歌集「春雪花」
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祈れども
叶わぬ願い
星影に
搦めとらるる
夏の宵風
どれだけ祈ろうとも…叶うはずのない願い…。
いつまで待とうとも…見えるはずのない姿…。
寂しさ…苦しみ…不安…。
想えば想うほどに…世界はくすみ、愛すれば愛するほどに…自らを卑しむ…。
そんな私を天は見下ろし、星々の光は私の想いを搦め捕るかのように瞬く…。
夏の蒸し暑い風が芒を揺らす…。
あぁ…どうせならば、この虚しさをも…搦め捕ってくれれば良いものを…。
小夜更けて
おもふ現は
あぢきなく
遠くに蛙の
鳴くは侘しき
夜も更けて…あれこれと考えを巡らせる…。
何一つ、私は成すこともなく…誰一人、私は想う人に愛されもせず…世を去るのだろうか…と。
そう考えた時…ふと、彼の顔を思い浮かべた…。
朧気になりつつある…彼の笑顔…彼の声…。
同性愛者の私が、幸せになれようか…。
否…考えるだけで、私は世界が詰まらなくなり…虚しくなる…。
遠く…離れた田畑から、蛙の鳴き声が幽かにこだまする…。
何とも侘しいことだ…私が泣いたとしても、彼にはこうして届かないものを…。
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