世界をめぐる、銀白の翼
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第五章 Over World
いきなり!!戦乱の予感!?
「この次元世界の名はフロニャルド。全体の名だと「DOG DAYS」という」
「犬の日々?」
「いや、英語で猛暑日って意味だ」
ざくざくと森の中を進みながら、ショウがこの世界について説明を進めていく。
遠くからは大歓声と、多くの人間が突き進むような轟音、爆音が聞こえてきていた。
「それで、戦争って?」
「それが本当なら、そんなものは早く止めないといけません!!」
戦争、と聞いてルネッサが意気込むが、ショウは一貫して落ち着いた様子で話を進める。
「この世界にはある力が偏在している。地脈みたいなもんでな、フロニャ力という物だ」
「ふろにゃちから?」
「そう。その力の恩恵を受けられる土地では、怪我などを負っても死ぬことはないし、ダメージを負いすぎるとこんくらいの獣玉になっちまうんだ」
そう言いながら、ショウがバスケットボールを持つように手を広げる。
そのおかげで彼らは「楽しく」戦争が出来ているらしい。
「それは・・・・一種の運動会では?」
「あー、それに近い。だから言ったろ?祭りだって。それで勝った方はお祭り騒ぎだし、負けた方も一緒に楽しめるから楽しいし」
「つまり、平和な世界なんですね?」
「ああ」
「でもそれだと人死が出ない世界ではないかい?」
「確かに。基本的に町や村もフロニャ力の恩恵を受けられる場所に作られるし、当然戦争を起こす「競技場」もそういった場所に作られる」
「ということは、恩恵を受けられない場所があるわけだね」
「そう。ここら辺一帯は余すことなくその力の恩恵を受けられる土地らしいが、場所によってはその恩恵を受けられない場所もある」
「まあ地脈がない、ってことよね」
「そう言うところで魔獣とか言ったモノに襲われたり、事故に会ったりすると死んでしまうことがあるらしいな」
「なるほど・・・・」
「だがそのフロニャ力も・・・・・?」
「どうしたんだい?ショウ」
森を抜け、崖の上に出た一同。
瞬間、ショウが何かに気づいたようにバッ、と後ろに振り返った。
睨むように遠くの空を見上げ、そこから十数秒動かなくなってしまう。
「・・・・・どうしたんですか?」
「雲行きが怪しい・・・・何か来るぞ」
「なにか?」
「混沌とした邪悪・・・・昔の俺に似た感覚だ」
「それって・・・・!?」
「でもこの土地なら大丈夫なんじゃ・・・・」
「偏在する、ということはそれを掻き消すこともできる、ということ。違うかな?」
「そうだ。気候や地形の変動、“何か強大な力を持つ何か”によってその力を払われたとき、そこは俺たちの世界と何も変わらなくなる」
「でも・・・普通じゃない?それ」
「俺たちにはな。だがこの先で戦争してるこの世界の住人からすれば・・・どうだ?」
「急ぎましょう」
「そうしましょ」
「変身!!」
《KAMEN RIDE―――DIEND!!》
「じゃ、バイク出して」
「僕のマシンディエンダーは二人乗りが限界だよ?」
「じゃあアギトトルネイダーでも出して」
「はいはい」
《ATTACK RIDE―――MACHINE DIENDER!》
《KAMEN RIDE―――AGITO!》
《FINAL FORM RIDE―――A A A AGITO!!》
「っていうか海東バイク持ってたんだ」
「いつも走ってるイメージがありました」
「僕だって仮面ライダーだよ?それにたとえなくても、僕は盗んででも手に入れる!」
「お前は尾崎豊か」
ショウがアギトトルネイダーに乗り、ディエンドがマシンディエンダーに。
そしてそれぞれにティアナとルネッサが相乗りして目的地へと向かった。
「それにしても感じてるか、海東!」
「う~~ん・・・・よくわからない何かだけどね」
「そうか?俺には分かるぞ?」
「? 何を感じるんだい?」
「懐かしい感じだ」
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今現在、戦を起こしているのはビスコッティ共和国とガレット獅子団領の二国である。
お互いの関係は対立ではあるものの、それはあくまでもライバル関係という物であり、決して険悪なものではない。
戦だって、先の説明の通り陰惨なものにはならない。
ビスコッティ領主、ミルヒオーレ・F・ビスコッティ(通称ミルヒ)と、ガレット領主のレオンミシェル・ガレット・デ・ロワ(通称レオ)は幼馴染であるということも相まって、両国の関係はとても良好だ。
だが、ここ最近の戦はどうにもおかしかった。
戦の間隔が極端に狭まり、しかもその戦は毎回ガレットから仕掛けられるものだった。
レオンミシェルもかつてはミルヒオーレとよく会っていたものだったが、最近は来訪もなく、出会うのは戦場で、しかもモニター越しであるのが常だ(この世界はハイテクではないものの、通信機能は発達しているのだ)
度重なる戦にビスコッティは連敗に次ぐ連敗。
まるで憎しみでも抱いているかのようなガレットの進攻に、ビスコッティは最後の手段に出る。
それこそ、異世界からこの世界に助けを呼び寄せる召喚術「勇者召喚」
それによってつい一週間と少し前、地球から一人の少年、シンク・イズミが召喚されたのだ。
「EARTH」が捉えた次元航行とはこれのことであり、あの魔法陣がそれだ。
彼の活躍によってビスコッティは連敗を押しとどめ、勝利することができた。
彼はその術式から、ビスコッティの人々からは「勇者」「勇者様」と呼ばれて親しまれている。
領主のミルヒオーレとの関係も良く、彼もまた、こういった運動(この戦場にもある巨大アスレチック等の障害物競走)が大好きだったので、すぐにこの国に馴染んでいった。
レオンミシェルの弟、ガウルとも友情を築き順風満帆な日々だった。
そうして、今回の戦が始まった。
いつものように、レオンミシェルからの宣戦布告。
彼女は何かに焦っているかのように戦を仕掛けてきた。
戦とは、一般参加の市民も楽しめるようにするのが慣習だし、相手のコンディションも汲み取るのがふつうである。
それを見ても、この戦はおかしい。
一般参加者はそれをまだ知らずに、戦を楽しめている。
だが、領主をはじめとした皆は違和感を感じていた。
ガレットの砦の中でシンクと共に待機しているビスコッティ親衛隊長、エクレール・マルティノッジも同じことを考えていた。
「どうしたの?エクレ」
「勇者。いや・・・空が暗い、と思ってな」
「あ、ほんとだ。さっきまで晴れてたのに」
今この砦(形は四角い塔に近い)の頂辺では、レオンミシェルとミルヒオーレによる一騎打ちが行われているはず。
ここの屋上は天空闘技場であり、一つの名物となっている。
落下を防ぐため、小さな塀で囲ってはいる者の、基本的には何もない場所だ。
今は空も荒れていて、吹きさらしになっている。
そんなところに一騎打ちだと言って一人で乗り込むミルヒオーレの度胸も大したものである。
「姫様もやるなぁ。レオ閣下と話したいために一騎打ちを申し込むなんて」
「姫様だってビスコッティ領主だ。剣の腕はある」
「でもレオ閣下の方が・・・・」
「・・・まあそれは認めるがな」
しかし待機は待機だ。
だが――――――
「こっちからならいけそうだよー!!」
「おい貴様何してるんだ!!」
シンクはその塔の外壁をよじ登ろうとしていた。
というかもう五メートルは登っている。
「おい!姫様は」
「姫様は「ここからは一人で登ります」って言ってた。だからこっちからなら問題ないはず、っと」
「子どもかお前は」
「来ないの?」
「行く」
そうして、登って行く。
一騎打ちでも手出しをしなければ問題はない。
しかし、それよりも
「嫌な感じがするんだ」
肌を刺激する悪寒が、いつまでたっても止まらない。
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「天気悪くなってきちゃいましたね」
「うん。でも人の声が聞こえるし、近くに町でもあるんじゃ・・・・あ!!」
「どうしました?」
「ちょっとちょっと、見てみてよ、あれ!!」
「?」
丘の上。
空が曇天に包まれ、急いで街を見つけて入ろうとする二人は旅人だろうか。
その彼らが見たのは、ビスコッティとガレットの戦である。
本来戦争や戦、争いといったものには断固として反対してきた彼等だが、そんな彼等だからこそ、この戦は戦ではないことが感じられた。
「なんか楽しそうですね」
「なんかの競技なのかな?」
バチィッ!!ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・
そんなのんきに話す二人だが、空では雷までなり始めていよいよもって天気が崩れそうな雰囲気である。
「うわ」
「はやく行こっか、映司君」
「はい!」
二人の男の内、一人の名前は火野映司。
彼こそ仮面ライダーオーズとして、欲望の怪物であるヤミーやグリードと戦い抜いた青年である。
そしてもう一人の男は―――――
「久しぶりじゃないか、五代雄介」
背後から声がかかる。
振り返ると、そこにはディエンドやショウたちが、バイクから降りて手を振ってきていた。
「えっと・・・・あ!!海東さんでしたっけ?うわ久しぶりだなぁ!」
「ああ。蒔風の暴走の時以来だね」
もう一人の男は、五代雄介。
我々もよく知っている、仮面ライダークウガに変身する青年だ。
だが、彼の世界は結合していないのではなかったか?
そもそも、この世界は異世界。どうやってきたのだろうか。
「海東さん、そっちは?」
「あぁ、紹介するよ。というか、彼は僕よりも前に知り合ってるはずだよ」
「よう、久しぶり」
「・・・蒔風さんに似ている・・・けど違いますよね?」
「いや、まあ一応あってる」
要領の掴めていない五代に、ショウが自ら説明する。
蒔風のこと、自分のこと、あれからのことなど。
「へぇ!!「奴」だったんだ!!ふ~んへぇー!」
「な、なんだよ」
「いや、蒔風さんは戦った相手と、解り合うことができたんだなって、少しうらやましくなって」
と、そうしているうちに映司も他のメンバーと自己紹介を終え、話を進めていく。
仮面ライダーオーズ・火野映司には、協力者であるアンクというグリードがいた。
グリードとは、人の欲望エネルギーを込めたメダル・コアメダルを基に、それをセルメダルで形作って構成される欲望の怪物だ。
しかし彼の世界での最終決戦で、彼らとともに戦ってきたアンクの意思が宿ったコアメダルが割れてしまい、彼は今それを元に戻す手段を探して旅をしている、ということである。
「その途中で五代さんと会いまして」
「そうだ。どうして君はこの世界に?」
年上で、さらに先輩ライダーの五代に対して「君」と話しかけるところはさすが海東だが、五代は特に気にすることなくワケを話す。
数年前の、蒔風による「EARTH」登録員消失事件。
そのさい、彼は海東によってこの世界に呼び出されていた。
その影響だろうか、それからしばらくして五代にも世界の壁を越えることができるようになってしまったのだ。
確かに、過去ディケイドやディエンドと関わったライダーはそれなりに世界の行き来を可能にできていた。
これもそういうことなのだろう。
行ける世界はライダー関連の世界のみだが、それでも世界はぐんと広がる。
火野とはその途中で出会ったらしい。
「それで、もっといろんな世界を見た方がいいと思って火野君も一緒に冒険してるってわけ」
『お知らせいたします。現在、大地のフロニャ力が、わずかですが弱ってきております。危険ですので、参加者はいったん戦を中断し、避難所へと――――――』
「む?」
「フロニャ力が、弱ってる?」
「ってことは・・・・」
「あれはなんだ!?」
指をさす火野。
その先には大きな砦があり、彼が指しているのはその上空だ。
さっきからも戦の実況で、あれがグラナ砦であるということはわかっている。
そのグラナ砦の最上部である闘技場部分が、砦から裂けるように別れ、浮きあがってしまってるではないか。
「フロニャ力って、ショウさんの話だとみんなが怪我をしない不思議な力だっていう?」
その言葉に、ショウがうなづく。
ならば、そこからどうなるのかは考えるまでもなく導き出される。
「このままだとあの人たちが!!!」
「あっちの避難は大丈夫そうだな。さすがに手際がいい」
眼下に広がる広大な草原からは、ぞろぞろと参加者である市民や従属する騎士たちが安全拳な場所へと避難していた。
こういうことを想定した、避難マニュアルでもあるのだろう。
だが、そうはいかないものが数名いた。
「砦の屋上に二人、壁面にも二人いるね」
「ん?ん~~~~?あーりゃシンク・イズミじゃないか?」
「え?」
「だれですか?それ」
目を細めてそこを凝視し、ショウがこぼした聞き覚えのない名前に、ルネッサとティアナが首をかしげる。
それに対してショウは何やってんだよという感じに呆れて口を開いた。
「あのな、次元転送あの場であったってことは、誰か、もしくは何かが送られたってことだ。だったら少なくとも、あの地域の人間の顔を名前は覚えておかないと、行った先で確認できないだろうが」
「お、覚えてるんですか!?あの地域の人間を全部!?」
「あの短い時間で!?」
「おう」
さらりと短く返事をするショウ。
こいつはこいつでいろいろととんでもない奴である。
「この地には確か勇者召喚って儀式があったな。なるほど、それでシンク少年が呼び出されたってわけね」
その言葉に一同が納得し、ふたたび戦場を見やる。
すると
ズドンッッ!!!
大地と空とを振動させ、ものすごい衝撃が周囲にまき散らされた。
大地は割れ、砦も砕けてその破片が宙に浮いている。
その上に立つのは、白い長髪の勇ましい戦士と、ピンクの髪をした姫だ。
「あれが戦をやってる二国のトップだ」
「名前まで思い出せます?」
「あー、わり。長くてメンドイ名前だったから忘れた。犬と猫なのは覚えてる」
そんなやり取りをしていると、目の前では状況が二転三転していく。
砦の上空には、紫の弾が浮かんであり、そこから触手状となった煙のようなものが伸びて、砦上空の二人に襲いかかる。
ピンク髪の方が白い長髪の方をかばって剣でガードするも、剣は砕けてしまい、少女が呑みこまれる。
その光景に長髪の少女は怒り狂い、手に取った戦斧を輝かせてその触手を叩き斬って行った。
あまりにも強い咆哮。
それは少女の怒りを表しているものだ。
上空に浮遊した砦だった瓦礫の上を飛び交って、猛然と挑みかかって行く少女。
しかし、その紫の球体が次第に形を変え、巨大な四本足の獣の化け物に姿を変えたとき、少女の咆哮も止んだ。
絶句したわけではない。
ただ、その化け物の数本にもわたる鞭のような、触手のような尾に叩きつけられ、まだ大地と接している砦に叩き落とされたのだ。
と、そこにシンクとエクレが到着する。
レオンミシェルを抱えあげ、大丈夫かと大声を上げた。
「わ、わしは大丈夫じゃ。だが、ミルヒがあそこに捕らわれてしまった!!」
「な」
「えぇ!?」
見上げると、砦に背を向けて町の方向へと進行していくその魔獣の背中には、青白い球体が一つ浮かんでいる。
この世界の魔獣とは、呪いを振りまくものだ。
存在するだけでも悪影響を及ぼす。
その背の上で、ミルヒオーレの所有するビスコッティ家に代々伝わる宝剣エクセリードが、その刀身が折られた状態ながらも所有者のみを守っているのだ。
この青白い球体はいわばバリアである。
そのせいで中ははっきり見えないものの、アクションがないところをみると気絶してしまっているようだ。
「ど、どうすれば・・・・!?」
「おい、どうしうわっ!!」
あまりにも巨大な体躯。
高さはゆうに五十メートルほど、背中を駆け抜ければ300メートルはありそうなその化け物にどうすればいいのかという不安と恐怖に震えてしまうシンクたち。
だが、その不安を弾き飛ばすかのようにシンクの持つビスコッティ家のもう一つの宝剣(彼は扱いやすいとして長棒の形にしている)パラディオンから光が伸びた。
それはミルヒオーレの方向へと伸びており、まるで助けに行こうと呼びかけているかのようだ。
「勇者!!」
「ああ、これは・・・姫様が、僕たちを待ってる!!!助けに行こう!!」
勇気を奮い起し、起ちあ上がるシンクたち。
だが魔獣の方は彼らに気を止めることもなく、その思い足音を響かせ進んで行く。
「まずいぞ!!あのままでは街に入る!!」
「どうにか止めないと!!」
勇者、駆ける。
囚われの姫を奪還せんとして。
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「さぁて、行くか!!」
「見えた!!あの方向には町がある。絶対に行かせられない!!」
「火野、手伝ってくれるか?」
「当然!!平和のために戦うんなら、ライダーも「EARTH」も助け合いでしょ!!」
「行くぞ!!「EARTH」、出陣!!」
「「「「「了解!!」」」」」
to be continued
後書き
はーい!!
犬日々の説明会と、いきなりのクライマックスですよ!!
アリス
「何という超展開」
蒔風
「というかおい、いつの間にかこっちの世界に鴻上コーポレーションって会社が・・・・」
ライダーの世界は結合しやすいですからね。
たぶんそのうち一条さんとかもしてるんじゃないですか?いつのまにか
第四章の最後でショウが赤銅を世界ごと切り取って食った時に言ってたように、この世界は様々なものを呼び寄せる性質のような物を持ってしまいます。
今回のDOG DAYS、クウガ、さらにオーズ、この後のまどかマギカもそれによってこの世界と自然結合してしまうんです。
まあライダー勢はもともと繋がりがありましたけど。
ショウが世界の情報に詳しいのは、世界構築の計算と、もともと持ってる原典知識のたまものです。
無論全部覚えてるわけではないですが、まあそれなりには。
蒔風
「つまり?」
海東が新しい世界のことを何故か知ってて、さらにはシンケンジャーの世界のことも知ってて、士たちに説明していく感じ。
蒔風
「深く考えたら負けということだな?」
そういうこと
翼刀
「次回、VS魔獣。いきなり現る彼らはどう活躍するのか!!」
ではまた次回
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