奇妙な暗殺教室
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班決めの時間
前書き
暗殺教室のSSを書いている人達は最初に一番力を入れる所がこの場面だと思う。
中間テストが終わり、数日後
いつもの様に殺せんせーの用意したハンモックで2度寝をし授業開始5分前に教室に入るとある女子に話しかけられた。
「ジョジョ、修学旅行のことでいいかしら?」
彼女の名は『片岡 メグ 』女子の学級委員でスポーツができ、リーダーシップもかなり強く、女子を纏めてる存在。あの絵に描いたようなイケメンの磯貝に劣らないイケメン女子で確か…女子共が『イケメグ』なんて呼んでるイケメンな女子だ。あと、女子なのにイケメンっておかしいんじゃあないのか?という質問はナシで頼む。
「修学旅行?…あぁ、班の事か?」
「当たり、まだどこの班に入るのかが決まったら早めに報告してね」
…そいやそうだったな。すっかり忘れてた。
「全く、3年生も始まったばかりのこの時期に修学旅行とは…先生余り気乗りしません」
「大量に荷物を詰め込んだバック持って何言ってんだ!ウキウキじゃねーか!明らかに要らないもの入ってるし!」
殺せんせーの鞄にはラジコンとか黒ひげ危機一発等、修学旅行には明らかに持って行けないものが大量に詰められていた。仮にも引率の教師がそれで良いのかよ
「バレましたか。正直先生、君達との旅行が楽しみでしょうがないのです」
まぁその荷物については目を瞑るとして俺は何処の班に入ろうかね……出来ればカルマがいない班が良い。奴と同じ班になれば100%トラブルに巻き込まれるという確信がある。となれば……
「やれやれ……じゃあ、今日の体育が終わったらさっそく当たって見るか」
そして1時間目の授業を終え体操着に着替え恒例の訓練の最中丈一郎はある生徒の元に出向いていた。
「ってな訳でお前らの班に入れてくれないか?」
「いやいや…どういう訳なんだジョジョ?」
目の前にいる男子…千葉龍之介は困惑していた。まぁ俺がこいつの立場ならそうなるか…
「つまり、お前の班に入れてくれって話だ。せっかくの就学旅行なんだこれを期に今まで関わりが少ない奴と親交を深めるのも悪くないと思ってな」
これは本心だ。E組に入ってからという物どうしても席が近いのもあるがカルマやいつもカルマと一緒にいる渚と絡む事が多くなる。別にそれは悪いことでは無いのだろうが、殺せんせーを殺す為にはそんな事も言ってられないのが現状だ。
「ダメならダメで俺は構わない。別に他の連中に関わる機会は他にもあるんだしな」
理想を言えば仲間の趣味嗜好は早めに掴んでおく事に越した事はないんだが…まぁダメだったら今回は縁が無かっていう事だし…なんら問題はない。
「まぁ…多分大丈夫だと思うぞ。ちょうど男子と女子が1人ずつ足りなかったし次の時間は就学旅行のプランを練る時間だから…その時に中村の席に集まるからその時に改めて頼んでみたら良いんじゃないか?」
中村?…あぁそう言えば中村も千葉と一緒の班だったな。確かにその方が俺も都合が良いな。ただ、中村か…あいつは気心が知れてるのは良いんだが、カルマと同様に碌な事を考えない奴だからな…ん?でもカルマと同じ班になるのとあんまり変わんなくね?
「次、東城丈一郎!」
そんな事を考えている間に寺坂の攻撃が烏間先生に捌かれ丈一郎の番がきていた。
「まぁ分かった…聞いてみるわ」
そう言いギロッと鋭い眼光を放ちながら丈一郎は歩み始めた。するとこの対戦を心待ちにしていたのか何処からとも無く歓声が上がってくる。
「ジョジョ〜頼むぞ!お前にジュース賭けてるんだからな!」
「烏間先生頑張って〜!」
最初の模擬戦から丈一郎と烏間先生はギリギリの勝負を繰り広げ丈一郎はあの烏間先生から何度が白星をもぎ取っていた。そのせいか男子はジュースやら持ってきた菓子を賭け、女子も溢れんばかりの声援を送るのが恒例となりつつあった。
「やれやれ…始めようか東城君」
「えぇ…早く終わらせて生徒からお菓子を巻き上げてる殺せんせーを殺ろうと思っていたんで」
「奇遇だな…俺も砂場で茶柱を立てているあの阿呆(殺せんせー)を殺そうと思っていたところだ。」
人が全力で取り組んでる時に教師が賭け事で生徒からお菓子を巻き上げんなよ…
「まぁそれはさておき、次に君が俺に勝てば6勝6敗でイーブンだな」
「そうですね……最近じゃあ波紋を使った戦い方に対応されて連敗続きなんでここで連敗は止めて見せますよ。」
「悪いが、俺にもプライドがある以上負ける訳にはいかないんでな………来い」
その言葉に応じるかのように丈一郎はゆっくりゆっくり、体を丸めて拳を上げ波紋を練り始める。その姿は流氷のように冷たく、しかし激流の中を流れる水の如く激しく鋭いものだった。
一方烏間先生もまた身をかがめ、その足の筋肉は隆起し、解き放たれるのを待っている。研ぎ澄まされた日本刀のように、眼は鋭く鈍く光っていた。
「コォォォォォォォォ」
「…………………」
2人から発せられる雰囲気は曇天の様に重く周りのクラスメイト達に伸し掛かり先ほどまであった騒がしさは何処かに吹き飛ばし固唾を飲んで見守る中、ジリジリと2人の間合いが詰まる。そして誰かの額から一雫の汗が流れ落ち、それは張り詰めた緊張の糸を弾き、2人の超人が激突する合図となった。
「らァッ!!」
左手を振り払うその一手目に、烏間はわずかに後ろに下がって避ける。しかし、
(流石に速い……っつ!?)
丈一郎は振り払う勢いを利用しそのまま身体を捻り回転蹴りを加える。だが、烏間先生はそれを両腕でガードし力任せに丈一郎の蹴りを弾き体制を崩しにかかる。
だが、丈一郎の体は弾かれた力を利用して地面を滑るように後退する。
(何度か模擬戦をやっているが…末恐ろしい子だ)
(流石に烏間先生相手じゃこの手は簡単に捌かれるか……だったら!)
丈一郎は即座に烏間先生との距離をつめナイフを振るう
「甘いッ!」
だが、烏間先生は丈一郎の腕ごと押さえつけ動きを止める。しかもこのタイミングで押さえつけられては十八番のズームパンチも使えずにまさに手詰まりとなる。
「っ……!!」
だが、それはあくまで何処にでもいる普通の凡人の話。
「オラァァッ!」
丈一郎は掴まれた腕ごと自分の膝で蹴り上げて貫通力を増大させ烏間先生を貫く。
「ぐっ!!」
ズームパンチ同様、全く予期しない攻撃をモロに喰らい、烏間先生がその場に蹲る。
「今のは…効いたなぁ……」
「油断大敵……ってやつですよ烏間先生。まぁ、俺が波紋を使えない人間だったら貴方ほどの実力者にナイフを当てる事すらできませんよ。」
烏間先生とまともに渡り合って見えるのは俺が波紋の使い手だからだ…じゃなきゃこの人と駆け引きが出来ずに一発も掠ることすら出来ないだろう。
オマケにこの人は受けに回る防御よりも攻撃で相手を捩じ伏せるタイプなんだから本気で攻撃に専念しだしたら俺じゃあ1分も持たずにゲームオーバーだ。ホント世界は広いな
丈一郎がそう言い額の汗を拭うと共に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く中、烏間は先程の戦闘を思い出し戦慄していた。
もし、あのナイフが対先生ナイフではなく普通のナイフだったら?もし、彼が持っている手の内を全て隠さずに本気で戦ったら?果たして自分の本気を全て出し切ったとして最後に立っているのは果たして自分だろうか断言出来ない自分がいた。
「まぁ何にせよ、彼の言う通り油断大敵ということだな……」
底がまるで見えない未完の大器に烏間先生は不思議と胸が踊っていた。
「ん?別に良いよ〜ジョジョがいるなら退屈しなさそうだし」
体育が終わり制服に着替えた後、俺は千葉の言う通りに班を取り仕切っているオヤジ中学生…もとい中村莉緒の元に聞きに行った。結果は見ての通り…しかも、俺の予想を大きく裏切り、なんの躊躇いもなく即答した。
「中村…頼んでいる立場の俺が言うのもアレなんだが……同じ班にいる奴の意見とかを尊重しないのかよ」
「まぁ……そう言う気持ちは分かるけど私達の班はジョジョが入るの事に反対する奴はしないと思うよ?むしろ入ってくれって頼むよ」
「いやいや…それはお前の予想であって確定ではないだろうよ」
そんな事を言っていると2人の男女が小さなダンボール一杯に入った京都の観光地のパンフレットを抱え中村の席に持ってきた。
「おぉージョジョウチの班に入るの!?ちょうど漫画のネタの参考になる人と色々話たかったから誘おうと思ってたんだよね!」
そう言って目を輝かせるボブヘアーの少女の名は不破佑月。あまり絡みは無いがほぼ必ず月曜日はジャンプを買って教室で読み漁る為に2週間に一回のペースで遅刻してきている。
「俺もジョジョが今まで経験した話は是非詳しく聞きたいと思っていたし」
彼の名は三村航輝…よく岡島とつるんでいて将来はTVの仕事に携わりたいらしいがそれ以上の事は俺は知らん。
「三村に不破か…まぁよろしく」
「よろしく」
「こちらこそよろしくね。ジョジョ」
そう言い俺は三村と握手を交わすと中村がニヤニヤと笑みを浮かべる。
「ね?私の言った通りでしょ」
「……そうだな。お前のそういう所には一生勝てる気がしないよ」
「ふふふふ……もっと褒めちくれ」
中村はしてやったとドヤ顔で笑みを浮かべる。正直イラっとしたのでデコピンを喰らわせたいところだが…この程度で目くじらを立てていたらキリがないので敢えて無視して話題を変える。
「それで、この班の例の計画について今の所はどうなっているんだ?」
計画とは、京都での旅行にかこつけて国が腕利きの『スナイパー』を用意し、それを上手く使ってせんせーを殺す。っという物であり、報酬は貢献度に応じて支払らわれる事になっている。
つまり、暗殺向けのコース決めをすることがこの時間の目的である
「ん〜まぁ何個か候補はあるんだけど何処もピンとこなくてね…行き詰まってる。」
「ほぉ…悪知恵ならカルマにも劣らないお前が行き詰まるか…それは困ったな」
「そうなんだよね…まぁ千葉が後1人の女子をスカウトしてから煮詰めよう。」
そう言えば千葉の姿が見えないな…何処に行ったんだ?まぁ…なんと無く想像つくけどな
「おい三村…一応聞くが千葉は誰を誘うとしているんだ?」
「まぁジョジョが予想しているであろう速水を誘ってるよ。授業始まる前に速水の席で話してたからそろそろ来るんじゃないか?」
「成る程…じゃあ問題無いな」
このE組みに入ってから俺が千葉と速水の2人に抱いている印象は『寡黙』という一言に尽きる。類は友を呼ぶという日本の格言がある様に同じ様なタイプの人間は必然と同じ群に何人もいるもで、お互いに多くは語らずに与えられた仕事をこなすクレーバーな仕事人だそんな2人なら修学旅行の班だってできる事なら同じ班で行動したいと思うだろう。
「ジョジョ…OK貰えたみたいだな」
振り返ると地図を持った千葉が速水を連れて来ていた。
「あぁ…お前の言う通りだったよ。」
「だろうな…不破と三村が誘いたがっていたし…中村とも仲がいいからな」
へぇ…意外と正確に周りを見ているな。自己主張をあまりしない所為なのか…それとも人間観察が趣味なのかは知らないが視野が広いのは良いことだ。
「まぁそれはさておき、速水だったな…改めて名乗ろうか…東城丈一郎だ。ジョジョって呼んでくれ」
「速水で良い…よろしくジョジョ」
「あぁ…こちらこそよろしくな速水」
こうしてこれが後のE組内で最も一番敵に回したくない最強の仕事人トリオが誕生するキッカケになる事をまだ誰も知らない。
「……むー」
「どうしたの中村さん?」
「…別に…なんでもないよ」
そしてこの光景を中村は面白くないのか先ほどとは打って変わり機嫌が悪く、彼女の心に嫌なモヤを溜めていた。
後書き
家に帰った丈一郎は広辞苑顔負けの分厚い本と睨めっこをしていた。
「何が修学旅行のしおりだ…どう見たって辞書だろこれ!」
だが、書いてある内容は下手なガイドブックよりも濃く分かりやすい内容になっており、イラスト解説の全観光スポット、お土産人気トップ100、旅の護身術入門から応用…
財布に二千円札しか無い時、五重の塔が倒れてきた時、八つ橋が喉につまった時、工事中の穴に落ちた時、等、普通に有り得る事態から「そんな可能性どんだけあんの?」と思えるような事態まで書かれている。
「やれやれ…こんなイカれた修学旅行のしおりを作るタコにお前らが出会っていたらどんな反応をするんだろうな」
そう言い丈一郎は有りもしない未来に想いを馳せる。例えそれが叶わう事がない未来だとしても想うだけなら誰も咎める事などできなしないのだから
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