IS~夢を追い求める者~
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最終章:夢を追い続けて
第54話「自分勝手」
前書き
―――だからと言って、ここにいる人達を巻き込んでいい訳がない。
再び秋十side。恭也との模擬戦から始まります。
桜たちが泳がせていた組織の一部が動きます。
=秋十side=
「ぜぁっ!」
「ふっ...!」
俺の攻撃が躱され、俺もまた攻撃を受け流す。
一進一退。ようやくここまでこぎ着けた...と言うべきか。
だけど。
「っ!」
「ぐっ...!?」
まだ、足りない。
早い連撃に対処しきれず、俺の腕に痺れが走る。
御神流“徹”。それは武器から衝撃を徹し、相手にダメージを貫通させる技だ。
それを、一撃一撃に込められると、まともに受ける事さえままならない。
ようやく対処できるようになったと思ったが...まだまだだな。
「(なら...!)」
だけど、対処法は一つだけじゃない。
桜さんを打倒するために、まず俺は四属性を極めようとした。
結果、不完全とは言え“風”と“土”を極める事に成功した。
つまり...。
「お返し...ですっ!!」
「ぐぅ...!?」
“風”で一撃目を躱し、二撃目を“土”を宿した攻撃で迎え撃つ。
徹の効果で腕に衝撃が走るが...“土”を極めれば効果は激減させれる。
そのまま恭也さんの木刀を吹き飛ばす。
「(これで仕切り直し...!だけど、こうなると恭也さんは...!)」
恭也さんの姿が掻き消える。実際はそう見える程のスピードなだけだが。
そして、同時に俺も“風”を最大限まで宿す。
「はぁっ!」
「っ....!」
御神流の神速を用いた、高速の四連撃が繰り出される。
それに対し、俺も今出せる最速の連撃を繰り出す。
バキィッ!
「「っ...!」」
一際大きな音が響き渡り、木刀が折れてしまう。
「...ここまでだな。」
「はい...。ありがとうございました。」
もう一本床に転がっているが、ここで終わる事となる。
「動きのキレも良くなってきた。確実に腕も上がっているだろう。」
「...ですが、半分程は“慣れ”です。桜さんにはまだまだ及ばないでしょう。」
確実に腕は上がっている...が、これではまだ足りない。
少なくとも、恭也さんと引き分けていては、勝てないだろう。
「とりあえず、今日の所はもう帰ります。また後日。」
「ああ。秋十との試合は得るものが多い。俺からもよろしく頼む。」
時間も時間なので、帰るために支度をする。
「秋十君!!」
「し、士郎さん!?どうしたんですかそんなに慌てて!?」
その時、士郎さんが慌てた様子で道場に入ってきた。
「なのはから連絡があったんだが、IS学園が襲われている!」
「なっ....!?」
...その言葉は、俺を驚かせるには、十分過ぎた。
=out side=
「っ....!」
「がぁっ!」
廊下を飛び回るように駆け抜け、なのははすれ違いざまに一閃を放つ。
峰打ちとは言え、腹に深く入ったため、敵はそのまま倒れ込む。
「...このエリアは、何とか安全を確保できたかな...。」
「まさか、ここまで突然に襲撃してくるとはな...。助かったぞ高町。」
「いえ、お兄ちゃん達に習っていた剣術が役に立って何よりです。」
千冬となのはは背中合わせで周囲を警戒し、安全を確保する。
事の発端は僅か10分前。
監視カメラに怪しい影が映ったのを皮切りに、教員が襲撃に気づいた。
しかし、避難をするには遅く、対処に乗り出した者達はそれぞれ孤立してしまった。
なのはと千冬も同じで、運よく合流した所だった。
「先生と合流できたのは幸先がいいですが...。」
「...あまり迂闊に動けないな。」
「はい。生徒会長やそれに連なる人、代表候補生は自衛の心得がありますが、一般生徒は一部を除いて何もできません。」
二人が倒した男たちは、合流する際に偶然遭遇したに過ぎない。
脅威がまだまだ残っている事には変わりがなかった。
「...襲ってきた人は皆男性...。心当たりはありますか?」
「...大体は予想できる。おそらく、女尊男卑によって追いやられた連中だろう。それならば、ISに恨みを持ち、ISに乗れなくなったのを好機に攻め込んできてもおかしくはない。」
「なるほど...。」
気配を押し殺し、廊下を行く二人。
「...家には既に連絡を入れてあります。しばらくすれば、御神流の使い手である私の家族と、秋十君も来るでしょう。」
「そうか...。おそらく更識の方も援軍を呼んでいるはず...。なら、それまでに...。」
「できる限り敵の数を減らすべき...ですね。」
「まずは孤立している奴らと合流するぞ。」
「はい。」
小声で会話し、二人は廊下を駆けた。この状況を打破するために。
「お父さん!準備できてるよ!」
「分かった!」
高町家にて、IS学園襲撃の報せを聞いた秋十達は、すぐに学園に向かおうとしていた。
「士郎さん!?何を...。」
「詳しくは学園に向かいながら話す。恭也!」
「分かってる。」
恭也はすぐに着替え、支度を済ませる。
「乗ってくれ秋十君。」
「もしかして....。」
「....娘が通ってるんだ。親としても、御神流の者としても、放っておけないさ。」
士郎がそういうと、秋十も意を決して車に乗り込む。
「父さん。俺の装備は...。」
「恭ちゃん、これ。」
「っと、美由希。助かる。」
戦闘用の服装だろうか。それに早着替えした恭也は、美由希から装備を受け取る。
真剣だけでなく、クナイのようなものや、ワイヤーのようなものもあった。
「なのは曰く、襲撃者の数は50人はいるようだ。しかも、見た所全員が男性。武装は分かりやすい現代兵器だ。」
「....テロか。」
「おそらくはな。目的としては、男性だけの所から見るに、女尊男卑の恨みか。もしくはそれに乗じた何かだな。」
「傍迷惑極まりないね。」
車を猛スピードで飛ばしながら、士郎は恭也と美由希と会話する。
その様子を、秋十は黙って見ていた。
「人質、死人や怪我人は既にいると見てよさそうだな...。」
「IS学園への移動手段から考えると、隠密行動は難しいな。できたとしても、動きが小さすぎる。誰かが潜んでいるとばれた瞬間、状況は悪化するだろう。」
IS学園への移動手段は、主にモノレール。
ヘリや船という手段もあるが、どれにおいても隠密行動は不可能である。
唯一、潜水艦は可能だが...彼らにそれを用意する時間はない。
「....ここは敢えて動きを目立たせた方がよさそうだな。一人が敵を陽動し、他で救出にあたる...それが適切だ。」
「注目を集めて裏から攪乱するという訳か。...だけど、誰が行う?」
IS学園にどう突入するかを、士郎達は決める。
後は誰がどのように動くかだが...。
「...陽動は俺がします。」
「秋十君がかい?しかし...。」
「俺はISに乗れますから、陽動にも向いているかと。皆が危機に陥っているのなら、夢追も応えてくれるはずです。」
「なるほど...。」
私用やスポーツ、娯楽に使うのならともかく、人の命の危機を救うのであれば、夢追は応えてくれる。そう確信を以って秋十は言う。
尤も、夢追は秋十の事を認めているので、多少の私情が混じっても応えてくれるが。
「...じゃあ、その作戦で行こう。秋十君は正面からできる限り目立つように動いてくれ。人質などは僕たちが救出する。」
「分かりました。....頼みます。」
大まかな作戦を決め、後は細かな動きを決めていく。
そうこうしている内に、IS学園へと繋がるモノレールに辿り着いた。
「...じゃあ、行こうか。」
「はい!」
御神の者と、一人の努力家がIS学園を救うために、動き出した...。
「シッ!」
学生寮内にて、マドカは駆ける。
銃を持つ男に対し、一瞬で間合いを詰めて掌底。即座に銃を奪う。
「ちっ!」
「遅い!」
他の男の銃撃を跳んで躱し、反撃に足を撃って機動力を奪う。
そのまま膝を落とし、昏倒させる。
「(まずは、誰かと合流しないと...!)」
行動が遅れたと、マドカは悔やむ。
既に学生寮に籠っていた生徒たちはほとんど連れ去られた。
マドカが残っていたのは、少しでも時間を稼ごうと隠れていたからだ。
「(桜さんの襲撃以来、武器の携帯が許されてて良かった...。)」
今マドカは、護身用に持ち歩いているナイフを持っていた。
これを使わなくとも十分強いが、それでもあるのとないのでは大きく違う。
また、なのはに貸してもらっていた木刀も持っていた。
「ぐあっ!?」
「はぁっ!」
すると、一つの壊れた扉から男が飛び出し、そこに蹴りが叩き込まれた。
その蹴りを放ったのは...。
「シグナム!」
「む、誰かと思えばマドカか。」
シグナムだった。
どうやら、シグナムは外の状況が変わったのを見計らい、部屋を探っていた男を吹き飛ばしたらしい。
「他の人は?」
「分からん。...が、ほとんどは連れていかれただろう。」
「ラウラとかは大丈夫そうだけどね...。」
とりあえず、とマドカはシグナムに木刀を渡しておく。
「確か、ラウラ達は学生寮から見回りのために離れていたはず。だから、捕まってないかもしれない。とにかく、私達も誰かと合流しよう。」
「そうだな...。....っ!」
学生寮内を駆けながら、二人はそんな会話をする。
すると、目の前に男が立ち塞がった。
「動くな!てめぇら...やってくれたな...!」
「人質...!」
男が銃を突き付けているのは、逃げ遅れたのであろう本音だった。
「本音!簪は...。」
「か、かんちゃんなら別行動してたから...あうぅ。」
「喋るんじゃねぇ!」
“ぐりっ”と銃口を頭に押し付けられ、本音は喋るのを止められる。
「くそっ...卑怯な...!」
「こんなテロリスト共に卑怯も何もないよシグナム。」
「うるせぇ!...てめぇら、大人しくしろよ?こいつがどうなってもいいのか?」
人質があるからか、余裕そうな男に、マドカは溜め息を吐く。
「おい...マドカ?」
「....本音、やっちゃっていいよ。」
「あ、いいの~?」
「なっ...!?」
瞬間、本音は力を抜き、スルリと男の拘束を抜け出す。
同時に、肘を腹へと打ち込み、その痛みで下がった顎に掌を当てる。
まさに一瞬の出来事。その一瞬で、本音は男を戦闘不能まで追いやった。
「いやぁ、下手に動いたら危ないかなぁって思って~。」
「もうこの階には私達しかいなさそうだから、遠慮しなくていいよ。」
「お~、じゃあ、全力でやっちゃうよ~。」
気の抜けた声と共に、シャドーをする本音。
すると、ふと何かを思い出したように動きを止めた。
「ちょっと待っててねー。えっと、確かここら辺に...。」
「...布仏、ここまで強かったのだな...。」
「あれでも付き人兼護衛を務めてるからね。それにしても、部屋に戻って何を...。」
しばらく部屋に戻っていた本音は、何かを抱えて戻ってきた。
「まどっちもこれを使いなよ~。しぐしぐはどうする~?」
「って、ハンドガン!?いつの間にこんなものを...。」
「護衛としてね~。それに隠し武器ってロマンがあるし。」
胸を張って言う本音。
「まぁ、ありがたく受け取っておくよ。」
「私はあまり扱えないのだが...まぁ、ないよりはマシか。」
「じゃあ、行こうか~。あ、投げナイフもいる?」
普段の雰囲気からは想像もつかない武装を本音はしていた。
手にハンドガンはもちろん、予備のハンドガンとマガジン、ナイフを腰に。
さらに太ももにホルダーを着け、そこに投げナイフも装備していた。
「...本音、普段袖が余っている服を着ている理由って...。」
「ばれちゃった?仕込み武器って言うのもいいよね~。」
ニコニコ笑いながら、本音はずんずんと進んでいく。
「...普段の様子からは、想像つかんな。」
「それが本音だからねー。人を欺くのに関しては、桜さん以上かもね。」
マドカとシグナムもそれについて行き、遭遇した男を次々と倒していった。
「....よし、こっちだ。」
同時刻。学生寮の外を見回っていたラウラ達は、気配を押し殺しながら移動していた。
「...ほとんどが捕まってしまいましたわね。」
「ISが使えない状況下でのテロだ。教官でさえ、全員を守りながら行動はできていないだろう。...かくいう私も、どうこの状況を打開すべきか悩んでいる所だ。」
身を隠し、男たちの目の届きにくい場所まで移動してから作戦を練る。
「聞いておきたいが...あの男どもと戦えると自負できるものはいるか?」
「......。」
「...さすがに無理か。なら、自衛はできるか?自信がなくてもいい。」
そういうと、箒、鈴、セシリア、シャルロット、簪が挙手する。
「一応、代表候補生として自衛もできる程度には護身術を嗜んでいるけど...焼石に水よ。大したプラスにはならないと思うわ。」
「ああ。それは分かっている。....とりあえず、これを貸し与えておこう。」
ラウラは格納領域からいくつかの銃を取り出す。
「私も軍人だ。ISを使う以外にも、生身で行動するための武器を持っていた。...まさか、このタイミングで使う機会が回ってくるとは思わなかったが。」
「な、生身で...。っ....。」
唯一専用機を持っていない静寐が、渡されたハンドガンを恐る恐る持つ。
いつもはISを介して武器を触っているので、その重さに少し怯えていた。
ちなみに、専用機を持っていない静寐がなぜラウラ達と同行しているかと言うと、一時期秋十に鍛えられていたからと言う点で、信用に価するためらしい。
「ああ。...使い方はISの実弾武装と変わらん。...だが、忘れるな。これは、人を軽く殺す事ができる武器だと。」
「....いつもはISが守ってくれてましたものね....。」
改めて今まで使っていた武装は恐ろしいものなのだと、皆は自覚する。
「...敵のほとんどが銃を持っている。気休め程度にしかならんが...。」
「それでも、やるしかないよ...。」
辺りの様子を伺いつつ、ラウラとシャルロットはそういう。
「精神的に厳しいかもしれんが、いざとなったら...殺せ。」
「っ.....。」
「相手はテロリスト。今は自分の身を守るのが優先だ。命を奪う事に躊躇っていては、そこに付け込まれるぞ。」
この場を切り抜けるため、敢えて厳しい現実を突きつけるラウラ。
「お前たちは二人以上で固まって行動しろ。常に周りを警戒し、背後は取られるなよ。そして、見つからない限り極力仕掛けるな。」
「...どうするつもりなの?」
「悠長に隠れている時間はない。他が人質に取られているだろうからな。だから、できる限り隠れて進み、敵のリーダー格を速やかに討ち取る。」
何度か辺りを伺い、行動の方針を決めたラウラ。
「それは...。」
「厳しい事は分かっている。私達自身は、いざと言う時はISで身を守れるが、人質がどうなるかは...。だとしても、このまま隠れている訳にもいかんだろう。」
「....そうだね...。」
“待つ”だけでは、何も変わらない。
何か行動を起こさなければいけないと、シャルロットは同意した。
「では...行くぞ。....走れ!」
「っ.....!」
ラウラの声を合図に、気配を押し殺して走り出す。
先頭にラウラが就き、次に物陰へとすぐに移動する。
「...よし。後ろはどうだ?」
「...人影は見られない...。多分、大丈夫。」
最後尾に簪が就き、背後の警戒を担当する。
仮にも更識家の者。多少の索敵は可能なのである。
「ラウラ、人質がいそうな場所。もしくはリーダー格がいそうな場所に、心当たりはあるの?」
「ない...が、生徒と教師の人数を合わせれば、相当な数になる。それほどの数を一か所に集めるとしたら...アリーナや体育館辺りが妥当だろう。」
「じゃあ、まずは校舎に向かわないと...。」
校舎に近づくにつれ、うろつく男の数が増えていく。
「...これは...当たり、だな。」
「でも、あそこまで多いと手の出しようが...。」
男の数は、ラウラ一人ならともかく、箒たちもいる状況では隠れて突破するのは不可能な程だった。
「...待って、どこか、動きがおかしい...?」
「ああ。少し慌ただしいな。」
簪が、男たちの様子のおかしさに気づく。
見張りをしていた男を残し、他の男は慌ただしくどこかへ移動したのだ。
「...誰かが陽動しているようだな。」
「中に入っていったって事は、誰かがそこに?」
「そうなる。...どの道、今が好機だ。突っ込むぞ!」
ラウラ達は知らないが、中では千冬となのはが駆けまわっていた。
その影響で、見張りが手薄になったのだ。
それを、ラウラ達は見逃さず、突入を図った。
「なにっ!?」
「撃て!殺す覚悟がなければ足を優先して狙え!」
「っ....!」
ラウラの合図と共に、全員が見張りの足を狙う。
生身で扱うのが初めてとは言え、上手く命中する。
「ぐっ...!てめぇら....!」
「遅い!」
「シッ...!」
足を撃たれても銃を撃とうとした男たちを、ラウラと簪がすかさず止める。
銃を弾き飛ばし、完全に抵抗できないように手持ちの道具で縛り上げる。
「答えろ。貴様らの目的はなんだ。」
「ぐっ....!」
内一人に銃を突きつけ、ラウラは尋問する。
「ふ、復讐だ!てめぇら女共に、今まで俺達男がどんな思いをしてきたのか、思い知らせてやる!俺をどうにかした所で遅い。もう、俺達は止められないぞ...!」
「....ふん。くだらん。」
「がっ...!?なんだと...!?」
思った以上に呆れるような理由だと、ラウラは胸倉を掴んだ男を放しながら言う。
「それで?IS学園の者が貴様に何かしたか?教えてやろう。貴様らが仕出かした事は、かつて貴様らを貶めた者と同類だ。貴様らは、よりにもよって憎んでいる存在と同じ穴の狢になったのだ。」
「は....?ふざけんな!誰が、お前らなんかと...!」
「じゃあ、同じ女性だからと、IS学園を襲ったの?ただ、貴方達を貶めた存在と同じ性別だからと、完全に無関係な人を巻き込んで、それでいいと思ってるの?」
「っ.....。」
簪の言葉に、男は黙り込む。
「ふん。自分の行いは正当なるものだと、思い込んでいたようだな。実に下らん。行くぞ、こんな自分勝手な輩を放置してはおけん。.....む...!」
「....?」
「まずい!伏せろ!」
ラウラが箒たちに振り返った際、後ろの方で銃を構えた男を視認する。
しかし、回避には間に合わず....。
「がっ.....!?」
...と言った所で、その男は崩れ落ちる。
「油断大敵よ~。軍人さん。」
「お姉ちゃん...!?」
男の背後には楯無がいた。どうやら、彼女が男を気絶させたようだ。
「...すまない、助かった。」
「いいのよ。この状況だし、いちいち気にしてられないわ。」
簡潔に会話を済まし、ひとまず物陰に隠れる。
「...虚ちゃんとは別行動...と言うより、人質に紛れて状況を見てもらっているわ。彼女一人ではさすがに難しいけど、タイミングを見計らって人質を助ける手筈よ。」
「本音は...。」
「分からないわ。...でも、あの子の事だし、どこかで機会を窺ってるはず。」
簪が本音の事を尋ねるが、楯無は知らないと首を振る。
「ここからは私も同行するわ。対暗部用暗部、更識家当主の力を見せてあげるわ。」
「これは...頼もしい仲間が手に入ったな...。」
気絶させた男から銃を取り、楯無は言う。
そんな彼女の実力を漠然とながら感じ取ったラウラは、感心したように笑った。
「さて、それじゃあ、行くわよ。」
「え、行くって...どこに?」
「当然、アリーナよ。人質はそこにいる。貴女達もそこが目的でしょ?」
「目的地は一緒だった訳か...。」
警戒を改め、ラウラ達は校舎の中へと入っていった。
後書き
秋十sideかと思ったら視点がブレブレだった。何言ってるかわからねぇと思うが(ry
という訳で思った以上に視点が切り替わる感じに...。
後、少々長くなったので、二話に分けます。そのため今回は少し短めです。
時間の流れが分かりにくいので纏めますと、ラウラ達が校舎内に入った段階では、秋十達はモノレールで移動中、なのは&千冬は敵から逃げ回りつつ校舎内を駆け待ってます。マドカ達は学生寮を脱出して校舎に向かっている感じですね。
なお、ラウラ達はしばらく学生寮から離れるように逃げていたので、マドカ達とは反対側にいます。なので、合流には時間がかかります。(むしろ校舎内でばったり会うかもしれませんが。)
そんな感じで、次回へと続きます。
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