示に従わない方
* 以下のルールを守れないお客様は入場できません
成る程、怖さの余り、他のお化け屋敷よりも詳細な制限がかけられている。相当怖そうだな。
「入口扉より中にお進みになると、途中で出ること戻ることはできません。
また、返金、メンバー交代もできません。
怖くても、出口まで必ずお進みください…か」
「成る程…まさかここまで来て入らないっていう選択肢はないよね?殺せんせー」
「べ、べべべべ別に怖く無いですよぉ〜。先生だってホラー映画はしょっちゅう見るんですよぉ〜」
規格外の超生物である殺せんせーも呂律が回らないほど怖がっている。
実際に建物の近くでは、入っていった人の叫び声が頻繁に聞こえる。これはマジだな…うん
「確か去年のテーマは「丑の刻参り」だったんだよなジョジョ?」
丑の刻参りとは、日本に昔から伝わっている呪術の一つで、丑の刻に呪いたい相手に見立てた藁人形を五寸釘で木などに打ち込むというもので、嫉妬や怒りに狂った女性が相手を殺してしまったという言い伝えが残っていて、怖い話として有名な話の1つだ。
「あぁ、誰もが知っている話だからこそのこその怖さなんだろう。なぁ…殺せんせー?」
「そ、そうですね…まぁ先生は根も葉もない噂はし、信じないんですけどね!」
そう言い殺せんせーはあまりにも分かりやすい反応する。正直予想通り過ぎてちょっと引く
「そんじゃあ…順番も来たから行きますか」
さぁて…暗殺に移行する前にじっくり削らせてもらいますか
「ギャアアアアアアアア なんでこんなとこにゾンビがいるんだよぉぉ!!!」
「ウキャアアアアア さわらないでえええええ し、死ねえええ!! 」
「にゅにゃぁあああああああああああ!!!」
中に入るとまぁ…ご覧の通り予想通りだった。正確に言うと想像以上だった。
クオリティーが凄すぎて目の前の光景がカオスな物になっているが日常的にこんな感じなので今更驚きはしない。
ん?俺は怖くないのかって?師匠の殺す気の組手の方が怖いから全く怖くはない。まぁアレは本当に命の危険があるんだけどな
「ジョ…ジョジョそこにいるよね!?いきなり走り出して置き去りになんてしないよね!?」
だが、周りの連中には相当怖い様でお化け屋敷に慣れているであろ筈の中村が健気に俺の制服の袖の隅っこをぎゅっと握り締めしおらしくなっている。
「はいはい…置き去りになんてしねーから黙って素数でも数えとけよ。師匠曰く素数を数えると勇気が湧いてくるらしいぞ」
「1.3.5.7.11.13.17.19.23.29.31.37.39.41.43」
「冗談で言ったんだが……本当に数えるのかよ」
まぁこんな感じでお化け屋敷を抜けた。何?物足りないだ?悪いがそこら辺はあいつらの尊厳の為にも非公開だ。
お化け屋敷からなんとか脱出した殺せんせーを加えた6人と1匹は近くにあった甘味処で一息ついていた。
「はぁ〜怖かった」
「流石にまだ心臓がバクバクいってる…」
「そうだなあの仕掛けには相当びっくりさせられたな」
「いや、2人ともそんな素振りなくね?」
「いやいや、三村君2人はそう言うキャラクターなんだから作者もそう書くしかないのよ」
「不破…メタ発言はその程度にしてやれ」
……約1名お化け屋敷とは全く関係ない感想を述べているが気にしない
「にゅ、ま、まぁ先生クラスになればはこの程度のお化け屋敷は余裕ですけどね!」
そう言い精一杯の強がりを零す殺せんせーだが、この言葉を待っていたのか様に千葉は懐に仕舞ってあったボイスレコーダーを取り出した。
「『べ、べべべべ別に怖く無いですよぉ〜。先生だってホラー映画はしょっちゅう見るんですよぉ〜』
『にゅにゃぁあああああああああああ!!!顔なしお化けぇぇぇぇぇぇ!!!」
殺せんせーこれは一体どう言うことなんだ?」
そう言い殺せんせーがビビりまくっていたボイスレコーダーを取り出し音声を流し始める千葉。
当然殺せんせーの表情は真っ青だ。
「にゅにゃぁあああああああああ!いつの間にそんな物をぉぉぉぉ!」
「さぁて殺せんせー私達後で特大の抹茶パフェ食べたいんだよねぇ〜。うっかりしてると着メロにしちゃおうかなぁ〜」
いつの間にか完全復活した中村が脅しと言う名の交渉に入る。まぁ暗殺前に殺せんせーの気力を削ろうと言った俺が諸悪の根源は俺だけど…それを躊躇なく実行するとは恐ろしい奴だ。
「流石中村さん!私達にできない事を平気でやってのけるそこに痺れる憧れるぅ!」
いや、そんな所に憧れなくて良いから黙ってお前は漫画家目指してくれよ。ホントマジで
「そ、そんな!ど、どうかご慈悲を!」
「どうしようかな〜〜抹茶パフェが無性に食べたいなぁ〜」
まぁ語るまでも無く後日殺せんせーは俺達に京都でも有名な抹茶専門店で三枚の樋口さんとお別れして涙を流し、俺たちは高級なパフェに出会ったのはいい思い出だった。
「まぁ殺せんせーにゴチになるのは置いておいて、あと10分で始まる撮影があるけどお前らはどうする?」
「勿論見るよ。俺はこれを見るのが今日の一番の楽しみだったんだからな」
そう言う三村の目は初めてトランペットを見た少年の様に目を輝かせていた。暗殺とか関係なしととても楽しみにしていた様だ。
「俺も行こうかな…速水はどうする?」
「私はもう少し一休みしたら行くから先に行ってて」
「うーん…私はもう余裕だから行くわ」
「私も行くであります!」
不破と中村は既に回復したのでケロッとしていた。成る程…じゃあ俺のとる行動は1つだな。
「俺は速水と一緒に行く。その方が何かあっても迅速に対応できるからな」
千葉も頷くと、せんせーはではすぐそこにある橋の撮影所にいますよと2人に言って中村達と共に歩き出した。
その時、丈一郎と中村は一瞬だけ目で合図を出し合う・・・そう、これで仕込みは終了。今この時をもって2班の暗殺作戦の幕が上がる。
後書き
私も修学旅行の時にお化け屋敷に行きましたが…2度とお化け屋敷にはいかないと誓いました。
ページ上へ戻る