真田十勇士
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巻ノ九十五 天下の傾きその九
「人の上に立つのなら学問も必要ですか」
「そしてその文武で、ですな」
穴山の目は幸村を向いていた、素直な敬意がそこにある。
「時が来ればことを為されるのですな」
「では我等はそれぞれの力で」
由利は風呂の中だが畏まった。
「その殿をお助けしましょう」
「及ばずながらです」
望月も言う。
「我等日々励みその力で殿と共に進みまする」
「学問に励まれる殿と共に」
まさにとだ、伊佐が述べた。
「道を進んでいきます」
「では殿、今宵もですな」
最後に十勇士の中で随一の学門の持ち主筧が応えた。
「書を読まれますか」
「今宵は太平記を読む」
この書をというのだ。
「そして兵法と人のあり方を学びたい」
「太平記から」
「そうされますか」
「是非な」
「そうする」
まさにという返事だった。
「それに拙者は学問も好きじゃ」
「ですな、お若い頃から」
「よく書を読まれています」
「そして鍛錬に励まれ」
「強くもなられていますな」
「そちらについても」
「うむ、真田は智でも戦う家じゃ」
武芸だけでなくだ。
「父上もそうじゃな」
「はい、大殿にしましても」
「実際にですな」
「学問に励まれ」
「そうして備えられましたな」
「智もまた」
「そうであったからな」
昌幸、彼もだ。
「わしもじゃ」
「智恵をですな」
「これからも備える様に励んでいく」
「学問をされ」
「そのうえで」
「そうしていく、では太平記を読む」
今日の悪問ではというのだ。
「これからな」
「はい、お励み下さいませ」
「そちらも」
十勇士達は幸村にこう言った、そしてだった。
幸村は実際に太平記を読んでいった、そのうえで兵法等も学んでいった。そして次の日のことであった。
まだ赤子の大助に太平記の話をしようとした、しかしそこで妻に言われた。
「まだわかりませんよ」
「赤子だからか」
「はい、ですから」
夫に微笑んで言うのだった。
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