ソードアート・オンライン~白と青の軌跡~
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止まった心、進む時間
前書き
フェアリーダンス編第2話です!
今回はアスナ視点で書いていきます。
では、本編へ!
デスゲーム終了のアナウンスが響き渡る。
その数秒前まで目の前にいて抱き締めていたはずの彼の姿は、跡形もなく消えている。
何故彼が死ななければならない?
その疑問だけが私の脳裏に残る。
頭上に散りゆく無数のポリゴン。
それをどれだけかき集めても、意味が無いと分かっているがしなければ現実を認めてしまう。
私は無我夢中に彼の欠片を集める。
それでも、どう集めても手から消えていく欠片。
──嫌よ……嫌……!
信じたくない…信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない!
──彼がいない世界に生きる理由なんてない。
私の中で何かが壊れた。
いや、既に壊れかけていた物が彼の存在によって何とか維持されていたが、彼が居なくなった事によってその支えが消えたという方が正しい。
私は立っていることが困難になり、崩れ落ちた。
──人間って、あまりにも辛いと涙が出ないんだ……
そんな私を支えるかのようにシノのんが私の身体に手を伸ばして抱き締めてくる。
「………シノ……のん……?」
「……何も……話さなくて……いいから…。」
私は涙を流しながらも何とか私を支えようと頑張っている彼女の姿に申し訳なさを感じた。
──……辛いのはシノのんも同じはずなのに……
当たりを見渡すとエギルさんとクラインさんが有り得ないと言うかのように固まっている。
2人とも涙で顔が酷かった。
その隣には、シリカちゃんとリズ、スリーファちゃん。
3人とも信じられないと目を見開いている。
私の後ろにはキリトくん。
キリトくんは何かブツブツと言いながら顔を伏せていた。
私が当たりを見渡しているとストレアさんがスッと立ち上がった。
「ストレア…?」
リズが不思議がって名前を呼ぶ。
「……ねぇ、皆はさ。」
彼女は話しながら歩を進めていく。
「ライアのHPが何で減っていったのか、知りたい…?」
中心で歩を止めてから、私達の方に視線を向ける。
「………貴方は知ってるの……?」
シノのんが半信半疑に聞いた。
すると、ストレアさんは頷きウィンドウを操作した。
「……前にも話したけど私はソードアート・オンラインのAI。アスナが持ってるユイの妹にあたるの。」
そう淡々と話し続ける彼女に私達は静かに聞く。
「ライアがラスボスになった理由、それはユニークスキルのせいだよ。ライアは『一刀流』とは別にもう一つ『暗殺術』っていう物を持ってた、本来そのスキルはこの世界の最終ボスに与えられる筈だったのにライアが目覚めてしまった。それによってバグが発生したの。」
「カーディナルはそのバグを対処するために、彼をプレイヤーではなく最終ボスへとし取り除く事にした。
ライアはそれで最終ボスとなった、でも彼は自らの手で自分を殺すために『暗殺術』のスキル『オール・エンチャント』を使用した。」
「オール・エンチャント……?」
クラインさんが代表して口にする。
「自分のステータス、又は指名したプレイヤーのステータスの限界を超える所謂、最強になるスキルだよ。ただ、このスキルには弱点があって自らのHPを犠牲にした分ステータスが向上する。だから、さっきの鳳凰を後半ライア1人で倒すことが出来た。」
「ボスの残りHPを全部無くすにはライアのHP全てを使わない限り不可能だった、だから彼は犠牲するHPを全てに設定し『オール・エンチャント』を使用した。」
ストレアさんの話を聞いていた私はそんなスキルを知らなかった。
──彼が黙ってた……?
確かに私がそのスキルを知っていれば使わせる事は絶対なかった。
彼のHPと引き換えに得られる力なんて望まない。
「………ごめん……なさい……。」
私は彼に謝ることしか出来ない。
守ると誓った、一人にしないと、支えると言ったにも関わらず最後は彼に守られた。
私はただただ、謝ることしか出来なかった。
あれから数ヶ月。
今も変わらず朝はやって来ていた。
彼のいない世界なんて私は信じない。
毎日毎日彼が生きていることを願って、ナーヴギアを被る。
だが、いつも視界に映るのは真っ暗な闇。
彼はいない、目の前で死んだと告げられているかのように。
「……私、弱くなっちゃったよ蒼くん……。」
私は、もう彼のことを『あおくん』と呼ばなくなった。
そう呼んでいたのは弱かった私。
強くならなきゃいけない。
その一心で過ごしているが、正直彼のいない世界で生きる意味なんて存在しない。
そんな時、携帯に着信が入った。
──桐々谷和人──
「……キリトくん…?」
私は通話ボタンをタップして耳に近づける。
「……もしも……」
『アスナ!すぐにダイシーカフェに来てくれ!』
私の言葉を遮っていきなり要件を伝えるキリトくん。
その奥からはリーファちゃんが『お兄ちゃん、もっと落ち着いて!』と怒っている。
「えっと……キリトくん、急にどうしたの?」
私はなんとか平然を装いながら会話を続ける。
『エギルがSAO内でログアウトしたはずのプレイヤーが別のVR MMORPG内で確認したんだ!』
──え……?
「本当……なの……?」
私の声は震えていた。
ログアウトしたはずのプレイヤーが別のVR MMORPGで確認した。
と言うことは彼が生きている可能性もある。
『ライアが生きているという絶対的な根拠はない、でも何もしないでいるよりは可能性があるはずだ!』
私はその後「すぐに行く」と告げて通話を切った。
クローゼットを開けて何着か服を取り出す。
──彼が生きているかもしれない
それは叶わないと思っていた願い。
──彼が生きていない可能性だって否定出来ないけど……
「可能性が1%でもあるなら……!」
私は勢いよく外に飛び出し、駅に向かった。
その頃、あるゲーム内では。
「ねぇ、帽子屋さん?」
「なんだい、アリス?」
アリスと呼ばれた少女が座る椅子の近くで紅茶を飲む帽子屋と呼ばれた青年。
「うさぎさんは何処にいるの?」
「んー、今は多分外かな。」
「えー…、チェシャは?」
「チェシャも外だねぇ。」
そう言われたアリスと呼ばれる少女は頬を膨らまして拗ねる。
「まぁまぁ、拗ねないで。」
「ふん、良いもん。」
「後で2人と沢山遊べばいいじゃないか、ね?」
「……分かったわ、もう少しでお茶会だもの。」
そう彼女は青年に答えた。
後書き
後半、オリジナルですよ!(言わなくても分かるわ。)
少し慌てて書いたので誤字脱字がありましたら、教えて頂けると嬉しいです。
ご感想お待ちしております!(イラストも待ってます)
では、また次回!
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