世界をめぐる、銀白の翼
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第四章 RE:BIRTH
Dead Story
プシュ、と短い音がした。
白服の男が振り返ると、部屋の扉が開いていて
「さぁ!観念してお縄につくがいいさ!!」
「ここがメインコンピューターか?」
いきなり降伏勧告を叩きつけてきた。
やってきたのは、四人。
モニターを見ていて来るのは分かっていたが、まさかここまで
「まさかここまで簡単にやってこられるとは思ってなかったぜ」
「あ?」
「階段上がってからの一本道にも、これでもかとトラップ置いといたんだがなぁ?」
無論、その結果は目の前の彼らが証明している。
その四人の背後に伸びる通路はボロボロたっだ。
壁には二、三体の死人兵士が頭から突っ込んで埋まっていたし、壁や天井、床の陥没や辺り一面銃痕だらけなどは当たり前のようにあった。
「お前一人か?」
「どうかな?もしかしたらそこの壁から出てくるかもよ?」
初原の言葉に男が返し、佳景山が指差された壁に銃口を向けて構える。
そしてもう一方の銃で男を狙い、蒔風が言葉を続けた。
「お前達の目的は、赤銅の復活と翼刀という実験で達成されたはずだ。なんでまたこんなことすんだ!!」
「・・・はぁ」
その言葉に、さも退屈そうに男がため息をつく。
言葉を続ける。
「あのな、俺はあのバカ一族の一員じゃねェンだよ」
「なに?」
「確かにメインはあの一族か取り仕切ってた。でも俺は違う。それだけだ」
「じゃあ、なぜ・・・・」
蒔風の問い。
だったらなぜ参加しているのか。
今こうしている目的はなんなのか。
それに男が応える。
興奮し、堪らないと言わんがごとく。
「そそるじゃねぇか!」
「?」
「世界を如何様にも破壊し蹂躙できるような力を、ここに座って指先一つで好きなようにいじくれるんだぜ!?そりゃ、思い通りにはいかないさ。あくまでもここはバックアップってとこだからな。だが、それでもそれなりのことに自由度が効く!!小気味いいだろ?生きるも死ぬも、破壊するもしないも、全部思いのまま!!しかもそれをこんな簡単な操作一つでできるんだから、これがそそられずに何にそそられるってんだ!!」
「それが楽しいから、だと・・・・!?」
「破壊だとかそんなのが楽しいんじゃないぜ?こうして裏からデカい奴を操れるのが楽しいんだ!!どうよ!!人間一人の、しかも指先で世界をどうこうできるんだぜ?楽しくて手を伸ばすにはいられないじゃないのよ!!」
「この野郎・・・!!!」
男は、この状況に愉悦を感じていた。
行っていることの大きさと、それを取り仕切る動作の小ささ。
そのギャップが面白く、そしてそれを行っているのが自分たという事実。
それがこの男をこんなにも突き動かせる。
「キレたってしょうがねぇ。その引き金引くなよ?」
「わぁってら」
「・・・・・確かに面白いのかもしれないけど、それももうおしまいだ。ここの機能は破壊させてもらう」
蒔風の宣告。
これからここは破壊する。
同時、男の身柄も拘束されるということだ。
それを聞いて、男の顔がヒクッ、と動いて笑みに変わった。
「冗談よせよ!これからが楽しいってのにさァ!!」
バッ!
「動くな!!」
パンッ!!
「グっ!!」
ピピッ!!
男が叫びと共にスイッチを取り出し、それに反応して佳景山が発砲した。
弾は男の肩を掠め、鮮血を散らせる。
しかし、その指はしっかりとそれを押し込んでいた。
ガヴォン!!と言う音と共に、左右と前方の壁に赤いラインが走る。
そして、その壁が開いて向こう側から何かが出てきた。
「死体を兵士に変えるときはな?新鮮な死体じゃなきゃならんのよ。もちろん集めてくる時もあるが、手っ取り早く殺した方が早い時もある。こいつらはその時の副産物だ」
「なに!?」
出てきた三体の後ろに隠れるようにして、男がその扉から出ていこうとしながらも、蒔風へと恨み言を吐き出す男。
「楽しみの邪魔をしやがってよォ!!だけどな、お前らが死ぬまでのエンターテイメントもまたおもしろそうだよなぁ!!」
「テメエ!!」
叫ぶ男だが、空いた扉の奥から出てきた部下らしい数人の男たちが、言葉を吐きだそうとする男を引っ張っていた。
しかし引っ張られながらも、男はなおも叫ぶ。まるで駄々をこねる子供のようだ。
「俺よか早くそいつらと戦えよ!!俺の楽しみ奪ったんだから、その分楽しませろよなクソヤロウ!!!」
「何やってんすか!早く逃げますよ!!」
「っせぇ!!ここのボスが誰だかわかってんのか!!」
「だっから早く逃げろってんだよ!!」
仲間からも怒号を飛ばされ、男がこの場から連れ出される。
追っていこうにも、この三体が邪魔になる。
「なあ、こいつら・・・・」
「あいつらが殺した・・・っていったよな?」
「ああ」
「じゃあ死人か?」
初原の質問。
それに蒔風が首を振り、アリスが解答を口にする。
「灰色の体躯・・・死からの復活・・・・こいつら、オルフェノクですよ」
その瞬間
「「「GUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!」」」
三体の獣が吼える。
すでに、その瞳にはひとかけらの理性も知性も有りはしない。
ファルコン、フォックス、コブラ
各生命の特徴を得た異形の化け物が、眼光を真っ赤に染めて襲いかかってきた。
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「グおおおおおおおおおおおお!!?」
ドォンッッッ!!!
突進してきたフォックスオルフェノクの攻撃をアリスが受け止め
首を取ろうとしてきたファルコンオルフェノクを佳景山と初原が回避、散開して
残った蒔風の元に、コブラオルフェノクがすべるようにして接近、拳をぶち当ててきた。
その衝撃をひきつった顔をしながらも受け止めた蒔風が壁に激突し、そのまま押し込まれて壁を崩壊させる。
気付かなかったが、壁のすぐ向こう側はデパートだったらしい。
婦人服のかかったラックに突っ込み、絡まった服の中でモゴモゴしながら蒔風が四つん這いになってその場からいったん距離を取る。
一方、コブラオルフェノクはシュルリとその中から立ち上がり、引っ掛かった衣服はブチブチと引き千切って立ち上がる。
「いぃいい・・・・クソッ、クソッ!!行くぞ行くぞ行くぞ行くぞ行くぞォォオオオオオオオオオうううううぁあああああ!!!」
そして、蒔風が剣を握って突進。
ブンブンと振り回すそれを回避し、蛇の尾のように変化した左腕で剣を絡み止めるコブラオルフェノク。
それに引っ張られてしまい、蒔風の腰が引けて床を転がる。
そこに当然のようにして飛びかかってくるコブラオルフェノクだが、蒔風がワゴンの足を掴んで投げ飛ばし、それを命中させて防御した。
「あ~~!!もう!!心の準備をさせてくれよォ~~~~!?」
そう言いながらワタワタと立ち上がり、走り回って逃げる蒔風。
そして、ファルコンオルフェノクに追い詰められていっている友二人の姿を見た。
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「フッ、ハァッ!!」
「ギャォウ!!」
ブシッ!!
アリスの気合。
それと共に放たれた蹴り。
それをフォックスオルフェノクは回避し、さらにアリスへと反撃を行っていた。
アリスもそれを回避するが、脇元の服が食いちぎられていることに気づく。
「なかなかの速さですね・・・しかし、舜があの状態なので・・・・!!!」
「ギっ!?」
「早々に終わらせていただきます!!」
がゴゥ!!
アリスの服はすでに戦闘服だ。
その踏込みによってスカートはなび立ち、突進はまるで光と化し
その勢いで彼女の周囲を跳ね回るフォックスオルフェノクを一瞬で捉えて首を掴み
バガァッ!!
壁をぶち破って彼女もデパートのエリアに突っ込んだ。
「ゲェッ!!」
「終わりませんよ!!」
そう、そしてそのままでは終わらなかった。
アリスはそのままフォックスオルフェノクを地面に叩きつけ、さらに柱に叩きつけて行く。
フルスイングのようにして四角形の柱にそれを叩きつけると、今後は反対側から振って叩きつける。
たったそれだけの動作で、柱は二度の衝撃に耐えられずブチ抜かれた。
そして、地面に叩きつけられたフォックスオルフェノクはバウンドしてアリスの胸元まで跳ね上がり
「コォ・・・・」
力なく、声を漏らす。
その眼に映ったのは、彼女の足。
それが真上から叩き落とされ、彼の頭蓋を踏みぬき、デパートの床に大きなクレータを作り上げた。
その中心から、アリスがボコリと脚を引き抜いてオルフェノクを見る。
首から上はすでに存在しておらず、その部分から青い焔を漏らして身体が灰に還って行く。
「佳景山さんたちは!!!」
そして、アリスがクレーターから駆けだしたとき。
「うぉぉおおおああああああああああああああああああ!!!!」
蒔風が獅子天麟を構え、一直線にファルコンオルフェノクに突っ込んでいく光景が飛び込んできた。
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コブラオルフェノクが蒔風の背後を追うが、そんなことも意に介さずに蒔風はファルコンオルフェノクに突っ込んでいく。
狙われているのは、友人二人。
いくらなんでも、オルフェノクの相手なんかができるわけがなかったのだ。
敵は飛翔して接近してきた。
それはいくらでも回避できた。
だが同時に突風と羽根を飛ばしてこられると、それは「攻防」から一気に「蹂躙」に変わって行った。
風はともかくとして、羽根の方はまずい。
床に突き刺さったそれを見ると、蒼い炎をチリチリと上げていた。
オルフェノクの持つ「使徒再生能力」
自らのオルフェノクの力を人間に流し込み、そうして殺すことで「当たり」の人間をオルフェノクに変貌させるものだ。
だが多くの人間はそれに耐えられず、心臓が灰化したのちにそれが全身に回り崩れて消える。
方法は様々だが、このファルコンは翼から羽根を飛ばしてそれを心臓に突き立てて行うらしい。
理性を失っていても、それはオルフェノクの本能だからだろうか?
佳景山、初原は確実にそれを回避しながらも、同じくらい確実に追い詰められていっていた。
佳景山が撃とうとも火花を散らすだけで止まらない。
初原が何を投げつけて、足止めを行っても効きもしない。
「おいおいこれマジでまずいだろ!?」
「ハハッ!!俺やお前なら死なないでオルフェノクになれると思うぞ?」
「その冗談わらえねぇよ!?」
「そりゃ確かにッ!!!」
ダンッッ!!と走って逃げるしかない彼らが、ついに追い詰められてしまう。
羽撃たきの風で巻き上げられたラックやワゴン、崩れた瓦礫などが積み重なって彼らの行く手を阻む。
そして、目の前に浮遊するファルコンオルフェノク。
翼が大きく開かれ、その内から羽根が二人の心臓を突き刺そうと飛翔する。
「うぁアアアアアアアああああああああああああ!!!!」
ドンッッッ!!
その瞬間、蒔風が二人の目の前に着地した。
落下とも思えるような音を出し、羽根の前に立ちはだかる蒔風。
そして剣を振ってそのすべてをはたき倒し、最期に獅子天麟をフルスイングしてその風圧で羽根をバラバラと落す。
だがその突風は相手を落とすほどでなく、その嘴で蒔風を貫こうとファルコンオルフェノクが突貫してきた。
その嘴を蒔風が両手で掴み取り、ズァッ!!という摩擦音を足元から出して耐える。
「クルルルルルルル・・・」
「ま、蒔風?」
「こいつらはやらせない・・・絶対にやらせない・・・・殺させてなんかァ!!」
「キュァッ!?」
「させるかよォッ!!!」
ブォンッッ!!
蒔風が目に涙を溜め、恐怖に震えながらもファルコンオルフェノクを投げ飛ばした。
バガンッッ!!という音がして、ファルコンオルフェノクは狭い試着室に叩き込まれて腰から落ちる。
そこから直ぐに起き上がろうとするファルコンだが、上体を起こした瞬間に蒔風の膝がめり込んで再び地面に落ちた。
そしてそこから蒔風が撥ねてマウントに立ち、風林火山を構えて回転した。
「ウォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ギギュゥゥゥゥウううううううううううううううううううう!!?」
蒔風は風林火山を持って回転するだけだ。
刀の柄同士を付け、四本から二本一対の刀になった風林火山が、その回転に合わせてファルコンオルフェノクを切り刻んでいく。
次第にその体から青い焔がチラチラと噴き出し始め、それは風林火山の刀身に宿っていく。
蒼炎の刃の回転。
その速度は次々に上がって行き、やがて床に接地して火花を散らすところまでそれは続いた。
そしてその接触と共に、独楽のように回転していた身体が勢いを落としてやがて止まる。
ブワッ、と蒼炎が散り、後に残るのは振り切った蒔風がしゃがみ込んでいる姿だけだった。
「蒔風・・・・」
「だ、大丈夫か!?一本も刺さってないよな、羽根!!」
「平気だが・・・お前」
「ん・・・あぁ、結構大丈夫なってきた。ありがと」
バガァッッ!!
と、剣を握る手を見ながら蒔風がぼそぼそと言っていると、アリスがコブラオルフェノクを叩き潰しながら彼らのもとにやってきた。
「舜!!「戻り」ましたか!?」
「まだ怖いけどな・・・いざという時にしり込みはしなくなりそう・・・かな?」
「そうですか・・・本格的には、全部終わってからですねッ!!」
ドォンッッ!!
天井に叩きつけられるコブラオルフェノク。
身体がめり込み、ガボォとそこから落ちて行って蒼炎を上げるコブラ。
しかし
「グェッ!!」
「!?」
コブラがその巨大な口を開き、その喉の奥から何かが出てきた。
出てきたのは、タイマー
赤い光を放ちながら、口の中にデジタルのタイマーが出てきたのだ。
それを見て、アリスの双眸が思い切り開く。
蒔風も、佳景山も、初原もそれを見た。
そしてショーウィンドウから外を見ると
「―――――――ぁハッ!!!!」
大きく口を開いて笑い、見下すように眼光を飛ばす、機関の男が見せつけるようにしてスイッチのボタンを押そうと親指の筋肉線維が動き出す。
それに反応したアリスが、コブラアンデットの首を掴んで建物の奥に投げ飛ばした。
さらに蒔風も二人を掴んで外に出ようとする。
しかし、ここで蒔風の動きが鈍る。
「ゥあっっ・・・ッ!!みんな逃げ」
一瞬
そう、たった一瞬だ。
目で見た。
それが爆弾だと認識した。
脚が止まった。
恐怖で、一瞬だけ動きが鈍った。
口が先に動いてしまった。
脚を動かすべきなのに、必要のないセリフを叫んでいた。
たった一瞬。
一秒にも満たない刹那。
その時間が、すべてを分けた。
バゴゥッッ!!
ドォン!!!
爆発する。
投げられたコブラオルフェノクが、向こうの壁に衝突するよりも早く爆発した。
壁、天井、柱にも仕掛けられていたのか、四方八方から炎と衝撃を撒き散らして、周囲を吹き飛ばしつくさんと圧倒的な死が荒れ狂う。
ショーウィンドウのガラスは爆風で粉々に砕けて路上を埋める。
宙にいたアリスは、コブラオルフェノクの爆発に吹き飛ばされて飛び出していく。
地面をすべるように転がるアリスがてパートに目を向けると、その中から佳景山と初原が飛び出してきた。
何かに投げ飛ばされたかのように飛んできた二人を、アリスが受け止めて地面に下ろす。
「舜は!?」
「あ、あの野郎・・・・」
「俺たちだけブン投げて、まだあん中だぞ!!」
「な・・・・」
「もう一人は・・・・死んだか?」
機関の男が、さも面白そうに言い放つ。
それに激昂し、二人が駆けだす。
「いくらビビってっからって、あいつが簡単に死ぬかよ!!」
「適当なこと・・・言ってんじゃない!!」
迫る二人に向かって、男がクイと指を向ける。
地下空洞で戦ったのと同じような男たちが駆けだし、佳景山と初原がそれを迎撃する。
「埋まってる奴と、そいつら殺しとけ」
「「させるか!!」」
それらの軍勢を止め、打ち破らんと二人が戦っている。
その反対側で、アリスが瓦礫の中に向かって叫び声を上げていた。
「舜!!舜ーーー!!!!」
ガラガラと炎を上げながら崩れていくビルを前にして、アリスが炎を腕で払っていく。
まだ生きていると、信じて。
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「ぐ・・・ぅ・・・・・」
まず、顔を照りつける熱。
それで蒔風は目を覚ました。
目の前がぼやける。
よく見えない。
身体は何かに寄り掛かっているようだ。
だが
四肢に力が入らない。
全身が麻痺して動かない。
それでも、ここにいたら死んでしまう。
それだけは絶対に嫌だった。
「ここから・・・出ないと・・・・・・」
必死になって上体を動かす。
前に出ようと、動く。
だが、ほんの少しも進まない。
ジワリと
全身に悪寒が走る。
近くで炎が燃えているのに、身体がこんなにも寒い。
だというのに、腹が燃えるように熱い。
そこの痛覚だけが、正常に機能し始めたのだ。
蒔風の首が下を向く。
そこにあったのは、一本の鉄パイプ。
「あ・・・あぁ・・・・・・・」
それが蒔風の腹を貫いて、その場から逃がそうとしなかった。
to be continued
後書き
蒔風死にかけですな!!
それにしても機関の男が傲慢という方だのクズ野郎になってしまった。
清々しいほどのクズですね!!!
三体のオルフェノクに関してはなんも考えてなかったです。
本当だったらいろいろ投与された筋肉だるまの化け物の予定でしたが「死人兵士使うならこっちの方が自然じゃね?というかその過程でオルフェノクがいてもおかしくないよね!!」っていうことでこっちにしました。
そして、爆破。
男としては「もうこいつら殺せりゃそれでいいぜひゃっはー!!」みたいな頭ですからね。
残党なんでそんなものです
蒔風は背中から腹を貫かれてる状態です。
さあ、これからどうするのか!!
アリス
「私にも想定外。これは予想外です」
次回、翼・人・復・活
ではまた次回
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