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ネフリティス・サガ

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第七話「古森の戦い」

 三人がアルセイユを肩に洞窟を行き、断崖の道を進んでいいる時、眠っているアルセイユは不思議な夢を見ました。

「アルセイユ様……」

「だ…れ…?」

「アルセイユ様、名残惜しいですがお別れです、我らは、一族郎党最後の戦いに赴きます」

「戦い?君たちは」

 その者達の影がだんだん、形になってくるとそれはアルセイユが子供の頃より、親しくしていた森の
木たちでした。

そう、アルセイユは幼くして森に入り、森の木たちと遊ぶことが多かったので彼らの言葉も自然と身
についたのでした。動物たちももちろん一緒です。アルセイユはいつも思います。木々や山の動物や虫
たちがどれほど多くのことを教えてくれるのか。

だから寂しげな彼らの声は胸にずんと来るほど悲しみで苦しくなるのです。

「何故だ!森の木たち、戦いなんか……ダメだよ!」

「いいえ、私達は多くの親しき者の悲しみと苦しみを知りました。そしてその者達のために最後はこの

命を使いたいと思ったのです」

「さあ、皆のもの、森の者たち最後の行軍だ、われら、最期の一枝まで死力を賭そうぞ」

「まって!行かないで!」

 アルセイユが追いかけようとするのですがどんどん彼らから遠のいていってしまってまるで走ればそ

の分遠ざかるようで、もう地平線の彼方に消えていくのです。するとわっと地平線が一瞬で炎を上げま

した。城下は燃え上がり業火が岩だろうが木だろうが生き物だろうがめちゃくちゃ食い荒らしていま

す。ものすごい火煙を上げてどす黒い火災旋風がまもなく城も木々も生き物たちも真っ黒な炭の塊にか

えていってもう、あとはぼろぼろと熱を帯びた風に散っていくだけでした。

そこへ、機械兵達が、残党狩りをして瓦礫を荒らしまわっていました。

すると森の方から木々が根っこを足のように動かして現れました。そうです、あの炎の中、彼らはア

ルネルネの川に実を隠し、難を逃れていたのです。木々の反撃が始まりました。その太い腕の一撃で機

械兵を二、三メートル吹っ飛ばしてやりました。ニム・イールの軍勢は、恐れをなしています、あの闇

の大神官フォルノウスはどうやらどこかへ飛ばされたようです。した。彼らの機械の心に恐怖が発生し

たのでそしてさんざんに木々たちによって打ち滅ぼされた機械兵は恐れをなして逃走しはじめます。戦

いは三日三晩続きとうとう、森の木たちが勝利しました。

 しかし赤い月の夜、機械兵と飛行船艦が現れそしてあのフォルノウスが現れました。木々たちは森が
あったところに紛れて、ひっそりとしていました。

フォルノウスはどうして手勢がやられたのかわからない様子でした、ですが彼は、この言い知れぬ敵
意を感じ取りました。これは木々たちに森の生き物どもだな?

フォルノウスはすぐさま、森を一掃してくれんと火攻めに打って出ました。

けれどアルネルネの川が火を消してしまうので思うように火計が成らず、フォルノウスは苦戦を強い

られました。とうとう、フォルノウスはそして最後の禁じ手に出ました。

 それは、木枯らしの術というもので。この時期、木々は日光と暖かい空気、そしてアルネルネの水に

よってぐんぐん強くなっていきます。けれども突然、気候が変化し始めたらどうでしょう?

東から、今までみたこともない暗雲が冷たい炎も凍るような寒波を乗せてやって来たのです。暗雲は
たちまち、翡翠の国を覆い尽くし、強い寒波が吹き荒れ、あたりを凍土に変えてしまいました。あの豊
かな季節がめぐる。

 翡翠の国は、もはや見る影もありません。
 木々たちは、また一人、また一人と枯れていきました。アルネルネの川も凍り、山も谷も冷たい風のゴウゴウ言う音が聞こえるのみです。

 フォルノウスは戦いに勝ちはしました。けれどもフォルノウスはなぜか勝った気になれません、こん
な凍った大地を手に入れても何もえるものがないからです。抵抗する木々たちを根こそぎ、屠った後、
木枯しの法を解いて翡翠の国の気候は元に戻りました。

それでやっとフォルノウスは勝利を革新しました。けれども、またもやフォルノウスは度肝を抜かれ
ました。なんと翡翠の国の大地がいくら耕してもなんの実もつけないのです。まるであの術で死んだ
木々たち、生き物たちの怨念が大地に染み込んでいるようです。

それどころか、フォルノウスの悪名は木々から木々へ伝わって、諸外国の森の妖精たちがここかしこ
と騒ぎ立てました。諸外国はそれを旅人たちから聞いて、大きな衝撃を受けました。

北の国は、氷のこころで、木を枯らし

凍てつく風はみんな、凍らせよう。

されど翡翠の国の木々たちは、勇敢、偉大に立ち向かい、負けとわかって一矢報いた。

翡翠の国をたたえよう。木々たちに名誉の祈りを奉れ。

おっと森の獣も忘れるな。

我ら、木の精、水の精、北の国には実りを

一粒だってやるものか。

 こんな歌を森のドリアードやエルフたちが歌い、木の精も水の精も示し合わせて、ひそひそ話。

諸国の王は震え上がってたまらず。フォルノウスの魔力を恐れました。
するとこれをしめたとフォルノウスは世界中に緘口令を出しました。

「ニム・イールに楯突く全ての国はその一切を滅ぼす、また、ニム・イールの大神官であるフォルノウ

スに意見するものは呪いによって死ぬ」と。

 そしてそのとおりになりました。

だれかがフォルノウスの悪口を緘口令の書かれた札の前でのたまったのです。するとたちまちそいつ

は老いて老衰でぱたりと死ぬのです。札の前にはミイラが山積みになってまもなく誰もフォルノウスの

悪口を言えません。

翡翠の国が倒れた今、もはやどんな国もニム・イールには叶いません。

それでも木々たちは抵抗しました。翡翠の国の惨劇をもう世界中の木々が聞き及んだのです。そして

木々たちは、団結してニム・イールには一切の実りも渡さないと抵抗したのです。

これにはフォルノウスも頭を抱えました。

なにせどんな肥沃な土地もなんの作物も実らなくなったのです。おまけに木々は焼いても切り倒して

も憎しみを募らせるばかりで一行に屈服しません。ですがフォルノウスは七百年前、実りを司る魔法使

いでした。もちろん木のことについては熟達していたのです。

フォルノウスは一つの計略でそれを打破してしまいました。それは新しい呪われた品種の作成でし

た。その苗床が大地に根付くとたちまち成長してあたりの比較的意思の弱い木を支配してしまうので

す。そう、まさに木々の皇帝たる木でした。この木によって木はたちまち心変わりをしてニム・イール

の命令しか聞かなくなりました。

そして意志の強い古い木は同志たちの心変わりに心を痛めました。しかしそういう木には寄生植物、

つまり宿り木という木を使って内側から心を壊していきました。

そしてもはやニム・イールに逆らう木々は一本もなくなってしまいました。

そしてそれによってもはや他の国々も反抗の意思をなくしました。なにせニム・イールに敵対するこ

とは作物がとれなくなることと一緒だからです。

どんな強い国も作物がとれなければ餓死していしまいます。

北の国ニム・イールは恐怖の下に天下にその名を轟かせたのです。 
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