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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  光・闇・虚無



がなり立てられる怒号。
湧き上がる悲鳴。
甲高い鳴き声も、織り交ざる。


いま、この街は影に覆われていた。
原因は単純明快である。この真上に、巨大な物体が浮いているからだ。


「これが・・・・一刀の言っていた・・・・・?」

「蓮華!!いいから早く来なさいよ!!」

「華琳・・・・だが皆を誘導しないと!!」


この街には偶然か、一刀の家がある。
ここら一帯は、彼らがいた世界の面影が残っているのだ。

そしてその家にいた彼女らは、周囲住民の避難誘導を行っていた。

元・一国の王である彼女らにしてみれば、それはそうそう難しいことではない。
それに、この家にいたのは二人だけではないのだから、なおさらだ。



上空を(見たとおりだと)ゆっくりと移動していく巨大な都市。
これほど大きなものを、見たことがなかった。

いやむしろ、地上から見るだけではこれがなんなのかすらもわからない。




と、その時、巨大空中要塞に向かって、一つの飛行体が突撃していった。
それはあまりの速度に、翼の蒼青が、まさに彗星の如く尾を引いて、蒼いラインを描く。



・・・・・ッッゴバォウ!!!!!

「きゃァッ!?」

「うわぁ!!??」




そして、衝突。
要塞は微弱ながら震え、その衝撃は風となって、地上の彼女らを吹き付ける。


「一刀・・・・?」

「何やってるのよ!!早く逃げるわよ・・・・あれは私たちの踏み込める領域じゃないわ!!」

「でも!!」

「今死んだら!!戦いが終わった後に誰があのバカに小言を言うのよ!あなたは言いたくないの!?」

「・・・・わかったわ」



そうして、彼女らは街から避難する道を行く。
今は、こうすることが最大の協力だ。



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上空

突貫せんとして突っ込んで行った一刀は、その要塞を少しでも止めようと拳に全力を込めた。


考えうる、すべての力を。
ライダーパンチ系統は当然。
スバルの振動破砕、蒔風の打滅星、バーサーカーの筋力。

更には友すべての腕力を、一刀は自らに重ね掛けしていた。

それをして打ち放つ拳。
だが、それでもこの巨大な塊は、微震程度で押しとどめる。



「クソッ!!」

無論、一刀のキャパを越えた攻撃だ。拳からは血が噴き出している。
むしろこの巨大要塞を微震でもさせたのだから、上出来という威力だ。

治癒系統の能力を借り手を治すが、そうしているうちに上部の都市部から、三つの人影が飛び出してきた。



「お?君が「EARTH」かい?最初の破壊物かい?」

「・・・・えっと・・・・邪魔です」

「・・・・・・・」



三人とも、少女である。
だが


「赤銅の・・・・一味か?」


一刀の表情は硬い。
今までも、少女や女性が敵だったことはあった。
むしろ、彼の人生そうであることの方が圧倒的に多かった。

だが、なんであろうか。
あまりに人間的に見えるこの三人が、それがゆえに人間とは異なるものだと証明しているようにしか感じられないのだ。

まるでカモフラージュのように。
自分は無害だと擬態して、油断したところを食らいつく捕食者のように。



彼は彼女らが赤銅から生まれたことを知らない。だが、そうであることは何となく感じられる。

今なら卑弥呼の言うことがわかる気がする。
こいつらは、根本的に違う。



「そーだよ。私は「光」!!」

「や・・・「闇」・・・です・・・・・」

「・・・・・・・「虚無」」



自己紹介と言えるのか?
自分の名称を述べるだけの彼女らは、一刀の周りをまわって品定めするように視線を向ける。

そして


「いーらないッ。そっち、いる?」

「わ・・・わたしは・・・・遠慮します・・・・・」

「・・・・・・(ス)」


「光」と「闇」が一刀を拒否、それを聞いて、「虚無」が一歩前に出た。


「ん?そっちはあれがいいの?」

「・・・・・・仕事」

「た、確かに・・・誰かがやらなきゃ・・・・いけないことだし・・・・」

「ん、そか。じゃー宜しく」

「ちゃ、ちゃんと・・・・・・殺しといてくださいね?」

ドンッッッ!!!



その言葉を発端に、「虚無」が飛び出してきた。
残りの二人は、フヨフヨと要塞の方へと戻っていく。


「こいつらッ・・・!!!」


突進してくる「虚無」に対し、一刀も剣を握って突っ込んでいく。

相手の手にも、氷を削ったような形をした、血の色をした荒々しい槍(というよりは尖った塊と言った方がいいかもしれない)が出現している。



そして、その剣先がぶつかり合って、空に鮮血が舞い始める。




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『今先行して向かったご主人様が交戦中との情報が!!』

「相手は赤銅か?」

『いえ、確認されていない戦力です!!!』


新手か。
翼で風を掴み、クラウドがラピュタに向かう。

まだ目的地は相当先のはずなのに、空には目標が見えていた。



(なんて大きさだ・・・・・・)



改めて見て、巨大なものだ。メテオという黒魔法を見たことはある。
が、地球上の物だからこそ、実感できる大きさだから、なおさら困難だと感じてしまう。

だが


「まあ・・・・全力でぶつかれば・・・・砕けぬものはない」


自信をもって、言い放つ。
決して驕りからではない。そうたやすいことでないのはわかってる。

しかし、軽口を叩くくらいの余裕を、今からなくしてどうするというのだ。




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「み、見えて・・・・ますか?」

「ん?当然でしょ。見えないとかわけわかんない」

「ですよね・・・す、すみません・・・・・」


おどおどしている「闇」と、軽快に話す「光」。
だが、思うどおりの相手が現れないことに、「光」の方は若干イライラしていた。

見えているというのは、クラウドのことだ。
やはり戦士型の翼人は速い。



「やっぱり連れて来られてたあの人とやってた方が楽しいかなぁ?」

「だ・・・ダメだよ・・・・・あれは・・・・」

「わかってるよ。目的ぐらい。でも楽しむくらいしないと損じゃんよ」

「で、でも・・・・あれはあ、主様の為の、ものだから・・・・・」

「つまんなーい!!」

「じゃ・・・じゃあ・・・・いく?」

「やだ。あんなのとやってもつまんない。それなら惨殺される方がまだ楽しめるよ」

「だったら・・・私行くね・・・・」


要塞の上から、ふわりと「闇」が離れていく。



「ウフフ・・・わ、私好みの・・・・黒・・・・・・」



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目的地(ラピュタ)まではまだ遠い。




先行して飛び出していった一刀は「多彩演芸者」だ。
多くの友の力を重複して扱える彼は、おそらくあらゆる加速法を用いて向かったのだろう。
その彼はすでに敵との交戦を開始している。

そしてそれを追うようにしてクラウドが加速開翼で追いつこうとしていた。



理樹や観鈴が率いる他のメンバーはまだ後方だろう。
いくらクロックアップや風足などといっても、やはり空と大地では速度が違う。




ラピュタの姿が、単純に近付くという理由で、ぐんぐん大きくなる。

その付近の空には無数の剣戟音と、地上に落ちる金属の音が響き、時折ここまで聞こえる。
蒼青の光が、チカチカと空の青を彩る。



「待ってろよ・・・一刀!!」



クラウドが剣を現出させ、到着と同時に切り込む態勢を整えた。

瞬間



「ウォッッ!?」

ズゴンッッ!!という音がした―――否、実際にそんな音が鳴ったわけではない。
これは感覚に近い。


そう、クラウドを襲った現象は、まさにそんな効果音で表される。



身体が大地に引っ張られていく。

重圧や、重力の使い手か。
いや、それよりも問題なのは今「この状態の自分を捕捉してきた」ということだ。





落ちた先は、街。
ここはすでに、一刀の家付近と同じ体裁の街並みになっている。
その通りのど真ん中に、クラウドは着地した。
翼を畳み消す。


通りといっても、大通りではない。通りの幅は商店街程度か。

おそらくラピュタが遠いせいだろう。
ほとんどの住人はもう避難しているが、まだ数人程度はちらほら目につく。



だが、クラウドに彼らを誘導しに行く余裕はない。
目の前の少女が、その余裕をなくさせる。


「し・・・しまっちゃうん・・・ですか?」


妙におどおどしているが、目だけはランランとしている少女。
どうやら翼をしまってしまったことに少し残念がってるらしい。だが、また出させて見せるという意欲は見てとれる。

いや、そんなことより。
一体どういう手段、どういう速度でここに来たというのだろうか。
つい30秒前まで「光」と会話していた少女が、すでにクラウドの前に来ていた。
ちなみに―――――ここまでの距離はとてもではないが、そんな時間で来れる距離ではない。



(しかも俺を落としたということは、ここに着いたのはもっと速いはずだ)



手に持つ剣は、ファースト剣ではない。
それを構成する、片刃の剣だ。

一方、「闇」の方は足元から黒い煙のような物を噴き出させていて、それで体を覆っている。



(煙・・・闇に乗じる気か?それとも・・・・・・)


無言のクラウド。
見てわかるほどの異端。クラウドもまた、それを一目で感じ取っていた。


「闇」の拳に、黒煙が集まる。とはいえ、全部ではない。
全身をうっすらと煙が覆い、その中でも拳の部分が濃いだけだ。



「オォっ!!」



先手必勝
クラウドが駆けだす。




狼煙が上がる。
世界の存亡を掛けた、最大の戦いだ。




to be continued
 
 

 
後書き


戦闘開始!!

「彼らがいた世界の面影」というのはモロ「恋姫無双」の街並みですね。
クラウドが着地した場所も、そんな感じでイメージしてください。

「虚無」が手にした槍の形は、「なのポ GOD」に出てくるユーリ様の投げてくるあれです。とげとげしいですね。



三人はこの先(赤銅が求めるモノ)に何があるかわかってるようですね。

「光」は「それ」があろうとも、楽しんでおこうと
「闇」は「それ」を邪魔するなら、消しとこうと
「虚無」は「それ」を成就させるための機能のように

それぞれ動きます。



というか「闇」が一瞬ヤンデレみたいになったぞ?
どうしてこうなった!?


あと、「闇」の煙はイメージとしてはFate/Zeroのバーサーカーみたいな感じで。
全身はずっと覆ってます。拳だけ濃くなってます。

そしていまだに翼刀未登場・・・というか主人公が出てこなーい!?

次回あたりでぼちぼち出すかもしれませんが、当面は現状の「EARTH」メンバーでの戦いですね。

蒔風
「次回、戦う者、戦わぬ者、戦えぬ者」

ではまた次回

 
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