歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
353
交わしたる
言の葉心に
留め置きて
わが想ふ人は
音づれもせず
彼と交わした言葉…他愛ない話し…。
彼が忘れようとも、私は忘れることもなく…ただ、在りし日を心の中へ留めるだけ…。
どうしているだろう…思うことの侘しさは、どうしたら消えるのか…。
彼に会えも出来ない…彼の状況を知る術もない…。
絶えることのない寂しさだけが…こだまする…。
流れたる
涙の行方は
知らねども
憂きに堪えなむ
夜半の月かな
寂しさに流れた涙…拭うこともなく、静かに夜空を眺める…。
この世界…私一人いなくなろうと、何一つ変わることもなく…。
それなのに…何故、苦しみや辛さ、悲しみや寂しさに耐えて生きねばならないのだろう…。
月さえも雲に隠れ…幽かに浮かんでいる…。
あぁ…会いたい…。
月よ…願わくは顔を見せ、私の心を慰めてはくれまいか…。
ページ上へ戻る