Re:童話姫たちの殺し合いゲーム
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お菓子な塔 -終-
長い 長い 螺旋階段を下りて来ると同時に
ドサッァ
黒い塊が目の前に落ちて来た なにが落ちて来た?
「ツギハギさん! コレっさっきの人ですよ!!」
ピノキオが杖の先でつつくそれは上で会った少女だ
ドクドクと大量の血が流れ出ている 致死量を超えている量
『ウ……ァ……オ…』
「っこの人まだ息がありますよ! どうしま…キャア」
朦朧とした意識の中 少女がピノキオの足を掴んだ
「やめてっ、放してください!!」
グチャ グサッ グチョ
少女の顔面に 何度も 何度も 何度も 杖の柄の部分を殴り付ける
最初は頭蓋骨が砕ける音
「ボクもやるーーー♪」
空高く上空から赤ずきんの声がしたかと思えば
ヒューーーーーウ ヂュビチャァァァ
赤ずきんが血溜池の肉の上に落ちて来て 血が撒き散る
「このっこのっ」
「アハハハッ♪」
ピノキオは殴り続ける 赤ずきんは飛び上がり続ける
それはまるでワイン作りに葡萄を潰す 女達のよう
それはまるで水たまりを発見し喜ぶ 子供達のよう
グギッ ゴキッ バキッ
骨が砕ける音
パ……パァァァンッ
風船のような物が 弾け飛んだ音
「甘い」
噎せ返るような甘い香り 発生源は弾け飛んだ胃袋の中にある まだ消化しきれていない ケーキやお菓子
グチョ グチョリ グジュリ
肉が潰れる音 肉と肉が擦れ合う 生々しい音
「ううっ放してくださいってばーー!!」
「アハハハッ♪ 楽しいね、お兄ちゃん♪」
「そうか。それは良かったな」
俺は二人が満足するまで待つことにした
俺の仕事は魂を回収すること それさえ出来れば 過程はどうだっていい
俺の使命は――
「満足したか?」
肉がミンチになるまで待った。
赤ずきんとピノキオが満足するまで待った。
「うん♪ ありがと、お兄ちゃん♪」
「なにがだ?」
「んー、待っててくれて? アハハハッ♪」
何故かいつになく赤ずきんのテンションが高いような気がする…。
「あの…この肉どうします?」
「どうもしない。放って置けば土にかえるなり、なんなりするだろ」
「そ…そうですね…。行きましょうか、赤ずきんさん」
「待って」
「え?」
赤ずきんが「待て」と言うとはな。珍しい。
ガッ ヌップ
「取れた~アハハハッ♪」
肉に手を突っ込み赤ずきんが取り出した物、それは…
「心臓か?」
「うん♪ そーだよ、姉妹の心臓♪」
ドクンドクン。
これが姉妹の心臓…。凄いな、器である肉体はミンチと化しているのに、心臓はまだ機能している。
「心臓が動いているってことは……もしかしてまだ生きているってことですか!?」
「うん、そーだよ」
「ひょええええ」
驚くのも無理はないか。あんなに無茶苦茶にしたのにまだ生きているんだからな。
「ど、どうするんですか、それ!?」
「殺すんだよ」
"殺す”赤ずきんは確かにそう言った。
遊びの過程で殺してしまったのではなく、初めて明確に"相手を殺す”と言ったのだ。
「で、でも…どうやって? あんなに殴り、踏みつけたのにまだ生きていたんですよ?」
「それは心臓が無事だったから。でもこうやって…あーん」
赤ずきんは大口を開け、一口で心臓をたいらげた。
「モグ、ニュル……モグ、ゴックン。 美味しかった♪」
「こ、これでもう化けて出て来たりしませんよね……ね?」
「だいじょーぶ、あの子の甘~い魂はボクのお腹の中。
ボクの力として吸収され栄養となったから」
「栄養…か」
死者が堕ちる世界で、そんな日常的なセリフが聞けるとは思わなかった。
「…これで一人目♪ あと四人…アハハハッ♪」
「あと四人? なんの話だ」
「ボクの目的が叶うまでの人数だよ、お兄ちゃん♪」
「お前の目的?」
「うん♪ ネェ…お兄ちゃん」
赤ずきんはにじり寄ってくる。
「なんだ」
「お兄ちゃんは自分がどこの誰なのか、知ってる?」
「……興味ない」
「ウッソだぁ♪ 答えるまでに数秒間があったよ♪」
「………それで?」
「お兄ちゃんもそうだけど、この世界にいるみーんな、"不完全品”なんだよ。
出来損ないのゴミクズなんだよ」
「この世界にいる全員って…僕もですか!?」
「あぁ~ピノキオはいいのよ? だってピノキオは不完全なのか完全だから、アハハハッ♪」
「うぅー」
「だからね、お兄ちゃん。
ボクは完全な存在になりたいの。ゴミクズなんかじゃない…"お父様”に認められたいの」
赤ずきんの真剣な表情…初めて見たかもしれない。
"不完全な存在”か。確かに記憶のないただの肉である俺は不完全品だろう。
だが"完全な存在”とはなんだ―? "お父様”って誰だ―?
「……で、次はどこに行くんですか、赤ずきんさん」
「あっち!」
元気よく赤ずきんが指さすのは東の方向。ネオン色のライトが照らされている場所だ。
「あちらは確か…竹林地帯ですね。ここよりも怖い事がありませんように~~」
「それは死亡フラグか? ピノキオ」
「もぉー怖いこと言わないでくださいよー、ツギハギさん!」
「そうか」
「ルンル~ン♪」
楽しそうにスキップする赤ずきんの後ろを歩きながら、次の敵が待つ領地へと向かう。
ピノキオではないが、確かに面倒事は嫌だな―
―To be continued-
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